今年は更新速度をあげれるように頑張りたいです。
[パラディス城内 皇室プライベートルーム]
Sideドミディア
ヘリオガが見当たらぬから探してみれば……、なんとも情けない限りだ。
「席を外しなさい、ヘリオガ」
「でも……!」
「でもではない!こんな軽率な行動をするとはなんと嘆かわしい」
「も、申し訳ありません……」
どうも納得しかねるような態度に内心溜息をつきつつ、これ以上
「安心しろ悪いようにはせん。エムブラ殿とは私から話しをつけておこう」
「!?、はい……!」
「良しいい子だ」
幾分かはマシになった顔色を確認し頭を撫で、付き添いの護衛達に声を掛ける。
「お前達、陛下をお部屋までお連れしろ。護衛はレオノスだけで事足りる」
「は!、了解しました!」
ヘリオガらが退室したのを確認して扉を閉めると、部屋の中には私とレオノス、そして"お飾り娘"だけとなる。
"お飾り娘"が意外にも外で待機していた護衛を呼ばなかったことを不審に思いつつも席に腰を掛ける。
「ヘリオガが失礼をしたのならコチラからも謝罪しよう、まだ皇帝としての自覚が足らんようでな」
「いえ、お気になさらないで下さい。しかし何故ヘリオガ陛下は自分に固執しているのでしょうか?」
「あ〜、それはだな……ん?」
大凡検討はついてるがどう説明しようかと思っていると、別の机の上に見覚えのある表紙の本が目に入る。
………まったく、まだ後生大事に持っていたのか。
「丁度よいのがありますな、これは皇国語で書かれた絵本なのですが」
「これは?」
「著者も不明になった古い時代の絵本でしてな、タイトルを〘黒髪の聖女〙というものです。
簡単にいえば一人の女性視点で始まる世直し話しだな」
"お飾り娘"がパラパラと絵本を捲る、文字は読めずとも大体の内容は想像がつくだろう。
「………もしかして、この黒髪の聖女と私を重ねてたのですか?」
「嘆かわしいが、その通りだ」
「黒髪くらいしか特徴が一致しないようですが、この国で黒髪は珍しいのですか?」
「いや、そんなことはない。平民であれば黒髪は珍しくもないしヘリオガが住んでた城にも平民の使用人はいた。
数こそ少ないが黒髪の貴族令嬢にも会ってるはずなのだがな……。」
何がそこまでこの"お飾り娘"への執着に繋がるのか理解出来ないが、ヘリオガとしては譲れないナニカがあるのだろう。
「育ての親として恥ずかしい限りだ。私ではあの子の心の支えにはなれていなかったのだろう……!」
「宰相閣下……」
「どうかヘリオガを責めないでくれ、兄であるルディアスから冷たい態度をされていてな……
あの子には一切の打算なき愛情というものに飢えているのだ」
「……無償の愛、というものですね?」
「そうだ」
(クククッ……とんだ猿芝居だ)
後ろのレオノスが必死に笑いを押し殺している気配はするが"お飾り娘"がそれに気付いてる様子もない。
それどころかこの女の瞳には憐憫の情が浮かんでいる、こんな“くだらん芝居”で同情するような馬鹿ならそこを利用してやろう。
「………先程のヘリオガからの要望を聞き入れるのはやはり無理かね?やはり既に婚約者が?」
「いえ、婚約者はいないですが……。"お飾り"に近い若輩とはいえ一組織の責任者を務める身、一時の感情で放棄する訳にもいきません……」
申し訳なさそうに謝罪する姿を見ながら内心確信する。
やはりこの女、
最初こそこの若さで組織の長を務めてるのは王族の血縁か何かではないかと勘ぐっていた。
しかし仕草や礼儀作法もそこらの平民と大差ない、付け焼き刃のような感じが拭えなかった。
つまり血縁の後ろ盾はない、それでありながらこのような地位についてるのは単純に能力の高さか?
