女王の女王   作:アスランLS

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司城「わかっちゃいたけど俺達終始空気だな……」
里中「仕方ないだろ。俺達原作だとモブ同然なんだから、出番増えてもただのオリキャラになるだけだよ」
司城「なんで俺達原作でスポット当たらないんだろうな。お前はイケメンランキング1位、俺は学年1の美形ってオンリーワンの個性があんのによ……」
里中「それはまあライトノベルの読者層は男の比重が多いから、俺達の挿絵なんて誰も得しないし、アニメ化してもグッズが売れないからだろ」
司城「世知辛い……」






 

休憩時間が終わると男女の競技順番が一時的に逆転し、1年女子騎馬戦が幕を開ける。

クラス連合による8対8の真剣勝負。勿論今回もDクラスは味方だが、鉢巻き奪取による50点(大将騎馬なら100点)は奪取したクラスに加算されるので、総合順位で勝つためにはDクラスも競争相手と言える。

ちなみにうちの騎手はマスミン、山村、田宮、福山。ゴリラウーマンことマスミンを中心とした最強メンバーからなる大将騎馬に、正直戦力として心許ない余り物で構成された3騎。大将騎馬に対して苦戦するであろう相手を、周りから不意打ちで落としていこうというのがランスの戦略なんだろうが……はたしてそう上手くいくかね?

試合開始ともにCクラス・伊吹ちゃんの騎馬は迷わずホリリンの騎馬へと突撃し、他の3騎もそれに追従しホリリン達を取り囲む。ホリリンは大将騎馬でもないのにこの露骨な狙い撃ち……あの子ってば、よほど櫛田ちゃんの恨みを買ってたのかね。

Cクラスの狙いを把握したマスミンは、ノータイムでDクラスを見捨ててBクラスの騎馬へ襲いかかる。卍解ちゃんが騎手を務める戦力の充実した大将騎馬ではなく、まずは弱そうな騎馬に。

 

「うーわ、マスミン冷徹」

「先程の昼休憩中に、葛城君に内緒で指示しておきました。CクラスはDクラスを狙い撃ちしているので最初のうちは放置します。大将騎馬である一之瀬さんを狙わない理由は……」

「そりゃ協力とか連携とかを尊ぶ卍解ちゃんなら、Cクラスのフォローに向かうよね」

 

向こうが突っぱねてるんだからCクラスと手を取り合う必要なんてないのに、卍解ちゃん達は律儀にもホリリン達の援護に向かう軽井沢ちゃん達を食い止めようとしていた。結束力は卍解ちゃん達が勝るが、機動力は軽井沢ちゃん達が上。一進一退の名勝負に観客は頗るエキサイトするが……

 

「もたもたしている間に、堀北さんが鉢巻きを奪われてしまいましたね」

「まあホリリンじゃあ4対1は捌ききれないわな。……だけど卍解ちゃん、Cクラスのフォローしてる間にお仲間が全滅しちゃったよ?」

 

まあこっちも3騎失ったけど、皆鉢巻きを奪われる前に自分から騎馬を崩したから及第点だ。

Cクラスの4騎はその後も統制の取れた動きで、軽井沢ちゃんを除く2騎を執拗に追い詰め鉢巻きを強奪していく。一方マスミンはあえて卍解ちゃんが気づくように奇襲をかけ、卍解ちゃんが驚いてそれに気を取られた隙を突き軽井沢ちゃんが大将鉢巻きを奪い取った。

 

「真澄さんがその気なら、一之瀬さんに気づかれずに奇襲をかけられたでしょうね」

「ここまで奮闘した軽井沢ちゃんへ筋を通したのかな?あの子意外と義理堅いね」

「Aクラスの勝利を最優先にするなら、彼女の判断は間違いでしょうが……この後弄り倒せるので不問にしましょうか♪」

「だな♪ツンデレ乙と言ってやろ♪」

 

俺達がアホな会話を繰り広げている間も戦いは続く。マスミンが軽井沢ちゃんに何か囁いてから、2つの騎馬は無傷のCクラス4騎へ突撃する。流石に多勢に無勢かと思われたが、マスミンと軽井沢ちゃんはそれぞれ自爆覚悟で相手の騎馬に飛びかかり、見事鉢巻きを奪ってから地面に降り立った。

