桐葉「重ね重ね宣伝するけど、よう実2期は毎週月曜日に絶賛放送中だよ♪」
龍園「今やってる範囲は船上試験だな。テメェら俺様の大活躍をしかと見届けろよ?」
桐葉「ところでリュンケル、伊吹ちゃんは何故エンディングであんな体勢になってたの?」
龍園「あ?知らねぇよ。這いつくばんのが好きとかそんなんだろ多分」
桐葉「なーんだ、そういうことか」
「「はっはっはっはっは」」
伊吹「アンタら蹴り殺されたいの!?」
10月中旬。そろそろ衣替えを検討しなければならないこの時期、全校生徒は体育館に集まり生徒会長の交代式に出席していた。
会長さん……いや、元会長さんが非常に短くまとめた辞任演説を粛々と済ませると、続いて次期生徒会長のみやびん先輩がマイクの前に立ち、途中までは非常に礼儀正しく就任の挨拶を行っていたのだが、不意に危ない気配を漂わせたかと思えば、生徒会の仕組みを一新すると高らかに宣言した。
役員の任期を在学中無期限化、規定人数制限の撤廃、不適格な役員の投票による罷免制度……つまりこれは、以前みやびん先輩が言っていたことへの第一歩なんだろうね。
「ここに集まった生徒、先生方、そして前生徒会長の率いた生徒会の皆さんに宣言させていただきます……私は歴代の先輩方が惰性で護ってきた、不必要な伝統を全て棄却し大革命を起こし、この学校を真の実力主義の学校に変えていきますので、どうぞよろしくお願いします」
これまでの元会長さんの活動を全て否定するような挑戦的な演説だが、終了後2年生のほぼ全員が賛同するように大きな拍手を行った。流石みやびん先輩、どうやらカリスマだけなら元会長さんをも凌駕しているようだ。
「それでコージー、体育祭以降何かしら変化があったんじゃない?例えばそれまで仲良くしていた男子と疎遠になったり、特に仲良くもなかった女子から連絡先を聞かれたりとか」
「……お前は超能力でも使えるのか?寸分違わず当てられて少し怖くなったんだが」
「うんにゃ、ただの予想。出し惜しみされてたと知ったら友達は多分良い顔しないだろうし、逆に女の子とかは意外とそういう部分にキュンときたりするもんだよ。……もしかしてコージー、たかが足の速さくらいとか高を括ってたんじゃない?」
「見通しが甘かったのは否定はしない」
お花を摘みにいったら偶々コージーと会ったので、つれションがてらちょっとした雑談に興じる。彼は有栖の言うホワイトルームとやらの最高傑作らしいのだが、だったら何故その施設はもう少し一般常識を教えてやらなかったのだろうか。足の速い男子なんてある程度モテるに決まってるでしょうが。……それにしても、
「わー、すげー」
「……どうした?」
「随分と日本人離れした凶悪なブツをお持ちで。……それもホワイトアスパラとやらの教育の成果なの?」
「ホワイトルームな。あとあまりジロジロ見るな気色悪い」
嫌でも勝手に視界に入ってくるんだから仕方ないだろ。ごめんね世界一眼が良くて。
「まあそれはそうとコージー、多分リュンケルは水面下で君のことも色々探っているだろうけど……もし俺が何故君をアダ名で呼ぶのか聞かれたら、俺より足が速いことを以前から知っていたと答えればいいのかなー?」
「話が早くて助かる。……でもいいのか?龍園なら何か隠してないか、暴力に訴えてくることも考えられるぞ?」
「水臭いなぁ、友達じゃないか」
あんな破天荒なナリで意外と目敏いリュンケルは、俺の呼び方の法則に感づいていても不思議じゃない。何の取り柄もない生徒と周囲に思われていたコージーが俺に気に入られている理由について、遅かれ早かれ探りを入れてくるのはわかっていた。もしそうなったら口八丁にどうにか誤魔化そうと思っていたが、足の速さという逃げ道ができたからそんな必要も無くなった。……もしかしてコージー、それも折り込み済みだったのかね?
