女王の女王   作:アスランLS

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原作だと空手部は無いのですが、この作品ではあることにします。


クイーンボーイ

 

この俺、本条桐葉の朝は早い。

平日休日関係なく毎朝4時には起床し、朝食と花への水遣りを済ませた後、6時までひたすら勉学に励む。まだ授業すらスタートしていない上、正直高一の範囲で躓くような箇所は一つとして無いので、内容は先を見据えての自習がメインとなる。

勉学を終えた後は登校時間の少し前までひたすら肉体の鍛練。怪我に配慮しつつの入念な筋力トレーニングを終えてから、持久力を伸ばすため走り込みをしている途中、同じくランニング中だったガタイのいい金髪の男子と遭遇し、気がつけば一緒に走っていた。……こいつかなり体力あるな。割と早めのペースで走ってるのに、涼しい顔でついてきている。昨日の生徒会長といいこいつといい、この学校に来たのは間違いじゃなかったぜ。

 

「フッ、中々やるじゃないかナイトボーイ。どうやら君も私程ではないが、極めて高いポテンシャルを秘めているようだねぇ」

「第一声がそれかい。とりあえずお前が自分大好き人間だということはわかった」

「当然さ。この私高円寺六助は、自分自身が唯一の最高にして、最強の人間であると自負している」

「なるほど色んな意味で大物だね君。まあそれは良いとして……何だナイトボーイって、聞き捨てならないぞ」

 

おそらく有栖お姫様抱っこ事件はおそらく他クラスにも広まっている。それに由来しているんだろうが……断じてそのニックネームは認めん。

 

「君をナイトボーイと呼ぶのは私が決めたことさ。君が認めようが認めまいが私には関係──」

「ナイトなんざチェスだとトリッキーな動きができるだけで、そこまで大して価値無いだろ。せめてクイーンボーイにしてよ」 

 

高円寺はきょとんとした表情になると、優雅に髪をかき上げて笑いだす。

 

「はっはっは!君は私が思っていた以上にユニークなボーイのようだねぇ。本来なら私は誰の指図も受け付けないのだが……楽しませてくれた礼だ、君の要望通りこれからはクイーンボーイと呼ぼうじゃないか」

「話せばわかる奴で何よりだぜ。それじゃあほれ、リクエスト受理の礼。お前にピッタリの花だろ?」

 

俺は懐から取り出した2輪の花を投げ、高円寺はそれをキャッチして薄く笑う。

 

「スイセイランにダリア、か。……つくづく興味深い男だねぇ、クイーンボーイ」

「お気に召したようで何より」

「普段は男にしろ女にしろ年上でなければ興味が無いのだが……この学校を卒業した後、私が継ぐ高円寺コンツェルンで働かないかね?」

「申し出はありがたいが却下だな。俺の今の将は有栖だし、今日あったばかりの奴に鞍替えするほど尻軽じゃないんでね」

「フッ、それを聞いて安心したよ。もしここで簡単に飛び付くようなら君に対する興味を失っていただろう」

「自分で誘っといて勝手な奴だね君」

「それが私さ。まあ高校生活は始まったばかりだ焦る必要はない。この三年間で君は、私が従うに値する男だと身をもって知るだろう。それではシーユー、クイーンボーイ」

「そーかい、まあ期待はしておくよ。じゃあな、Mr.シックス」

 

六助だからMr.シックス。我ながら安直なネーミングである。

 

 

 

 

 

やや時間が押していたので急いで身嗜みを整え、寮のロビーにて有栖と待ち合わせしてから登校する。

授業初日ということもあって大半は退屈な勉強方針の説明だけだった。教師達は授業中に私語しようが全く注意しないし、まだSシステムを理解していない生徒は緩すぎると拍子抜けしていることだろう。

それにしても無所属の生徒は放っておくとして、有栖の方の取り巻き達が模範的な学生態度を徹底しているのに、葛城の方の生徒……確か戸塚とかいう奴の私語が少し目立った。葛城は真嶋先生の説明の不審な点に感づいていた筈だが、まさか取り巻きに情報を共有していなかったのか?……と思っていたら昼休み、葛城から説教されて項垂れていた。ただあいつが無能なだけかい。