そして得点の集計結果……Cクラスは大将を含む3つの鉢巻きを獲得し、同じく大将を含む2騎が生存したので獲得ポイントは350点と全クラス中トップ。しかしBクラスは全滅の上鉢巻きを1つも奪えず0点。Dクラスは軽井沢ちゃんが大将を含む2つの鉢巻きを奪ったので150点。そしてAクラスはマスミンが仲間を肉壁にしつつ4つの鉢巻きを奪ったので200点。あの子鉢巻き掠め取るのがやたら上手かったな。下手したら将来スリで食っていけるレベル。

合計350対350でこの勝負引き分け。

……あーあ、こりゃ向こうのテントで卍解ちゃん、リュンケルに散々嫌味言われるよ絶対。

早々に敗退したことが堪えたのか、見るからに悔しそうな表情で陣地に戻ってきたホリリンに、須藤君はすぐさま声をかけにいく。

 

「気にすんな、今のは仕方ねえ。つかAクラスの奴等見捨てやがって……!」

「Aクラスと私達は競争相手でもあるのよ、向こうの戦略にケチはつけられないわ。それに……神室さん」

「……何?」

 

間違いなくMVP級の活躍だったのに、相変わらず気だるそうに戻ってくるマスミンに、ホリリンは近づいて声をかける。あらためて並ぶとなんとなく似たタイプだねこの2人。友達少なそうな雰囲気がそっくりだ。

 

「軽井沢さんへのフォローに関しては礼を言っておくわ。あなたならその気になれば一之瀬さんの鉢巻きも奪えたでしょうに」

「……別に。横からかっさらおうって気になれなかっただけよ」

 

むず痒そうに手を振ってから俺達の元に歩いてくるマスミンを、俺と有栖は精一杯にこやかに出迎える。

 

「はい、ツンデレ御馳走様ですー♪」

「素直になれない真澄さん、大変可愛らしかったですよ♪」

 

無言で俺と有栖に振り下ろされた拳骨はとりあえず止めておく。いきなり何すんねん。

 

「ほんとアンタら人を苛立たせる天才ね……」

「嫌ですね真澄さん、人を捕まえて天才だなんて。知ってます」

「マジで腹立つわねアンタ!?」

「はーいはい、どーどうどうどう」

「私は馬か!?」

 

ひと通りマスミン弄りを楽しんでから、俺達男子も騎馬戦の準備を始める。

俺、司城、里中、橋本による通称イケメン騎馬が組み上がると、クラス学年問わずあちこちから女子達の黄色い声援が飛び交い、それを凌駕する男子達のブーイングと怨唆が飛び交う。うむ、期待通りの光景だ。

対戦相手のB、Cの騎馬達からもちらほら敵意のこもった視線が……いや待てオイ、なんで味方のDクラスも敵意を向けてくる。

 

「おいコラ本条……大将騎馬のくせになんだそのふざけた編成は?勝つ気あんのかよ」

「須藤君さあ、俺のはぐれメタル戦法にケチつけないでくれる?……どうせ君はリュンケルを殺りたいんだろ?わざわざその他大勢の雑兵を引き付けてやろうってんだ、感謝してもらいたいくらいだよ」

「……はっ、上等じゃねぇか。せいぜい囮になってさっさとくたばっちまえ」

 

ありゃりゃ、随分と嫌われたものだねぇ。

Dクラスの大将は騎手に平田君、騎馬は須藤君と三宅君とコージー……考えられる最強の布陣だ。多少の人数差ならひっくり返せるポテンシャルを秘めている。

試合開始の合図と共にAクラスの騎馬3騎は、直前に葛城に指示されたDクラスの騎馬隊に混ざる。先程のような多勢に無勢になることを防ぐための作戦だ。

そして俺達大将騎馬だけは、その大きな塊から敢えて距離を取った。

 

「狙うはクソ龍園の首1つ!」

「よっしゃ行け橋本、Bの大将を狩るぞ」

「はいよ」

 

お互いの思惑は違えど取る作戦は同じだったようで、俺達と須藤君達はそれぞれの大将騎馬へ特攻した。

 

「迎え打て!」

 

Bクラス大将騎馬の騎手、ザキちんの指示で2騎の騎馬が前方斜め2方向から向かってくる。

 