ならわざわざ自分を"お飾り"などと下卑にしまい、能力が低いことを自覚してない限りは、な。
後ろ盾になる血縁も組織運用能力も無い、ならば残ってるのは大衆向けのお飾りという線だろう。
僅かながら入手した調査内容にも組織内戦力の女性比率が高いような資料があった。
つまりは組織運用自体はお飾りのトップ無しでも問題無いようになっていると予測できる。
ならば
この時の価値観の違いによりカグヤとドミディアの間で致命的な齟齬が発生していた。
パーパルディア皇国では地位と権力は最大限誇示するものであり、謙遜するという発想が全く無い。
謙遜するということは目上を立て、自ら下手に出るということと同義だからだ。
それに対して鉄血生まれのカグヤとしては地位と権力は『負うべき責任の対価』である。
実力主義である鉄血公国では血縁やコネで要職につくことは法律で厳しく罰せられる大罪であり、能力不足で責務を全うできなければ"勅令"にて剥奪されることもある。
また鉄血公国では必要以上に地位や権力をひけらかす行為は下品であるとされているため、自身の地位に対して一歩引いた言葉選びをすることも珍しくない。
カグヤ自身、キューブ適性者という希少な資質を持つからこそ特例として要職につけているだけで、組織運用者として実力不足は否めないと自身を戒めている。
ドミディアの思考
(いても居なくても問題無い、替えの効く)お飾りの指揮官
カグヤの思考
(必要不可欠な資質があるだけの未熟な)お飾りの指揮官
もしも、ここの認識が擦り合わせられていたのであればこの後の
しかし“女は男に支配されるモノ”と考えるドミディアからすれば"もしも"はそもそもあり得なかったのかもしれない。
故に、ここに
Sideカグヤ
唐突に相対するドミディア宰相の見る目が変わり、部屋の空気が重くなったような気がする。
とても不快で、気持ち悪くなる視線、幼き日に自分は同じ目をみたことがある。
まるで聞き分けの悪い子供を叱りつけるかのように、こちらを明確に見下す目。
ーーーーーーなんだねコイツは?こんな薄汚い混ざりものが居るとは、前任はとんだ変わり者だったようだなーーーーー
死んだ"先生"さえも卑下した、あの大嫌いだった施設長と同じ目……。
「申し訳ないが、君にはヘリオガの望み通り我が国に居続けてもらおうか」
「………それは無理なお願いだとお断りしたはずですが?」
「なに大丈夫だよ、今から君は
不快感が頂点に達するが相手は他国の宰相、あまり乱雑な態度を取るのは後々問題に……。
「命ずる、我が名の元これよりお前は【ヘリオガの聖女】として尽くせ」
ドミディア宰相の身につけている指輪がが怪しく光ったと同時に意識が朦朧とし、思考が纏まらなくなる。
不味い……、ナニカ解らないが……、意識が保てない………。
「な!?ちぃ!重ねて命ずる!」
パリン、というガラスが割れるような音と共に私の意識は昏い闇の中に沈んでいった……………。
[海上要塞ヴァルハラ北側区画 海上制圧艦"スサノヲ"専用港]
Side明石
「ニャ〜?なんにゃ?いつもうるさい"スサノヲ"の機関音が静かだにゃ〜?」
常に暖機運転をし続けてる機関音が急に静かになったことに疑問を持ちつつも、他の業務に追われてそんな疑問も忘れてしまうのであった。
[海上要塞ヴァルハラ ローン私室]
Sideローン
無断出撃と交戦の罰として自室謹慎をしつつ、新しいお菓子作りのレシピ本を読んでいると、ふと寂しい気持ちに襲われた。
「……?カグヤ……?」
無意識に出た言葉に疑問を憶えるも、暫くして気の所為だったか?と思いレシピ本を読み始める。
「………カグヤ、早く帰ってこないかしら」
消えぬ不安を胸に秘めて………。
[アニュンリール皇国 魔帝復活対策庁]
Sideオブザーバー
古の魔法帝国が持つ魔法技術のデータを閲覧していると、ふとカグヤとの繋がりが乱れたように感じる。
何事かと思い、カグヤに仕込んであるバイタルチェックナノマシンを遠隔起動させる。
「レム睡眠状態が強制的に維持されてる……?また面白いことになってるわね」
とりあえずカグヤの身は問題無いと判断し、今回の事態にどのようなアプローチをするかを思考し始める。