 

「……どうやら葛城君は、あくまで個々に反映されると考えているようですね」

「だな。そうでなければ一限目終わりには戸塚の私語を慎ませていただろうし、もっと言うならクラス中に情報の共有を徹底していただろうな」

 

食堂にて有栖及びパシリ達とランチタイム。学食派の生徒達が混み合って騒がしいため、悪巧みの密談をするにはもってこいのスポットだ。

食生活に気を浸かっている俺は弁当だが、他の奴は普通にエビフライ定食だのハンバーグ定食だのを注文していた。

 

「いやいや本条よぉ、せっかく食堂に来たんだからなんか頼めよ」

「うるさいな橋本、栄養バランスには人一倍気を遣ってるんだよ。体造りはとりあえず食生活からだ」

「あんな気取った自己紹介をしたのに、随分ストイックな奴だな」

「放っとけ鬼頭。あと君なんで食事中も手袋着けたままなの?」

「秘密だ」

「さいですか……」

 

誰が聞き耳を立てているかわからないので、最低限の会話で情報の擦り合わせが終わった後、パシリ達と他愛もない雑談に興じていると…

 

『本日午後5時より、第一体育館の方にて部活動の説明会を開催いたします。部活に興味のある生徒は──』

 

スピーカーから昨日知り合った書記ちゃん先輩のアナウンスが流れてきた。ふむ、放課後に部活動紹介か……昨日会長さんにも校則違反ではないと確認取ったし、獲物の品定めと参りますかね。

 

「皆は入りたい部活とかあるのか?ちなみに俺はテニス部に入るつもりだけど」

「チャラい橋本にはピッタリだな」

「放っとけ!?」

「私は遠慮しておきましょう。多少興味を惹かれるのはボードゲーム部ですが、所属したいとまでは思いません」

 

多分俺と打ってる方が楽しいだろうしな。

 

「本条はどうするんだ?」

「いくつか候補はあるが……とりあえず個人スポーツのどれかだね」

「へぇ、なんで個人限定なんだ?」

「そんなもんいつ飽きてやめても、あまり迷惑がかからないからだよ」

「最後まで続けるという選択肢は無いのか……」 

 

鬼頭も橋本も呆れているが、資金繰り目的なんだからしょうがない。一月で500万なんて膨大なポイントを集めようと思うなら……溜め込んでる先輩達から毟り取るのが一番手っ取り早いからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた放課後、部費のために部員を獲得しようと意気込む先輩達の熱心な部活紹介を聞き流しつつ、ターゲット……ある程度部員が充実している個人技の部活を5つほど見繕いつつ、会長さんの生徒会勧誘演説を聞き届ける。

 

「私たち生徒会は甘い考えによる立候補を望まない。そのような立候補者は落選して恥をかくだけでなく、この学校に汚点を残すことになることになるだろう。我が校の生徒会には規律を変えるだけの権利と使命が認められ、求められている。その覚悟を持つ者のみ、歓迎しよう」

 

勧誘というか警告ともとれる内容だったが……流石会長さん、有栖に勝るとも劣らない“将”の器だ。誰一人として私語を挟むことなく聞き入っていた。   

 

「さてと……狩りの始まりだぜい」

 

入部受付係を残して各部活の部員達が引き上げていくのを見届けてから、俺は行動を開始する。貰ったパンフレットでターゲットの部室位置を確認し、ここから一番近い空手部へと足を運ぶ。

 

「たのもー。本条桐葉、華麗にさんじょー」

 

気の抜けた挨拶とともに部室のドアを開けると、鳩が豆鉄砲を食ったような先輩達がおよそ10名ちょい。

  

「……新入生、か。橘の話を聞いていなかったのか?入部受付は第2体育館だ」 

 

なんか主将らしき人が呆れたようにやんわりと注意してきた。まあこのタイミングで訪ねてこられたらそう思うわな。

 

「いえいえ先輩。俺は入部希望者じゃなくて、まあ道場破りみたいなもんですよ」

「道場破り、だと?」

「この学校ではポイントを用いた賭博行為が合法なんでしょ?ポイントを賭けて空手で勝負してくださいよ」

「「「っ!?」」」

 

