女王の女王   作:アスランLS

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今回でペーパーシャッフル編は終了です。
案の定盛り上がることなく終結しましたね……でも櫛田さんみたいなのがAクラスにいたら、問答無用で退学に追い込まれるだろうしなぁ……。


期末テスト

 

繰り返される容赦ない勉強地獄に、クラスメイト達が段々と生ける屍になり始めつつも、最上位クラスのプライドからか誰一人音を上げることなく勉学に励み続け、ついに期末テスト当日となった。

俺はいつものように4時に起床し、いつものようにルーティーンをこなした後、これまたいつものように寮のロビーにて有栖と合流し学校へと向かう。

しかしアレだな、男子の制服はカッチリし過ぎて夏場が大変だが、女子の制服は冬場がキツそうだ。もう12月になるのにスカートとか、見ているこっちが寒くなってくる。おまけに下にジャージを穿いたりするのは校則で禁止されてるときた。アレか?世の中は平等であるべきだから、男女共に平等に制服の不便さに苦しめってことか?そんな平等さは誰も幸せにしないだろうに。……いやまあ目の保養にはなるから俺達男子としては大歓迎だけどね。

 

「桐葉、何かよからぬことを考えてますね?何やら私の足にいやらしい視線が向いたを感じました」

「たった今感じたなら間違いなく気のせいだな。だって一緒にいるときは常時エロい目で見てるし」

 

杖でふくらはぎをシバかれた。なんでや。

 

「少し自重を覚えてください。貴方、高校生になってから変態的な言動がちょくちょく増えてますよ?」

「男子高校生なんてみんな変態なんだよ。基本的に思春期まっさかりで、一見クールな奴でも頭ん中はだいたいピンク一色だから」

「まったくああ言えばこう言う……いいですか桐葉。いやらしいことを考えるなとは言いません。それなら私も貴方にとやかく言えませんし……ただ、もう少し外面を気をつけなさい。ただでさえ貴方は色々と目立つのですから」

「えー?お前の頭の中での俺、どんだけすごい目に遭わされてんの?きゃー、有栖ちゃんてばだいたーん」

 

思いっきり股間を蹴り上げられた。

しかも痛みに悶絶してその場に蹲る俺の頭を踏みつつ見下ろすオプション付き。

病弱キャラのくせに俺を〆る時だけやたらアグレッシブになるよね君。

まあこちらも起き上がるついでに、行き掛けの駄賃代わりにスカートの中はしっかりと確認しておく。転んでもただでは起きないの精神である。ちなみに見た目に反して結構大胆なブツをお召しになっていた。マセガキとか言って茶化したら確実に塵にされるからお口チャックさせてもらうけど。

 

「というか心外だね、俺だってちゃんと世間体は気にしてるし。有栖以外にはこんなセクハラ発言、うっかりでもやらかさないよ」

「私にもやらかさないで欲しいんですけどね。どこで誰が聞いてるかわからないんですから」

「俺の眼を掻い潜って盗み聞きできる奴なんていると思う?」

「む……それは、そうでしょうけど……」

「よし不安要素も無くなったことだし、存分にセクハラされるがいい」

「あまり度が過ぎるとお父様に報告しますよ?」

「調子こいてすんませんでした」

「まったく……」

 

とまあそんな感じでいつものように、ひたすらアホな会話を繰り広げながら学校に向かっていたのだが、学年を代表する優等生2人がテスト前にする会話として流石にどうなん?と少しばかり反省し、ちょっとだけアカデミックな内容でも振ってみることにする。

 

「それで有栖、今回の期末テストだけど……勝率はどれくらいかね?」

「ふむ……私の目算では、95%~99%といったところでしょうか?」

「おや、随分と振れ幅があるね」

「知っての通り今回一之瀬さん達と争う際に、私が用いた戦略は2つ。その内の1つはもしかしたら一之瀬さん達も行うかもしれない手段であり、もしそうなれば95%まで下がります」

「まあ卍解ちゃん達なら十分ありえるけど……それでも9割5分ウチの勝ちなんだ?」

「私と桐葉が教鞭を取ったのですよ?対等な条件なら純粋な学力の差で捩じ伏せられます」

 

まあ特に異論は無い。あのクラスの美点にして最大の弱点は、正攻法でしか戦いを挑まないし挑めないこと。だからリュンケルと戦ったら多分後手に回ってしまうだろうし、地力で劣る相手には番狂わせもなく順当に負ける。

 

