異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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更新が遅くなり本当に申し訳ありません(土下座)




坂を転げ落ちるように

 

 

[セイレーン海域 “オブザーバー”主機補完領域]

 

Sideオブザーバー

 

最悪ね、完全に油断した……。

【StrengthⅧ】を始めとしたアビータ達への同時襲撃は勿論把握はしていた。

推定される【META】の目的とアビータシリーズの戦力でなら多少時間は掛かっても問題はないだろうと安易に思考していたのは早計だったようだ。

【スサノヲ事件】以降、根幹部への低深度侵食(・・・・・)を受けてからは“スサノヲ本体”が演算端末に利用していること、そしてカグヤの状態観察のために外部からの接続管理が甘くなっていた……!

招いた覚えもない侵入者は嘲笑うかのように抵抗も出来ない私の顔を覗き込む。

 

「案外呆気なく終わりそうだね、オブザーバー?」

「貴女、“何処”の【パーミャチ・メルクーリヤ】かしら?」

 

北方連合KAN-SEN特有の寒冷地軍装は黒く染まっており、目元には暗い光が灯っている。

口調こそ明るく本来の【パーミャチ・メルクーリヤ】と違いはなさそうだが、言葉の端々にコチラへの負の感情が滲み出ている。

おそらくは、何処ぞの枝世界の生き残りだろうが同じ境遇のMETAとも雰囲気がどこか違う。

 

「………“何処”のねぇ。あんた達が勝手に付けてたのは管理記号なんて知らないわよ」

「それは、そうねぇ。愚問だっ…、ぐぅ!」

 

衝撃、METAメルクーリヤがこちらを足蹴にし、ロクに動けない状態の身体が受け身も取れずに地面に転がる。

 

「時間稼ぎのつもり?無駄なことせずに、いい加減諦めろよ」

「ホントに無駄かしら?焦ってるのは貴女のほうでしょ?」

「減らず口……!まぁいいや、最後までその無様な姿を拝んでいてあげる」

 

余裕を取り戻したMETAメルクーリヤは本来の目的である主機の権限侵食が更に加速する。

主機への侵入を許した時点で完全に隔離さたため外部への連絡手段は無し、そうなると外部の者が異変に気付くかになるが……。

ピュリファイアーとオミッターはMETAと交戦中のアビータ達の状況確認、コンパイラーは新世界で情報統制と太陽神対策の検討中。

テスターは空席になったカグヤ護衛の任を引き継ぐためにパーパルディアへ移動中。

下層端末全員が何かしらの対応中だが、直ぐにとはいかずとも時間を置けば定期連絡が途絶えたことには気付くだろう。

………いえ、駄目ね。仮に異変に気づいたとしても隔離された主機への侵入方法が無い。

唯一、カグヤであれば私の主機へのアクセス権限を持っているから何とかなるはずだけど……。

そのカグヤは現在正常な状態ではない、救出よりも状況の観察を優先した己の不始末だ。

 

「ふふ、無様、ね」

「………今頃気づいた訳?」

 

METAメルクーリヤは苛立ちを募らせつつも油断なくこちらの権限を次々と奪っていく。

せめて、新世界とカグヤに関する情報は死守したいがそれも難しいだろう。

 

…………結局自分はカグヤのことを替えの効かない実験対象(モルモット)程度にしか思っていなかったのだろうか?

 

 

ズキリッ、と痛みを感じたのは侵食を受けているせいだろう。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

[皇都エストシラント パラディス城 離宮]

 

Sideヘリオガ

 

「——————」

「カグヤ、まだ目を覚さないか……」

 

謁見の間での騒動より次の朝、僕は使用人らの協力してもらいながら離宮にてカグヤを付きっきりで看病していた。

カグヤを拘束をしようとした叔父上を払い除けての行動だったため、何かしらの強硬手段をされないか不安であったが今のところは動きはなかった。

あの黒い蛇が消える寸前に言い残した“死に物狂いで守れ”という言伝、正直言われるまでも無い。

これまで支えてくれたカグヤは今こそ自分が守るんだ!

カグヤを慕っている使用人は確かに多いが叔父上の強権に抵抗してまでという者は流石にごく少数。

せめてカグヤの護衛達がいればよかったが、あの騒ぎで光と共に消えてそれっきり。

 

「今、カグヤを守れるのは自分だけ……。だから、頑張らなければ」

 

仮にも“皇帝”である自分がいかに叔父上頼みだったのが痛感しつつもなんとかせねばと頭を捻っていると、近衛の一人が慌てた様子で部屋へと入ってくる。

 

「礼もなしとは、何事か」

「ご無礼申し訳ありません!皇帝陛下!しかし緊急事態のため処罰な後ほどで願います!」

 

顔を真っ青にした近衛の姿にイヤな予感がする。

 

「近海を哨戒していた警備艦隊より領海に侵入した大型船舶を発見の報告を最後に通信が途絶!また沿岸の見張り塔から“識別不明の船舶接近の可能性あり”の報告も上がっております!」

「………は?」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[皇都エストシラント 第3外務局]

 

Sideタール

 

繰り上げ昇進とはいえ念願の外務局長になった時は秘蔵のワインボトルを開けてしまうくらいには舞い上がっていたが、そんな浅はかな考えはすでに過去のモノ。

現在局長室にて報告書を睨みながら顔を赤に青にと大忙しであった。

 

「あの愚か者に、私の人生まで狂わさせるのか……!?」

 

北方連合との魔法資源交易という重要案件、身から出た錆とはいえあんな男を行かせるのではなかった!

