異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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ドレイクの強化が来ましたね!


苦悩と新たな道

 

[城塞都市トルメス トルメス城客室]

 

 Sideカグヤ

 

城の一室を借りてクロンシュタットにこの世界についてと転移してからのあれこれを説明していた。

 

「………ようするにここは異世界なのね!あれ?私帰れるの!?」

「そこは大丈夫だと思いますよ。

オブザーバーがこの世界の座標を記録してくれたから安定した行き来もじきにできる予定です」

「それなら安心ね!」

 

彼女、聡明ではあるのだが深く物事を考えないようで妙に脳筋なところがある、気が合いそう。

魔王軍を文字通り薙ぎ払いオブザーバーとも再会した後、上空に開いていた鏡面海域はすぐに閉じた。

地上に残っていたドレイクから住民がパニックを起こしていると連絡があったからだ。

閉じてしまって大丈夫かと心配だったが、オブザーバーとピュリ姉セイレーン側でこの世界を観測できたため問題ないとのこと。

オブザーバーは向こうの世界に連絡係を兼ねて一端帰還していった。

その時にクロンシュタットも一緒連れて行ってあげればよかったのだが、

本人はこの状況に好奇心が勝ったのかまだこちらに残ると言ったためこちらに残留した。

あれこれとクロンシュタットと話していると、ノックの音がしたのでシアトルが対応してくれた。

 

「はいはい〜。あ、あん時のオッチャンじゃん!

……へ?騎士団長?指揮か〜ん!お客さん来たよ!」

 

シアトルが数名の男性を連れて部屋に入ってきた。

 

「失礼致します、トルメスの騎士団長のアジズともうします」

「これはご丁寧に、レッドアクシズのカグヤ・エムブラです。」

「いえ、こちらこそ。……申し訳ないが少々お聞きしたいことがありまして」

 

なんだろう?なんかすごく畏まって及び腰な感じなのだけど……?

 

「先程の空の大穴と大蛇についてなのですが、その、貴女様が関係していると報告を受けたので、確認してをしたいのですが……」

 

………おう、そりゃそうだよ、聞かれるよね普通!

隠してもしょうがないし正直に話すとしますか。

 

〜経緯説明中〜

 

………説明を終えたら騎士団長さんが今にも倒れそうなんだけど。

 

「あ、あれが貴女様の仕業だったので……!?」

「………驚かせたことは謝罪します。

しかし私もこの力で無辜の民を傷つけるようなことはしないと誓います」

「………解りました、信じましょう。

それと申し訳ありませんがトルメス復興の助力をいただけると伺ったのですが……?」

「ええ勿論です。トーパ王国に正式に許可が戴ければになりますが」

「おお!有り難い!さすがに海岸まで伸びた”アレ”を埋め直す方法に頭を痛めていたので」

「ホントニモウシワケアリマセン」

 

………帰ったら工兵部隊を編成しないとなぁ〜。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[重桜本土 首都島]

 

Side瑞鶴

 

「ああもう!あの触手女どこ行ったのよ!?」

 

アズールレーン本部より、研究施設の上空に鏡面海域が開いてスサノヲが行方知れずになったと連絡があったのはついさっきだ。

セイレーン側でなにかやらかしてるのではないか?

と思いオブザーバーを問い詰めようとしたのにどこにも居やしない!

頭にくる!いつかあの触手をゲソ焼きにしてやる!

 

「オブザーバー!何処にい……」

「えい♪」

「うひゃ!☆■◇□☆!?!?」

 

く、首筋と股下に何か気色悪い感触が〜!!!

いやちょっと!服の中弄るな!下着ずらそうとするなぁ!!!!!

 

「この、オブザーバー!いい加減にしなさいよね!」

「カグヤ見つけたわよ」

「あ、そう!遺言はそれで……え?」

 

ニコニコと満面の笑みを浮かべるオブザーバーが今トンデモナイこと言わなかった?

 

「え?カグヤ?」

「ええ、カグヤが鏡面海域を開いたのよ。

おかげで発見出来たわ」

「あ、ああ!」

 

言葉の意味を理解し始めて涙が溢れてきた。

良かった、生きてた!またカグヤに会えるんだ!

