2月18日金曜日の放課後。
俺と橋本は学校の敷地から離れた場所に呼び出され(まあ呼び出されたのは橋本だけなんだけど)、Dクラスのピヨリン、伊吹ちゃん、石崎君、山田君と対峙していた。そしてそんな俺達を何故かCクラスのコージーご一行が、不安そうに見守っているという謎の構図だ。今回の事件の中心であるBクラスが蚊帳の外ってのも滑稽な話だね。
「しかし、なんだこのメンツ。三宅達まで呼び出してどういうつもりなんだ?」
「知らねえよ。お前が呼んだんじゃねぇのか」
「ここに来る途中の俺達を“偶然”コージーに見られてたから、心配してついてきてくれたんじゃない?橋本お前、先日もザキちんと揉めたそうじゃないか」
明らかにこの場で浮いているCクラスを不審に思う2人に、ちょっとした皮肉交じりの推測を話してからコージーに視線を向けると、白々しいことに彼は無言で頷いた。
「……まあ何でもいいさ。用件を聞こうか」
「言うまでもなく例の噂の件です。あれはあなた達のAクラスが流したものですよね?」
ピヨリンが一歩前に出て橋本にそう問いかける。血の気の多い石崎君や伊吹ちゃんじゃ橋本の軽薄さに辛抱できず、話し合いそのものが成立しないから妥当な人選だ。……山田君?やだよ、俺がいちいち翻訳して間を取り持つなんて面倒過ぎる。
「いやいや、なんで俺にそんなことを聞くんだよ?」
「んなもん─」
「抑えてください石崎君」
怒りに任せ食って掛かろうとする石崎君を、ピヨリンは優しく制止する。その様子はさながら猛獣使いだ……って言ったらやっぱり怒られるかな?
「あなたが一之瀬さんの噂を広げているところを、神崎君が見たとお聞きしました」
「あいつも口が軽いねえ。それともそこの2人か?」
橋本が視線を向けた先にはコージーと三宅君が。しかしピヨリンはそちらを向きすらせず橋本を問い詰める。
「答えてください」
「……ま、そっちの二人は聞いていたから素直に言うけど、あくまで俺は又聞きした噂を右から左へ流しただけさ。ちょっとした好奇心でな」
やれやれと肩を竦めながら言い放つ橋本。ちゃんと嘘偽りのない真実を述べているのに、こうも胡散臭く振る舞えるのはもう一種の才能だね。
「この期に及んでそんな言い訳がまかり通ると思ってんのかよ?」
「言い訳?事実さ。だいたいなんで無関係なお前らDクラスがしゃしゃり出てくるんだ?もしや……例の噂はお前らが流したのか?」
「ふざけんな!坂柳が噂を流させたなんてことはもうわかってんだよ!」
「おいおい決めつけんなよ。確かに姫さんは好戦的な性格だから疑いたくなるのも無理は無いけどよ、今回はあいつも俺達も何の関係も無いんだよ。実際証拠は何も無いんだろ?」
橋本の白々しい態度に、目に見えて苛立つ石崎君。まあ橋本の言う通り、罪を認めさせるだけの証拠を有栖は掴ませていない。特に彼らが気にしているであろう今回の噂は実際何もしてないから、たとえ天地がハンドスプリングしても証拠なんて出てくるわけない。
「しかしちょっと意外だな、お前らが一之瀬の肩を持つなんてよ」
