女王の女王   作:アスランLS

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コロナによる仕事のゴタゴタもある程度落ち着き、ようやく執筆を再開できたものの、よう実にドはまりしてしまい見切り発車で新シリーズをスタートさせてしまいました……バカテス、このすばの作品が完結していないのに、自分の移り気の早さに我ながらほとほと呆れます……。

これまでの経験から、オリキャラを増やし過ぎると無駄に設定を作り込み過ぎて収集がつかなくなるとわかったので、今回の作品はオリキャラは1~2人にしようと思います。


プロローグ

俺の名は本条桐葉(ほんじょう きりは)

この春から全国でも有数の名門私立へと入学する、ピカピカの中学一年生だ。ほらそこ、人のこと指差してボンボンとか温室育ちとか言わない。行儀悪いでしょうが。

唐突だが俺は長年、ある疑問を抱えながら日々を健やかに過ごしている。この疑問を始めに抱いたのはいつだったかな?去年か一昨年か、それよりも大分前か……もしかしたら母さんの子宮にいた頃から抱いていたのかもしれない。……ごめんちょっと盛った。出来心だから許してくれ。

流石にそれは無いにしても、物心ついたときには似たような疑問を感じていたと思う。

 

 

 

 

 

世の中、何故こうもつまらない人間が多い?

 

 

 

 

 

はいストップ。痛々しいものを見る目でこっちを見ない。「中二病乙」とかも言わない。精神的には図太い方だけど多少は傷つくんだよ?一見ヘラヘラしてるように見えて、実は心の中で泣いてるんだよ?まあ嘘だけど。

それはさておき、確かにそう指摘されても仕方がないような疑問なのは否定できない。できないけど抱いてしまったのだからしょうがないじゃないか。俺は悪くない。

……あ、別に「悪い人が多すぎる」や「低レベルな人が多すぎる」といった意味じゃないよ?

善悪の区別なんて人それぞれだと思うし、俺も別に聖人君子って訳じゃない。まして人間正しくなければ生きる価値無し、なんて極端な正義感を持ってる訳でもない。体がマグマになったりもしない。そりゃ目の前でお婆さんが通り魔に刺されそうになってたら助けに入るけど、万引きしようとしてる人を見かけても多分普通に素通りする。俺が持っている正義感なんてそれぐらいしょっぱいものだ。

そして高慢ちきエリート思想も持ってる訳でもない。俺自身は……まあ不遜に思われるだろうが、高い能力を持っていると言えるだろう。俺はこれまであらゆる物事で勝利してきたし、才能という面では俺より格上どころか、同格の奴、あまつさえ追い縋る奴すらもこれまで一人もいなかった。天賦の才とは俺のような人間のこと指すのだろう。

でも、ただそれだけだ。

俺がここまで周りと隔絶した才を持って生まれたのは、別に俺が神から選ばれた人間じゃないし、俺でなくてはいけない理由があったわけでもない。俺はたまたま天才として生まれただけで、たまたま凡人に生まれた人を見下す理由も蔑む理由も無い。

 

なら、俺の疑問は何なのかって?……どうしてどいつもこいつも現状に満足しているのかってことだ。

さっきの話に少し戻るが、俺はたまたま天才としてこの世に生を受けた。だがもし俺が凡人として生まれ、生きていくうちに自分より格上の存在にあったのなら……きっと俺は是が非でもそいつを越えたいと思うだろう。たとえ壁にぶち当たっても、たとえそれがどれほど茨の道だろうとも。

でも、周りの奴等はそうじゃなかった。

俺と深く関わった奴の反応は様々だ。俺に過剰とも言える信頼を置き崇拝する奴、俺の能力を恐れる奴、媚びた笑みを浮かべて俺に取り入ろうとする奴、俺の才能を恨めしそうに妬む奴……総じてつまらない奴ばかりだったが、共通するのは総じて『俺(桐葉)が上、自分が下』と認識していること、そのことに何の疑問も抱いていないこと、そして『俺に勝ちたい』と本気で思っている奴が一人としていなかったことだ。

 

何故挑まない?

何故諦められる?

何故納得できる?

何故疑問に思わない?

全知の神から「彼はあなたと違って特別なのだから諦めなさい」と神託を受けた訳でもないくせに、何故自分の立ち位置を勝手に決め、それを受け入れることできる?お前達には向上心というものが無いのか?負けたままで構わないのか?

 

俺なら嫌だな。自分より上に誰かがいるとわかっているのに、満足などできるわけがない。

これまでほとんど負けたことなど無いが、全く無かった訳ではない。あれは俺が物心ついた頃の正月、たしか俺はまだ将棋を覚えたてで、親戚のおっちゃんに惜しくも負けてしまったことを今でもよく覚えている。あのとき俺は恥ずかしながらそれはもう凄い勢いで悔し泣きしてしまった。あんまりにも俺が泣くせいで親戚中から魔女裁判のごとく糾弾されたおっちゃんには悪いことしたと反省している。いやはや、今から思い返しても一回負けたぐらいで取り乱し過ぎたなあれは。うん、ごめんねおっちゃん。……まあそれはさておき、そのときから1ヶ月間、俺の脳内は『リベンジ』というワードに支配されていた。貰ったお年玉で購入した将棋の本をひたすら読み込み、定石や戦法を頭の中に刻み込むや否や、比較的家から近かったこともあって親戚のおっちゃんの家に特攻した。

