衣装も叡智なものばかりで嬉しい限りです。
………それはそうとここでは指揮官不在のためレッドアクシズ所属KAN-SEN達のテンションは常に疲労状態(白目)
[海上要塞ヴァルハラ 食堂区画]
Sideウォルター・フェン
エムブラ指揮官が不在になって早2週間、混乱の坩堝とかしていた要塞も今は落ち着いてきた……、表面的には。
当然だが明らかにKAN-SEN達のモチベーションが急落しているのは誰の目にも明らかであった。
そのせいで普段なら賑やかな食堂もKAN-SENらは疎らであり、職員らも腫れ物扱いで余計に静かだ。
「このままでは業務への支障もでかねん。やはりこのままではマズイな……」
「チビっ子共も見るからに元気なくてな……、見てらんねぇよ」
「指揮官の嬢ちゃんに傾倒してた連中もギリギリ踏みとどまってるが、だいぶ不安定だぞ」
ランディとグレンも状況の深刻さを理解しつつも根本的な解決策が無い、いや正確には“解決策である指揮官がいない状況”に頭を悩ませている。
「てか指揮官の嬢ちゃんはなんで戻ってこねぇーんだよ?忙しいにしろ一時帰国くらい融通効くだろ」
「補佐のサディアKAN-SEN達は先に返しちまったし、定期連絡も事務的な最低限の連絡なんだろ?」
「ああ…、明らかに普段のエムブラ指揮官らしくない行動だ。それに此方からの連絡は一切繋がらない状況なのも……」
「セイレーンの仕業で、ほぼ確定ぽいしな」
最初こそグラメウス大陸で発生したように太陽風が原因で一時的に通信が繋がらないと思われていたが、その後も継続して通信が繋がらず向こうからの定期連絡だけは一方的に繋がるという状態。
流石におかしいとは気付き、護衛に同伴しているセイレーンの仕業ではないかと推測。
そのためピュリファイアーかオブザーバーに確認しようとするもどちらも不在で連絡もとれず。
仕方なく要塞に常駐するエクセキューター達に状況説明を求めるも「質問への応答許可が下りない」と断られたという。
「この非常時に留守とか、あいつらまた悪巧みしてるんじゃないだろうな?」
「いや、それはいくらなんでも邪推が過ぎねぇか?ついこの間だってグラメウス大陸のナントカて国のお姫様を保護したとあったじゃねぇか」
グレンの憶測にランディが擁護しようとする。
ランディの把握してる内容が微妙に間違っているのでそれを指定しつつ補足する。
「鬼人族の国ヘイスカネン、しかも姫ではなく巫女の件だな。アレについては政治的な問題が絡んでるからあまり話題に出すな」
「え?そうなのか!?」
ランディが驚くのを見て頭を痛める。というか教えた時にあまり口外するなと言ったはずなのたが……、たぶん忘れてるな。
グラメウス大陸で発見されたヘイスカネン国、鬼人族単一の種族国家であり件の巫女は国の防衛の要である"結界"を維持する任をしていた。
そしてその巫女が攫われたのが原因でエスペラント王国を襲撃していた首魁の尖兵として利用されていたらしい。
そしてその首魁であった有翼人の国【アニュンリール皇国】を“たまたま”セイレーンらが発見し、現地での“騒動”の末に意識不明状態の巫女を“保護”したとのことだ。
エスペラント王国を襲撃していた首魁はかつて存在した【魔帝】と呼ばれる魔法文明の崇拝者の組織であり《魔帝の技術を復活させて自分達が新たな世界の支配者になる!》を掲げるかなりヤバイテロリストだったらしい。
らしい、と曖昧なのはセイレーンからの報告だけで犯人の確保に失敗しているからだ。
現地での“騒動”で追い詰められたテロリストが拠点としていた遺跡諸共自爆、辛うじて確保できた者等も服毒自殺してしまい生存者はゼロだったそうだ。
報告を受けた北方連合も本来であれば現地に調査団でも派遣しそうなものだが、アンニュンリール皇国から断られたそうだ。
その理由というのが中々に踏み込みづらい内容であり……
『我々はかつて君臨していた魔帝の光翼人と同じ"翼を持つ人種"というだけで長い年月酷い差別を受けてきました……。そしてこの辺境地は我ら祖先が数百年の放浪の末にようやく手に入れた安住の地なのです!
今でこそ有翼人種への差別は風化こそしましたが此度の騒動が他国へ伝われば、我々は再び【魔帝の眷属】と呼ばれ今度こそ根絶やしにされるやもしれません!
