…………ホントに遅れて申し訳ありません!(土下座)
[ロウリア新共和国近海 サディア・グローリア号 治療室]
Sideレミール
………久々に感じる体の感覚に戸惑いつつも、体が軋み痛みを感じる。
眼を開けるも眩しくてぼんやりとしか風景を認識できない。
「レミール!聞こえるか!?」
………聞き覚えのある声がする。もう聞くことは叶わないと思っていた尊敬する人の声。
「……リ、トリ、さ、ゲホッ!」
「無理に喋らなくてもいい、まずはゆっくり、ゆっくり息を吸え」
頭を撫でられ、安堵を感じると共に“大怪我する直前”のことを思い出し涙が溢れ始める。
「どうした?どこか痛むか?」
「皇国は、もう、だめみたいで、す……」
「………そうか」
そう掠れた声でなんとか言葉を振り絞った。
聞き取りづらくとも言わんとすることは伝わったようで、リットリオ様は残念そうな顔で私の頭を撫でる。
部下が命を賭して届けてくれた報告書には調査した属領の凄惨な状況と私利私欲に狂った貴族達の横領の可能性、そしてそれらの出来事が聖都パールネウスにて改竄、隠蔽されていること。
ここまで根深く聖都が関わってくるのであれば確実に
継承権を失っているとはいえ皇族が率先して腐敗の温床を作り出している事実は間違いない。
かつてリットリオ様が言っていた大エウロア帝国のように、我が祖国はもう自重を支えられないくらいに腐敗してしまっていたのだ……。
「すまないが少し席を外す。レミールは体調を戻すことに専念してくれ。……決して早まったことはするなよ?」
「……は、い」
リットリオ様が言わんとすることは理解できた。
末席とはいえ皇族の血筋、さらには政治の中枢にいた者として生きて責任を果たさなければならないと。
………絶望して自ら死に逃げることは許されないのだ、と。
こんな状況になってようやく皇族としての重責を理解できた自分に自嘲しながらも気を失うように眠りについた。
[サディア・グローリア号 プライベートルーム]
Side“女帝”
リットリオからの調書とレッドアクシズから緊急で上がってきた報告書を見終え、テーブルへと放り投げる。
「やれやれ、眠り姫が目を覚ましたと思えば続けて厄ネタとは……」
カラン、とグラスの中の氷を転がしながら溜息をつく。
リットリオの調書によるとパーパルディアの腐敗が想定以上であり、かつての大帝国時代と同じ轍を踏んでいるようだ。
前皇帝ルディアスの性格を考えるに国内の問題は拡大政策に区切りをつけてから一気に推し進めるつもりだったのだろうが、この腐敗具合をみるにもう手遅れなレベルだ。
完全に併合するにしても一国家として独立させるにも何もかも搾り取られた属領では膨大な援助は必須。
そんな大規模な支援を出来るほどパーパルディアという大国は余裕がない、そもそも拡大政策を続けていたのも国家が自転車操業状態という“止まれない国家運営”を強いられていたからだ。
ルディアス自身、今の“繁栄”が“虚栄”であることに気づいてたかは怪しい……、いや、敢えて目を逸らしていたのやもしれんな。
ルディアスは自信家であり事実秀才ではあるが、それ故に馬鹿や無能の考えが解らないタイプだ。
そのため国家の運営に携わるなら問題ないがトップに向かない人物、そう推測している。
……まぁ能力あるだけ才覚も無かった
正直パーパルディアの現状は歴々の皇帝らの不始末の積み重ねがあり、たまたまルディアスの代で問題が深刻化しただろうからそのへんは多少同情するがな。
………それよりも問題なのはレッドアクシズからの緊急報告書だ。
「《人族に有効かつ強力な洗脳魔法の調査報告》、“コレ”をもっとはやく知っておればなぁ」
こんな特級危険魔法が存在しているなら軽々とカグヤを現地に出任せたりせず、無理にでもパーパルディア側を此方に呼び出す方向に裏工作もしたというのに……!
