異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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申し訳ありません、異動やスランプで筆が進まず遅れました。(土下座)


“夢”が覚める時

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラントにある最高級娼館にて、

複数人の美女を侍らせつつも怒号とともに自棄酒を煽る男がいた。

男の名はパーラス、臣民統治機構長であり現在はドミディア公より権限が拡大、事実上皇都治安の全権を任されることになり上級貴族でさえ顔色を伺うような存在である。

 

「クソクソ!生意気な“お飾り娘(カグヤ・エムブラ)”がぁ!」グビグビ

「どうか落ち着いてくださいな」

「そんな勢いでお酒を飲んではお体に触りますわ」

 

高級娼婦達に宥められるもパーラスの機嫌は良くならず、空になった酒瓶を放り捨て苛立ちも隠さずに愚痴を零す。

 

「“幼帝”のお気に入りだからと好き勝手しやがって!城にいる“上玉”をつまみ食いしようとしただけというのに!」

 

パラディス城の使用人らはルディアスが皇帝に即位してすぐに意識改革を推し進めたため、貴族・平民関わらず美人で有能な人材ばかりが選別されたこともあり、パラディス城勤めというだけで社会的ステータスになるほどである。

そのためパーラスとしても前々から目をつけていた使用人らも多く、ルディアスがいなくなった今こそ好機と無理矢理手籠めにしようとしていたのだが………。

 

「それを尻も胸も貧相な小娘如きが!このオレの邪魔するだけでなく恥までかかせやがって!

連れの亜人に手傷まで付けられておめおめと引き下がる羽目になるのんぞ!」グビグビ!!

 

酔っていて多少支離滅裂なことを言っているが、ようは目をつけた使用人を私室に連れ込もうとした所をカグヤに見咎められ、無理を通そうと手を上げたら褐色の亜人(Strength VIII)に力尽くで制圧され手首や腰を痛めるはめになった。

さらにその光景を他の使用人や城内務めの者らに目撃されたことにより自尊心を大いに傷つけられたということだ。

………完全な自業自得である。

 

「皇城に亜人なんて……」「まぁ恐ろしい」「嫌だわぁ」

「ああまったくだ!あの下劣な文明圏外国人ども!お優しい皇帝の威を借りて好き放題だ!」

(……好き放題してるのは貴方では?)(他のお客様からも貴方の愚痴ばっかりよ?)(貴方こそ金と権力だけが取り柄のクセに……)

 

ニコニコ顔で接客する娼婦らもパーラスの愚痴を本気にしてる者はいない。

パーラスは以前より上客ではあるがここ最近横暴が目立つこともあり、娼婦達からは面倒な上客として認識されているが当の本人はまったく気づいてはいなかったりする。

そんな心情なんぞ知る由もなく酒を煽るパーラスが何かを思いついたのか下卑た笑みを浮かべる。

 

「よし、いいことを思いついた!うまくいけば……、ククククッ!」

(((碌でもないこと考えてるんだろうなぁ……)))

 

まぁどうせ自分らには関係ないことだし。と娼婦らはパーラス(金づる)のグラスへ酒を注ぎ言葉巧みに酔い潰させるのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

[エストシラント城 謁見の間]

 

Sideヘリオガ

 

もうすぐ日も暮れようとする時刻、ドミディア公(叔父上)から頼まれパーラスからの謁見願いに応じることになった。

謁見の間には自分とカグヤ、少し離れて叔父上と巨漢の護衛(・・・・・)、広間の真ん中にパーラスとその部下数名、壁沿いに近衛兵とカグヤの部下らが立っている。

統治機構長からわざわざ謁見を請うとは余程のことが発生したのかと思わず緊張してしまう。

 

「皇国の新たなる輝き星にご拝謁出来たこと、誠に感謝いたします」

「世辞はよい、用を申し立てよ」

「ははぁ!実は皇都にて重大な問題が発生していることが判明致しました!」

「なんと、どの様な内容か?」

「恐れながら、陛下の横にいる女狐めの謀略にあります!」

「………え?」

 

思わず横に立つカグヤに顔を向けるが、本人は首を傾げてコチラへと視線を向けてくるだけである。

 

「その女狐は陛下からの寵愛を受けていることを利用し城内でシンパを増やし、更には手駒を使い皇都内にて怪しげな行動をさせていたのです!

