女王の女王   作:アスランLS

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若干行き詰まってるので、更新ペースが落ち増す……。



合宿の幕開け

 

そんなこんなで初日の食事、バスを降りてから初めて女の子達と交流できる時間がやってきた。

全校生徒が集まっても問題ないように食堂はかなりの人数を収容できる造りになっていて、普通なら携帯が無いこともあり特定の人物と合流するのも一苦労するのだろうが、俺には足の爪先くらいは人外の領域に踏み込んでいるんじゃないかという疑いのある眼力があるので実に容易い。

茜先輩にもちょっかいをかけておきたいところだが、とりあえず今日はすぐに有栖と合流しよう。拗ねられると面倒なことになりかねないし、何よりやっぱりちょっと心配だし。

既にマスミンと一緒に席についている有栖を捕捉し、食事のトレーを持って向かいの席に腰を下ろす。

 

「やっほ有栖。体の調子は大丈夫?」

「ええ、今のところ何の問題もありません」

「ここ山岳地帯だしやたら寒いから暖かくして寝るんだよ?あとグループのメンバーに苛められたらすぐに俺に相談してね」

「アンタはお母さんか」

「やっほマスミン。橋本と同じツッコミだったね」

「……最悪」

 

呆れたように溜め息をついたかと思えば、この世の終わりかのような凹み方をするマスミン。流石にそれは橋本に失礼じゃないかな?別にいいけど。

 

「まあAクラスの母ことマスミンがいるし、確かに取り越し苦労かね」

「一度たりとも呼ばれたことないわよそんな通り名」

「真澄さんの美点はクラスの方々にもまだ認知されていないですしね。……しかし桐葉、少々私を見くびり過ぎではありませんか?確かにこの身は脆弱ですが、だからこそ体調の管理を怠ったことは今まで一度としてありませんし、私に悪意を向ける輩は知恵と謀略を駆使して全て捩じ伏せてきたと自負しています」

「いやまあそうだけどよ……有栖はコエンザイムQ10より弱っちいんだから、心配の1つや2つしちゃうってどうしても」

「あなたにとって私はサプリメント以下ですかそうですか怒りますよ?」

「ごめんちゃい」

「まったく……」

 

頬を膨らましてそっぽを向く有栖。桐葉君は空気が(読もうと思えば)読める子なので、彼女の耳元が赤くなっていることや若干頬が緩んでることは見なかったことにする。「ほんとは俺が身を案じていたことに少なからず喜んでいたのでは?」なんてデリカシーの無い指摘もしない。

 

「まあ時間はあまりないし、そろそろ本題に入ろうかな。……なんで有栖、Bクラスの女の子達から敵意向けられてんの?」

 

何気なく俺が指摘すると近くにいた女子生徒達がビクりと身を震わせ、苦い顔を浮かべながらそそくさと俺達から遠ざかっていく。小橋ちゃん、津辺ちゃん、二宮ちゃん、南方ちゃん……やはり皆Bクラスの生徒だ。

 

「なんとまあ、意気地の無い方々ですね」

「トラウマでも残ってるんでしょ。Bクラスは特別試験のたびに本条に蹂躙されたみたいだし」

「蹂躙とか人聞きの悪い言い方しないでよ。……それで有栖、いったい卍解ちゃんにどんな悪意をぶつけたのさ?」

「貴方も人聞きの悪い言い方をしないでください。小グループ決めの際、一之瀬さんは信用できないから組みたくないし、私のお友達を任せたくもないとはっきり言っただけですよ。肝心の理由については敢えて曖昧にしましたが」

「……この試験が終わったら仕掛けるんだね?」

「理解が早くて何よりです」

 

以前より有栖は卍解ちゃんを壊す予定を立てていたが、今回の合宿中に布石を打っておくつもりだろう。卍解ちゃんは同学年で最も周りから信頼されている生徒と言っても過言ではない。有栖がそんなことを言い出したら周りの子、特にBクラスの子達から顰蹙を買う。それを差し引いてでも卍解ちゃんの信頼を貶めるようなことをした理由は……

ちらりと結構離れたテーブルにいる卍解ちゃんの方に視線を向ける。どういう意図か彼女の近くでひっそりと聞き耳を立てているコージーは置いといて、周りにいる生徒の大半は彼女に心配そうな視線を向けている中、ほんの微々たるものとはいえ疑いの目を向けている生徒も僅かにいるようだ。

 

「……どうやら目論見は上々のようだね」

「そうですか、それは良かったです」

「何にも良くないわよ。アンタが余計なこと言ったせいでグループ決めはグダグダになるし、一之瀬の取り巻きはヒステリー起こすし、他のクラスのほとんどから私まで白い目で見られるし……巻き込まれた私からすれば散々よ」

「と言いつつ進んで私と同じグループに入ってくれる真澄さんが私は大好きです」

「流石マスミン、ツンデレ乙」

「マジでぶん殴るわよアンタら……!」

 

おっと、マスミンの血圧がいい感じに上がってきましたな。流石に気の毒だからそろそろ自重してあげよう。

 

「そっちはグループ決めに手こずったみたいだね」

「ええ、揉めに揉めて円満に決まった頃にはお昼を過ぎてました。……橋本君から聞きましたよ、難物ばかりのグループを結成したそうですね」

「うん、悪い?」

「私は別に構わないですが、クラスの方々の……特に葛城君の不満は貴方が受け止めてくださいね」

「あいあいさー」

 