先輩達のほとんどが瞠目した。学生が10万円分のポイントを貰ったら多かれ少なかれ浮かれるものだし、普通いきなりそれをさらに増やそうなどとは思わないだろうからな。しかし主将らしき人は落ち着いた様子で首を振った。

 

「確かにポイントによる賭け事を挑むことは学校は認めている。が、それに応じるかどうかは自由だ。俺達はこの後入部希望者達への対応をしなければならない。君のような業突く張りの相手をしている暇は-」

「いやいや、あんたらにはそんなことする必要も資格も無いっしょ?」

「……なんだと?」

 

主将らしき人は不快そうに眉を吊り上げる。俺と同じような考え方の奴が他にいないとは限らないからな、ここは引き下がれない……多少ヘイトを稼いでも闘ってもらうぜ先輩達。

 

「さっきも言ったように、俺は道場破りみたいなもんですよ?そんな相手から挑まれた勝負から背を向けるようなプライドの低い腰抜けが、後輩を教え導く資格があるとでも?」

「ッ!?テメ、一年の分際で言わせておけば舐めやがって!」

「やめろ瀬川!」

「でも主将っ!」

 

気性の荒い坊主の先輩が俺に食ってかかろうとするも、主将に手で制される。さて、ここまでコケにされてそれでも黙っているような人達なら毟り取るのは諦めよう。なんか可哀想だし。

 

「まあそんなに俺が怖いなら仕方ないか。じゃあねチキン先輩達、自己満足の空手ごっこ頑張ってください」

「っ!!!待ちやがれこの糞ガキ!」

 

立ち去ろうとする俺だったが、瀬川先輩に胸ぐらを掴み上げられる……痛いなぁもう。

 

「どしたんすか?」

「上等だ、テメェの挑戦受けてやるよ!叩きのめしてやる!」

「瀬川!」

「止めないでください主将!主将を、俺達を、俺達の空手をここまで虚仮にしたこいつを、ただで帰す訳にはいかねぇ!」

 

釣れた釣れた♪こういうタイプは扱い易くて助かる。無能な味方は有能な敵より厄介なら、無能な敵は有能な味方より頼りになるのさ。

   

「いいんすか?分不相応の虚勢は後で恥をかくだけですよ?」

「くどいぞガキ!その腐った根性俺が叩き直してやる!」

「そうこなくっちゃ♪……ああでもまずは一番弱い人から順がいいです」

「ハッ!大口叩いといてビビったのかガキ!今なら泣いて謝れば許してやらんことも-」

「いやだって毟れるだけ毟るつもりで来たのに、先に強いの倒しちゃうと小便漏らされて対戦拒否されるじゃないすか?」

「こ、こいつっ……!」

「あ、それとも瀬川先輩が一番弱いですかー?いや~ん、威勢だけの口だけ男~♪」

「ぶち殺す!」

「やめろ瀬川」

 

試合を無視して殴りかかる勢いの瀬川先輩の間に、主将が割って入った後、敵意のこもった目で俺を睨む。

 

「……ではこうしよう。君が瀬川に勝った後、試合を放棄した者は不戦敗とし君に30万ポイント支払うというルールでどうだ」

「俺は別にそれで構わないっすけど、主将だからってそんなこと簡単に決めていいんすか?」

「心配は無用。あれだけ侮辱されて引き下がる者など、うちの部にはいない」

 

辺りを見回すと、皆敵愾心剥き出しの目で俺を睨んでいる。なるほど闘争心腐ってる奴はいないってことね、安心したよ。

 

「それじゃあ……闘り合いましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ、久し振りの実践にしては上々か」

 

空手道場にて、死屍累々に横たわる先輩達を他所に、たった今下した主将からポイントを受け取りつつ満足そうにそう呟く。先輩ら大丈夫かね?……ちゃんと手加減したから怪我はしていないと思うが、精神的なダメージは流石にどうしようもない。

 

