女王の女王   作:アスランLS

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桐葉君のオンリーワンの才能
①豪運
②天帝の眼
③ちょくちょく物理法則を逸脱してるのではないかという疑いのある手品。


6巻エピローグ

 

【side:一之瀬帆波】

 

「それじゃ皆、無事退学者を出すこと無く期末テストを乗り越えられたことを祝して……かんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」

 

事前にケヤキモールにある焼肉屋さんにて、私達Bクラス一同は『ペーパーシャッフル』の&慰労会を開いていた。もし私達が勝てていたら祝勝会の予定だったんだけど……

 

「いやー、やっぱりAクラスの壁は高いねー」

「一之瀬の考えた戦略は決して悪いものじゃなかった。敗因はシンプルに地力の差だろう」

 

神崎君の見解にクラスメイト達も同意する。

そう、今回の試験で私達はAクラスを指名し、向こうも私達を指名してきたので直接対決という形になった。結果は平均点で8点以上差をつけられての完敗。学校側に敢えて800問ほど弾かせることで、高難易度の問題を受理させ易くするって試みは上手くいったんだけど当日受けたテストの難易度からして、どうやら坂柳さん達も同じ方法を取ったらしい。

 

「しかし今までの定期テストだとそこまで差が無かったのに、今回一気に引き離されたよな。今回俺達もすげー勉強頑張ったのに……」

「Aクラスは試験期間中、ほとんどの生徒が教室で勉強会を開いていたらしい。それだけなら別に普通のことだが、今回はAクラスのトップツーが直々に教導を行ったそうだ」

「トップツーってことは坂柳と……本条か」

 

柴田君が彼の名を口にすると、クラス中のほぼ全員が苦虫を噛み潰した表情になる。

無理もない……無人島試験から今回のペーパーシャッフルまでの全ての試験で、私達Bクラスは彼1人にただ翻弄されるだけだった。

 

本条桐葉

 

Aクラスの最終兵器、貴公子にして奇行士、自称草食系、ナチュラルボーンエンターティナー、ミスターパーフェクト、1年生二大変人のまだ話の通じる方……とさまざまな通り名を持つ、坂柳さんの懐刀にして同学年で最優秀と名高い生徒。

文武両道で少々変わり者だけど社交性も高く、本人が意図せずとも集団の中心に立つカリスマ性も備わっている。堀北会長が言うには、歴代でも最高峰の逸材との呼び声も高いそうだ。

私は彼の友人として親愛と、尊敬と……そしてほんの少しだけど苦手意識も抱いている。

 

「やっぱり俺達がAクラスに勝つには、とにかく本条を何とかしないとなー」

「だがそれは容易なことではない。正攻法では数の利すら覆されるし、かといって龍園のような卑劣な手もまるで通じなかったそうじゃないか」

「体育祭の棒倒しのとき、山田君や石崎君を子供扱いしてたもんね……」

「それで勉強もできて、さらに人に教えるのも上手とか……」

「難攻不落過ぎっしょ。同じ人間なのになんでこうも差があるのかなぁ……」

 

本条君のあまりの規格外さに、クラス皆の士気がみるみる低下していく。……曲がりなりにもクラスのリーダーを任せれている以上、ここは私がしっかりしなきゃね!

 

「みんな聞いて!たしかに本条君は手強いし個人ではどう頑張っても勝てる気しないけど……私達の戦いはいつだってチーム戦だから、1人で立ち向かう必要なんてないんだよ」

「で、でもさ一之瀬……体育祭では俺達あいつ1人に蹴散らされたようなもんだぞ?」

「だったら私たちがより団結して、1人1人が成長していかなきゃね。高校生活はまだ折り返しですらないんだし、ここで勝負を投げ出すのはまだ早いよ」

「……そうだな一之瀬。まだ2年以上も残ってるのに、こんなところで諦めたらダメだよな皆!」

「うん!」

「当面の目標は打倒本条!だな」 

 

何の根拠も無い私の精一杯の強がりに、クラスの皆は疑うこと無く応えてくれる。そのことを心から嬉しく思いつつも……心の底では少し後ろめたく思う。

 