「まずはアニュンリールの者たちに【脳波に作用する魔法】について聞く必要があるわね」
ズルリと触手艤装が蠢くと空間が歪み、最寄りの局長の下へと転移していった。
【支配者の瞳】
古の魔法帝国で作られた精神操作魔法に特化した竜眼形状の魔道具。
対象の精神を支配には膨大な魔力と繊細な操作が必要となり、さらに自我が強ければ強い程に、失敗或いは廃人化のリスクが高かった。
そこで精神操作する対象を催眠状態にし、自我を希薄にしてから精神操作を施す手法が最も手堅かった。
しかし魔法操作という点ではさらに複雑怪奇となり労力と魔力に釣り合わないという結果となった。
そこで作られたのが【支配者の瞳】である。
繊細なコントロールは魔道具に任せ、魔力と命令内容を入力すれば即座に使用が可能である。
使用条件
・対象の5メートル以内に【支配者の瞳】があり、最初の催眠光を認識させること。
・物理的に不可能な肉体操作以外は問題無し。
・長期間の使用には一定周期で再催眠処理の必要がある。
魔道具としては成功作であったが、製造コストがそこそこかかることと、何よりも光翼人であれば力尽くで言うことを聞かせるほうが一般的だったため極少数の生産で終わってしまうのであった。
そしてこれを手に入れたドミディアは指輪の宝石として偽装することで即座に使えるようにしていたのだ。
[パラディス城内 皇室プライベートルーム]
Sideドミディア
視線が定まらず目に光が宿らない"お飾り娘"の【支配】が完了したのはよいが、その代償は想像を絶するものであった。
「くそくそくそ!なんとういうことだ!?貴重な【魔結晶】が!2つも砕けた!」
『魔帝様が遺したものが………!』
レオノスが驚愕するのも仕方あるまい。
神聖ミリシアルにもない小型大容量の魔力貯蔵石、それが【魔結晶】と呼んでいるものだ。
見た目手のひらに収まる程度の円柱の結晶体、レオノスとジャバウォックが保管されていた聖都パールネウスの地下にある遺跡から発掘されたものだ。
飛竜の火炎弾を受けようと、地竜が踏みつけようと傷つかない不壊の結晶。
中の魔力を使い果たそうと再び魔力を込めれば再利用できていた筈のものが、まさか壊れるようなことがあるとは……!?
『恐らくだが原因は内蔵魔力を急激に消費した負荷に耐えられなくなった、か?』
「馬鹿を言うな!結晶一つにエルフ100人分近くの魔力が込められてるのだぞ!?今までだって一度の精神支配に消費した魔力は多くて2〜3割程度だった!」
『だが結果が事実だ、まぁ何度も使用していたから多少の劣化はあったかもしれんが』
「おのれ!」
発掘できた魔結晶の数は10に満たない、手持ちはあと2つ。
これ以上精神支配に魔力を割くのはリスクが高い、同行人への使用は後日改めてだ!
「はあぁ〜、もういい。とりあえず明日の交渉再開時に口裏を合わせて貰えればな。小娘、これから言う内容を承諾しろ」
「……はい」
柔らかな笑みを浮かべ返事をする"お飾り娘"に違和感を持つが、【ヘリオガの聖女】という命令通り聖女らしさを意識した仕草になっていることに満足する。
「では要求内容についての………」
[皇室プライベートルーム前 扉付近]
Sideアビータ・Strength VIII
ーーー集音してる会話内容に不穏な発言内容あり。
状況確認のため
問題発生と判断、強硬手段に移……。
ーーーーー向こうで私がどんな非難や暴言、暴力を振るわれようと“命令有るまでは絶対に武力行使にでないこと”を厳守すること!ーーーーーー
………強硬手段移行中止、最優先命令事項を厳守。
ーーー
………思考、この状況、
ーーー他セイレーン個体端末から再三の状況確認要請。
………思考、“大変うるさい”と判断、通信遮断。衛星通信のジャミングを開始。
………思考、これでカグヤはしばらく
………思考、“とても嬉しい”と判断。
アビータ・Strength VIIIの口が三日月の如く歪む。
普段の無表情、鉄皮面はドコにもなく、ただただ自身の感情を表現する。
………愛とは極上の蜜であると同時に、思考を惑わす狂気の猛毒、なのかもしれない。
顔無し「よしゃ!手駒兼人質GETだぜ☆」
パ皇「………これチェックメイトでは???」