女王の女王   作:アスランLS

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お気に入りが、とうとう3000の大台を越えました……!3000と言ったらアレですよ?ブルーアイズの攻撃力を上回りましたよ?海馬社長の「おのれぇええええ……!」という声が聞こえてくるようです。



アスランLSは高橋和希先生のご冥福をお祈りします。


勉強会

 

植物庭園『ルビカンテ』。 

夏休み終盤に元会長さんを通して学校側に申請し、つい先日にようやく設立された俺の楽園である。敷地内のスペースには限りがあるため、広さは精々スーパーぐらいとやや控えめ。ちなみに施設名はスポンサー権限で俺が名付けた。理由は火を点けたらよく燃えるだろうから。

本来の植物園は大学や研究機関等が植物学研究のために用いる植物を収集・分類・栽培し、それらの標本を保管するための施設なので、ただ多種多様な植物を集めて管理しているだけの施設であるここは厳密には植物園ではないのかもしれないが……まあ細けーことはいいだろう。

入場料は100ポイントと格安だが、遊びたい盛りの高校生がこんな地味な施設を好む筈も無く、また自習に利用するにしても図書館の方が適切であるため、オープンしてまだ数日だと言うのに俺と有栖、そして係りの人以外誰も入っていない。……多分俺の卒業か退学と同時に閉園になる運命だろうな。

俺と有栖は施設内に用意されたテーブルに座り、ペーパーシャッフル用の問題製作に取り掛かっていた。攻撃する相手がCクラスとかなら見張り用にマスミンを起用しただろうが、卍解ちゃん率いるBクラスが相手ならそんなことに気を配らなくていいだろう。問題用紙を事前に盗み見ようとか、絶対しないよあの子達は。

 

「……ところで有栖。いやまあ大方予想つくけどさ、今回コージー達Dクラスに挑まなくて良かったのかい?」

「大方予想つくならいちいち聞かないでください。何も考えず綾小路君に挑んでも、おそらくはまともに取り合ってくれないでしょう」

「まあそうだな」

 

今回のような試験で有栖に勝つ、そうでなくても互角に渡り合ったとなれば、それはすなわちコージーが学年トップクラスの学力を持つ動かぬ証拠になる。平穏を求めるあいつからしたら絶対に歓迎しないことだろう。

 

「それに、学力で彼と張り合うつもりはもとよりありませんよ。私は絶対に勝てないとわかっている勝負をするほど愚かではありません」

「……コージーってそんなスゲーの?」

「少なくとも知識、教養においては私も貴方も彼の足下にも及びません。人が一生をかけて学ぶ程の膨大な内容を、既に彼は習得させられているでしょうから」

「マジかよ、詰め込み教育ってレベルじゃねーだろホワイトナイツ」

「ホワイトルームです」

 

思ってたよりもスパルタな施設なんだな。まだ16年しか生きてない奴にそれだけの教育を施すとなると、人道的な手段では全然時間が足りない筈……教育というかもう虐待レベルじゃないかそれ?

 

「やっぱ世の中広いよなー、まさかそんな漫画の世界みたいな面白施設が実在してるなんてよ」

「……貴方も完全に無関係という訳ではないと言ったら、驚きますか?」

「んあ?」

 

やや居心地の悪そうな、何かを葛藤するように有栖はそう問いかけてきた。どゆこと?

俺が首を捻っていると、少し迷いつつも意を決したように有栖は言葉を続ける。

 

「綾小路君の父親にしてホワイトルームの責任者と私のお父様……そして貴方のご両親は、古くからの友人だそうです。お父様や貴方のご両親はその方を先生と呼んでいることから、決して対等な関係ではなかったようですが」

「へえ、そうなんだ」

 

凡庸ながらも善良に生きていた筈なのに、どこか後ろめたい感情をいつも抱えていたのは、裏で何かヤバいことに関与してたって訳ね。どうでもよかったから詮索はしなかったけど、流石に予想できなかったな。

 

「……予想はしてましたが淡白な反応ですね。聡明な貴方ならホワイトルームが色々と問題を抱える施設だと気づいている筈……それにご両親が関わっているかもしれないことに、何も感じないのですか?」

「いや別に?あの人達はもう既に俺を我が子とは思えないだろうし、俺の方からも特に思うことは無いよ」

 

拒絶されている自覚はあるし、それに対して特に不満も無いが、あの人達のために脳のリソースを無駄遣いする気も無い。率直に言って時間の無駄だろうしな。

……ただ俺の両親の話になると、決まって有栖が悲しい表情になるから罪悪感が湧くんだよなぁ……さっさと話題変えよ。

 