こんなに優しい人達の先頭に立つ資格が、私なんかにあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラスの皆と別れた後、彼から少し用があるとメールが来ていたので、学生寮の近くにある噴水に向かう。こんな時間に1人だと危ないからと千尋ちゃんが同行を申し出てくれたが、どうにか根気強く説得して折れてもらった。できれば1人が望ましいと書かれていたし、無人島の件で彼女はトラウマに近い感情を持っているようなので、ついてきてもらうのは心苦しい。

そして指定された噴水場に到着すると……

 

 

「ひゃっほぉおおう!イエェェエエエイッ!」

 

 

……私を呼び出した人物、桐葉君が凄くアクロバティクに折り畳み自転車を乗り回していた。ウィリー状態で高速回転したり、自転車から降りて逆立ちしながら両足で自転車だけを回転させたり……いや何してるの本条君!?

 

「あ、あの……本条君?」

「おお、来たか卍解ちゃん」

 

本条君は逆立ちしたまま自転車を大きく蹴り上げ、瞬時に起き上がるや否や落下してくる自転車を片手で掴んで折り畳んだ。

 

「ええと、何してたのかな?」

「何って……待ってる間少し暇だったんで、ネットで購入した折り畳み自転車で曲芸乗りの練習でもしてただけだよ?」

「そ、そうなんだ……」

 

本条君とはもう結構長い付き合いになるが、彼の行動には未だに謎が多い。そんな何当たり前のことを聞くんだ?みたいに言われても反応に困る。

 

「しかし自分で要求しといてこう言うのもなんだけど、こんな時間に女の子1人で会いに来るとは感心せんなー。危機感が足りてないようならまた歌舞伎役者に仕立てあげるぞー?」

「危機感が足りないんじゃなくて、本条君のことを信じてるからだよ。……でもまたアレをやったら本気で怒るからね?」

「おっと怖い怖い」

「まったく……それで用事って?」

 

私がそう質問すると、本条君はひとまず折り畳み自転車を懐にしまう。……以前も思ったけど、どうやって収納してるんだろう?どう見ても学生服の内側には収まるサイズじゃないよね?

 

「1つはちょっとした確認かな?今回の対決で心でも折れてないか友達として心配だったんだけど……どうやら取り越し苦労だったみたいだね」

「にゃはは、私達もそこまでヤワじゃないよ。しっかりリベンジさせてもらうから覚悟してね!」

「うんうん、元気でよろしい。……それで本命の2つ目だけど、今回予想以上に善戦した君にウチの有栖が興味を持ってね、是非一度暇なときに会って話をしたいそうなんだ。あっ、嫌なら断ってくれて構わないよ」

「え?……あ、勿論私はオッケーだよ。ちょっと待ってね……この日なんかどうかな?」

 

私は予定をまとめているメモ帳を取り出し、まだ空いている日を本条君に伝える。坂柳さん、か……色々と苛烈な人物だって噂は聞くけど、仲良くしたいと言ってくれるなら断る理由はないよね。

 

「うん、いいんじゃない?有栖にもそう伝えとくよ。……それから最後に1つ、忠告しておこうかな」

「忠告?」

「君も色々と噂を聞いているだろうけど、有栖は極めて攻撃的な子でね、人の弱味をついつい抉り倒してしまう生粋のサディストだ」

「じ、自分の彼女に対して凄い評価だね……」

「だから気をつけること。特に……

 

 

 

 

 

心の奥底で君が抱えているそれを、絶対に見破られないようにね?」

 

真っ直ぐに私を見据えながら言った彼のその言葉に、私は全身に冷水を浴びせられたような感覚に陥った。

 

「え……本条、君……?」

「なんで知ってるのかって?以前も言ったじゃないか、俺に隠し事は通用しないって」

「っ……!」

「まあ君の過去なんて興味無いから詳細までは知らないけどさ、()()が君にとってのアキレス健になりうることは視ててわかるよ。……だけどね卍解ちゃん、どれだけ目を背けようが過去は消えて無くなったりはしない。自分の弱さと向き合わなきゃならないときはいずれ来る。それを乗り越えられるかどうかは君次第だよ?」