「だけど有栖に関しては自力で対処してね。あの子ずっと君と戦いたかったみたいだし、ちょっとやそっとじゃ逃げられないと思うけど」
「それも完全に計算外だったな……」
無表情で天を仰いで後悔するコージー。まあ有栖は平穏を求める人間が関わりたくない奴No.1を争う逸材だろうからね。
「まあしばらくは気にしなくても大丈夫だよ。リュンケルとか櫛田ちゃんとか、君が色々と面倒な案件を抱えてるのは有栖もわかってるだろうし、事を荒立てるような真似はしないさ」
「櫛田のことまで筒抜けか……もしかしてあいつは、既にお前達とも繋がってるのか?」
「んーん。あの子は他クラスと手を組んでまでホリリンを貶めたいんだろうけど、俺や有栖に取り入るのは多分最終手段だと思うよ。俺、あの子に嫌われてるし」
「お前もなのか……何か心当たりは?」
「さあ?知らないし興味も無い。つまらねー奴に嫌われてようがどうでもいいし」
あまり長時間話し込むとそろそろ誰かがやってくるだろうし、この辺で打ち切って手を洗う。
「それじゃあ色々と頑張れよコージー。友達として、君が平穏を取り戻せることを応援してるから」
何かを探るような目でこちらを見るコージーをスルーして、俺は男子トイレを後にした。
某日、中間テストの結果が発表された。
トップはいつも通り俺と有栖……だけでなくランスも満点で同率1位だった。今回は全体的に難易度が低く、あとランスは体育祭で入賞した報酬を点数に変えていたのでこういう結果になった。有栖は無条件で下位10名のペナルティを食らいマイナス10点されたが、学校に100万ポイント払うことで10点分を補填していた。負けず嫌いもここまでくると清々しい。一方何百万単位で結構散財してるのに何故か5月に俺が渡した500万からあまり減ってないことから、有栖は有栖で何かしらの方法でポイントを稼いでいるみたいだ。
ちなみに体育祭で俺の次に大活躍したマスミンは、報酬を全てプライベートポイントに変えていたにも関わらず、なんと真ん中に近い成績を叩き出していた。
1学期の頃はファルコンや戸塚と最下位争いしてたのに随分成長したねあの子も。時間を見つけて有栖がマンツーマンで勉強を見ていた成果だろうね。あの子はツンデレだから余計なお節介だとグチグチ言ってるけど。
……え?最下位?戸塚に決まってるだろ。ファルコンは報酬を点数に変えてたからアイツ以外いない。
「……さて、既に各教科の先生方から繰り返し聞かされているだろうが、来週期末テストへ向けて8科目の問題が出される小テストを実施する」
テスト結果が表示されたポスターを丸めつつ、真嶋先生は話を切り出し始める。二学期は定期テストの間隔が非常に短い。
「この小テストは全100問の100点満点。内容は全て中学3年レベルの問題で成績には一切影響しない。0点だろうと100点だろうと取って構わん」
「つまり、次の期末試験に大きく関わってくるということですか?」
クラス全員が予想した内容を、代表してランスがそう質問する。こういうとき有栖は滅多に口を挟まないので、ランスが前に出ることがテンプレになりつつある。
「その通りだ、流石に額縁通りに受け取る者はもういないだろうな。……その小テストの結果に基づき、クラス内の誰かと2人1組のペアを作り、そして次の期末試験はそのペアが一蓮托生で挑むことになる」
その後真嶋先生はの期末テストのルールについて説明していく。内容をまとめるとて
・試験は8科目の各100点満点、各科目50問の合計400問。
・各科目でペア同士の点数を合計して、60点未満なら赤点となり2人とも退学。
・総合点もペアで合計して、学校が設定したボーダーを下回れば赤点となり2人とも退学。ボーダーは例年だいたい700点前後。
こんなところか。例年この特別試験……その名も「ペーパーシャッフル」ではおおよそ1~2組の退学者が出ているらしいが……うちのクラスからはまあ出ないだろう。ビリの戸塚でさえ平均60前後あるし。皆もそう思ったのか、クラス全体で特に緊迫感は感じられない。
ペアがどう決まるかについては……まあ簡単に推測できるね。完全にランダムならDクラス辺りからもっと退学者が出てもおかしくない。
「そしてもう一つ。期末試験では出題される問題をお前達が作成し、その問題を他の3クラスのどれかに割り当てる……つまりどれか1クラスに対して攻撃を仕掛けるということだ。お前達と相手のクラスの総合点を比べ、勝ったクラスが負けたクラスから50ポイントを得るというルールだ」
おっと、自分好みのルールを聞いた有栖ちゃんの目が輝き出しましたね。攻撃大好きなこの幼女は、今頃脳内でどのクラスを蹂躙しようか考えてるんだろうね。
「2クラスがお互いを攻撃した場合1度で決着が着いてしまいますが、その場合移動するポイントはどうなりますか?」
「直接対決になった場合は1度に100ポイント移動すると決まっている。また滅多に無いとは思うが、総合点が同じの場合ポイントは変動しない」