「誤魔化そうとしても無駄なんだよ。俺らの根も葉もない噂までベラベラ流しやがって」
「はー、やっぱりな。一之瀬なんてどうでもよくて、Dクラスのあることないこと好き放題言われているのが気にくわないだけなんだろ。たしか石崎は……小学生に悪戯してネンショにぶちこまれたんだっけ?」
ロリコン呼ばわりされた石崎君は当然のごとくキレて、ピヨリンは慌てて飛び掛かりそうになる彼の腕を掴む。それを見て橋本は楽しそうに挑発を続行する。
「よくもまああんな噂を並べ立てたもんだぜ。どうやって調べ上げたか教えてくれよ」
「ざけんなテメェ!」
「よせ石崎」
ピヨリンでは抑えきれないと判断したのか、慌てて三宅君が止めに入る。
「止めんな三宅!これ以上好き勝手させるかよ!」
「やめとけよ石崎。随分と喧嘩に自信があるようだが、こっちも結構やるんだぜ?なあ本条」
「えー?散々挑発しといて俺に頼るのかよ。自分の蒔いた種くらい自分で回収してほしいなー」
まあ助けを求められたら手を差し伸べるのが俺だし、仕方がないから一肌脱ぎますかね。
しかし俺が懐からメインウエポンを取り出そうとしていると、三宅君は咎めるような視線を向けてくる。
「お前らやめとけよ。この学校じゃ喧嘩は厳罰化されるってもうわかってるだろ」
「以前まではそうだったが、今の生徒会長は多少のいざこざは大目に見てくれるらしい──ぜ?」
橋本は距離を詰め石崎君目掛けて蹴りを繰り出すが、三宅君はそれを左腕で受け止める。……かなり喧嘩慣れしてるね三宅君。実は昔はリュンケルみたいな子だったのかもね。
「っ……マジかよ。どうかしてるぜあの会長」
「やるな、止めようと口出しするだけのことはある」
橋本は距離を取って構えを解く。……お前のせいで余計殺伐とした空気が流れちゃったじゃん嫌だなあ。
「喧嘩はダメです」
「わかってるよ椎名ちゃん。今のは自衛する力があるって証明しただけさ」
「もういいでしょひより。平然と嘘をつくこいつらには、直接拳で聞き出すしかないの」
待って伊吹ちゃん、ナチュラルに一括りにしないでよ。嘘は平然とつくけど。
「おいおい伊吹ちゃん、俺らが争ったところで何の得もないぜ?」
「喧嘩売ってきておいて随分調子がいいじゃないの」
「俺達は無関係なんだよ、信じてくれ」
ヘラヘラと笑う橋本に対し、伊吹ちゃんは怒りを堪えるように歯軋りしている。この子に関する噂は確か……リュンケルに告白してフられた、だっけ?そりゃキレるわ。
「お前ら、龍園……が脱落したからって俺達を舐めてんじゃねぇよ」
我慢の限界を超えたのか石崎は三宅を押し退けて前に出る。それに合わせるように伊吹ちゃんも隣に並び臨戦態勢に入る。
「一之瀬の噂の件と俺達への噂の件について、坂柳に詫び入れさせろ。それか、今すぐ噂を取り消せ」
「だからどちらも俺達は無関係なんだって。わっかんない奴だな」
呆れたようにわざとらしく肩を竦め溜め息をつく橋本に、石崎君は怒りのボルテージをさらに上昇させる。いったいどういう人生を送ってきたらこんなに憎たらしく振る舞えるようになるんだろうね?