見栄を張るために軽い気持ちでした借金が膨れ上がり、首が回らなくなるくらいの負債となったのをツテがあると負債元に口利きしてくれたのがカストであった。

そのため多少のおイタは自分が揉み消していたのだが、こんなものどうしようもないぞ!?

 

「元奴隷たちが興した国と公言してるんだぞ!?そんな国に奴隷を献上しろとか正気か!?

しかも要求したのが寄りにもって北方連合の重鎮だと!?」

 

周りの属国が次々とレッドアクシズへと靡いてただでさえ第3外務局の存在意義が問われてるというのに、このままでは局の取り潰しさえ起きかねん!

 

「もはや隠し立ても不可能か、なんとか問題が深刻化する前に事を収めねば……」

バンッ!「局長!緊急事態です!」

 

乱暴に開けられた扉の音に顔を上げるとそこには1枚の紙を持った顔面蒼白の部下の姿、猛烈に嫌な予感がする!?

 

「な、何事かね?私は今忙しいのだが……」

「第2外務局よりリーム王国大使館経由で北方連合からの宣戦布告文書が送られてきたと!」

「は、はぁ〜!?馬鹿を言え!あいつら我がサディア帝国(同じ連盟国)との和平交渉中だということを知らんわけではないだろ!?」

「そのサディア帝国より和平交渉の取り消しの文書も届いております!」

「なん、だと?」

「理由としましては交渉内容の不備などが指摘されてますが一番の理由はレッドアクシズの指揮官が問題のようです!」

 

なんだソレは?まさか“お飾りの指揮官殿”には本当に大した権限がなかったとでもいうのか!?

 

「あの小娘、本当にただのお飾りだったのか!?」

「違います!寧ろその逆です!『レッドアクシズ内における重要決定に指揮官不在では応じれない』……つまりエムブラ指揮官が不在では最終決議が進まないとのことですよ!」

「そんな、それでは……!?」

「組織内で各国代表と並ぶ権限をお持ちということでしょう……」

 

馬鹿を言え!それでは私の娘と大して歳の変わらんような小娘が、国の代表どもが顔色をうかがう程度の権限を持っているということではないか!?

 

「しかしあの和平交渉の内容を了承したのはあの小娘自身なんだぞ!?ならなんの問題があるというのだ!?」

「……帰還してないこと自体を問題視してるあたり、もしや我々が不当にエムブラ指揮官を拘束していると取られたのでは?」

「ふざけるな!?本人が進んで在中してるのに何故そんな結論になる!?」

「しかしエムブラ指揮官も自身の不在で決議が降りないのは理解してるはずです。もしや本当に脅しているのでは……」

「そんな馬鹿なこと……」

 

いや、そういえば先日皇城で騒ぎがあって以来、あの“不気味な護衛”どもの姿をパタリと見なくなったな……。

ええい!何が起きているというのだ!?

もはや握り潰すことはおろか誤魔化しも不可能だ……、このままでは今の地位を失うどころか一族まとめて裁かれかねない!

こうなれば家族だけでも国外へ逃がせないか?と頭を悩ませていた時、

 

 

 

ドゴンッ!!!!!

 

 

 

凄まじい衝撃音とともに地面が揺れ動いた。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

※三人称

 

 

[パーパルディア領海 沖合]

 

海に浮かぶ先ほどまで形を保っていた木造船の残骸をその巨大な艦首で割りながら悠然と進む双胴の異形空母【Queen】。

その空母から爆装したセイレーン艦載機が次々に発艦していく。

その船体の上、艤装を展開した【テスター】が薄笑いを浮かべながら遥か先の陸地、フィルアデス大陸の陸地を見つめる。

 

———目標地点到達、艦隊の転送開始。

 

———駆逐艦【Pawn】展開

 

———軽巡洋艦【Knight】展開

 

———重巡洋艦【Bishop】展開

 

空中に光の輪のようなものが浮かび上がるとそこから漆黒の船体が乱雑に海面へと次々に落下していく、まるで中空から船が生えてくるかのような異常な光景。

そんな光景をさも当然かと言わんばかりにテスターは手を振り号令を出す。

 

———侵攻開始、目標パーパルディア皇国“沿岸部主要都市ならび要所全域”

 

現出した数十隻の艦がパーパルディア皇国の沿岸全域へと散り散りに展開していくのを眺めながらテスターは改めて視線を遥か先の沿岸、皇都エストシラントがある方へと向ける。

 

———ああ、カグヤ。貴女は無意味な破壊行為をする自分を認識したとき、彼女は自分のことを思い出してくれるだろうか?

 

 

———初めて会った時のように可愛らしい敵意を向けてくれるだろうか?

 

 

———それとも憎悪を?軽蔑を?このさいドレデモイイ……

 

 

———早く貴女に【テスター(ワタシ)】を認識させたい。

 

 

———ワタシイガイ、ナニモミエナクナルクライニ“貴女”ヲクギツケニシタイワ

 

 

薄笑いを浮かべるテスターの瞳はどす黒い狂気を煮え滾らせていた。

 

 

テスター麾下セイレーン打撃艦隊、侵攻開始

 

 

侵攻目標、パーパルディア沿岸部要衝全域

 

 

 

 

 




ちなみに最後のセイレーン量産艦の出現シーンはアニメ版のセイレーン艦召喚時のをイメージしてもらえれば幸いです。
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