「ふーん、2対1か。いいよかかっておいで、遊んであげる」

「っ、舐めんな!」

 

俺が安い挑発をしたら、墨田君と渡辺君はいきり立ったように俺達に突撃してきた。俺はそれを警戒すらせず泰然と構えたまま見守り……

 

 

 

 

 

右斜め後ろの方向から俺の鉢巻きに向かって、伸ばしてきた別府君の手をノールックで掴む。

きっと前の2人に注意を引き付けて、死角から奇襲をかけるつもりだったんだろうけど……ごめんね、そこ死角じゃないんだ。

 

「え-」

 

何が起きたかわからず別府君が呆けた一瞬の隙を突き、俺は片手で彼を騎馬から力づくで引き離し、怪我させないよう両足で着地できるよう地面に投げ降ろした。……勿論もう片方の手で鉢巻きを掠め取っておくのを忘れない。

 

「「なっ……うぉ!?」」

 

棒倒しから何も学んでいなかったのか、あまりに想定外の光景に足を止めてしまった2騎に、俺は鉢巻きをポケットに入れつつ騎馬に指示してこちらから距離を詰める。目と鼻の先にまで近づいていた俺に対し、騎手の2人は反射的に俺の鉢巻きに向かって手を伸ばすが、

 

こちらに伸びてきた2本の腕の手首を俺はそれぞれ片手で掴み、やはり力づくで騎馬から剥がすように上に投げた。

 

「「うわぁあああっ!?」」

 

俺の狙い通り2人も両足から着地したため怪我は無く、投げてから着地するまでの間に鉢巻きを2つとも掠め取った。最初の別府君も含めて3人とも、何が起きたか理解できずに呆然としている。俺は奪った鉢巻きをまたポケットに入れつつ、最後の獲物を見据える。

 

「……さてザキちん、Bクラスの残りはもう大将である君達だけだ。100点を奪われないよう自分から騎馬を崩すのも戦略的にはまあ有りっちゃ有りだけど……」

「……いくぞ、皆!」

「ああ!2連続で0点はマズいし、ここは何としても一矢報いないとな!」

 

ザキちんの決断に、柴田君を中心とした騎馬3人も同意して向かってくる。まあここで勝負を投げる真似をすれば総合最下位も見えてくるし、リュンケルをさらに調子づかせるだろうし、勝ち目が薄くても戦うしかないよね。

決して破れかぶれではなく闘志を秘めた目をしながら、全速力で向かってくるザキちん達に対し、俺はその場で待機し待ちの姿勢で迎え撃つ。あと数秒で騎馬同士がぶつかり合うという距離で俺はすかさず手を伸ばし-

 

 

 

マスミン達のように捨て身で飛び掛かってきたザキちんの腕を掴み、鉢巻きを奪ってから地面にゆっくり降ろした。

 

「バカな……並外れた反射神経で防御が間に合ったならともかく、飛ぶ直前から待ち構えていただと!?俺の捨て身を読んでいたのか……!?」  

「別に読んでいたんじゃないよ、ただ視えていただけ」

「何……?」

 

世界は広い。

頑張って探せば俺より頭の良い人はたぶんいるし、俺より身体能力の高い人もきっといる。

この学校という狭い範囲でさえ有栖、コージー、ミスターと、既に候補が3人もいるのだから間違いない。ちなみに俺より性格が良い奴や人間出来てる奴は探さなくてもいる。たぶん何十億といる。

ただ……世界中探しても自分より優れた人はまあいないだろうという才能を、幸か不幸か俺は2つ持ってこの世に生まれてきた。1つは幸運。そしてもう1つは……

 

 

眼の良さだ。 

 

 

俺の視野はそれこそ草食動物の如く広大で死角がほぼ無く、なおかつ視界に入った物体を全て隈無く俯瞰して見通すことができる。

そして俺の眼は集中して視れば如何なる些細な情報も逃さず見透かす。呼吸、心拍、汗、意識の波長、筋肉の収縮……俺の眼は相手の全ての動きの先を読む。いかなる奇策も封殺し、どんな不意打ちも仕掛けることすら許さない。

 

俺には相手の動きの未来が視える。

 

