女王の女王   作:アスランLS

16 / 89
今回はほとんどルール説明で終わります。


俺は自由だあああああ!

 

「え?特別試験って……どういうこと?」

 

他クラスの誰かが戸惑いの言葉を口にしたが、その子だけでなく全クラスのほとんどの生徒がざわつきだした。まあバカンスだと言われて参加したのにこんな不意打ちを食らったんじゃ無理も無いが、逆に葛城やリュンケル卍解ちゃんなんかは落ち着き払っていた。リュンケルに至ってはなんか邪悪な笑みを浮かべちゃってるよ。

 

「今日から8月7日の正午までの一週間。君達はこの無人島で集団生活して貰う。なおこの試験は実在する企業研修を参考にした、現実的かつ実践的なものであることを最初に言っておく」

「無人島で生活って……船じゃなくてこの島で寝泊まりするってこと?」

「ああ、試験実施中正当な理由がない限り乗船は許されない。勿論それだけではなく、ここでの生活は寝泊まりのみならず食料や飲料水に至るまで、その全て自分たちで考える必要がある。スタート時点でクラス毎にテントを2つ、懐中電灯を2つ、マッチを1箱支給する。それから日焼け止めは制限なく、歯ブラシに関しては各自1セットずつ配布し、女子生徒にのみ生理用品は無制限で支給する。以上だ」

 

ふむふむ、実にゴールドレジェンドな内容だ。 

話を聞いただけで過酷だとわかる試験内容にDクラスの池君が無茶苦茶だと猛抗議するが、ただの学生に一流企業のやり方にケチをつけられるだけの根拠など無いと真嶋先生に一蹴される。まあ自分の理解を超えたものをおかしいだのあり得ないだのと、勝手に決めつけても滑稽なだけだよな。

 

「しかし先生。今は夏休みの筈ですし、我々は旅行という名目で連れて来られました。企業研修ならこんな騙し討ちのような真似はしないでしょう」

「なるほど、その指摘は間違いではない。確かに不平不満が出るのも納得できる」

 

池君よりかはまともな葛木の反論に、真嶋先生はその言い分を認めた。まあ無断で休日に研修をねじ込むなんて普通に労基案件だろうね。

 

「だが特別試験と言っても深く考える必要は無い。今から1週間君達は何をしてもいい。海で泳ごうがバーベキューを楽しもうが、キャンプファイヤーで友と語り合おうが構わない。この特別試験のテーマは『自由』だ」

「んん?えっ、試験なのに自由?あれ、ちょっと頭混乱してきた……」

 

いやいやいや早いよ池君。もう話についていけてないの?君本当に高校生か?

真嶋先生はそんなことお構いなしに、卒業アルバムぐらいの厚さの冊子を取り出す。

 

「この無人島における特別試験では、最初に試験専用のポイントを300ポイント支給することになっている。このポイントを上手く使うことで、君らはこの試験を旅行のようの楽しめるだろう。今から配布するマニュアルに、ポイントで手に入るものが全て載っている。水や食料のみならず、バーベキューの機材や無数の遊び道具なども用意しよう」

 

ポイント、ねえ……今回の試験の趣旨がおおよそわかってきたな。

 

「つまり、その300ポイントで欲しいものがなんでも買えるってことですか?」

「そうだ。無論計画的に使う必要はあるが、ちゃんと堅実に使っていけば大丈夫なよう設定されている」

「で、でも試験なんだから難しい何かがあるんじゃ……」

「いいや、難しく考える必要は全く無い。2学期以降への悪影響もないと保証しよう。勿論集団で生活する上での最低限の決まりはあるが、基本的に全てお前達の自由だ。そして……

 

試験終了時に各クラスに残ったポイントを、そのままクラスポイントに加算し夏休み明けに反映する」

 

要は難しく考える“必要”は無いけど、難しく考えた方がメリットがあるってことか。毎度毎度言葉遊びが過ぎるぜこの学校。ちなみにウチのクラスだけ有栖が不参加のペナルティとして、270ポイントからのスタートだそうだ。心疾患持ちだってのにとことん容赦無いなこの学校。それから露骨に不満そうな態度取んな戸塚。人としてどうかと思うぞ。