 

助言めいた言葉を言い残して、彼は固まって動けない私を捨て置きその場を後にした。

私が彼に感じていた苦手意識……全てを見透かされているような感覚は、気のせいではなかったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【side:橘茜】

 

皆さんこんにちは。3年Aクラスの橘茜と申します。つい先日まで生徒会書記職を務めていた者です。

2学期の期末試験も無事乗り越え、テスト明けの息抜きに今度堀北君にお食事でも誘おうかなと思いつつも、どうやって自然に切り出せばいいか、つい先ほどまで思い悩んでいた筈の私は今……

 

 

 

「飛ばすぜぇぇえええ!」

ひぃやああぁぁぁあああああっ!?

 

 

……後輩に殺されかけています。

ケヤキモールをぶらぶらしていたら偶々本条に会ったまでは良かったのですが、何の説明も無しに折り畳み自転車に連結されたリアカー(怪我防止のためかクッションが敷き詰められている。気を遣うところが間違ってます)に乗せられたかと思えば、気がついたらとんでもないスピードで連れ回されていました……一から振り返ってみてもまるで意味がわかりません!?

 

「本条君ブレーキ!ブレーキッ!」

「ブレーキ?知らないっすねそんな機能。男はアクセルだけ覚えときゃ生きていけるんですよ」

「あなた将来絶対に免許取らないでくださいね!?というか危ないからもう少しスピード落としてください!」

「バカ言っちゃいけませんよ茜先輩。俺達を縛るものはもう何もない。俺達はようやく本当の自由って奴を手にいれたんだ。いこうぜ先輩……スピードの向こう側によぉっ!」

「あなた一人で行ってください!行ったまま帰って来ないでください!いやぁぁぁあああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカなんですか!?いえやっぱり聞くまでもありませんバカですね本条君はこの学校1バカです間違いありませんこのエンドレスおバカっ!」

「痛っ…ちょ痛い痛い痛い痛い!?こめかみをグリグリしないでマジで痛いです!?」

「痛くしてるんだから当たり前ですっ!」

 

本条君の部屋にて、ようやく絶叫マシンから解放された私はおバカな後輩を情け容赦の無い私刑にかけていた。

 

「あぁ痛かった……まったく、相変わらず頭が固いですね茜先輩は。もうすぐ卒業してしまう敬愛する先輩に対する、構ってほしい後輩からのちょっとしたお茶目じゃないですか」

「あなたは相変わらず頭が液状化してますね!あれは拉致って言うんです!私じゃなかったら学校に訴えられて、下手したら停学ものですよ!?」 

「何だかんだでちゃんと許してくれる優しい茜先輩が大好きです」

「黙らっしゃいこのウルトラおバカ!……だいたい私と一緒に遊びたいなら、始めからそう言えば良いじゃないですか。男子の部屋に入るのは確かに少し気後れしてしまいますが、あなたとはもう知らない仲では無いのですし、普通に了承しましたよ私は」

「いやまあ、そう言われたらそうなんすけど……なんかそれだとエンターテイメント性が足りないかなっと」 

「ふんっ!」

「鳩尾!?」

 

私の黄金の右を食らい悶え苦しむ本条君に対し、思わず深い溜め息を吐いてしまう。

なんでこの子はいつもこうなんだろう?堀北君に勝るとも劣らないほど凄い人物の筈なのに、何故か私と接するときだけ果てしなくバカになっている気がする。堀北君は当初彼が南雲君に同調しないかと危険視していたようですが、こんな子南雲君でも持て余すに決まってる。

……それにしても、

 

「今日は坂柳さんは一緒じゃないのですか?」

「有栖はなんかみやびん会長に用があるらしくって……なんかモヤっとするから俺も女の子部屋に連れ込んでやろうと思いまして」

「なんですかその見下げ果てた理由……」

「あっ、当然後でちゃんと正直に言いますよ?隠れてこそこそするなんて性に合わないし。まあ茜先輩だったら有栖もさほど気にしないって打算はありますけどね」

 

何の打算ですかそれは……あれ?