「私としてはある程度張り合ってもらえた方が嬉しいですね。綾小路君が龍園君達を何とかしている間、暇潰しに一之瀬さんで遊ぼうと思っているので」

「うーわ……こんな性悪女にロックオンされるとか、卍解ちゃんも災難だなぁ。友人として同情するぜ」

「知ってて止めない桐葉に性悪扱いされる筋合いはありません。友人ならば守って差し上げればいかがですか?」

「俺は卍解ちゃんを信じてるからね、彼女ならお前の意地悪くらいきっと乗り越えてくれるさ!……乗り越えられず潰れちゃったらそれはまあ、仕方がなかったということで」

「冷徹ですね」

「俺だってお前に言われる筋合いはねーよ」

 

有栖が遊ぶと言ったからにはそれは本当にあくまで遊びの範疇で、全力で潰しに行くというわけではない。その程度のことを自力ではね除けられないなら、どっちみち卍解ちゃん達はAクラスに上がれはしないしね。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして始まるテストの時間。

予鈴のチャイムが鳴ると共に、生徒達は筆記用具を残して後ろのロッカーの勉強道具を仕舞う。

決められたペア2人で取るべき総合点のボーダーは1600点中692点。俺と有栖はクラス全員を、たとえパートナーが0点だろうと試験を切り抜けられることを目指してひたすら鍛えあげた。……戸塚とかファルコンが少々怪しいが。まあ少なくとも、どのペアも退学はほぼあり得ないと考えていいだろう。

 

「これより期末テストを行う。1時間目は現代文だ。開始の合図まで用紙を裏側にしておくように。試験時間は50分。体調不良やトイレは極力控えるように。どうしてもという場合は挙手をしてから申告すること。それ以外での退出は一切認められない」

 

真嶋先生が1人1人にプリントを配りつつ、テスト直前のお決まりの注意事項を述べる。

程なくしてチャイムが鳴り真嶋先生が開始の合図を出すと、俺達は一斉にプリントを裏返した。

Bクラスが作成した問題文に一通り目を通した結果、俺と有栖は1つの結論に辿り着いた。

 

   

どうやら卍解ちゃん達は俺達と同じように、学校に対してドア・イン・ザ・フェイスを仕掛けたようだ。

 

 

問題を作成する際の注意点として、明らかに難易度が高過ぎる問題やひねくれ過ぎた問いかけの問題は、提出しても学校側にハジかれる。つまり俺達が作成するべき理想の問題とは、学校側からギリギリボツを食らわない問題だ。

しかしだ、問題の是非を審査するのは機械ではなくあくまで教師達人間の手で行われる……それはつまり心理的な駆け引きを仕掛ける余地があるということだ。

俺と有栖が1週間で作成した問題は計1200問。その内最初に提出した400問は、たぶん全てハジかれるであろう高難易度の問題にした。そして次に提出した400問もおそらくは受理されないであろう、かなりひねくれた問題にしておく。それら800問は提出した真嶋先生の見ている前で、修復不可能なレベルでバラバラにしてから破棄した。

そして捨て石である800問の後に提出した400問は、難易度も出題の仕方もある程度抑えられた問題を揃えて提出し、多少の修正の末はあったものの難なく受理された。……ちなみにおそらく最初にそれを提出していたら、多分ギリギリハジかれていたくらいの難易度だと思う。

譲歩的要請法(ドア・イン・ザ・フェイス)……最初にあえて大きな頼みごとをして断らせることで、相手に罪悪感を抱かせることにより、次に提案した小さな頼みごとを相手に受け入れ易くさせるという、交渉術の基礎中の基礎だが、有栖はこの方法を用いて考えうる限り最高難易度のテストを受理させた。

が、俺達の作成したものと遜色無い難易度のこの問題を見る限り、どうやら向こうも同じ手法を取ってきたらしい。これで条件は五分五分、勝敗は純粋な学力勝負に持ち込まれた。……だがそれでも俺達の勝ちは揺るぎない。卍解ちゃん達がどれだけ奮闘しようが、俺と有栖が組めば負ける気はしない。

……まあクラスのことや卍解ちゃん達のことは一旦忘れて、今はこの高難易度なテストを解くことに集中しよう。もしかしたら俺と有栖でも満点を逃すかもしれないし、そうなれば長きに渡る俺達の戦いに終止符が打たれることになる。

 

さあ、かかってこい有栖……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【二学期期末テスト成績優秀者一覧】

 