 

 

 

 

 

 

 

全体での説明を終え解散宣言をした後、4クラスが距離を空けての各担任のよる補足説明に移る。各クラスがどう戦略を立てるかはバラバラだろうし、機密保持のためには当然の措置だ。

真嶋先生はまずGPS、体温や脈拍を測るセンサー、緊急用のボタンなどが搭載された凄い腕時計(外すとペナルティ)を1人ずつに配布してから、残りの補足説明に入った。内容をまとめると……

 

 

 

 

・担任は自分のクラスと1週間行動するが、一切の手助けを行わない。

・体調を崩したり大怪我をしたりして続行不可能と判断された場合は、マイナス30ポイントとなりその者はリタイアとなる。

・環境を汚染する行為はマイナス20ポイント。

・ベースキャンプ地で午前と午後の8時に行われる点呼に遅れた場合、1人につきマイナス5ポイント。また、1度決めたベースキャンプの場所は正当な理由無く変更できない。

・他クラスへの暴力、略奪行為、器物破損を行なった場合そのクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントを全て没収する。

・ポイントがマイナスになることはない

・島の各所にはスポットが設けられていて、占有したクラスにのみそのスポットの使用権が与えられる(占有権の効力は8時間の毎にリセットされる)

・他クラスが占有しているスポットを許可なく使用した場合、50ポイントのペナルティを受ける。

・占有されていなければ、同時にいくつもスポットを占有してもよい。

・一度スポットを占有するごとに1ポイントのボーナスポイントが与えられる(ボーナスポイントは加算されるのは試験終了時)

・スポットを占有するためには専用のキーカードが必要。キーカードの使用権は決められたリーダーのみ。

・正当な理由なくリーダーを変更することはできない。

・最終日の点呼で各クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられ、他クラスのリーダーを1人当てるごとに50ポイント。外してしまった場合はマイナス50ポイント。

・他クラスに言い当てられた場合マイナス50ポイントの上、ボーナスポイントは無効になる。

 

 

 

 

……補足部分の方が明らかに大事な内容やんけ。

生粋の江戸っ子なのに思わず関西弁になってしまったが、それにしたってこれは酷い。この試験で求められるのはクラスの団結と判断力。

結論として、300ポイント丸々残すのは不可能だ。何せポイントを支払わなければ、排泄行為を災害時などに使われる簡易トイレで行う羽目になるのだ。ワンタッチテント付きで誰かに見られることはないが段ボール……俺達野郎共なら妥協できなくはないが、年頃の女子からすれば論外だろう。つまり計画的なポイント運用を行う必要があり、それで揉めているようではお話にならない。それにこの大人数で1週間もの間共同生活を送るには、クラスが一丸となって取り組まなければ次々とトラブルに見舞われるだろう。

またクラス間での競争に勝つためには、正しい状況判断能力は必要不可欠だ。ポイントを切り詰め過ぎて体調を崩す生徒が出てくるようでは本末転倒だし、無計画にスポットの占有を進めていけばそれだけリーダーを当てられる危険が高まる。……私見で言うなら、より重要になってくるのはやはりスポット占有とリーダー当てだな。特にリーダー当てはリスクが大きい反面、的中させられればポイントが上乗せされるだけでなく、この試験において唯一他クラスへダメージを与えられる。リーダー当て以外の他クラスへの攻撃の一切を厳罰化してるあたり、今回の試験の肝は間違いなくここだ。

もし仮に有栖が今回の試験に参加できていたら、まず間違いなくリーダー当てを戦略の主軸にしていただろうな。……しかし有栖が不在な以上、(予定通り)Aクラスは葛城が取り仕切ることになる。となれば徹底して堅実かつ退屈な方針で進むだろう。ポイントを計画的に使うのはまあいいとして、リーダーバレ対策を徹底的した上での最小限の占有、リスクのあるリーダー当てなんかは最初から無視ってところか。この戦法なら最終的な結果でBクラスあたりに上回られようが微々たる差、独走状態のAクラスからしたら大した脅威にもならないんだろうが……つまんねー。有栖が聞いたら鼻で笑いそうな程しょうもないスタンスだ。改めて有栖と葛城はソリが合わないんだとしみじみ思う。