「だったら直接坂柳と話をさせてもらうぜ」
「姫さんがお前なんか相手にする筈ないだろ。……本条、どうやらやるしかないかもな」
「まあ、そうだね。橋本だけならともかく、有栖に危害が及ぶならちょっと見過ごせないかな」
俺が懐から
「うわっ!?……な、なんだこれ、外れねぇぞ!?」
「まったくこの前のBクラスといい君達といい、皆して随分血気盛んだ─ね」
「What!?」
後ろから殴りかかってきた山田君の拳をノールックで掴み、彼が驚愕して硬直している隙にそのまま一本背負いで投げ飛ばして地面に叩きつけ、慌てて起き上がろうとする彼の両手両足も拘束する。
「本条、テメェ……!」
「damn it!」
拘束を解こうと2人はもがくが、巻き付けられたワイヤーはビクともしない。見た目通り腕力が自慢のようだけど、俺が考案した桐葉式ワイヤー拘束術は力任せでどうにかなるほど甘くはないよ。
「っ……石崎!?アルベルト!?」
「さて、あとは伊吹ちゃんだけだね。流石に女の子をぐるぐる巻きにするのはマズいし、お願いだからここら辺で手打ちにしてくれない?」
「アイツといい、アンタといい……!私を見下してんじゃ─」
「待ってください伊吹さん!……本条君の言う通り、皆さん喧嘩はやめてください」
激昂する伊吹ちゃんを遮り、ピヨリンが俺達の間に割り込みながら強い口調で言い放った。
「見た限り喧嘩では本条君には勝てないようですし、よしんば勝って自白させたとしても坂柳さんが主犯という証拠にはなりません」
「だったら何、泣き寝入りしろっての?」
「気持ちはわかりますが今は耐えてください。……必ず報いは受けてもらいます」
この場をセッティングしたのはやっぱりピヨリンか。先日卍解ちゃんのために協力してあげたいって言ってたしね。
「本条君、石崎君達の拘束を解いてくれませんか?」
「いいよー。はいちょっとの間じっとしててね、今解いて上げるから」
「……まどろっこしいな、ハサミか何か持ってねぇのかよ?」
「あるけどこれ今後も使うつもりだからダメ」
みやびん会長もろくでもない提案してくれたもんだ。
月日に関守なく、学期末試験までいよいよあと1日となった。流石に皆もくだらねー噂等に気を取られている余裕など無く、せっかくの昼休みだというのにクラスメイト達は一心不乱に最後の詰め込みに夢中になっている。
「桐葉、少しついてきてください」
そんな中有栖は席から立ち上がり、不審な視線を向けるランスを気にも留めず俺を引き連れて教室を出る。
「どした?Bクラスに用でもあんの?」
「ええ。一之瀬さんがようやく復帰なされたので、少々お話をと」
あれから1週間以上姿を見せていなかった卍解ちゃんが、ようやく学校に登校してきたらしい。……あの子を潰すことには拘っていないとはいえこの子は結構几帳面な性格だから、おそらく形だけでも決着を付けに行くんだろうね。
Bクラス教室前の廊下にて、やってくる俺達の姿を見たBクラスの生徒の一人は慌てて教室に入ると、入れ替わるようにぞろぞろと敵意剥き出しの生徒がたくさん出てきた。
「何しにきたんよお前ら!」
「そう怒鳴らないでください柴田君。私は皆さんを救いに来ただけですよ?」
「俺は付き添いだから特に用は無い」
「本条君はともかく、どういうことかな坂柳さん」
教室の奥の方から、白波ちゃん達に囲まれた卍解ちゃんが声をかけてきた。
「待てよ一之瀬、お前が相手する必要ないって!」
「そうだよ帆波ちゃん、行っちゃダメ!」
白波ちゃんは彼女に抱きつき、是が非でも有栖に接触させまいとする。……まあ病み上がりでこんな危険人物の相手させたくないわな。
「何やら桐葉に対して不愉快な気持ちになりましたが、まあ今はいいでしょう。……まずは体調が回復なされたようで安心しました。私達も心配していたんですよ?」
「うん、ありがとう」
「正直俺はそこまで心配してなかったけど、まあ健康なようで何より」
「う、うん、正直な感想ありがとね……」
白々し過ぎる有栖の態度と露骨にどうでもよさそうな俺の態度に、Bクラスのほぼ全員が苛立ちを募らせる。しかしこの程度のアウェイでは俺は何も感じないし、争い事が大好きな有栖に至っては凄く楽しそうだ。そんな俺達に対して、ザキちんがクラスを代表して一歩前に出る。
