女王の女王   作:アスランLS

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個人的に一番アニメ化が楽しみな回です。


混合合宿④

 

三日目の夜、これより1日の疲労をリフレッシュする入浴タイム。大浴場は相当な広さであるためグループ別に入浴する決まりは無いけど、向かう途中たまたまコージーと出くわしたので、世間話でもしながら仲良く大浴場へと向かう。

 

「……しかし幸村君の潔癖さには参っちゃうね。あれからちょくちょく怖い顔で睨んでくるし桐葉君怖い」

「とても怖がってるようには見えないぞ。……お前が先輩達のイカサマをなあなあで済ませたことは間違った判断だとは思わない。それにグループで内輪揉めしたところで何のメリットも無い。啓誠も頭ではそれを理解しているだろうが、そう簡単に割り切れないんだろう」

「そりゃまたなんとも生き辛い性格だね。……ずっと思ってたけどなんで啓誠?」

「ある理由で輝彦という自分の名を嫌っていて、啓誠と呼んでくれと頼まれたんだ」

「なるほど、そう名付けた親がろくでもない人間って訳ね」

 

自分の名前を誰かに呼ばれることすら嫌っていて、その理由を勝手に他人に話せないとなると、その名前を付けた親に恨みがあるか死ぬほど嫌ってるしか無いよね。

 

「……頼むから俺がベラベラ喋ったとか啓誠には伝えないでくれ。俺の信用問題に関わる」

「それは構わないけど、だったらもう少ししらばっくれたら?あくまでただの推測なんだし」

「お前に嘘は通じないんじゃなかったか?」

「君と六助みたいに、どんなときも脈拍や意識の波長が揺らがない奴は例外かな。あとは有栖みたいに体質的に普段から乱れまくってるのも……まあそんな訳で、俺の眼は君が思ってるよりかは意外と抜け道が多いんだなこれが」

「……そんなこと他クラスのオレにペラペラ話して良かったのか?」

「別に隠す必要が無いしね。特にコージーは人の言ったことを考え無しに鵜呑みにはしないでしょ?」

 

交流する機会はそう多くないけどまあまあ長い付き合いだし、嘘は見抜けないけど性格くらいはある程度見抜ける。

この子はランス以上にリスクが嫌いで、1%でも不安要素があれば入念な対策を怠らない。

ただでさえ有栖には宣戦布告をされたんだ、最も近い立ち位置にいる俺がひけらかした弱点など信用する筈が無いだろうね。

そんなこんなで大浴場につくと、ある一角にクラスもバラバラな数人の男子生徒が集まって盛り上がっていた。少し距離があるが勿論俺はここからでも何しているかバッチリ見える。

うん、なんていうか……完全に男子中学生のノリだね。

と、Bクラスのザキちんが何やら不思議そうにその集団を見ていたが、浴場に入ってきた俺達に気づいて近づいてきた。……のは良いけど、微かに俺に対して敵意と警戒を感じるのは何でだろうね。予想はつくけど。

 

「綾小路に本条か。そっちのグループは順調か?」

「まあ概ねそうなんじゃない?ねえコージー」

「ああ。いくつか不安要素はあるが、さほど深刻なものではない」

「浜口達からも報告は受けている。龍園は意外と大人しいようだが、高円寺には少々手を焼いているらしいな」

「まあ彼は他者が制御できるような奴じゃないから仕方ないよ。そもそも最初から戦力にカウントしてない」

「クラスメイトのオレからすれば、アレでもむしろ普段よりは真面目にやっているんだがな」

 

まあ無人島や体育祭に比べれば品行方正と言っていいレベルだね。この差異は友人である俺の退学がかかってるから……なんて殊勝な理由では勿論なく、もし退学になったら俺に容赦なく道連れにされるからだろうね。別に彼のせいで退学になったところで恨みはしないけど、ケジメはちゃんとつけてもらわないとね。

だから六助は今後も道連れにされないギリギリのボーダーで、この合宿を取り組むだろう……というのが俺の予想だ。当たるも八卦当たらぬも八卦だけど。

 