 

「とりあえず私はビスマルクとヴェネトにも伝えて来るから、その間に貴女には伝達係とお願いがあるのよ」

「もちろんよ!みんな喜ぶわ!で、お願いて何よ?」

「この近くに転送ゲートを造るのに重桜のお偉い方の許可を貰えない?」

「………転送ゲート?」

「ええ、重桜にとっても新しい開拓先が欲しいでしょ?」

 

………待って、絶対話が飛んでる。

そもそもカグヤ達は今どこに居るのよ?

 

「ねぇカグヤは?こっちに戻ってきてないの?」

「まだ戻ってきてはいないわよ。異世界で色々頑張ってるみたいでね」

「………異世界?」

「そう、たまにコッチの世界に迷い込んできてた人達とも違う世界に飛ばされてたわ」

 

………これは説明が大変そうな内容だ。

とりあえず長門様と赤城先輩に報告してから他の皆に連絡しよう。

 

「じゃ、私は行くわね」(ヒラヒラ~)

「ええ、ビスマルクとヴェネトにも……!」

 

オブザーバーの触手が見覚えのある布切れをヒラヒラさせながら虚空へと消えていく。

ちょっ!いつの間に!?私の下着返せ〜!

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[鉄血公国 レッドアクシズ鉄血本部]

 

Sideビスマルク

 

「わざわざ来てもらってすまんなヴェネト、そちらのKAN-SEN達の様子はどうだ?」

「正直そろそろキツイはね。ザラやポーラも無理してるし他の子達も精神的に滅入ってる」

「鉄血も似たようなものだな。寂しさを紛らわすために過酷な訓練や任務をやっている状態だ」

「このままだといずれパンクするわね……」

 

ヴェネトが溜息をついて思い悩んでいるが、残念ながら今回はそれが本題ではないのだ。

 

「………北方連合の”南進”はほぼ確定か」

「ええ、これ以上は交渉で止めるのは無理ね」

「断言してくれるな、交渉窓口は?」

「向こうの"主席"が最後まで付き合ってくれるとは約束してくれたわ」

「………止まる気はないか」

「止められないわよ、止めたら遠くない未来に少なくない数の餓死者と凍死者が出る。

北方連合のKAN-SEN達も腹を決めたようよ?」

 

重い空気が漂う。ただでさえ物量で圧倒されてる状態で相手は死兵、死物狂いで攻めてくる大軍勢など想像もしたくない。

敵の狙いは鉄血の資源鉱山とサディアの大穀倉地帯、どちらも国の生命線だ。

そうなれば我々も決死の覚悟で防衛しなければならない。

間違いなく地獄絵図が広がることになる。

しかも問題なのは北方連合の陸軍の規模と装備だ。

詳しくは解っていないが新型WAPと大型陸上兵器を大量に投入してくるたろうとのことだ。

鉄血とサディア帝国の空母KAN-SENが殆どいない現状では海上戦力でも負けているため、

海上からも猛攻を受ける可能性が高い。

重桜に航空戦力を頼むしかないが、赤城が倒れたと聞いている以上あまり期待はできない。

下手すると重桜のKAN-SEN達が殆ど機能していない可能性さえある状況だ。

 

「なんとか衝突を回避できないか?」

「うちと鉄血が身を削っての輸出ができるならなんとかなるわね……」

「さすがに無理だ、"皇帝"陛下も世論も納得しない」

「うちだってこれ以上北方連合に融通するのは無理よ。

アイリスや鉄血の輸出を止めれないし、私達だって飢えたくはないわ」

 

最早衝突は避けられないと想定して話を続ける。

 

「猶予はどの程度だと思う?」

「なけなしの資材で軍を拡張してるから1年以内に動くわよ」

「………軍の拡張をしなければ問題なかったのではないか?」

「しなくても5年後には破綻する、と予想したようね。

それを見越して軍拡を推し進めた」

「………そして今、レッドアクシズのKAN-SEN達が機能不全に陥っている」

「明日に宣戦布告されたっておかしくない状況だわ」

 