もう魔帝などという過去の遺物に我々は振り回されたくないのです!どうか、どうか……!』
セイレーンに連れられてきた皇国の代表は涙を流しながら地に頭を伏せて懇願したそうだ。
北方連合もその国の成り立ちが極寒の地へ追放刑に等しい扱いで送られた労働者らが決起して誕生したこともあり、同情的になってしまったらしい。
セイレーンからの報告でも現地の文明発展具合はパーパルディア皇国未満であり、あくまでテロリストだけが極端に高度な文明を使っていただけとのこと。
当然被害を受けたエスペラント王国とヘイスカネン側は対応に難色を示したが、エスペラント王国はそもそも自分達の先祖が有翼人種である彼らを差別して迫害したことが遠因になっていると判断したのかあまり強くは出れなかったようだ。
件の巫女も攫われてた後の記憶がほぼ無くなっている以外に異常はなく、ヘイスカネン側もあっさりと巫女を攫われた自身等の不甲斐なさもあったと追求を断念したとのこと。
無論このような対応が出来たのは情報が両国の一部でのみ共有されたからであり、一般市民までに伝わっていたら大きく揉めただろう。
そのため表向きには『両国を襲撃した犯人等は追撃戦にて死亡、その際にヘイスカネンの巫女の身柄を確保した』ということになっている。
「とにかくセイレーンが悪巧みしている可能性は高いが、ご執心しているエムブラ指揮官の不利益になるようなことは恐らくしないだろう……と信じるしか無い」
「断言できねぇのが怖えよ……」
一軍人でしかない自分達にできることなんて限られている。
せめてエムブラ指揮官殿の早期帰還を願うくらいが関の山だ。
[海上要塞ヴァルハラ 執務室]
Side吾妻
空室となって久しい執務室を掃除しながら思わずため息が漏れてしまう。
元々調度品の類は少ない質素気味な部屋が余計に寂しく見える。
「指揮官様……何故ご帰還してくれないのですか……」
確かに組織の若き長として初めての他国との交渉はよい経験にはなるたろうが、本質はKAN-SENの指揮官。
ワガママではあると承知ではあるが、公務よりも我々こそを優先して……。
「いえいえ駄目よ、指揮官の"枷"になるようなことは」
寂しさはあるがカグヤの成長の妨げになるのは彼女を慕っているからこそ許されることでは、無い……。
弱い己の心を叱咤しつつも心にぽかりと穴が空いたような虚無感は消えることはない。
基地機能こそ維持できてるがKAN-SENらの反応も様々だ。
精神年齢が低めの駆逐艦のKAN-SENは元気がなく、小さなミスも多く仕事にも影響が出ている。
精神年齢が比較的高い巡洋艦や大型艦のKAN-SENは“極一部を除いて”仕事の能率はそこまで落ちてはいない、駆逐艦組のフォローに入ってるからいつも通りとはいかないが。
その極一部というのが最もカグヤに影響を受けていたローンと大鳳の二人であり、それに続いて自分達計画艦KAN-SENだ。
ローンは表面上こそ笑顔で仕事をこなしているが、明らかに能率が低下し得意な菓子作りでも凡ミスで駄目にしたり、戦闘訓練自体に参加しないことも多くなった。
大鳳はさらに酷くカグヤがパーパルディア皇国に残留すると報告を受けた時点で泡を吹いて失神、その後は自室から一切出ることなく寝込んでいる……。
そして自分自身を含めた計画艦KAN-SEN全員が何かしらの不調を感じている。
精神が幼いアンカレッジはほぼ毎日「先生に会いたい」と泣いており、シアトルやジョージアが慰めることで何とか大事にはなっていない状態。
白龍とループレヒトは感情の起伏が激しく、口喧嘩になったと思ったら急に自責の念に駆られて落ち込むなどしている。
ロウリア王国に派遣中のマルコ・ポーロに至っては周りから腫れ物扱いされるほど機嫌が最悪らしく、ヴェネトが扱いに苦心しているとの報告もあった。
「正直に言えば、全てを投げ出してカグヤを連れ出したくはありますが……」
恐らく行動に移せば続くKAN-SENは多数集まるだろが、カグヤがそれを本当に望むか?という思いが最後の歯止めとなっている。
未熟であることを自覚するが故に責任感は人一倍なあの子が職務放棄するようなことを喜ぶとは思えない。
それに我々以上にカグヤへの扱いが神経質気味なセイレーン側、ピュリファイアーやオブザーバーが全く行動に移していないのも気にかかる。
本当にカグヤの身に危険が迫っているなら立場や所属に縛られないセイレーン達が黙って見過ごすとは考えづらい。
それこそ彼の国を焼け野原にするのを躊躇うこともあるまい。
皮肉なことだが「セイレーンが動いてないならカグヤの身は“取り敢えずは”安全だろう」というのが各国軍上層部の結論であり、赤城やフリードリヒなどの所属代表KAN-SEN達の意向でもあった。
「………せめて、貴女の言葉を聞きたいわ。カグヤ」
それさえあれば、我々も納得も出来るのに………。
そう思いながら寂しさを紛らわせるように業務に没頭するのであった。
イベントも忙しいが、エックスやアンチエックスの新情報が出るたびに情報整理するのが大変