「救いに、といったな坂柳。つまり自分が噂の元凶だと認めるということか?」
「いいえ、噂を流したのは私ではありません」
「……なら、何をもって救うと言うんだ」
「以前、一之瀬さんと桐葉が大量のポイントを所持しているという噂が持ち上がりましたね。あのときはすぐに鎮静化してしましたが」
「それがどうした」
「私の推測に過ぎないのですが……一之瀬さんはBクラスで共有するポイントを管理する、金庫番のような役割を担っているのではありませんか?」
「そんなこと、答えられるわけないだろ」
Bクラスの戦略に関わってくる部分だ。たとえ同盟相手でも、ましてや敵対する相手に教えられる筈もないよね。
「ええ、私も別に回答は求めていません。ですがもし私の推測通りなら、それは非常にリスクのあることだと思ったのです。……一之瀬さん、私の言ってることは間違っていますか?」
目の前にいるザキちんではなく、教室の奥にいる卍解ちゃんに向かって挑発的に首を傾げる。
それに対して卍解ちゃんは友達の制止を振り切って俺達へと距離を詰め……しかし最後には俺達ではなくクラスメイト達へと向き合った。
ふむふむ、なるほど……どうやらこの子は、己の過ちと向き合えたようだ。
「……みんな、ごめん!」
「な、何を謝ってるんだよ一之瀬!?お前が謝る必要なんて─」
「無粋だね柴田君、女の子の話は聞いてあげなきゃダメだよ?」
……正直もう結末までだいたい読めてしまったので、さっさと終わらせてもらおう。
「私、今までずっとみんなに隠し続けてきたことがあるんだ……」
「待て一之瀬、何もこの場で話す必要は─」
「違うよ神崎君、これは包み隠さず皆に話さなきゃならないことだから。……ここ最近、私のことで変な噂が広がってたよね。勿論そのほとんどはでっち上げだけど……私が犯罪者だってことは本当なの」
先程までのざわめきが、みるみるうちに静まり返っていく。Bクラスの子達だけでなく、話を聞きつけいつの間にか集まっていた他のクラスの子達も、到底信じられない様子だ。まったく驚いていないのは既に情報を掴んでいた有栖と、そもそも過去に興味の無い俺、そして……
「どうやらここにいる方々は見当もつかないようなので、詳しく教えてあげてください。あなたは一体、どんな『罪』を犯したのですか?」
人のもがき苦しむ姿が大好きな有栖は、何ともまあ楽しそうである。卍解ちゃんは一度躊躇するように喉を鳴らし、意を決して言葉を紡ぐ。
「私はみんなに黙っていたことを、今から全部告白します。私の隠してきた犯罪……
それは──万引きをしたこと」
え、しょぼ……。
ええと、彼女の語ったことを簡潔に纏めると……
一之瀬家めっちゃ貧乏、だけど仲良しかつ幸せ→しかし母親が過労で倒れる→原因は妹の誕生日プレゼント代を稼ぐため無理をしたせい→気の毒に思った卍解ちゃん、魔が差して万引き→母親がそれに気づいて激怒、彼女を連れてスーパーに謝罪に赴く→店側は不問にしてくれたが、卍解ちゃんは罪の意識に苛まれる→彼女が万引きしたことが学校中で噂になり居場所を無くす→半年ほど引きこもっていた卍解ちゃんに、担任が極めて閉鎖的なこの学校について教える→1からやり直そうと決心し入学→なんだかんだあって今ココ
こんな感じである。
なんとまあ、散々勿体ぶっておいてしょっぱいものが出てきたもんだ。もし大罪なんて犯してたら卍解ちゃんの性格上ぬけぬけと学校生活なんて過ごせないだろうから、どうせ小さな過ちに対して勝手に罪の意識に苛まれてるだけだとは予想はしてたけど、それにしたってねえ……
俺が思わず脱力する一方、話を終えた卍解ちゃんが改めて頭を下げる。
「ごめんねみんな、こんな情けないリーダーで……」
「そんなことないぜ一之瀬。今の話を聞いて確信した。やっぱり一之瀬は良いやつなんだってさ」
「うん、確かに帆波ちゃんのしたことは決して誉められたものじゃないけど─」
何か良い感じにまとまりそうなとこらを、隣の幼女は空気を読まず杖を床に強くついて音を響かせる。そろそろ帰りたいからあんま長引かせないでよ……。
