女王の女王   作:アスランLS

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桐葉君はもう完全に賑やかし要因と化しました。


(´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・`)

光陰矢の如しとはよく言ったもので、あっという間に須藤君の命運が決定する日になった。コージー達が何をやっていたかは知らないが、卍解ちゃんは学生掲示板にて情報収集等を行っていたみたいだ。ふむふむ、なかなか悪くないアプローチだ。良くもないけど。

俺は朝からいつものルーティンをこなし(走り込み中ミスターに会ったが、彼はいつも通り自分に酔っていた。須藤君がどうなろうと興味無いのだろう)、寮のロビーにて有栖と合流し学校へ向かう。

 

「……そういや以前は神室も一緒に登校していたのに、最近は全然だねー。どしたの?喧嘩でもした?」

「してるわけないじゃないですか。昨日3人で映画に行ったばかりでしょうに」

「あーあれは楽しかったな。ヒロインが化け物に喰い殺された辺りで神室が物凄いビビりまくってたっけ」

「上映後余計な悪戯をしかけた貴方が、涙目の真澄さんに思いっきり怒られていましたね」

 

ちょっとしたお茶目であんなにパニックになるとは思わなかった。ごめんね神室、悪気はあんまりなかったんだ。おかげで俺と有栖は大満足でした。

 

「じゃあ俺のせいなの?でも神室が一緒に登校しなかったのって結構前からだよな?」

「本人曰く馬に蹴られたくないから、だそうですよ。どうやらまた不要な気遣いをさせてしまったみたいですね」

「中学のときから似たようなことがちょくちょくあるよな。付き合ってるわけでもないんだから、別に気にしないでいいのに」

「実のところ、単に居心地が良くないのでしょう。私が無理を言えば一緒に登校してくれるでしょうが……それをしたいとは思いませんし」

 

一見平然としているけど耳が真っ赤だね有栖。照れるならいちいち言わなきゃいいのに。

 

「それってつまり俺と二人きりで登校したいってこと?きゃー有栖ちゃんってば乙女ー☆」

「怒りますよ?」

「ごめんちゃい」

「まったくもう……」

 

僅かに頬を膨らませそっぽを向く有栖だが不機嫌そうな気配は微塵も感じないし、何だったらさっきより顔が赤くなってる。相変わらず今日も引くほど可愛いなこの子、おかげで溜まったストレスが弾け飛んでいくようだぜ。……まあストレスとか別に溜め込んでねーけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後になり、俺は結果がどうなったか見届けるために職員室へ足を運ぶ。いやまあ見届けるといっても俺は100%部外者だから、全部終わってから結果を聞く形になるだろうけど。

 

「失礼しまーす。CクラスとDクラスの小競り合いどうなりましたー?」

「あれ?Aクラスの本条君?」

 

意気揚々と職員室に入りそう告げると、近くのデスクにいたBクラスの担任、星之宮先生が立ち上がり駆け寄ってきた。パッと見はただの美人な先生なのだが、Bクラスの子曰くこう見えて非常に酒癖が悪いらしく、二日酔いが抜けないままホームルームを行ったりと残念な一面のある先生だそうだ。

 

「どうしてそんなこと聞きたいの?あっ、もしかしてウチの一之瀬さんみたいにDクラスに協力してたの?」

「そのつもりだったんすけど断られちゃいました。どうも俺堀北ちゃんに嫌われてるみたいで」

「あら~……確かに堀北さんってちょっと気難しそうだからね~」

 

まあ嫌われている理由の半分以上は俺のせいなんだけどね。

 

「そこでちょっと一悶着ありましてね、もし須藤君の無罪を勝ち取れたら一つお願い事を聞くことになってましてね。それでその結果を知りに来たわけっす」

「あらあら、そっちはそっちで面白いことになってるのね。その審議なら4階の生徒会室で行われてるよ。時間的にそろそろ終わるんじゃないかな~」  

「マジすか先生。生徒会って……もしかして茜先輩も審議に参加してるんすか?」

「橘さん?多分そうじゃないかな。……もしかして本条君、橘さんと仲良しなの?坂柳さんがいるのに、浮気は良くないぞ~?つんつんっと」

「茜先輩はこの学校で一番尊敬してる先輩ってだけで、恋愛感情とかは別に無いっすよ。……それにそもそもあの人が好きなの会長さんじゃないすか」

「あ~、やっぱりわかっちゃう?本人が隠せてると思ってるのが可愛いよね」

「そっすね♪しかし肝心の会長さんだけがまったく気づいてなさそうなのが、また何とももどかしいというか……まあそれはあれでとても愉快ですけどね☆」

「あ~、わかる~」

「何をやってるんだお前達は……職員室は井戸端会議をするところではないぞ」

 