「そんなことより有栖、たった今聞き捨てならないこと言ったよね?俺の両親と坂柳パピーが昔からの知り合いって何?そんなこと初めて聞いたよ俺」

「え?……あっ」

「ということは有栖もしかして……中学で俺と会ったときには、実はもう俺のこと知ってたんじゃない?」

「えっと、その……そうなりますね……」

 

露骨に視線を逸らす有栖。脈拍も乱れ、何故か頬も上気し赤く染まっている。

妙だな……事前に俺のことを知っていたからと言って、だから何だと言われればそれまでの筈……なんでこの子、こんなラブレターを渡す前みたいな感情の乱れ方してるんだ?

 

「有栖、なんで黙ってたのか理由を包み隠さず正直に全部話しなさい。俺に隠し事はできないのは知ってるでしょ?」

「おや、桐葉こそ知っているでしょう?私は貴方の眼を欺ける数少ない人間だと」

 

ある程度冷静さを取り戻したのか、あえて強気に微笑んでみせる有栖。ふむ、確かに一理あるっちゃある。

人は嘘や隠し事をするとき、完全に平静でいることは非常に難しい。表面的には取り繕えはしても呼吸や脈拍、筋肉の収縮には乱れが生じてしまうものだ。俺の眼はそれらの些細な異常を決して見逃さない。 

しかし有栖はその病弱さ故に、普段からそれらがしょっちゅう乱れまくっている。これでは嘘や隠し事をしているのか、ただの素なのか、判別することが非常に困難を極める。

 

……とは言ってもだね有栖、

 

「そんなあからさまにボロ出されたら、眼なんかに頼らなくても普通に気づくわボケい!さあ話せ今すぐ話せ!」

「も、黙秘権をっ、全ての人に平等に与えられた権利を行使しますっ」 

「えーい往生際の悪い幼女め!おとなしく話さねーとその可愛らしい顔に鼻フック食らわせんぞ!」

「誰が幼女ですかぶん殴りますよ-ってちょっ、なんですかその手は、やめてくださいっ。年頃の女性に鼻フックとか貴方正気ですかっ」

「有栖の顔面崩壊まで~、3・2・1…」

「待って待ってストップッ……うぅ……話しますよ、話せばいいんでしょう……!」

 

有栖の恥ずかしい秘密を暴くチャンスを逃してなるものかと、少しばかり強引な手段で聞き出すことに成功した。後でたっぷりとツケを払う羽目になるだろうが……慌てふためく有栖という非常に珍しい光景も見れたことだし、安い代償だ。

 

「……実を言うと私は、元々あの私立中学へ進学する予定は無かったんですよ」

「へ?いや何の話……もしかして、予定を変更してあの学校に通うことになった理由とやらが……」

「……お父様経由で貴方のことを色々と伺って、どうしてもお会いして仲を深めたくなって、貴方と同じあの学校に入学しようと決め、まし……」

 

最後まで言い切ることができずに、林檎のように顔を赤くさせて俯く有栖。

これはあれだ、幼少期に「大きくなったおじさんと結婚するー」とか言っていたことを、確固たる証拠を添えて親戚本人から指摘された並の羞恥が有栖を襲っているのだろう。率直に言って今の有栖は死ぬほど可愛い。

庇護欲を大いに刺激された俺は黙って有栖の後ろに回り、優しく抱き締めて耳元で静かに囁いた。

 

 

 

 

 

「発想がストーカー予備軍」

 

思いっきりグーで殴られた。

大して痛くはなかったけど、ややデリカシーに欠けていたかなと少し反省。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた小テストの日。

他クラスに出題する問題もようやく提出し終わり、明日の放課後から地獄の勉強が開かれる。まったく、忙しいったらないぜ。

ちなみに攻撃するクラスの指名は一切被ること無く、AとB、CとDがそれぞれ直接対決する構図となった。まあCクラスがDクラスを指名することはわかりきっていたけど……Dクラスが櫛田ちゃんという裏切り者を抱えながらCクラスを指名するのは、何か考えがあってのことなんだよな?ホリリン、そしてコージー、頼むからガッカリさせないでくれよ?

