女王の女王   作:アスランLS

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film red観に行ってきましたー。
シャンクスはいつになったら「失せろ」以外の技を使うんでしょうね?


混合合宿③

 

「目印って……どういうことだ本条」

「簡潔に言えば先輩達はイカサマをしてたってことだよ、はい証拠」

 

話についていけず困惑する幸村君にジョーカーを返すと、受け取った彼はカードを調べてマーキングされていることに驚愕し、そしてみやびん先輩を非難するように睨む。

 

「……どういうことですか南雲先輩」

「どういうこと?何がだ?」

「とぼけないでください!こんなっ……こんな卑劣なことをしてまで勝ちたいんですか!?」

 

見た目通り真面目で潔癖気質の幸村君は、生徒会長ともあろう人物が平気で不正をしたことに憤るが、当のみやびん会長は余裕そうに薄笑いを浮かべながら肩を竦める。

 

「おいおい、随分と不躾だな幸村。そのジョーカーを見る限り確かに誰かが不正をしていたのは事実なんだろうが、何故俺がやったと決めつけるんだよ?」

「っ、こ、このトランプは南雲先輩の-」

「ああ、俺が合宿用に買った()()()トランプだ。さっき包装を剥がすところはお前も見てた筈だよな?だから事前に細工するのは不可能だし、包装を剥がしてからマーキングするにはペンが必要だ。……さて、俺はこの部屋にペンなんて持ち込んでいないんだが」

 

ジャージのポケットをひっくり返して潔白であることをアピールするみやびん会長に、幸村君はわかりやすいくらい狼狽える。ほんとこの子簡単に言いくるめられるなぁ……。

 

「まったく、俺は悲しいぜ。せっかくグループの親睦を深めようとあれこれ腐心していたのに、心無い後輩から卑劣な人間扱いされるなんてよ」

「すっ、すみま-」

「はいストップ、謝る必要なんてないよ幸村君」

「……え?」

 

慌てて謝罪しようとする幸村君を手で制しながら、俺は無関係を装っている石倉先輩にゆっくりと近づく。普段ならたぶん放っておいただろうけど……曲がりなりにも責任者なんて立場になったんだし守ってあげなきゃね。

 

「石倉先輩」

「な、なんだ本じょ-なっ!?」

 

ゴネられたら面倒なので問答無用で石倉先輩の左ポケットに手を突っ込み、トランプの束を取り出す。

 

「残念でしたね先輩、俺に嘘や隠し事は通じないんですよ」

「ま、まさかそれは……」

「そ。こっちが未開封だったトランプだね」

 

心理的な駆け引きこそ不得手だが、幸村君は決して頭が悪いわけではない。こうしてヒントを提示してやれば1から説明しなくても察してくれる。

トリックは極めて単純。

マーキングをついたジョーカーの入ったトランプと、それと同じタイプかつ未開封のトランプ……合計2つのトランプを用意しておき、隙を見てトランプをそっくりそのまますり替えただけだ。

……ぶっちゃけるならみやびん先輩が六助を生徒会に勧誘しつつトランプをすり替えていたことと、シャッフルしたトランプを石倉先輩に渡しながらもう1つのトランプを彼のジャージに入れていたこと……ちゃんと全部見てました☆

どちらもマジシャン顔負けの手際で周りの注意を逸らしつつ行っていたが、残念ながらどうあがこうと俺の眼からは逃れられないのだ。……追い詰められたかどうかは別問題だけどね。

 

「南雲先輩、やはりあなたが……!」

「だからなんで俺を疑う?石倉先輩のポケットから証拠が出てきたんだから、普通に考えればイカサマを行ったのは石倉先輩だろ」

「なっ!?南雲、お前っ……!」

 

幸村君だけじゃなく、話が違うとばかりに石倉先輩もみやびん会長を睨みつけるが、やはりみやびん会長は余裕を崩さない。

みやびん会長が用意した新品のトランプと、石倉先輩の用意したイカサマジョーカー入りトランプの柄が偶然まったく一緒だった……なんて荒唐無稽な話は普通あり得ない。少なくとも石倉先輩とみやびんはまず間違いなくグルだったことは想像に難くない。

しかし残念ながら、みやびん会長がイカサマをやったという明確な証拠は無い。俺がこの目で見た……なんて証拠として成立しない。トランプの購入経路を調べようとしても用意周到なみやびん会長のことだから、いざというときは石倉先輩をスケープゴートにするため、彼がトランプを買っていたと偽の証言をしてくれる協力者をちゃんと用意している筈だ。

みやびん会長を糾弾したければトランプをすり替えている現場を抑える必要があった。……けどまあすり替えるときのみやびん先輩は、表面的には涼しい顔のまま実は非常に警戒していた。現場を抑えようと誰かが何かしらの素振りを見せれば、その時点で実行に移さなかっただろうね。

さて、茶番はこのくらいにしよっか。

 

「はいはいこの辺で手打ちにしよっか幸村君。同じグループメンバーで争っても何の得にもならないし」

「なっ、何を言ってるんだ本条!?先輩達は卑怯な手を使って俺達を陥れようとしたんだぞ!このまはま引き下がれるか!」

「ただ朝食当番押し付けられかけただけだし、何もそこまで目くじら立てなくてもいいじゃないか。潔癖なのは仕方ないけど少しはゆとりも持とうよ。……それに目上に対してちょっと口が過ぎるかな。石倉先輩はともかく、みやびん会長が荷担した証拠は無いんだよ?」

「っ……し、しかしだな!状況証拠から考えれば明らかに-」

「どんなに怪しくても疑わしくは罰せずだよ。……という訳で残念ながら明確な証拠を捕まれてしまった石倉先輩、1戦目はペナルティとして3年生の負けってことで構わないですよね♪」