ヴェネトが顔を伏せる。

………最悪だ。セイレーン大戦が終わったからこそ、人類同士が争う”余裕”が生まれてしまっている。

思い悩んでいると突然後ろから声をかけられる

 

「あらあら、お通夜みたいな空気ね」

「オブザーバーか……、今はお前の相手をしている余裕はないぞ?」

「あら残念、朗報を持ってきたのに」

「朗報だと?」

「……その様子だと本当に知らないみたいね」

 

オブザーバーが腑抜けてるわね、とため息をつく。

 

「アズールレーン本部から連絡は?」

「いや、聞いてないが?」

「私も聞いてないけど……?」

「スサノヲが研究施設から消失したわよ」

「なぁ!?」

「嘘でしょ!?」

「嘘じゃないわよ、カグヤが鏡面海域を開いたの。

もちろん、カグヤは無事よ」

 

思わず乾いた笑いが出そうになる。

これ程の大事に気づいていなかったとは、腑抜けてると言われても文句は言えない。

ヴェネトは心配そうに尋ねる。

 

「カグヤは無事って、スサノヲを呼んだのは実験か何か?」

「いえ?詳しくは知らないけどカグヤを本気で怒らせたお馬鹿さんがいたみたいよ」

「そうか、その愚か者に感謝しなければな」

 

その愚か者がいなければカグヤを見つけることは困難だっただろう。

だがこれでもう少し時間を稼げる!

レッドアクシズが健在とわかれば慎重な"主席"はギリギリまで準備をすることになるだろう。

だが続いてオブザーバーが口にした言葉に思わず開いた口が塞がらないことになる。

 

「ねぇ、異世界を開拓する気はない?」

「は?」「へ?」

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

 

[パーパルディア皇国 皇都エストシラント]

 

Sideリットリオ

 

ロウリアからシオン王国を経由してようやくパーパルディアの首都、エストシラントに到着した。

やれやれ、KAN-SENである私が木造船に揺られて密入国紛いの方法で来ることになろうとは………。

 

「出来ることなら次は経験したくない旅だったな。

今回である程度の成果を出したいな」

 

そう思いながら港を歩いているのだが、すれ違う人全てに先程から珍妙な目で見られる。

……ふむ、髪色がそこまで珍しかったか?

 

「見てみて!とんでも無い美人さんよ!」

「嫉妬する気も失せるわね……」

「おい、あの女口説こうぜ!」

「やめとけ馬鹿、多分どっかの王族だぞ」

「どこの国のだ?」

「カ、カッコイイ……!」

 

いかんな、よくわからないが悪目立ちをしてるようだ。

私は足早に文明圏外国の外交窓口である第3外務局へと向かうのであった。

 

 

Side???

 

この日、第3外務局を訪問したのは唯の気まぐれからであった。

外務局監査室である私はその責務を全うするために抜き打ちで視察をしたりしていた。(他局員にすれば胃に穴が開く思いである)

特に失態を侵したとの報告が上がってはいないがもみ消してる可能性は十分にあり得る。

だからこそ高貴なる皇室の私自らが訪れることで引き締めを行っているのだ。(他局員にすれば以下略)

そう、ここに訪れたのは唯の気まぐれ。

故にこの出会いは運命であったと確信したのだ。

 

「……なんとか取り次ぎは出来ないかね?

シニョリーナ(お嬢さん)?」(キラキラ)

「はひ!?ひゃい、少々お待ちを……!」(顔真っ赤)

 

受付の女性局員が慌てふためいている。

この場にいる人間全てが作業をそっちのけで注目していた。

………あとで軽い処分を言い渡さければならないな。

だがそれも仕方ないと納得せざるをえないほどの存在がそこにいた。

全身を綺羅びやかに飾り、されど動きを阻害しにくいようにされたデザイン。

全てを見抜かんとする朱色の瞳。

陽の光に反射して煌めく翡翠のような髪。

老若男女を魅力する女神の如き美貌。

そしてなによりも滲み出る高貴さと力強さ。

私の理想とする強き女性像そのものが目の前にいた。

呆然と見つめていると、こちらに気付いた女性が振り向いた。

 