「くだらない茶番ですね。同情を引きたいのか知りませんが、どんな境遇だろうと万引きは万引き。私利私欲で盗みを働いた貴女に、同情の余地などありません」
似たような犯罪を常習的にやってるであろうマスミンと仲良くしてるくせに、よく言うよ。
「うん、その通りだね」
「貴女がクラスメイトから預かっている大量のプライベートポイントも、卒業間際に盗み取ってしまうのではありませんか?普通ならそんな詐欺行為は学校側も認めないでしょうが貴女は賢い人ですから、たった今やったような同情を誘うやり口を使えばどうとでもなるでしょう」
「そう、だね……どれだけ頑張っても、私の努力は全て偽善かもしれない。一度犯した罪は二度と消えることは、無いんだよね」
ネチネチと執拗に口撃を畳み掛ける有栖。……この子は凄く頭が良いから、この場で卍解ちゃんを潰すのはもう不可能だと察している筈なのにだ。それでもなお苛めを続行するのは単なる趣味だろうね。
「皆さんもおわかりになったでしょう。彼女のような人をリーダーに据えている限り、Aクラスには……私や桐葉には決して勝てません。今すぐ預かっているプライベートポイントを生徒に返し、Bクラスのリーダーを降りるくらいのことはして頂けないでしょうか?それぐらいしなければ、貴女に貼られたレッテルは消えませんよ?」
有栖の執拗な揺さぶりに対し、卍解ちゃんは一度目を閉じて深呼吸し……
「これで私の懺悔は終わり!」
俺と有栖に笑顔を向けた。
どんな手を使ったかは知らないが──まあだいたい想像はつくけど──卍解ちゃんの心は以前よりも遥かに強靭になっている。もう、己の過ちから目を背けることは無いだろう。
「私のしたことに同情の余地はないし、それから逃げるつもりもない。でも私は実際に刑罰に問われたわけじゃないから、償うべき罪は本来存在しないものだよ」
「うんまあ、一理あるね」
「黙っててください桐葉。……随分と厚顔無恥ですね、万引きをした悪人とは思えない開き直りです」
「かもしれないね。でも私はもう振り返らない。過去に縛られない。
……こんなどうしようもない私だけど─みんな、最後までついてきてくれないかな……?」
……この子は決して楽観視していたわけじゃない。己の過ちと向き合えたとしても、周りが罪を犯した自分をどう思うかまではわからない。
糾弾されることを憂いただろう、拒絶されることを想像しただろう、非難されることが怖かっただろう。……それでもこの子は最後まで逃げず。
まあ残念ながら、それらは全て取り越し苦労だよ卍解ちゃん。1年間も苦楽を共にしてきた仲間が、君の苦悩と勇気に気づかないわけないじゃないだろうに。
「ついていくに決まってるだろ!なあ皆!」
笑顔で叫んだ柴田君に、Bクラスの生徒全員が同調し彼女にエールを送る。一部始終を見ていた他クラスの生徒達も、もう卍解ちゃんを犯罪者として見ることは無いだろう。
改めて実感するが、卍解ちゃんの人望が故成り立つこの結束は、多少の懸念はあれど非常に強固だね。……ちらりと横を見ると、明らかに引き下がる気0な幼女の姿が。
「ねえ有栖、後は俺に任せてもらえる?」
「おや珍しいですね、貴方がこんな些事に口出しするなんて」
「正直ね、一連の噂騒動にはもう飽きた。お前の当初の目的は達成したんだからもういいでしょ、さっさと綺麗さっぱり終わらせて来る」
「まったく……相変わらず貴方は飽き性ですね」
「お前は相変わらずサディストだよ」
俺は今からあの子に3つの道を示す。彼女は白か、黒か、それとも灰色か……誰の目から見ても一目瞭然となる。
黒はまあ無いとして、これから俺達Aクラスと戦っていくならたぶん灰色がベストアンサーだ。
……しかしそれでも白を選ぶことを期待してしまうのは、俺も内心ではあの子が本物の善人だと信じたいのかもしれないね。
桐葉式ワイヤー拘束術……相手の動きを完璧に見切る眼があって初めて実践向きとなる拘束術。不意を突けば堀北先輩ですら、真正面からでも石崎君程度なら一方的に無力化できる。一度決まったら綾小路君のように特殊な訓練でも受けていないと早々解けない。