1位 Aクラス 坂柳有栖   800点

1位 Aクラス 本条桐葉   800点

3位 Dクラス 堀北鈴音   756点     

4位 Dクラス 幸村輝彦   733点

5位 Aクラス 葛城康平   728点

6位 Aクラス 的場信二   715点

7位 Cクラス 椎名ひより  708点 

7位 Aクラス 山村美紀   708点

9位 Bクラス 一之瀬帆波  702点

10位 Dクラス 王美雨    697点 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局今回も決着は付かなかったな」

「そうですね」

「しかしお前ら、あの高難易度テストでも満点かよ……頼もしいやら恐ろしいやら」

「敵対しなくていい分、俺達は恵まれている」 

「~♪~~♪」

 

ペーパーシャッフル結果発表日の放課後、俺達幹部5人は祝勝会がてらカラオケに来ていた。普段はノリが悪いってレベルじゃないマスミンが、テスト期間に溜まったフラストレーションを晴らすかのごとくノリノリで熱唱していた。歌唱力に関しては本人の名誉のためにもコメントは控えさせてもらおっかな。

 

「ともかくこれで2位だったBクラスは失速し、ひとまずAクラスは独走態勢に戻ったね」

「そうだな。結果の内訳もBクラスの平均点が72.3に対し俺達は80.7……圧勝と言っていいんじゃないか?」

「たかだか8点の差で受かれてはいけませんよ橋本君。私としては20点差くらいの圧勝が目標だったのですから」

「いやいや姫さん……Bクラス相手に正攻法でそれは、流石に無茶だと思うぜ?」

「ええ、でしょうね。目論見が外れたのも私達の落ち度というより、一之瀬さん達が奮闘した結果でしょうし。圧倒的力の差で心を折るつもりでしたが、こんな中途半端な勝ち方じゃかえってBクラスを奮起させてしまうでしょう。困りましたね」

「うん、本気で困ったのならその(よこしま)な笑顔を引っ込めよっか」

「邪とは酷い言われようですね、私のガラスハートが傷ついてしまいました。療養のため膝枕を要求します」

「はいはい、有栖ちゃんの仰せのままにっと」

「よーし鬼頭ちょっくらデュエットしようぜ!何かこう、甘ったるいムードが消し飛ぶくらいすげぇハードなやつ入れろ!」

「任せろ、ハードロックの真髄を披露してやろう」

 

有栖の頭を膝の上に乗せ、髪の毛を優しく撫でながら今後について思考を巡らせる。もう長い付き合いだし、今回期待以上に食らい付いた卍解ちゃんに対して、有栖がやりそうなことくらい想像がつく。……正攻法で打ちのめせないなら、今度は相当エグい搦め手を使って心を折りにかかる筈だ。俺と同等かそれ以上の話術を駆使した情報収集力で彼女の弱みを握り、抉って抉って抉り殺そうとするだろう。

問題は肝心の卍解ちゃんに、この学校の関係者のほぼ全員が善人だと太鼓判を押すであろうあの子に、握られて困るような弱味があるかというと…………残念ながら心当たりはある。

船上試験のときもその片鱗はあったし、あのときの様子からして完全に吹っ切れているとは到底思えない。……おそらくそれこそ卍解ちゃんがBクラスに配属された理由だろう。

俺としてはそんな過去なんぞに興味無いが、卍解ちゃんが有栖に潰されないためには彼女自身がそれを乗り越えられるかどうか、Bクラス全体が彼女のそれに向き合い受け入れられるかどうかにかかっているだろう。

 

まあそれはともかく、CクラスとDクラスの結果は少し予想外だったな。櫛田ちゃんという悪性腫瘍を抱えたDクラスがCクラスに勝つには、どうにかして櫛田ちゃんを排除するしかないと思っていたけど……Dクラスは勝ったのに、櫛田ちゃんは今も何事も無かったかのように学校生活を送っている。一体どうやって櫛田ちゃんの裏切りを阻止したんだろうね?いくつか対策案は思い浮かぶけど、それだとCクラス側から何人か退学者が出てもおかしくない筈……ダメだな、推測しようにも材料が全然足りないや。今度コージーに会ったら聞いてみようかな。……素直に教えてくれる訳ないか。

 

 

 

 

 




今回それぞれのクラスが受けたテストの難易度は、

Bクラス≧Aクラス>>>Cクラス≧Dクラス

くらいの開きがあります。
それでも平均点ではAクラスがダントツトップだったあたり、彼らの勉強会がいかに過酷だったかを物語っています。




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