カグヤが何かしらの洗脳処置を受けたと考えればここ最近の“らしくない”行動にも納得がゆくのだが、そうなると今度は事態を把握してる筈のセイレーンの動向が不可解だ。
「こういう時に限って話が通せるピュリファイアーの奴が留守にしているせいで詰問できる相手おらんし……、こうなればやむを得ないか」
このような状況で派手に動くのは悪手だが手遅れになるのだけは避けねばな。
備え付けの通信装置でヴィットリオ・ヴェネトへと連絡を繋ぐ。
『“女帝”陛下、どうなされましたか?』
「すまんが予定変更だ、強硬手段に出る。
パーパルディアへの賠償交渉に向かうアルタラス使節団の護衛には駐留してるロイヤルKAN-SENらを全て連れて行くように指示してくれ。
愛しのカグヤの不可解な状況を彼女らに直接確認してもらう」
『彼女らをサディアの都合で動かしたとなるとロイヤルと揉めますよ?』
「それは余の仕事だ、気にするな」
『はぁ……了解しました』
ヴェネトには悪いが砲艦外交になろうともカグヤの現状確認、可能であれば無理矢理にでも連れ帰ってもらうとしよう。
[鉄血公国 広報局長官室]
Side“チョビ髭”
諜報員が集めたパ皇の内情はどれも表面的なモノで情報の精度も怪しく参考程度にしかならんな。
「まったく、国交のない文明後進国ではろくに情報収集もできん」
人員を現地に派遣できればもう少しやりようもあるがまだ休戦中であるパ皇に表立って行く手段が限られてるのが痛すぎる。
航空ルートは当然無く、出入り出来る船も帆船ばかりで往復するのも一苦労。
さらにナニをトチ狂ったのかセイレーンが皇都を中心に広域ジャミングしているせいで衛星通信も使えない。
「とりあえずエムブラちゃんがパーパルディアで冷遇されている訳ではないのは幸いか」
何処ぞの宗教の神官服を着せられていると聞いたときはどんな嫌がらせか!と憤慨したがそのおかげで民衆からは信心深いご令嬢と受け入れられてるようなので良しとしよう。
しかし神嫌いのエムブラちゃんが神官服を着せられてるということはやはり
「洗脳ないしそれに近いものか……、まったく魔法とは何でもありだな」
使いようによっては国家を揺るがしかねない劇薬に“情報”を取り扱う身としては頭が痛くなる内容だ。
今後のためにも魔法技術に関する法整備を急がせる必要もありそうだ。
………とりあえず今後のことはどうでもいい、今は目の前の問題の解決だ。
そう決意しながら“とある人物”への直通回線を繋げる。
『あら、広報局長様。どうなされましたか?』
「エムブラちゃんの件、ほぼ“黒”と判断した、どのような手段をとってでも指揮官殿を奪還せよ。
【親衛隊】権限を承認、奪還過程で発生する被害は全てワシが責任を持つ」
『………ご決断に感謝を。コチラも最善を尽くします』
「うむ、頼んだぞ“フリードリヒ
[北方連合 最高連合議会決議室]
Sideソビエツキー・ソユーズ
パーパルディアへの報復という独断専行した同胞らへの対応を決議していた場は、突然舞い込んだ【緊急支援要請】と【現状報告書】により静まり返っていた。
………人間とはここまで醜くなれる生き物なのか。
「勝手に武力侵攻しておきながら本国に支援要請とはふざけてるのかと思ったが……」
「これは、あまりにも……!」
報告内容を見てあまりの惨状に顔を青くする者、義憤に顔を赤くする者と反応は様々だ。
“ささやかな支援”をしていた委員達によると当初の予定ではクーズを占領しそこから属領に混乱を発生させ、パーパルディア本国を食糧難に貶めようとしていたようだ。
ご自慢の魔導機関車による鉄道網はまだデュロ〜エストシラント間一本であり陸路はまだまだ馬車が主流、そして大規模な空輸手段も持たないため内陸方面への進軍速度は亀の如き遅さとなる。
その時間を使って抑圧されてるであろう属領全体の独立意識を刺激し、本国の重い腰を上げさせよと思惑を巡らせていたようだ。
だが蓋を開けてみれば第一目標であるクーズの占領にこそ成功したがあまりにも悲惨な現地の状況に玉砕も覚悟の上だった同志らは恥を忍んで支援要請を上げたという流れだ。
「報告書の最後にもあるが《ここに"人間"なんていなかった。居たのは人の皮を被った"悪魔"どもと死んだ瞳をした"家畜"だった》か……。
魔石鉱山や穀倉地帯では事故死よりも過労死のが当たり前、子供は気まぐれに殺され女は連れ去れて慰み者。
しかもコイツら、“女”なら見境なしか」
統治機構本部にて“保護”された女性の中にはパーパルディアの下級貴族の女軍人も僅かながらいたようだ。
しかもその経緯も上の貴族からの圧力に苦しむ家門を守るために自ら身を差し出した、と。
同じ国の人間でさえこのような扱いを出来るとはどうやらパーパルディアの貴族様は本当に“人間”でさえないようだな……!
「“主席”、いかがなさいますか?」
「…………看過できん事態だな、同志エムブラ殿には申し訳ないが苦しむ彼らを見捨てることはできん」
ああ、貴方ならそう決断するでしょう。
「現時刻を持って戦時体制に移行!我々北方連合は単独にてパーパルディアへの“侵攻”を開始する!」
「了解しました。関係各所への連絡とともに早急に準備を進めます」
どの道、既に賽は投げられているだから。
更新速度上げたいけど、新作モンハンも始めたい……