「ええと、大丈夫っすか主将?思ったより手強かったんで強く打ち込み過ぎちゃったか心配なんですけど」

「ああ、体の方は問題ない……これでも都大会で準優勝した実績があるのだがな、信じられないほどの強さだ……堀北が興味を持つだけのことはある」

「他の人と違って俺のこと値踏みするような目で見ていたと思いましたけど、会長さんから俺のこと聞いてたんすね。……じゃあこんなあからさまな罠に踏み込んじゃ駄目でしょうが」

「俺にも主将としての面子がある。部員達皆が闘うつもりなら、俺もおめおめと引くわけにはいかん。それにあのままでは君が入部した後部内に軋轢を生む。こうして実力を示せばそれも多少は改善──」

「あ、俺まだ入部すると決まった訳じゃないすよ」

「「「……は?」」」

 

いつの間にか起き上がっていた先輩達の目が点になる。やっと復活したか、安心安心。

 

「いやなんでだよ本条!あんな強ぇんなら迷う必要無いだろ!」

「意外とフランクな人なんすね坊主先輩」

「瀬川先輩だ!というか話を反らすな!」

「空手が強いからって空手部に入らなきゃいけない決まりなんてないでしょうに」

「そ、そりゃあそうだけどよ……」

「はいはい早とちりしない、別に入らないとは言ってないすよ。……はい主将コレ」

 

鞄から予め用意していた紙を渡すと、主将は怪訝そうに俺を見る。

 

「契約書、だと……?」

「そ。別に入部するのは構わないっすけど、相応のポイントを支払って貰うっす」

「はあっ!?なんだよそれ!?」

「これは趣味ではなくビジネスということすよ。会長さんから俺のこと聞いてるなら、俺がSシステムについてほとんど把握してるって知ってるでしょ?……入部に契約金としてポイントを要求する代わりに、俺は入った部活の大会で必ず結果を出し、部に栄光をもたらすと約束しましょう」

「……なるほど。もし仮に結果を出せなかった場合契約金は全て返還する、か」

 

俺の渡した契約書を読み終えた主将は、納得したように頷いた。

 

「だが本条、何故肝心の額が空欄なんだ?これでは君にいくら払えば良いのかわからんぞ」

「額は先輩らが相談して好きに決めてください。俺は他にも4つほど部活を回って同じことをして契約書を渡してから、まとめて回収して待遇が一番良い所に入部します」

「お、お前他の部からも毟るつもりかよ!?まだ入学したてのお前がそんなにポイント集めて何するつもりだよ!」

「さあ?」

「……は?いや、さあ、ってお前……」

 

完全に混乱状態の坊主先輩。まあ他人からすればワケワカメになるのは当然かな。

 

「いやそれがね先輩。うちのクラスに中学からの付き合いの子がいるんすけどね、そいつがまあ人遣いの荒い女でね、『来月までに1000万死に物狂いで集めやがれ(意訳)』なんて言うんですよ」

「いや無茶苦茶だなその女!?ブラック企業も真っ青だぞ!」

「まああいつのムチャぶりは今に始まったことじゃないから別に構わないんすけど、そんな訳で資金繰りにも手段を選べなくて。おかげで不慣れな挑発なんてやる羽目に……すんませんね先輩方、さっきは好き放題コケにして」

「あー……気にすんな、お前もお前で大変なんだな」

 

空手部員達からの同情を買いヘイトを打ち消すことに成功。すまん有栖、この人達の中でとんでもない悪女になっちゃった。しれっとノルマ500万水増ししちゃったけど許してね。

 

 

 

そして一週間後……柔道部、テニス部、陸上部、水泳部の先輩達から搾取しつつ(初日じゃなかったため挑発しなくても普通に引き受けてくれました)最後に契約書を纏めて回収、審査の結果選ばれたのは200万ポイントの空手部でした。

 

 

 

 

 




ばんぱかぱーん!

高円寺と仲良くなりました。
ポイントを大量にゲットしました。
部活動に所属している二年経由で主人公の存在が南雲先輩に知られました。
空手部員達からの有栖ちゃんの好感度がすごく下がりました。

傭兵ポジの桐葉君は今後ほぼ幽霊部員となるので、空手部のオリ生徒達は多分今後出番ありません。
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