「テストを製作する上での制限は何ですか?無条件ならとんでもなく高難度かつひねくれた問題がまかり通ってしまいます」
「提出する問題は私達が公平かつ厳正に審査する。指導要領を超えていたりよほど引っ掛けが悪質な問題等はその都度修正が指示され、そのチェックを繰り返すことによって問題文と解答を完成させていくことになる」
合計400問、か。人数を分ければそれに比例して難易度にバラつきが生じるだろうし、有栖の性格から考えると問題は全て一人で、ないしは俺と2人で200問ずつ作ることになるだろうか?……いや、下手したらもっとハードな作業になるかもね。
「問題を作る際の方法には特に制限は無い。他クラスの生徒を頼ろうが教師に相談しようがネットを参考にしようが、全てお前達の自由だ。万が一問題作成が間に合わなかった場合学校側が用意することになるが、難易度がかなり低めになると肝に銘じておけ」
「我々が受ける期末テストも、当然他クラスの考えた問題ということになりますね?」
「そうだ。そして肝心のクラスがどこなのかだが……お前達が攻撃したいクラスを私が上に報告し、その際別のクラスと希望が被った場合は代表者を呼び出してくじ引きを行う」
そうなったら間違いなく俺が行かされるね、うん。
「逆に指名が被らなければそのまま確定し、そのクラスに問題を出題する。どのクラスを指名するかは小テストの前日に聞くので、慎重に考えて決めるように。……これ以上質問がなければ説明を終了する」
真嶋先生はそう締め括り、その日の授業は幕を閉じた。
「ペアについてはどういう組み合わせになろうと、絶対に赤点のボーダーは下回らないでしょうから考えなくてもいいでしょう。はっきり言って時間の無駄です。そして今回の試験で最も肝心要となる、攻撃するクラスについてですが……」
そのまま放課後になり、有栖は体育祭のときとは違って実に楽しそうな様子で教壇に立ち、今回の方針をクラスメイトに伝える。
「Bクラスを指名しようと思います」
「待て坂柳、それはあまりにもリスクが大き過ぎる」
有栖の決意表明にランスが早くも難色を示す。完全に野党みたいな立ち位置になっちゃったね君。
「リスク、ですか?」
「これまでのテストの平均点から考えても、Bクラスの学力は俺達とほとんど差は無い。そして当然Bクラスも俺達を攻撃してくるだろう。万が一敗北すれば一気に差を詰められて-」
「だからこそのBクラスですよ。ここで勝てばBクラスを突き放し、一気に独走態勢に入るでしょう?」
うーん……こればっかりは永遠にわかり合うことは無いんだろうな。とにかく慎重なランスはほぼ確実に勝てるDクラスを指名したがるだろうけど、ひたすら好戦的な有栖はリスクを負ってでも一番迫っているBクラスを叩きにかかる。
どちらが正しいのかは知らないけど……このクラスでどちらが正義かは考えるまでもない。
「葛城君。貴方はこれまでその堅実な方針でクラスを率いて、ちゃんと結果を残すことができたでしょうか?」
「何……?」
「桐葉が部活や体育祭で色々と頑張ってくれたので、現時点でもBクラスとの差はそれなりにありますが……彼がいなければ、今頃Bクラスに降格していたかもしれませんね」
10月の始めに公開された各クラスのクラスポイントは、俺達Aクラスが1073、Bクラスが694、Cクラスが522、Dクラスが268ポイント。一見Aクラスが独走しているように見えるが、俺がIH優勝で得た計150ポイントが無ければ5月のときよりも減っている計算になる。船上試験での狙い撃ちが大分響いてるな。
「もとより貴方の意見など聞き入れるつもりはありません。私の方針にいちいち口を挟まないでください」
「くっ……!」
ランスは悔しそうに顔を歪めるが、これまで結果を残せていないのは事実なので押し黙るしかない。舎弟の戸塚は有栖に対してランス以上に苛立っている様子だが、確実に最も足を引っ張ってるあいつが抗議してもクラス中から総スカンを食らうだけだ。本人も流石にそれは自覚しているため、歯を食い縛って堪え忍んでいる。
「でもよ姫さん、Bクラスが手強いのは事実だぜ?俺達もみすみすクラスポイントを減らしたくないし、明確な勝算があるならもったいぶらずに教えてくれよ」
「わかっていますよ橋本君。私はもとより一之瀬さん達を捩じ伏せるため、最善を尽くすつもりです。まず試験問題400問は私と桐葉で作成します」
まあここまでは予想通り。
そしてたった今、有栖は最善を尽くして勝ちに行くと宣言した。つまり……
「問題の作成を済ませましたら、放課後にクラス全員参加の勉強会を開こうと思います。そして今回その勉強では……
私と桐葉が教鞭を取りましょう」
はい来たよ、中学以来になる地獄の幕開けが。
俺を馬車馬のように酷使しつつ、クラスメイト達も容赦なく勉強地獄に叩き落とし、ついでにBクラスの心も折りにかかる……やっぱこの娘、真性のサディストだ。
6~7巻はAクラスだと特に山場も無いので、少々ハイペースで進めたいと思います。