肝心の小テストは問題なく終了し、翌日の4時間目には早くも返却された。ちなみの俺のペアはファルコンで、マスミンはランス、橋本は元土肥ちゃん、そして有栖は戸塚だった。何やらぎゃーぎゃー喚いていたが有栖は無視していた。

真嶋先生曰くペアは点数の最大点と最小点の差が広い生徒から順に組み、点数が同じ場合はランダムで選ばれるそうだが……まあ正直どうでもいいな。俺と有栖が教鞭を取る以上、たとえファルコンと戸塚が組んでも赤点になることはなかっただろうし。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた放課後。

クラスメイト達を机に座らせ、有栖は本来教壇のある場所に、自分の机を俺に移させてそこに座った。それぞれの机には自前で用意させた数学の教科書とノート、そして今日の勉強会のために有栖が作成した、応用問題をまとめた冊子が置かれている。

 

「それでは期末試験に備えての勉強会を始めたいと思いますが……葛城君、山村さん、西川さん、的場君、森重君、石田君、島崎君、司城君、真田君……以上の方々は帰って自習で構いません」

 

開始早々、有栖は人数の削減を行った。当然クラスメイト達は困惑し、やはり代表してランスが質問する。

 

「坂柳、それはどういった理由でだ?」

「私も桐葉も、凡人を秀才レベルに引き上げることはできても、貴方達秀才を私達と同等のレベルにまで引き上げることはできません。学年でも屈指の成績を誇る方々には、自習してもらった方が助かります」

 

凡人はどこまで行っても秀才止まりという有栖の持論からすれば、ランス達に勉強を教えるなど時間の無駄だろうしな。

 

「そうか……ならば帰らせてもらう」

 

今回の勉強会の目的は、クラスの学力アベレージ向上。それを理解したランス他8名は、おとなしく帰り支度を始める。

 

「個人的にはそう上手くいくとは思えないがな。お前や本条の優秀さは知っているが、たった2人で30人もの生徒を指導するのは決して容易では-」

「忠告感謝いたしますが、心配ご無用です。私だけなら流石に骨が折れたでしょうが……今回は桐葉がついていますので」

 

ランスの意見をいつものように一蹴し、勉強会が幕を開ける。有栖が教科書を開くことなく、テスト範囲かつ授業で受けたよりも高難易度な内容を口頭で説明し、俺はそれに合わせて黒板に板書をしていく。

そしてある程度進めたところで、俺はクラス全体を眼で観察し……

 

「戸塚、沢田、清水、田宮、鳥羽、里中、マスミン、ファルコン。どうやら理解が遅れているみたいだね」

「「「っ!?」」」

「はい席替えー。今呼ばれたメンバーは教科書とノートを持って、前の人達の席とチェンジしてね。今からしばらく置いてかれかけてる子達に教え直すから、他の人達は配られた冊子の応用問題を解いててね」

 

教師は俺にとって天職の1つだと思う。

何十人もの生徒を一度に教えるのは決して容易なことではないし、ましてや1人1人にきちんと注意を行き渡らせることなど至難の技だ。全ての教師がそれを実行できるなら劣等生などそうそう生まれてこないだろう。一見ちゃんと授業を受けているように見えても、実は心ここにあらずで集中していないケースなど珍しくもなく、授業への理解が遅れているかどうかなど本人から直接聞かなければ普通わからない。

……だが俺の眼を持ってすれば、それらの問題は全て解決する。どれだけ集中して授業を聞いているか、きちんと内容を理解しているのか、俺なら一目見ただけで手に取るように理解することができる。

 

「痛っ!?」

「俺の目を盗んで教科書に落書きとはいい度胸だな橋本、チョークミサイルの刑だ」

「こっちの方全然見てなかったのに、なんでわかるんだよ……」

 

その後、勉強会は6時まで続いた。ただ漠然と勉強させるのではなく無駄な時間を極限まで削り、ゆとり教育を完全否定するかのように詰め込みまくった。まあまだ初日故にこの程度で済ませたが、これから徐々に難易度も一定ずつ上げていく。安息など片時も無く絶え間なく試練を与え続ける。

俺と有栖が教鞭を取る以上、一切の妥協は認めない。

 

……やっぱ俺教師は向いてないかも。こんなスパルタ教育今時流行らねーよ。

 

 

 

 




天帝の眼マジチート。「全てに勝つ僕は全て正しい」とかイキッてしまうのも無理無いわ。

ようやく自分と並ぶ天才を見つけてウキウキして、さりげなくアプローチをかけに行った当時の有栖ちゃん。そのことで数年後に辱しめられるとは夢にも思わなかったでしょう。
 
ちなみに主人公の両親は、“直接的には”ホワイトルームと何も関わりがありません。
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