 

「おかしくないですか?私と本条君はケヤキモールで偶々会っただけですよね?」

「それが茜先輩、俺達の携帯には位置情報サービスって便利なシステムがございましてね……」

「……やっぱり学校に報告していいですか?」

「どうもすみませんでした、憐れな後輩にどうかご慈悲をくださいませ」

「はいはい、わかりましたよ。まったくもう、調子がいいんですから……」

 

思わず溜め息を吐いてしまうが、不思議と怒りとかは湧いてこない。色々と手を焼かされることも多いが、(私は一人っ子だが)実の弟のように懐いてくるこの子は、何だかんだで可愛い後輩だ。散々悪戯されて振り回されて迷惑をかけられてきたが、どうしても嫌いになれそうもない。

……が、年下に一方的にからかわれまくる現状は先輩としての沽券に関わるので、せっかくだからこちらからも意地悪してみようかな。

 

「それにしても、坂柳さんが南雲君に用事ですかー。南雲君格好いいし……もしかしたら乗り換えられちゃうかもしれませんねー?」

「や、それは無いですね。100パー無い」

 

ちょっとだけ不安にさせてやろうとしたのだが、真顔であり得ないとキッパリ断言された。普段の彼等のやり取りを何度か見ている限り正直私もそう思うが、少しは不安になってもいいのに。よほど坂柳さんを信頼してるのだろうか。

 

「随分あっさり否定しましたけど、何か根拠があるのですか?」

「いやだってみやびん会長って、女の子をアクセサリーとしか思ってないドクズな面があるじゃないですか?」

「清々しいほどストレートに侮辱しましたね!?」 

「信頼できる先輩からの確かな情報なんで間違いないすよ。……まあそんなみやびん先輩にとっては、自分に従順にならない女の子は興味の対象に入らないでしょうね。従順な有栖とか気色悪いですし」

 

この子本当に坂柳さんが好きなんだろうか?あまりにあんまりな言い分にちょっと自信無くなってきた。

 

「さて、それじゃあ本題に入りましょうか」

「本題?」

「今回先輩を拉致……お連れした理由はただ1つ。ずっと気になってたんでこの際ズバリ聞きますが……茜先輩はいつ元会長さんに告白するんですか?」

「……ふきゅっ!?」

 

あまりに予想外な質問に、思わず変な声を出してしまった。

 

「な、なななな何を言い出すんですか本条君!?なんで私が堀北君にこここ、告白なんて……」

「いやもうそういうのはいいですから。本人以外のほぼ全校生徒には既に、茜さんの気持ちはバレてるんで」

「へぁっ!?!?!?」

「生徒会に所属してる間はお互い忙しいだろうし、期末テスト後がちょうどクリスマス前だから告るとしたらベストは今だろうと、先日星之宮先生と盛り上がったんですが……なんか何も無さそうなんで肩透かしを食らいましたよこっちは」

「知りませんよそんなこと!というかなんで他クラスの担任とコイバナで盛り上がってるんですかあなたは!?」

「もう見てるこっちが焦れったいんすよ。四の五の言わずにガッとやって、シャララーンと押し倒しちゃいましょうよ」

「シャララーン!?」

 

その後なんでさっさと告白しないのかだの、このままズルズル行くとあっという間に卒業式だとか、正直耳の痛くなる指摘をビシバシと受け、帰宅する頃には私は精神的にボロボロになっていた。

これに関しては100%善意でやってくれている分、怒ろうにも怒れないからタチが悪い……。

 

「ああそれと先輩、最後に1つだけ」

「なんですか、もう私は満身創痍ですよ……?」

「無事Aクラスで卒業してくださいね。間違っても退学になんてならないように」

 

……フフフ。まったく、生意気な後輩ですね。

 

「あなたに言われるまでもありませんよ」

「ほんと頼みますよ?もし茜先輩が退学なんてなったらたぶん凄い悲しいですから」

「いやそこは普通に悲しんでくださいよ。たぶんて何ですかたぶんて」

「いやまあそればっかりは、実際に先輩が退学になってからのお楽しみってことで」

「人の退学で楽しまないでくださいっ!?」

 

 

 

 

 




少し忙しくなるので、次の投稿は土曜日になります。


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