グループのメンバー1人ずつに報酬が支払われるため真にクラスのことを考えるならば、大半がAクラスの生徒で構成されたグループが1位になることこそ最善だが……そんなこと知ったことじゃない。クラスへの旨味が限りなく低かろうと俺はトップを取りに行く。

有栖も俺がそうするとわかっているみたいだが、俺のグループがトップを取る前提で忠告してくるとは、よほどランスを舐め腐ってるのかそれだけ俺を評価してくれているのか……両方だね、たぶん。

その後はジブリ映画の最高傑作は何かについて熱い議論を交わしつつ昼食を終えた。俺と有栖の間で起きたこの手の議論は終結した試しが無い。不毛だとわかっていてもやめられない止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の早朝6時過ぎ。

室内はまだ暗く、薄いカーテンの向こうからは差し込む日の出も見えない。

バスで目を通した資料によると、あと少ししたら室内に目覚まし用のアラームが鳴り響くらしいが、せっかくなのでここで少しばかりお茶目さを発揮しておこう。持ち込んだフライパンとおたまを持って、設置されたスピーカーから音がしたとほぼ同時に……

 

「右手におたまを!左手にフライパンを!横たわりし者に正義の鉄槌を!秘技、死者の目覚め!」

 

カンカンカンカンカン!

 

「うぐぁあああ!?……うるせぇんだよ!本条テメェ何しやがる!」

「Are you crazy!? Noisy Shut up!!」

 

安眠を妨げられたDクラスの2人が怒りに任せて、枕だの布団だのを投げてくるが全て華麗に避け、虎視眈々と隙を伺っていたリュンケルも目配せして牽制しておく。はいそこ、舌打ちしない。

おっと、荒くれ3人衆ほどではないが最悪の起こされ方をしたグループメンバーのほとんどが、恨みがましい視線を向けてくるではありませんか。

 

「はい皆、ジャージに着替えて指定の教室に集合だよ。あまり時間に余裕も無いからキビキビ動いてね」

「いや何事も無かったかのように移行してんじゃねぇよ!?なんだあの非常識な起こし方は!」

「ぎゃーぎゃー文句言うけどね石崎君、アラームが鳴っても起きない寝坊助な君達が悪いんじゃないか」

「ほう?そいつは妙だな。あのスピーカーから音が鳴ったとほぼ同時にテメェがふざけだしたような気がするんだが」

「リュンケルの気のせいだね間違いなく。まあ見た感じ皆不服そうだし、明日からは普通に起こすよ」

「「「最初から普通に起こせ!」」」

「というかこのためだけに、そんな嵩張る物を持ち込んだのか……?」

 

何やら理解不能な目で見てくるけど幸村君、エンターティナーであり続けるコツは手間を惜しまないことだぜ?

 

「やあおはよう諸君」

 

皆が支度をしている途中、健康的に汗をかきながら爽やかな笑顔で六助が部屋に入ってきた。

 

「どこ行ってたんだよ高円寺」

「ふふ、今日は良い目覚めでね、朝のトレーニングに精を出していたのさ」

「今日からどんな課題が待っているかもわからないんだぞ。無駄に体力を浪費する真似は-」

「まあ大丈夫じゃない?」

 

六助の好き勝手を咎める幸村君を遮りつつ、六助の顔面目掛けて軽めに蹴りを放ち、六助はそれを悠々と片手で受け止める。

 

「いきなりご挨拶だねマイフレンド」

「ね?咄嗟にこんなことできる奴が体力面で遅れは取らないでしょ」

「いや待ていきなり何やってんだお前は!?そんな龍園みたいなことする奴じゃなかっただろ!」

「俺を引き合いに出すんじゃねぇよ眼鏡」

「だから時間が無いって言ってるでしょ。四の五の言わずにさっさと行くよ、朝ご飯が俺達を待っている」

「あ、ああ……」

 

何やら釈然としない思いを抱きつつも、幸村君は支度に戻る。……よし、どうにかカオスにして誤魔化せたな。ついさっきまで六助のトレーニングに付き合ってたのバレたら俺まで巻き添えになるところだったぜ。

リュンケルとコージーだけは何か言いたげな視線を向けてくるが、何も言わないなら放っておく。

俺達は部屋を出て、大グループごとに指定された教室に集合する。年上の威厳を示したかったのか既に2、3年の生徒は集まっていた。六助とリュンケルは完全に無視する一方、それ以外のメンバーは軽い挨拶を済ませる。そして俺は同グループになったみやびん会長に近寄っていく。

 

「はよざーすみやびん会長」

「流石に崩し過ぎだ。ほんとに物怖じしない奴だなお前は」

「そいやなんで瀬川先輩と別のグループなんですか?やっぱり友達だと思ってたのは瀬川先輩だけだったんですか?」

「やっぱりってなんだやっぱりって……俺にも色々と事情があるんだよ。あいつが恋しいならドラフトであいつのグループを選べば良かっただろうが」

「別に進んで獲得したい訳でもないですし。瀬川先輩は俺にとって鶏肋のような存在ですから」

「お前あいつのこと舐め腐ってんのな……」

 

そんな感じで2年の先輩達と雑談にはなを咲かせていると、ようやく3-Bの小野寺先生が教室に入ってきた。

 

「これより点呼を行った後、毎朝の日課として外に出て指定された区画と校舎の清掃を行う。それから今日からの授業には学校の教師の他、様々な課題を担当する方々もいらっしゃるので、しっかりと挨拶し粗相の無いよう心がけるように」

 

そんな短い説明を受け、俺達のグループは清掃へと向かった。さてと、笑いあり涙ありの特別試験の始まりだぜい。

 

 




8巻めっちゃ話作りづらい……。
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