そのときの、まだ幼児だった俺に惨敗したおっちゃんの驚愕と、勝利の喜びは今でも色褪せることなく覚えている。あのとき以上のカタルシスは、もうある程度成熟してしまった今からでは多分得られる機会は無いだろう。

……話が反れたがそんな訳で、俺は自分より上がいるとわかっているなら挑まずにはいられない。現状に満足するなど決してできない。……もっと言うなら、たとえ俺が一番上だったとしても満足などできない。今日の俺は昨日の俺よりも凄くなりたいし、明日の俺は今日の俺よりも優れていたい。立ち止まることは苦痛でしかなく、望みはひたすら前へ進むこと。飽くなき進化への探求心こそが俺の全てだ。そんな俺からすれば、立ち止まったままの人間は理解に苦しむしつまらないことこの上無いのだ。

 

 

 

……いやまあ、別にそれが悪いとは言わないけどね。

重ねて言うが俺は別に選民思想など持ち合わせちゃいない。桐葉君そんな悪い子じゃないもん。

長々と語ったが、あくまで疑問は疑問であって不満でも憤りでもない。面白いつまらないなど所詮俺の主観でしかないし、他人からしたら正直「知るかボケ」と言いたくなるんじゃないかな。本人達がそれで良いと言うならそれで良いのだろう。それこそ神でも王でもあるまいし、「俺がこう思ってるんだから世界もこうあるべき」なんて大それたこと思っちゃいない。俺はただ、この長年の疑問に答えを出したいだけだ。

この疑問を解く鍵はいたってシンプル、まずは俺があいつらと同じ立場になることだ。先程もし俺が凡人として生まれたなら……と仮定したがあくまでそれは仮定でしかない。凡人として生まれてない以上、凡人の考えを真に理解できる訳ではない。もしかしたら凡人として生まれたなら俺もつまらない人間になっていたかもしれないが、凡人として生まれ直せない以上それを確かめる術などない。

では天才として生まれた俺には、この疑問は解けないものなのかというと……そんなことはない。ただ単に俺よりも格上の天才に巡り会えばいい。そのとき俺は歩みを止めずにいられるのか、はたまた歩みを止めつまらない人間に成り下がるのか……もし後者だったらこれまでつまらない人間だと見なしてきた奴等に「調子こいてすいませんでした」と土下座する所存だ、心の中で。いやだってさ、こんな間違いなく誤解されそうな疑問を誰かに打ち明けたことないし、急に土下座されてもあいつら「???」ってなるだろうし。

 

 

 

とまあそんな訳で、俺よりも優れた天才を追い求めるまま、小学6年間共に過ごした仲間達と感動の別れ(正直どうでもいい連中だったがそんな態度はおくびにも出さなかった。桐葉君は空気を読める子なのです)この日本でも最高峰の中学へと入学したわけだが……入試問題でかなりの肩透かしを食らったせいで、既にあまり期待できそうにない。

現在ただ今入学式の真っ最中。偉い人の話が進む中、新入生代表の挨拶の時間へとなった。

ここが最初の……もしかしたら最後の分水嶺だ。この中学では新入生代表は入試で最も優秀な成績を出した人が代表に選ばれる。あの程度の入試問題で満点を取れない奴など正直俺の敵じゃないので、できれば複数人であって欲しいんだが……

 

『新入生代表、本城桐葉、並びに坂柳有栖』

 

……たった一人かよ。いやまあ一人いただけでも良しとするか、うん。人生妥協も大事。

 

そうしてどうにか無理矢理納得させながら壇上へ向かうと、杖をつきながら壇上へと向かう女子生徒……確か坂柳とやらが俺の視界に入り、

 

 

 

思わず目を奪われた。

 

 

 

別にこの女に一目惚れした訳じゃない。まあ確かにお伽噺の本から飛び出てきたかのような美少女だが、どれだけ美人だろうと『つまらない人間』には興味を持てないのが俺という人間だ。ならば俺がここまで心から歓喜しているその理由は……

そのまま俺達は壇上で向かい合う。坂柳は僅かに目を見開き、ほんの一瞬だけ獣のように口角をつり上げたかと思えばすぐににっこりとした笑みを浮かべ、俺達は新入生の方へと向いた。坂柳のいかにも優等生なスピーチの後、俺もそれらしい内容のスピーチを述べながら思考する。

確証は無いがさっき坂柳と向かい合ったとき、多分俺もあいつと同じように凶暴な笑みを浮かべていたと思う。

オカルトやスピリチュアルな話はあまり信じない方なのだが、そのとき多分俺も坂柳も直感したのだろう。

 

 

 

 

 

こいつは己と同格、もしくはそれ以上の天才(自分が求めていた人種)だと。

 

 

 

 

 

 

 

 




後の彼がこの頃の自分を省みてはこう思う。
「中二病乙」 

以上、この作品の主人公・桐葉君の迷走期です。
馬鹿と天才は紙一重、面倒かつ不毛なことをごちゃごちゃと考えています。それらしい理屈を並べてはいますが、要は遊び相手がいなくて退屈している子どもですね(笑)
そんな彼からすれば坂柳さんとの出逢いは、ソシャゲを始めたらいきなり人権キャラを引き当てたようなものですね。間違いなく内心でガッツポーズしてます彼。

次回からは二人の波瀾万丈な中学生活が始まり……ません。いきなり原作開始まで時系列が飛びます。


坂柳と壮絶な争いを繰り広げる中で心を通わせ、初めて心から信頼できる友を得た彼は、本人の意図しない形で長年の疑問に答えを出す。
そんな彼は実力至上主義の高校で何を為すのか……?


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