「あ、ああ……糾弾は甘んじて受け入れよう」

 

その後幸村君は絶妙な勝負弱さで2回ほどビリになったものの、結局は各学年が2回ずつやることになった。結果論とはいえ賭けた意味も無かったし、学年同士の親睦どころか溝が深まった気がするけど、まあ人生なんてそんなもんさ。

あ、あと今日の小グループ順位付けは見送った。ほとんど説明だったし仕方ないね、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日と違って明日も休みであることから、巷ではパーフェクトホリデイとの呼び声高い土曜日だが、林間学校滞在中は午前中だけ授業がある。

木曜から始まった特別試験も早三日、大半が前途多難に思っていただろう我々のグループはまずまずの仕上がりになってたと言っていいだろう。

最大の懸念事項だったリュンケルと六助も、六助がちょくちょくサボってはいるがどういう気まぐれか必要最低限の働きはしてくれている。2人のスペックから考えれば手抜きもいいところなレベルだが、それ言い出すとコージーとかもそうだしこの際贅沢は言うまい。 

跳ねっ返りの強そうだった石崎君も、先日のトランプで上級生の思惑を粉砕した俺に何か思うところがあったのか、とりあえずは指示におとなしく従ってくれている。何やらコージーに対して苦手意識があるみたいだけど、どうやら第三者には触れてほしくなさそうだから放置でいいかな。

現在午前の3時間目の3階教室、教科は道徳。

 

「これからお前たちには自己紹介を行ってもらう。勿論ただの自己紹介ではなく授業の一環だ。今日からこの授業では毎回、学年ごとに決められたテーマに沿ったスピーチを行ってもらうことになる。判断基準は『声量』『姿勢』『内容』『伝え方』の4つとなっている。」

 

これだけしっかりルールが決められていることからして、林間学校における試験科目の1つだろう。俺の見解ではスピーチで必要なのはやはりコミュニケーション能力……ではなく自己肯定感だろうね。俺達1年生はこれまで学校で何を学び、そしてこれから何を学んでいきたいかというテーマだけど……

 

「では何人かにスピーチを行ってもらおうか。内容を考える時間を取るので準備が出来たら手を上げ-」

「はいセンセー、準備オッケーでーす」

「ず、随分早いな……」

「まあ責任者ですし、グループの皆に大まかな流れを把握させておこっかなって。それじゃあ始めますね……えー、私が本校に入学してから最も感銘を受けたことは-」

 

まず聞こえの良いスピーチ内容を適当に構築し、あとは『自分はすごい』と信じ抜くことができれば、『伝え方』も『姿勢』も『声量』も意識せずとも自然と何こう、いい感じになる。

 

「-第一学年も残すところあと僅かとなりますが、信頼できるクラスメイト達とともに研鑽を積んでいこうと思います。1年Aクラス本条桐葉。……こんなもんでどうすか?」

「うむ、非の打ち所の見当たらない素晴らしいスピーチだったが……何故か白々しく感じてしまうな」

「そりゃまあ一から十まで適当にでっちあげた内容だから仕方ないですよ」

「正直でよろしい」

 

休み時間になるとスピーチに苦手意識のある何人かの生徒(先輩も含む)に相談を持ちかけられたが、「自分を信じてやればできる。うまく行かなくてもそれはあなたのせいじゃなく世間が悪い」などといい加減なことを言い聞かせていたら桐山先輩から大目玉を食らった。まったく、これだから頭の固い人は……。

 

……。しかしアレだね、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダー飽きた」

「知るかボケ」

「ふふ、とりつく島もありませんね」

 

その日の夕食時、有栖と合流してトレーを受け取りつつ席を探していると、一人寂しく食事をしていたリュンケルがいたのでこれ幸いとウザ絡みをすることに。

 

「いやほんと凄いわ君達。普段からよくこんな役回りをあんな楽しそうにできるね」

「他人を思いのままに操ることが好きだというのもありますが、私は誰かの下につくことに耐えられる性格ではありませんからね」

「プライドが高いねぇ。身長は低いのに」

 

軽口を叩くや否や足の小指を杖で強打される。

めっちゃ痛い泣きそう。泣かないけど。

 

「怒りますよ?」

「怒ってから警告すんなし」

「まったく……橘先輩のことはよろしいのですか?」

「普通に対処しても良かったけど、好奇心には勝てなかったよ。でもまあ一応手は打っておいたから大丈夫だよ。……もう一生口利いてもらえないかもしれないけどね」

「……なるほど、随分と無駄遣いをしたものですね」

 

やっぱ付き合いが長いだけあって理解が早いね。

俺の取った手段、そして何故そうそんな不合理なことをしたのか……俺という人間を理解しつくした有栖だからこそ導き出せる答えだろうね。

 

「……はたして彼女は、貴方を揺さぶれるでしょうか?」

「さあね。正直既にあまり期待できそうにないけど、期待するのはタダだろう?」

 

さて、この後グループの何人かにスピーチ内容の製作を手伝う約束をしていることだし、そろそろ戻るとしますかね。あぁつまらねーし面倒だ。

しかしリュンケル、さりげなくいつの間にかドロンするとはほんと丸くなったねぇ。以前まで有栖と出会ったら延々と言い争ってたのに。有栖ちゃんも内心残念そうである。

 

 




南雲先輩がイカサマを行った理由は、目をつけている桐葉君や綾小路君が見破れるかどうかを試すためです。そんな「さあ見破れるものなら見破ってみろ!」なんてネタ振りをされたんだから、生粋のエンターティナーである桐葉君は当然大々的に見破りますよね、はい。




……さて、次回は全力ではっちゃけられるぞー!
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