「ところで本条。うちのクラスの女子から、一之瀬が坂柳に不当に貶められたと報告を受けたんだが……お前達はいったい何を企んでいる?」

「いや知らんよ。たぶん何かしら悪巧みもしてるんだろうけど、俺の協力が必要無いときは機密保持のためいちいち教えてこないし」

 

別にいちいち教えられなくてもだいたい推測できるから、知らないというのは嘘なんだけど。

俺の返答に納得しなかったのかザキちんが難しそうな顔をする中、例の集団からBクラスの柴田君とDクラスの山内君が呼び掛けてきた。

 

「おっ、神崎やっと来たか。こっちこっち!」

「綾小路に本条、お前らも来いよ~」

 

手招きされ2人は無警戒に近寄っていき、興味は無いけど別に忌避感も無いので俺もそれに続く。

 

「どうした?」 

「いやさ、実は山内達とちょっと変なことで盛り上がっちゃってさ」

「変なこと?」

「誰が1番アレが大きいのかって話になったんだよ」

「アレ……」

「まあ要するに[ピー]のことだろうね」

 

遠回しに言うなら男の子は皆持ってて女の子は誰も持っていない器官のこと。

あまりにくだらない催しに呆れた2人の視線を感じ取ったのか、柴田君は弁解するように手を振る。

 

「いや俺だってガキみたいだなと思ってたんだけどさ、意外と盛り上がるんだよなコレが」

「こんなことで盛り上がっちゃったら、ガキ呼ばわりされても文句言えないでしょ君達」

 

俺の意見に二人が同意するように頷いた後、俺達はタイミングを見て距離を置くことに決める。

柴田君達が談義を再開した瞬間俺とザキちんはその場を離れ、少し遅れてコージーも離れようとしたみたいだが─ 

 

「今のところ誰が暫定王者だ?」

 

話を聞きつけたのか、やけに自信満々な態度のケン坊に捕まってしまった。がっちりと両肩を捕まれていてアレは逃げられそうにない。心なしかコージーが恨めしげな視線を俺に向けてきているが無視する。すまんコージー、お察しの通りケン坊の接近にはちゃんと気づいていたけど、我が身可愛さについ君のことデコイにしちゃった☆

でもクラスメイトなんだから、責任を持って君が相手をしてあげたまえ。

他クラス同士の友情の儚さを憂いながら入浴のため頭と体を洗っていると、暫定王者らしい金田君とケン坊の戦いが始まったようで…

 

「っしゃあ!」

 

ケン坊が勝ったようだ。……ありゃりゃ、興味無いのに勝手に視界に入ってくるよ。視野が広過ぎるのも考えものだ。

ふむふむ……金田君の戦闘力が150に対し、ケン坊の戦闘力は200か。その若さで大したものだよ。

自分が王者だと勝ち誇るケン坊に、何故か戸塚が食ってかかってる。……いや君の戦闘力せいぜい100だし、ケン坊に挑むのは無謀だと思うよ?

 

「お前なんか敵にもならねぇよ!王者はDクラス、じゃなくてCクラスの須藤健様だ!」

「ドンケツから1つ上がっただけの落ちこぼれが、Aクラスの葛城さんに勝てると思うなよ!」

 

他力本願かい。

ちょうど頭を洗おうとシャンプーに手をかけていたランスは、戸塚の啖呵を聞いて露骨に嫌そうな表情をしている。桐葉君は空気が読めるので、ランスがシャンプーを使うことに関しては何も言及しない。

 

「さあ葛城さん!男のプライド、いえ、Aクラスの威信にかけて勝たなければ!」

「そんなくだらない争いに俺を巻き込むな」

「そうでもないぞ葛城」

 

鬱陶しいくらいノリノリな戸塚に、何故か関係ない橋本まで説得に参戦した。ちなみに橋本の戦闘力は120と何の面白味も無い数値だ。

 