これは明らかに我が国を混乱に落としれようとする裏工作に違いありません!」

 

まるで演者の如き大仰な身振りで高らかに宣うパーラス。

城内でシンパを増やしてるというのは彼女の普段の振る舞いが城内の者らから好感を得てるだけでは?と思いつつ、皇都内での怪しげな行動というのはひかかった。

 

「シンパうんぬんはともかく、怪しげな行動とは?」

「は!“信頼おける部下”や“善良なる民衆”からの目撃証言によりますと、夜な夜な“幽霊のような風貌の人影”を皇都の重要施設の近くで見かけたというものと、怪しげな行動を咎めようとした者が“黒い肌の異形”に襲われたというものです!」

 

“幽霊のような風貌”と“黒い肌の異形”という特徴に自身含めた殆どの者らの目線が壁際で竚むカグヤの護衛らへと向く。

異常なまでに色白な彼女らが夜闇に紛れていれば確かに幽霊と違わんだろうし、黒い肌の異形となれば巨大な鉄腕と魚の尾を持つ……確かストレングス、だったか?ではあろう。

視線を向けられた彼女らは何処吹く風と一切反応を見せておらず、身動ぎもなく直立不動を維持している。

まぁ仮にこの場で問い詰めても正直に答えるとは誰も思ってはいないが……。

 

「襲われた、というがどの程度の被害が?」

「幸い襲撃にあった隊員らは軽症ですが、しかし路地裏にて不審死した遺体が複数発見されております」

「そんな……!」

 

国民に被害が出ていることに驚愕し思わずカグヤに目を向けるが、カグヤは状況を把握理解出来ないのか無表情で反応がない。

……もしやカグヤは本当に何も知らず、護衛達が勝手に行動していた?

いや、そもそも本当に護衛達がそんなことをするのか?

付き合いは短いが四六時中カグヤに張り付いてる彼女らが護衛の任を離れるということが想像できないのだが……。

 

「………目撃証言以外の証拠は?」

「残念ながら……、まさか我々をお疑いなのですか!?」

「いや、そういう訳では……」

「目を覚ましてください陛下!その女狐めは陛下の権威を利用しようとしてるのです!」

「しかし、カグヤがそのような非道な行いを指示していたとは考えにくいのだ……」

「……でしたら」

 

言い淀む自分の言葉を聞いたパーラスが不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 


 

 

 

Sideパーラス

 

掛かった!そう確信し思わず口元が吊り上がる。

この甘チャン幼帝が“お飾り娘”を庇おうとするのは想定済み、幼帝のお気に入りを直接どうこうしようとは考えていない。

最初から狙いはこの護衛共だ(・・・・・・・・・・・・・)

 

「でしたらこの怪しき亜人共の身柄を引き渡しては貰えないでしょうか?我々のもとで厳重に監視し、2度と怪しげな行動をさせないようにしましょう」

「それは流石に……」

「そもそも他国の人間が城内に闊歩してる状況に不満を持ってる者も少なくありません。

女狐……失敬、エムブラ殿の護衛についても陛下の御付きや衛兵らを使えば事足りること、どうかご決断を」

 

他国の人間が闊歩、というより亜人らしき不気味な連中がいる状況に不満・不安を持ってる連中がいることは嘘ではない。

今回の皇都内での目撃証言のでっち上げも大金ばら撒いて根回し済み、早々にバレることはないだろう。

 

「むぅ〜、解った。あくまでも一時的な処置として認めよう。カグヤもそれで良いな?」

「……はい」

 

やむを得ないといった表情で幼帝が声を掛けると、表情の抜けきった顔で肯く“お飾り娘”。

その瞬間に勝利を確信する、勝った!勝ったぞ!

お飾り娘めが!どうせ無実を証明出来ればとか甘いことを考えてるのだろうが無駄無駄無駄!

護衛共の身柄さえ確保できれば最早コチラのもの!罪状や状況なんぞ幾らでもでっち上げて“已む無く処置した”ことにすればよい!

ひひひ!身体つきは若干貧相な連中だが顔立ちは悪くない、せいぜい“女”に生まれたことを後悔させてやるさ!

部下らに捕縛の指示をし、暗褐色の亜人の前に立つ。

無表情でコチラを見ているな、精一杯の抵抗のつもりか?哀れなものだ。

生意気な褐色女の顎を掴もうと手を伸ばす。

 

「小生意気なことだ、大人しく縛につきたま……」

「護衛任務に支障をきたすと判断」

 

ミシッと鈍い音とともに腕を掴まれ捻り上げられる!イテテテッ!?!?

