私とローンとの邂逅から数ヶ月、ローンの戦績に触発されてアズールレーン・レッドアクシズ両陣営では計画艦開発に積極的な姿勢を持つようになっていた。
特にレッドアクシズでは停滞していた第一期計画艦開発と平行して第二期計画艦開発も随時に始動していく方針のようだ。
アズールレーン側の詳しい状況は解らないが、レッドアクシズ側ではローンの時のようなKAN-SEN機能の顕現不良は発生していない。
そのため何故ローン開発時はあんなに手詰まりになったのか?と疑問を持つ研究者も多かったが、明確な回答は結局出ずじまい。
そのため指揮官がいるアズールレーンでは特に問題が起きてないことから〘指揮官不在がKAN-SENの根幹であるリュウコツの不活性化を起こしていたのでは?〙というのが大凡の原因と仮定する者が大半のようだ。
群島国家である重桜では海上戦力の拡充が急務なこともあり、重巡【伊吹】 戦艦【出雲】 防空駆逐艦【北風】 超巡【吾妻】と一気に開発・建造することに踏み切った。
対して大陸国家である鉄血では陸戦兵器郡の開発も平行しなければならないことと、『ローンを超えるKAN-SENの開発』に熱意を上げる研究者が多数居いたため開発リソースを戦艦【フリードリヒ・デア・グローセ】へ一本化、集中させることに。
また独力での計画艦開発が難航していたヴィシア星座が鉄血への開発協力要請により、戦艦【ガスコーニュ】の共同開発が決定したことも一本化への要因ではある。
………さて、話は替わりローンのリュウコツ覚醒の要因が私であると仮定されたことにより劇的な反応を示したKAN-SENがいる。
重桜KAN-SEN【赤城】【加賀】
重桜きっての策略家と戦闘狂であり、一航戦として名を轟かせる歴戦のエース、当然リュウコツの不具合などとは無縁である、
……………いきなりなんでこんな話しなっているかと言えば、執務室の床で土下座して懇願している赤城と加賀がいるからだ。
「「――――何卒、お願い申し上げます」」
「あ、赤城さん!加賀さん!取り敢えず頭を上げて下さい!」
「いえ、ご協力を了承いただけるまで上げる訳にはいきません」
「このような行為が許されないことなのは百も承知!しかしどうか我らにお力添えを!」
彼女らがここまで懇願している理由、それは現在封印を施されているKAN-SEN【天城】と【土佐】の覚醒処置についてだ。
両名は赤城、加賀それぞれの姉妹艦にあたる戦艦KAN-SENであり、リュウコツ異常が原因でKAN-SENとしての機能に問題が発生。
特に天城に関しては日常生活さえ支障をきたすレベルで体調を崩していたらしい。
そのため両名を封印処置することでこれ以上の悪化を防いでいた。
しかし今回似たようなの事例であるローンがリュウコツの覚醒ができたことにより、藁にも縋る思いで上申に来たとのこと。
そんなの……、断れるわけないじゃん!
「解りました!やれる限りの尽力はするから!でも直るかどうかの確証はできないよ?」
当たり前だがローンのリュウコツ覚醒が私が要因であることは飽くまでも仮説、天城や土佐には適用されない可能性もあるのだ。
「ご協力を確約できれば問題ありません」
「元より他に方法がない以上、覚悟の上です」
そんな覚悟ガンギマリな眼でこっち見ないでぇ〜!
結論からいうと天城と土佐の覚醒処置は問題なく完了できた。
艤装や船体顕現に不調を起こしていた土佐はかつての不調が嘘のように戦闘が可能になった。
元々身体能力に異常をきたしていた天城は戦闘こそまだ出来ないが、以前までに比べるまでもなく快調に進んでいる。
赤城からは泣いて感謝されるも、正直自身が特別何かした訳ではないので内心複雑ではある………。
それよりも今回の件で私自身の特異性について判明したことがあった。
それは“リュウコツに刻まれたカンレキの補完”ではないかというものだ。
ローンの場合はそもそもカンレキを持たないため実感がなかったようだが、天城や土佐が言うには
「指揮官と繋がっていると欠落したものが埋まっていくような充足感がある」
というのだ。
アズールレーン側の指揮官マクスウェル・ノアで同様のことが発生した記録がないため私だけの特異性であるとのこと。
…………えへへ、私だけの、特別な力。
自身にしかない価値、換えの効かない能力……!
自分は、このレッドアクシズで
唯一無二の能力を持つ優越感よりも自分を慕ってくれているKAN-SEN達の役に立ててることに喜びを憶えた。
………うん、喜びは、憶えたんだよ?