と、今回の試験の考察を適当にし終えたところで、ちょうど真嶋先生の補足説明も終わった。さあこれからAクラスはどのようにしていくのか葛城が仕切り始めようとする前に、我慢の限界に達した俺は真嶋先生から無料かつ無限に支給されるビニール袋を5袋程頂戴し、広大なジャングルへと向かう。いざ、大冒険の始まりだぜい!

 

「待て本条。どこへ行くつもりだ」

「そりゃバカンスを楽しみにだよ。雄大な大自然が俺を待っている」

「勝手な行動を慎めと言っているんだ」

「待ちなよ葛城君」

 

俺に詰め寄ろうとする葛城を、軽薄な笑みを張り付けた橋本と仏頂面の鬼頭と神室、坂柳派側近3人衆が間に割って入る。

 

「姫様から伝言を預かってるぜ。……今回の試験、俺達坂柳派はおとなしくお前の指示に従う。だけどその代わり、本条には何も命令するなってさ」

「ふざけたことを言うな橋本。今回の試験、クラス全員足並みを揃えることが必要不可欠なのは明白だ。本条だけ身勝手に振る舞うなど許されるわけがない」

「1日2回の点呼ならちゃんと遅れずに行くから大丈夫だよ」

「そういう問題ではない。第一そもそも、まだベースキャンプをどこでするかすら決まってないだろう」

「お前がクラスを仕切るんなら大方予想つくよ。どうせ洞窟だろ?」

「……」

 

難しい顔をして押し黙ったところを見るに、どうやら図星だったらしい。上陸前やけに高速で島をぐるっと一周していたのは、今から思えばスポットに関するヒントだったのだろう。有意義な景色なんて変な言い回ししてたから間違いない。葛城ほどの男なら当然気づいているだろうし、こいつがベースキャンプ地に選びそうな場所はおそらく洞窟だろう。雨風を凌げるしリーダーを隠すにもうってつけだ。近くに別のスポットらしき小屋とか塔とかもあったし。

 

「スポットは早い者勝ちだから、俺一人に構っていたら先を越されるよ?有栖のお仲間が無条件で協力してくれる代償と考えるんだな」

 

まだ何か言いたげな葛城を捨て置き、俺はジャングルへと歩を進める。我ながら傍若無人な振る舞いに、葛城派の奴等は敵意に満ちた視線を送ってくるが、有栖から指示を受けている坂柳派は平然としている。中にはもしかしたら俺に対して不満に思っている奴もいるかもしれないが、有栖は俺が水面下で行動している内容を派閥で共有している。俺の振る舞いが気に入らなかろうが今までの俺の実績が実績なため、多分何も言おうとはしないしできないだろう。

 

「……町田、本条についていってくれないか?」

「は、はいっ」

 

葛城の判断はまあ予想通り。クラス崩壊のリスクを避けるため坂柳派の条件付きの恭順を承諾しつつ、しっかりと俺にも監視の目をつけておく。もし俺が問題行動を取るや否や町田はすぐさま葛城に報告し、それを盾に俺に協力を迫る腹積もりだろう。

 

「別にいいよ。俺を監視したいなら思う存分するといい。ただし……

 

 

 

今の俺についてこられたらね」

 

突如全速力で森に突入していく俺に町田は面食らい、慌てて追いかけてこようとするが……ジャージになった俺を見失わずにいられるかな?

 

 




桐葉「今回の試験で求められるのは、クラスの団結と状況判断力だ(キリッ)」

有栖ちゃんがいないと桐葉君の協調性は、高円寺君に毛が生えた程度にまでダウンします。ジムバッチ持ってないときの人から貰ったポケモン並に身勝手になります。
また、桐葉君の制服は数々の手品の仕込みのせいでおよそ15キロくらいします。悟空の道着みたいなもん。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。