 

「ぶ、無礼者!は、離せ!」

「命令に背くのは遺憾、されどこれ以上の干渉は許容不………」

 

殺気も感情も一切含まない暗褐色女の声が唐突に途切れ、ドスンッと倒れ伏した。

傷む腕を押さえながら周りを見れば護衛共が一人の残らず崩れ落ち、光とともに薄くなっていく……。

い、いったい何が起きてるのだ……?

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[鏡面海域深層 【StrengthⅧ】中枢端末保管区]

 

 

唐突に操作していた義体との接続が分断されたことにストレングス(オリジナル)が疑問を生じたと同時にシステムへのクラッキングが始まり、自身の本体が他のアビータ端末とも途絶されていることにも気づく。

そして状況を確認をするまでもなく、この状況を作り出した侵入者が悠然と姿を現す。

 

「何処ぞの“枝”で暗躍してようだけどその方面にリソースを費やしすぎたようね。ご自慢の攻性防壁も形無し、楽させてもらったわ」

「既に他のアビータにも同時襲撃を仕掛けた上で他“主機”への繋がりを隔絶してある。………貴様の“主機”を頂きにきたぞ、【StrengthⅧ】」

 

その場にいたのは複数人のKAN-SENらしき人影、ユニオンのヘレナとエンタープライズに似た姿をしたモノら。

その後ろには重桜の飛龍と隼鷹、ロイヤルのレパルスとハンターに似た姿のモノたち。

彼女らは【META】、メンタルキューブの秘められた禁断の力を扱うモノたちであり、その殆どがセイレーン(アンチエックス)により滅んだ【枝の世界】の生き残りである。

 

「既にこのあたり一帯の支配権は掌握できている、自爆しようとも無意味だ。だから大人しく………」

「……邪魔」

 

自身の台詞を遮るように放ったストレングスの言葉にMETAエンタープライズは違和感を持つ。

機械的な対応が常なストレングスからは考えられない程にその言葉に感情が籠もっていたからだ。

 

「邪魔邪魔邪魔 邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!」

 

怨嗟と言って差し支えないほどの感情剥き出しの敵意というあまりに予想外な反応に僅かに怯むMETAのKAN-SEN達。

ストレングスからしてみれば結果的にとはいえ他アビータ達を出し抜いてカグヤを独占出来ていたというのに、こんな些事(・・・・・)に付き合わせられて感情回路が軋む程に感情が昂っていた。

要するに、端的に言ってストレングスはキレていた(・・・・・)

 

「予定とは少々違うが問題ない、応戦開始せよ」

消去、開始(死ね)

 

一切の合理性なき純然たる“暴力”が解き放たれた。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

騒然とする謁見の間でカグヤは呆然と倒れ伏したストレングスの姿を顔を青褪めさせて見つめている。

普段の彼女であれば義体そのものに何かあってもそこまで取り乱したりほしなかっただろう。

しかしドミディアによる【支配者の瞳】により精神的に疲弊していた彼女にはそこまでの考えが出来るほどの余裕はなかった。

 

また、私の手からだいじなモノが溢れ落ちていく

 

これはアイリス神様を信仰しない不敬者への罰なのだ

 

いやだ、持っていかないで(・・・・・・・・)

 

おねがいです、アイリスさ……

 

———駄目です、我が(かんなぎ)

 

……え?

 

———存在しない神に祈りを捧げる必要はない、その祈りは我にだけ捧げよ

 

………なぜ?

 

———救いを求める祈りも、理不尽への怨恨と憎悪も、全て我にだけ向けよ

 

…………アナタは、だれ?

 

———我は汝のためだけの“神”

 

意味を理解するよりも早くにカグヤの意識は闇へと落ちていく。

金属のように冷たくも優しい揺り籠に身を任せるように……。

 

———今はゆっくり休め、我が巫

 

八対の視線が謁見の間の周囲へと向けられる。

この場における最大戦力たる全身装甲の人外(レオノス)

状況を理解出来ずに困惑する幼き皇帝(ヘリオガ)

まだ分解されていないストレングスを高笑いしながら足蹴にする愚者(パーラス)

そして、我が巫を操り現在の状況を作り出した大罪人(ドミディア)

 

———この【スサノヲ】の手を煩わせたこと、その身で贖え。

 

 

 




カグヤの無神信仰の原因は自分自身の弱い心が敬愛するアイリス神を憎んでしまうから。
見当違いな憎悪を神に向けるくらいなら神を信じないほうがいいという元々は敬虔な信者であった彼女なりのけじめ。

………この件もどこかでしっかり補足したいとは思います。
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