俺と星之宮先生が恋バナに花を咲かせていると、真嶋先生が呆れた表情でやって来た。

 

「固いこと言わないでくださいよ真嶋先生、ちょっとしたガールズトークじゃないっすか」

「この場にガールなんて一人もいないだろうに……」

「真嶋君、ひょっとして喧嘩売ってる?」

「もうガールなんて歳でもないだろうお前も」

「デリカシー無いっすね先生」

「やかましい。百、いや一億歩譲って星之宮をガールとカウントしたとしても……」

「真嶋君、後で覚えててね?」 

「……。本条、お前は違うだろう。それではどちらにせよガール“ズ”トークではない」

「英語教師らしい指摘っすね。でも残念、俺は多分前世は女でしたから。カピバラの」

「今世は男であることに変わりはない」

 

うん、ごもっとも。自分で言っといて我ながら苦しい主張だと思った。

 

「それじゃあそろそろ俺は生徒会室に行きますけど……星之宮先生の相手、頑張ってくださいね?気が向いたら骨は拾ってあげます」

「……今度覚えていろよ本条」

「女性に歳の話を持ち出した先生が悪いので綺麗さっぱり忘れます」

 

何やら疲れた様子の真嶋先生と威圧感のある笑みを浮かべた星之宮先生に見送られながら、俺は職員室を後にした。……ただの同僚にしては随分と気安い関係だなあの二人、実は同期だったりするのかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね綾小路君……私が最初から名乗り出ていたら、こんなことには……」

「同じことだ。佐倉が最初に名乗りでようがあいつらは結局、目撃者がDクラスだったことを責め立てた筈だ」

「でもっ……!」

 

えー……何この状況?

生徒会室まで足を運んでみれば、そこには泣き崩れている眼鏡をかけた女の子と、どうしていいかわからず立ち往生するコージーの姿が。さっきの会話から察するにこの眼鏡の子……佐倉ちゃんが例の事件の目撃者のようだが……うーん、Dクラスから目撃者が出てきちゃったと嘆くべきか、Cクラスじゃなくて良かったと喜ぶべきか……まあ無罪を勝ち取りたいならどっち道些細な違いか。

 

「やっほコージー」

「本条か」

 

ハンカチを佐倉ちゃんに渡しつつ二人に合流する。佐倉はやや怯えつつも礼を言ってからハンカチを受け取った。ごめんね怖い目つきで。

 

「なんだ、まだいたのか……本条?」

「本条君?」

 

それとほぼ同時に、生徒会室から茜先輩と会長さんが出てくる。そして茜先輩が戸締まりのために背を向けたと同時に、俺はすかさず背後を取りつつ懐から音楽プレーヤーを取り出し、音量をかなり上げて茜先輩の耳にそっとイヤホンをつけ再生ボタンを押す。

 

 

 

うらめしやああぁぁぁああああ

「にぎゃあああぁぁああああぁあああ!?」

「「「!?」」」

 

 

 

大音量でプレーヤーから流れたのは、それはもうおどろおどろしい心霊ボイス。昨日神室にしかけた悪戯を再び行ったところ、それはもう満足のいく撮れ高になった。最高です先輩。

その場で飛び上がって震えて蹲り、しばらくしてから恐る恐る後ろを振り返ると、『ドッキリ大成功』という小さなプラカードを片手に満面の笑みを浮かべた俺。涙を浮かべていた橘先輩の目はみるみる内に吊り上がっていき、全身から怒りのオーラらしきものがふつふつと立ち上る。あっ、ヤベ……。

 

「このっ、このこのこのっ、このぉぉぉおおおおおっ!」

「痛いっ、痛い痛い痛い!?ごめ、すんません茜先輩、そんな執拗に脛蹴らないで折れちゃうっ!?」

「うるさいいっそ折れちゃえこのおばか!ばかばかばかばかばかぁっっっ!」  

「すんません悪いとは思っていますちょっとした出来心だったんです悲鳴可愛かったです!」

「全然悪びれてないでしょうがああああ!」

 