「戸塚の言う通りAクラスのプライドがある。鬼頭はもう入浴を済ませてしまったし、うちのクラスで須藤に立ち向かえるのはもうお前のソレぐらいなんじゃないか?」

 

そんなプライド捨ててしまえとか、なんでお前はクラスメイトの戦闘力を把握してるんだとか、言いたいことは色々あるけど、ちょっと面白そうな流れになってきたのでシレッとコージーの近くまで移動する。

さっき見捨てられた恨みからか、何やらジト目を向けられたが気にしない。男が昔のこと引きずってんじゃないよ。

 

「まったく、このままでは落ち着いて頭も洗えん」

 

ランスはギリギリまで嫌がっていたがやがて周囲の生徒達まで囃し立て出すと、さっさと済ませた方が早いと判断し重い腰を上げた。

 

「勝負は一瞬だ葛城」

「.......好きにしろ」

「こ、これは……!?」

 

ふむ、ランスの戦闘力もおよそ200だろうね。

審判役の山内君から見ても甲乙付け難いようで、しゃがみこんで2人の[ピー]をまじまじと観察する。

わー、物凄く汚ねー絵面。

 

「判定は……ドロー!」

 

山内君の出した煮え切らない判定を不服に思ったのか、結構多くの人間が近づいて確かめるが、皆どちらが上か判断に決めかねている様子。

……私見ではケン坊の方がコンマ数ミリ大きいと判断するが、下手に首突っ込むと審判役押し付けられかねないのでお口チャックしておく。

 

「……もういいだろう」

 

見せ物扱いにうんざりしたのか、強引に元の位置に戻っていった。となると2人とも暫定1位ってことになったが、ここで石崎君が不敵な笑みを浮かべて輪に入っていった。

 

「中々の死闘だったが……まだまだだな!」

「はっ、笑わせんな。お前じゃ相手にならねぇよ」

 

ちなみに石崎君は戸塚と同じく100ほど。戸塚と同じかー……なんかもう嫌な予感しかしない。

 

「相手をするのは俺じゃねえ。……アルベルト!Dクラス究極の切り札と呼ばれたお前の出番だ!」

 

やっぱり他力本願かい。 

 

「お、お前それはずるいだろ!?」

「学年1を決める試合なら、アルベルトが参加しちゃいけないルールなんて無い筈だぜ?」

 

生まれついての人種、骨格の違う相手と比べること自体野暮だとは思うが、石崎君の主張も間違っちゃいない。

浴槽からゆっくり上がってきた山田君の戦闘力は、タオル越しからでも相当なものだとわかる。……というか風呂場ではサングラス外せや。

 

「かかってこいやあ!」

 

体格差からして敗色濃厚であると感じつつも、ケン坊は恐れずに前に出る。体育祭の経験を得て一皮剥けただけのことはあるね。いやいや下ネタじゃないですよ?

見かけによらず意外とエンタメをわかっているようで、山田君は無言で佇みバスタオルを取る作業は石崎君に任せた。

   

「刮目しな……これが、山田アルベルトだ!」

「こ、これは……!?」

 

とうとうベールを脱いだ山田君の戦闘力。

訪れる静寂。そして……

 

「負け......た」

 

王者ケン坊、膝から崩れ落ちる。判定を行うまでもない圧倒的な差がそこにはあった。ふむ、戦闘力300……流石はメジャー級と言っておこう。言わねーけど。

 

「これがアルベルト....ラスボスの強さかよ!?」

 

あまりの戦力差に柴田君(130)、池君(90)、山内君(70)も戦意を失いその場に崩れ落ちる。

2人ほど彼に勝てる人物に心当たりはあるけど、2人ともこんなしょうもない戦いに参戦してくれる訳ないしねぇ……。

お開きムードが漂い始めたそのとき、

 

「はっはっは、君達はチルドレンのような愉快なことをしているねぇ」

 

心当たりの1人である六助が湯船から声をかけてきた。おや珍しい、さっきまでまるで興味無さそうにしていたのに。

 

「んだよ高円寺、お前は悔しくないのかよ!?見ろよ健のこの無様な姿を!」

 