「指揮官さまぁ~♡やはり大鳳には貴女様の存在こそが全てですわぁ〜♡」
「う、うん、ありがとね……」
現在進行系で特大のお胸様を押し付けながら頬を擦り合わせてきているのは重桜の新鋭KAN-SEN【大鳳】。
装甲空母という他空母とは違うアプローチをしたリュウコツを持つ空母KAN-SENなのだが、刻まれたカンレキが異常に少なかった。
そのためか戦闘知識と艦載機運用能力に欠落や不備があり、他の空母KAN-SENとの連携などに支障をきたしていた。
同じような不備を持っていたとして戦艦KAN-SEN【紀伊】や空母KAN-SEN【信濃】らと共に重桜本国で不備の改善をしていたが、天城達の覚醒と同様に問題点であったカンレキが補完された。
特に大鳳の能力上昇は凄まじく、かつては式神形態さえ使えずにいたのが式神形態では現最強格の一人だ。
あの戦闘狂の加賀が本気の殺し合いを所望しようとして位だ*1、まさに底辺から頂点に一気に駆け上がったと言えるだろう。
自分のおかげで開花できたと人一倍、いや十倍くらい?懐いてくれているというか崇拝されてるというか……。
とにかくスキンシップが激しく、他陣営のKAN-SENらにも睨みを効かせたりと色々と困っている。
かと言ってこう見えてメンタルがステンドグラスよりも繊細な大鳳、下手に注意や叱責をしようものなら出撃不可なまでにテンションが急降下するし……。
メンタル回復にしても付きっきりのケアをしないといけなくなるので結構大変だったりする。
ただ幸いなのは私に迷惑をかけてる自覚はあり、現在の依存状態は駄目というのは解ってるようなので、ゆっくりと改善していくしかないかなぁ……。
ダカラネ、ローン?ソンナニコワイエガオヲムケナイデクダサイ、オネガイシマス……。
レッドアクシズ内の戦力の改善と増強ができたことで組織に所属して初の大規模作戦が発令された。
【セイレーン作戦】、アズールレーン側と共に行う最大規模のセイレーン海域が展開している“特異点”への攻勢作戦。
アズールレーン側とは積極的な交戦は行わないという相互干渉の自粛程度のものではあるが初めての共同作戦でもある。
これによりセイレーン海域にある戦力殲滅に施設拿捕、セイレーン技術の回収・解析を行うというものだ。
この大規模作戦発令に伴い、セイレーン技術を取り入れた鉄血公国のメガフロート型海上要塞【ヴァルハラ】が正式にレッドアクシズ管理下となった。
これにより移動できる前線基地を得たことになり、アズールレーン側よりも優位に作戦を進めることが可能となった。
当然、アズールレーン側の一部の人間は脅威と判断し、相互干渉自粛の名目も無視して攻略を提言した者もいたそうだ。
まぁ、結局は攻略にかかる戦力リソースの消費とリスク・リターンが見合わないとして却下されたようだけど。
そもそもアズールレーン側とは組織的に"対立"はしていてもセイレーンのように"敵対"ではないのだから「脅威だから」というのも間違ってるような気もする。
手段や思想は違えど、両組織の最終目標は〘人類がセイレーンに勝つこと〙なのだから。
当然だが海上要塞が移動する先は敵の勢力圏、セイレーンの襲撃などは当然発生はすると予測するまでもなく理解していたことである。
………うん、解ってたよ?でもね?流石に色々と可笑しいとは思うんだ。
なんで自我持ちの人型セイレーンが周一スパンで小規模襲撃してくるの……?(汗)
しかもそれなりに戦闘はするも施設への被害は軽微、人的被害は軽傷程度。
そう、襲撃回数は多いのにどう考えても被害が少な過ぎるのだ。
まるで様子見というか襲撃自体がことのついでで別の目的があるような……?
テスター『あれがオブザーバーの“実験体”か。指揮能力や判断能力には特筆するようなモノ無いようだが?』
オミッター『だね。オブザーバーが珍しくご執心な割になんか肩透かしな感じ〜?』
ピュリファイアー『そお?私は気に入ってるけどね。特定KAN-SENのリュウコツへの干渉能力とか今までの“適合者”にはなかったし』
コンパイラー『観察方法やアプローチの多様化が必要。アビータたちにも情報を共有』
ピュリファイアー『接触を促すのはいいけど、加減間違えて“実験体”潰しちゃわない?』
オブザーバー『………その程度で潰れるなら、その程度の価値よ』
ピュリファイアー『(おや?)う〜ん、なら私が観察ついでに張り付くよ。万一死にかけたら対象に干渉させてもらうってことで!』
オブザーバー『そうね、私は異論ないわ。他は?』
テスター『好きにすればいい』
オミッター『異議なーし!』
コンパイラー『了承する』
ピュリファイアー『満場一致、可決だね!そんじゃ好きにやらせてもらうとしましょうか!』
ピュリっち「というわけで!悪のセイレーンから離反した正義のセイレーン!ピュリっちだよ!」
KAN-SEN達「「「「「は?」」」」」
基地職員達「「「「「はぁ〜!?」」」」」」
カグヤ「…………キュ〜」バタンッ
ピュリっち「アハハハッ、今後ともヨロ〜!」
設定補足
カグヤ→そのまま【竹取物語】の輝夜姫より引用
『夜を輝かせるような子になってほしい』という思いを込めて重桜の母親が名付けた。
エムブラ→北欧神話の【最初の男女】“アスク”と“エムブラ”から引用。
元々は鉄血公国建国の一翼を担った大エウロア帝国時代の旧家。
貴族制度の廃止と共に家名自体が形骸化したものの建国史に名が載っているため、鉄血公国現存する最古の家名となる。