そして後天的に身に付けた話術を組み合わせて応用すれば、相手の嘘や隠し事も自由自在に暴き出せ、自分を視れば肉体の状態から最も効率的な鍛練と適切な栄養摂取を可能とする。

『幸運』と並び、あらゆる勝負事が成立しなくなるほどの反則的なまでの才能だけど、無能な人間が持ってもただの宝の持ち腐れで、使いこなせるかどうかはあくまで俺次第だから、『幸運』と違ってこちらの才能はある程度気に入っている。

 

「まあヒントは与えたし、謎解きは後でお仲間達とやってね」

 

困惑しながら退場するザキちん達を捨て置き、また鉢巻きをポケットに入れつつ戦況を俯瞰して視渡すと……Aクラスは1騎、Dクラスは2騎失ったものの、Cクラスはリュンケル達大将騎のみと王手をかけていた。

 

「オラオラ5対1だぜ?この勝負貰ったな!」

 

ランスと平田君はアイコンタクトを交わして2騎でリュンケルを取り囲み、他の2騎も少し離れながらも突撃する準備が整っている。あの多勢の状況で1つ鉢巻きを奪っているのでリュンケル達も相当強いんだろうが、彼が俺のように特別な眼を持ってない限りこの状況は詰んでいるように見える。

しかしリュンケルの表情に焦りはまるで見えず、それどころか自分が負ける筈がないと確信している……これは中々面白いショーが見れそうだね。

 

「またテメェか。確か須藤だったよな、さっき俺に踏まれて無様に呻いてた奴だっけか?」

「好きなだけ言ってろ、さっきの恨みここで晴らしてやる」

「騎馬の分際で態度がでかいな。馬を見下ろすってのは、中々どうして気持ちがいいもんだ」

「へっ、馬に乗ってる方が偉いとは限らねーんだよ」

「クク、随分デカい口叩くじゃねぇか。……ならタイマンでもしなきゃ意味ねーよな?」

「……あ?」  

 

おっとここでリュンケルの言いくるめロールが始まりました。相手が挑発に弱い須藤君だし成功率は多分9割強。

 

「5対1じゃなきゃ俺に勝てないなら仕方ないが、勝負ってのは単独で勝ってこそ意味がある。無謀にも本条の奴に張り合ってるようだが、アイツが単独でBクラスを全滅させたのに、テメェは大勢でリンチして勝ち誇るのか?ダッセェな」

「テメェ……!」

「須藤君、龍園君の挑発に乗るのはダメだ」

「……わかってんよ」

「何もわかってねーよテメェは。どうせこいつらにも卑怯な手を使ったんだろ?信頼する俺の仲間が、テメェなんかにやられるわけがないだろうしな」

 

そういやリュンケルを支える小宮君と近藤君は、1学期に須藤君と暴力事件で揉めたっけ。……それよりリュンケルの口から唐突に信頼する仲間なんてワードが出てきたから腹筋がヤバいです。

 

「ざけんな、そのカス共が弱かっただけだ」

「ならタイマンで来てみろよ?俺の仲間を真っ向から打ち破った証拠ってやつをここで見せてみろよ?なあ?もし俺に勝てたら土下座でも何でもしてやるよ」

「……上等じゃねぇか。聞いたろ葛城、絶対手ぇ出すなよ!」

「正気か須藤!?龍園の口車に易々と乗ってどうする!ここは確実に-」

「もし手ぇ出したらお前からぶちのめすぞ!」

 

はい、言いくるめ成功。まさに思う壺、完全に頭に血が上った須藤君は数の利をあっさり捨ててしまいましたとさ。

 

「はいAクラスの騎馬、こっちにしゅーごー!」 

 

邪魔になってはいけないので、ランス達に呼び掛けて騎馬を集めさせる。

 

「俺達を集めてどうするつもりだ?」

「とりあえず俺達の後ろに下がってて。リュンケルの自信満々な態度からして、普通に戦えば鉢巻きは取れないだろうから」

「……坂柳のノートに書いてあったあの作戦か。俄には信じられんな、もし証拠を抑えられたら間違いなく失格だぞ」

「そんなリスクを躊躇する男じゃないでしょ」

 

俺の予想した通り、全力で向かっていく須藤君達に対し、リュンケル達は力を温存したまま戦う。やがて騎手の平田君は1度リュンケルの鉢巻きに手をかけるが、不自然にすっぽ抜けてしまう。