怒れる茜先輩は意外と陰湿かつ的確な報復攻撃の嵐を俺にお見舞いする。茜先輩のキック力だと正直大して痛くないが、少しでも溜飲を下げてもらうためここは痛がっておこう。痛めつけられつつ必死で謝り倒したおかげでひとまず満足した茜先輩は施錠に戻り、会長さんは一旦咳払いしてとっ散らかった空気をリセットする。なんか私は無関係ですみたいな態度とってるけど、俺が私刑にかけられてる間助けようともせずこっそり笑ってたの見逃しませんからね?コージー、佐倉ちゃん、君達もな。

 

「…………本条、生徒会室に何のようだ?まさか橘にくだらん悪戯をするためだけにここに来たわけではあるまい」

「くだらんとは失礼な。……おたくの妹ちゃんと今回の件で、ちょっとした勝負をしてましてね。それで須藤君どうなったんすか?無罪になりましたか?」

「明日の4時に再審だ。……なるほど、完全無罪と言い放ったのは鈴音の暴走というわけか」

 

会長さんがコージーの方に目線を移してそう問いかけると、彼もそれを否定しなかった。ふーむ……ホリリンはひょっとすると、答えに辿り着いたかもね。

 

「それから佐倉と言ったな。お前の目撃証言と写真は、審議に出すだけの証拠はあった。しかし覚えておけ、その証拠をどこまで信用するかは証明力で決まると。お前がDクラスの生徒である以上、今回お前の証言が真実として認識されることはない」

 

おもむろに会長さんは佐倉ちゃんの方を向き、容赦なく厳しい言葉を浴びせかける。……いや会長さん、言ってることは正論だけどもうちょっと空気読もっか?泣いていたであろう面識の無い女の子に追い討ちかけちゃダメでしょ。

 

「わ、私は……ただ、本当のことを……」

「証明しきれなければ、ただの戯言だ」

 

俯いたまま再び涙を流し始める佐倉ちゃんを庇うように、コージーとついでに俺は佐倉ちゃんと会長さんの間に割って入る。

 

「オレは信じますよ。佐倉の証言を」

「じゃあ俺も」

「クラスメイトならば、信じたいと思うのは当然のことだ。……それから本条、部外者はお呼びじゃない」

「さっきのこと許してあげますから、私と一緒に端に寄ってましょう本条君。話をややこしくしないでください」

 

茜先輩に手を引かれて端へフェードアウトする俺。すまんコージー、後は任せた。

 

「信じたい、じゃない。俺は信じてると言ったんだ」

「そうか……ならば証明してみせろ。佐倉の証言が戯言ではないとな」

「それをするのはオレじゃなくあんたの妹だ。オレは堀北のことも信じてる」

 

いや話の流れ的にそこは君の出番だろ。なんでここまで盛り上げといて他力本願?

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が去った後も、佐倉ちゃんは泣いたままその場から動けないでいた。

 

「しかし酷い目にあったね君も。会長さんもデリカシーってもんがねーのか。あれじゃ茜先輩も今後苦労しそうだぜ」

「顔を上げろ佐倉。泣いてたってしょうがない」

「だって……私のせいで……っ……」

「お前は何も悪くない。本当のことを言っただけだ。お前のお陰で須藤や皆が救われる可能性が出て来たんだ」

「……でも……っ……」

 

まあコージーの主張も間違ってはいない。この子がいなければ、再審を行うまでもなく須藤君が有罪になっていただろうから。後はホリリンがやるべきことをやってくれれば、晴れてDクラスの完全勝利だ。

 

「オレはお前を信じる、それが友達だ」

 

コージーは佐倉ちゃんの肩を掴み強引に向かせ、真っ直ぐに目を合わせてそう言い放った。うんうん、実に格好良いぜコージー。……だけど君さ、そこまで格好良くビシッと決めたならお前が何とかしろよ。全部ホリリンに丸投げってどうなのさ?

 

 

 




ちなみに神室さんが一緒に登校したがらない本当の理由は、ナチュラルにイチャつかれて精神衛生上非常によろしくないからです。
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