普段のケン坊なら即山内君に蹴り入れているレベルの侮辱を受けたが、心に大きなダメージを負ったケン坊はorzのままピクリとも動けずにいた。

 

「知っているさ。健闘していたようだが、レッドヘアー君には荷が重かったようだねぇ」

「……なんだと?てめえなら、アルベルトと戦えるとでも言うのかよ?」

「愚問だよレッドヘアー君。私は全てにおいて完璧な男だ。争うまでもないなら、無益な戦いなどしないのさ」

「……とか言って、アレの方は大したことなかったりするんじゃねえの?」

「実に愚かだねぇ。……しかしせっかくの合宿だ、たまには君達の児戯に付き合ってみるのも一興か」

 

旅先ではみんな開放的になるって逸話、まさか六助にも該当するとは驚きだ。

 

「それで私の対戦相手は、アールベルト君でいいのかな?」

 

伸ばし棒は別に付けんでいいでしょ。

 

「面白ぇ……圧倒的な戦力差というものを教えてやるぜ!なあアルベルト!」

 

石崎の呼び掛けに軽く頷き、山田君は六助の前に立つ。彼の戦闘力を目の当たりにした六助は、面白そうに口元を歪めて拍手する。

 

「ブラボー。なるほどなるほど、さすがは世界レベル、どうやら伊達でチャンピオンを名乗ってはいないようだね」

「わかったか高円寺。自分がどんだけ道化だったかってことがよ」

 

さっきからずっと思ってたけど、なんで石崎君が勝ち誇ってるの?道化は君だよまったく。

 

「本来、男に見せる主義ではないのだがねぇ。1度きりのサービスだよ」

   

六助は傍にあったタオルを腰に巻いて股間を隠し、ゆっくりと湯船から立ち上がる。

 

「や、やる気かよ……」

「勝負するまでもなかったが、ここにいる全員が生き証人だ」

 

六助はポージングを決めながらヴェールに包まれたタオルを取る。……へえ、下の毛がああってことは、六助の金髪って地毛なんだ。

俺がそんな見当違いなことを暢気に考えている傍ら、周囲の生徒達は六助の人間離れしたその戦闘力に言葉を失い、暫定王者だった山田君は「Oh my God…」と呟いて膝をついた。戦闘力は400と言ったところか。インフレも甚だしいね。……おや?

 

「これで私が完璧な存在だと証明されたねぇ」

「お、お前ほんとに人間かよ……」

 

規格外とでも表現すべき六助の圧倒的なパワーに周囲が圧倒される中、俺の曇りなき眼は湯船に浸かり成り行きを見物していたリュンケル(170)の不穏な気配を見逃さなかった。すかさず周囲を隈無く観察し彼の狙いを察知し、ここにいては余計な巻き添えを食らうと判断。

 

「それじゃ、あとは頑張ってねコージー」

「は?」

 

怪訝そうにこちらを見るコージーを捨て置き、俺はさっさと湯船に浸かる。

その後は概ね予想通りに進行した。コージーに色々と煮え湯を飲まされていたリュンケルが、唯一彼だけがまだ戦闘力を隠したままでいることに着目し、周囲を扇動して六助に挑ませた。まあリュンケルとしてはコージーに恥をかかせてやろうという腹積もりだったんだろうけど、俺は知っている……彼の戦闘力もまた規格外であることを。

 

「ま、マジかよ綾小路の奴……」

「信じられねぇ……」

「これはこれは……正直驚いたよ綾小路ボーイ。まさか日本人で私と互角に渡り合える人間がいるとは思わなかったよ」

 

誰かが思わず呟いた……まるでTレックスの喰らい合いのようだと。

 

……その後湯船に入ってきたコージーに見捨てたことをグチグチと責められた。仕方ないじゃん、俺の戦闘力は持ち主に似て謙虚な奴なんだから。

 




かつてここまで低俗な戦闘力の使い方があったでしょうか……?

ちなみに桐葉君の戦闘力は130ほどです。
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