 

「たぶん次がラストチャンスだぞ平田……死ぬ気で奪えよ!」

「……わかった。やってみるよ」

 

果敢な攻めで体力を消耗したのか、平田君達は息を整えて集中する。

 

「食らぇぇえええ!!」

 

須藤君は最後の力を振り絞って体当たりをするが、山田君を中心とした強固な騎馬を倒すにはパワーが足りず、決死の覚悟で平田君は再度鉢巻きに手をかけたがやはりすっぽ抜け、カウンターの形で逆にリュンケルに鉢巻きを奪われてしまった。リュンケルが鉢巻きを高らかに上げると同時に須藤君は膝から崩れ落ち、平田君を騎馬から落としてしまう。

 

「惜しかったな」

「……畜生!」

 

須藤君は怒りのあまり立ち上がり嘲笑うリュンケルを睨めつけるが、コージーに背中を押され外へと出る。あのままジッとしてたらペナルティを食らったかもしれないし、グッジョブだぜコージー。

残されたDクラスの騎馬はリュンケル達に向かっていくが、わざと無防備に構えたリュンケルの鉢巻きに手をかけ、やはり取り切れずカウンターで鉢巻きを奪い取られる。

圧巻の強さでDクラスを全滅させたリュンケルは、次の獲物である俺に視線を向けてきたので、俺も拍手で褒め称えておく。

 

「お見事、惚れ惚れする見事な逆転劇だったよ。……さ、かかっておいで。お望み通りタイマンで相手したげるから」

「はっ、やなこった」

   

リュンケルは俺の提案を一蹴し、不敵な笑みを浮かべて騎馬から地面に降り、自分が着けている鉢巻きを地面で拭う。

 

「ありゃ意外、俺の鉢巻きは欲しくないの?」

「別にいらねぇよ。……運動前に爪の手入れを疎かにするような間抜けに構ってやるほど、俺は酔狂じゃねぇんだ」

「ふむふむ、君って意外と目敏いんだね」

「さあて、何のことだろうな」

 

勝利が確定したことで俺も騎馬から降りつつ、この1ヶ月ずっと伸ばしておいた左手の爪に視線を落とす。あーあ、せっかくの滑り対策が無駄になっちゃったな。

俺とリュンケルがスポーツマンらしく握手し形だけでも健闘を称えあっていると、須藤君が鬼の形相でリュンケルに詰めよってきた。

 

「おい反則だろ龍園テメェ!鉢巻きに何塗り込みやがった!?」

「あ?知らねーよ。大方髪につけたワックスだろ。負け犬がピーピー喚くんじゃねえよ」

 

リュンケルは鬱陶しそうに須藤君に鉢巻きを渡すが、当然証拠は隠滅済み。審判が睨んできた辺りでコージーに諭され、須藤君は怒りが収まらないままテントへと戻っていった。

 

「テメェらも災難だな、足手まといクラスと組まされてよ」

「別に問題無いよ、勝つのは俺達だし」

「クク、相変わらず大した自信家だ。……まあ今回はそうだろうよ。今の内に祝勝会の段取りでも考えておきな」

 

そろそろ俺達にも注意が入りそうなので、それぞれお互いのテントへと戻る。……やはりある程度の勝敗を度外視してでも、リュンケルはDクラスを苛め抜きたいようだね。

 

 

 




はい、桐葉君の切り札の正体は『天帝の眼』でした。しれっとあの作品に出てくる特殊な眼の効果を全て内装しています。
ビジュアルイメージに虹村さんを参考にした時点で捩じ込んでやろうと決めていました。
特別試験でのリーダーや優待者を秒で当てられたのもこの眼のお陰です。心拍や筋収縮に乱れのある人に注目して、あとは適当に話術で揺さぶれば確定です。
また肉体を観察して最も効率的な鍛え方ができるので、ホワイトルームと遜色ないレベルの鍛練を行うことができます。
 


何気に神室さんもひっそりと大活躍。万引き熟練者も中々侮れませんね。そして葛城さんに指揮を任せると言いながら、実は大して信頼していない有栖ちゃんマジ有栖ちゃん。


ここまで向かうところ敵無しだった桐葉君に、次回Dクラスからあの男が立ちはだかる……!
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