「おや?美しきシニョリーナ、どうなされた?」

「わ、私は皇室のレミールだ!その身柄を預からせてもらう!」

 

その場の空気が凍りついた。

女性は首を傾げて困惑している。

………やらかした、私は顔を真っ赤にして耐えるしかなかった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[海上要塞ヴァルハラ 湾港区画]

 

Sideカグヤ

 

カグヤです、トーパ王国から3日ぶりに帰還して早々死にそうです。

 

「ああ、カグヤ!会いたかったわ!」

「カグヤちゃん!お姉ちゃん寂しかったのよ!」

「指揮官!指揮官!し〜き〜か〜ん!!」

「もう離さないのだ〜!」

「ちょっと雪風!もっと寄りなさいよ!?」

 

上から翔鶴、愛宕、夕立、雪風、時雨の5人に全力突撃&締め付け攻撃を受けてます。

写真でしか知らない母さんと父が川の向こうから手を振ってる光景が見える……。

 

「…………ガクッ」(チ~ン)

「ちょっ!?指揮官様が死にかけてる!?」

「貴女達離れなさい」(マジギレ)

 

 

■■■しばらくお待ち下さい■■■

 

 

「危うく死ぬところだった……」

「はい、貴女達反省は?」

「「「「「ゴメンナサイ」」」」」(タンコブ)

 

あ〜体が軋む……。

ローンが力尽くで引き剥がし、5人を正座させた状態で頭に鉄拳を叩き込んでいた。

どうやら私の帰還の少し前にこちらの世界に来ていたらしく、私の姿を見て我慢ができなかったようだ。

奥の方では赤城が天城の腕を抱きしめて喜んでいて、土佐と加賀がその光景を微笑ましく見ている。

他の重桜KAN-SEN達も互いに近況を話し合っていて、時々こっちに気づいたKAN-SENが手を降ってくれている。

見る限り今回来てるのは重桜のメンバーだけかな?

 

「鉄血やサディアのKAN-SENは来てないの?」

「まだ転送ゲートが完成してないのよ」

 

隣のローンに聞いたつもりだったのだが、上から声をかけられたのでそちらを見る。

そこには浮いた艤装に乗ったオブザーバーがこちらを覗き込むような姿勢でいた。

 

「オブザーバーお疲れ様、まだ完成してないというと?」

「ゲートは結構な大きさだから建設にはまだ時間がかかるわ。

今回は重桜のメンバーに急かされて私が連れてきてのよ」

 

なるほど、それで重桜KAN-SENばかりなのか。

しかしそれだけ大規模なゲートを作っているということは………。

 

「上層部は本腰を入れてコッチの世界に進出する気だね」

「それはそうよ、何せこっちの人間からも技術支援が欲しいと歓迎されてるのでしょ?

方や技術発展をしたい、方や新たなフロンティアが欲しい、諦める理由も遠慮する理由も無い」

 

ロデニウス大陸の発展に貢献できるのであれば侵略ではないと思いたいけど……。

侵略、そういえば……?

 

「北方連合の動向は?私がいない間に動きがあった?」

「ありそうだった、が正しいわね。

貴女の生存の情報が向こうにも入ったようで即開戦の機運は無くなったわ」

「それでもこのままだと開戦は避けられないか……。

クロンシュタット!ちょっと来て!」

「は〜い!何?もしかして”例の件”?」

「うん、悪いけど一刻も早く最高連合委員会に伝えて欲しい」

「ええ!私も貴女が"同志"になれるように頑張るわね!

オブザーバー!北方連合まで送ってて!」

「私は運び屋じゃあないんだけど、私も居たほうが話が早いししょうがないわね」

 

クロンシュタットがオブザーバーの艤装に掴まると同時に背後に虚空が広がりそのまま消えてしまった。

話が見えないローンが首を傾げながら私に質問してきた。

 

「一体どういうこと?」

「う〜ん、簡単に言うとね?」

 

私は自分でもわかるほど悪どい顔をしていることを自覚する。

悪いね、ノア指揮官殿。

 

「北方連合を引き抜くの」

 

私は私の道を行くよ。

 

 




レミールとリットリオの未来はいかに!

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