女王の女王   作:アスランLS

73 / 89
桐葉君と有栖ちゃん、この作品初めての共同作業になります。


容赦できませんので

 

そして放課後。卍解ちゃんと()()()()()()()()()()をしてから下校し、有栖と2人でケヤキモールのカラオケルームで待つこと数分、今回の試験のメインキャスト……自称1年Cクラスの中心人物こと、山内春樹君が恐る恐る入ってきた。

 

「やあ、随分と早かったね」

「ま、まあな。……あれ?坂柳ちゃんもいるの?」

「おや、私がいてはいけませんでしたか?」

「いやいや全然オッケーさ!むしろ野郎2人でカラオケボックス、なんて地獄みたいな構図にならなくてよかったよ!」

「今日話す内容が内容なんでわざわざ来てもらったんだ。……あ、ちょっと待っててね」

 

今回の話を第三者に聞かれたら全てがおじゃんなので、ドアを開けて周囲を観察する。……ふむ、どうやら誰もいないようだね。

 

「桐葉、どうでした?」

「とりあえず盗み聞きしてる奴はいなかったよ。一応聞いておくけど山内君、誰にも尾行されたりしてない?」

「あ、当たり前だろ~。俺がそんなヘマすると思うのかよ?」

 

うん。

 

「……まああんな試験内容を聞かされたんじゃ、尾行なんて不穏な行動は誰もしないかな」

「ええ、ひとまず気にする必要はないでしょう。……それでは山内君、貴方に来てもらったのは今日通達された追加試験についてです」

「っ……え、えっと、どういうこと?」

「君、もしかしたら退学させられるかもよ?」

「たいがっ……いやいやいや!クラスに必要の無い人間が選ばれる試験だろ?優秀な俺に批判票が集まるわけないって!」

 

山内君はまず間違いなく退学候補の1人だし、本人も内心では自覚しているんだろうが、この子は見栄なのか普段から嘘をついてまで自分を大きく見せる傾向があるので、どうせそう答えると思っていた。……この後のことも考えて、ここは納得させつつ彼の自尊心を満たしてあげよう。

 

「逆だよ山内君、ときには優秀だからこそ排除されることもある。出る杭は打たれるってね」

「……へ?」

「以前桐葉から聞いていると思いますが、私達はCクラスの躍進に貴方が大きく貢献していると考えてます。だからこそ貴方に取引を持ちかけました」

「い、いや、そんな大袈裟な……だけどまあ、それほどでもあるかなー?」

 

ないよ。

 

「だけど君の活躍が公に出回ったことは一度も無い。……これってつまり、君のことを妬んで手柄を奪っている輩がいるってことじゃない?」

「っ!」

 

いやいやいや、そんな「そうだったのか……!」みたいな顔されてもさ。明らかに事実無根なのになんで少しも違和感を覚えないの?あと有栖、気持ちはわかるけど困惑を表情に出さないの。全部バレちゃうでしょうが。

 

「そして今回、そいつはこれ幸いとばかりに目障りな君を排除しようと画策している……違うかい?」

「……そこまでバレてるなら、もう隠しても仕方ないか。実は、そうなんだよ」

 

そうじゃないでしょ。

あと有栖、笑いそうになってるとこ悪いけど何とか堪えてね。マジでバレちゃうよ?

 

「対Cクラス用の切り札にして近々私達のお仲間になる山内君を、みすみすここで脱落させるわけにはいきません。ですので私達が貴方に秘策を伝授いたします」

「ひ、秘策?」

「クラスの約半数ほどを集めてグループを秘密裏に作り、1人にターゲットを絞って批判票を集中させてください」

「で、でもそんなこと持ちかけたら、俺が狙われちゃうんじゃ……」

 

ふむ、流石にそこまで考えなしじゃないか。

 

「うん、その懸念はもっともだね。誰だって投票するなら罪悪感の薄い奴を選びたがるだろうし、作ったグループの子達が本番の日に主導した君にも批判票を入れるかもね」   

「だ、だろ?」

「だったらグループを作るのは誰かに任せればいいのさ。クラス中に慕われれてて、憎まれ役を引き受けてくれそうで、なおかつ君のことを誰かに告げ口したりしない心優しい子に。……Cクラスだとそうだな、櫛田ちゃん辺りが適任かな?」

「いやいやいや。桔梗ちゃんがそんなクラスメイトを嵌めるようなこと、引き受けないだろ……」

 

彼女のつけた仮面に気づきもしない山内君は、俺の提案に難色を示す。……せっかくだから彼女の仮面を利用させてもらおうかな。

 

「ところがそうでもないんだよ。彼女は少し優し過ぎるから、友達から頼み込まれたら決して断れない。自分に称賛票が大量に集まるなんて考えもしないから、憎まれ役を買うことで自分に批判票が集まればいいとさえ考えるだろう」

「た、確かに桔梗ちゃんなら自分が犠牲になればって考えてもおかしくないかも……」

 

実際は100パー考えないだろうけどね。

 

「君が必死に頼めば引き受けてくれる筈だよ。何だったら泣き落としすれば確実さ」

「そ、そんな格好悪いことするわけないだろ!」

 

うん、だったら「その手があったか!」みたいな表情するのはやめようね?

 

「さらに2段構えとして私達Aクラスは、称賛票を全て貴方に投票します」

「マジで!?……あれ?それだったらなんで批判票を誰かに集中させる必要があるんだ?40票も入るなら俺絶対に助かるじゃん」

「こんな露骨な組織票を突っ込むんじゃ、俺達と君がつながってるって確実にバレちゃうでしょ。だから近い内に任せるつもりだったスパイ任務は白紙、試験終了後すぐに君をAクラスに移籍させることになったの」

「そ、そうなのか……」

「ですが幸いなことに今回の試験では、プロテクトポイントを各クラス1名に配布されます。よってせっかくですのね貴方に獲得してもらってから引き込もうかと。グループ内でお互いに称賛票を入れ合えば、貴方へ集まる批判票もある程度相殺できます。その上で称賛票がプラス40されるのですから、十分トップを取れるでしょう」

「プロテクトポイントは使い方次第では非常に厄介な武器になる。それを奪い取れるならそれだけで、2000万ポイントに見合った働きだよね」

「なるほど……」

 

俺達が山内君を高く評価していると、彼は信じ込んでしまっている。その上で称賛票を全てつぎ込むだけの(一見)合理的な理由を説明されては、彼は俺達が手を差し伸べることをまう疑いもしないだろうね。

 

「さて、それじゃあ君のクラスの誰を追い込むか、だけど……称賛票があまり集まりそうにない子の中からランダムに選ぶよ」

「え?」

 

困惑する山内君をよそに、俺は独断で選別したCクラスの生徒10人にそれぞれ0~9まで番号が割り振られた紙と、TRPG用の十面ダイスを懐から取り出す。

 

「運命のダイス・ロール☆」

 

決め台詞と共にサイコロを振り、コージーに割り振られた9番で止まる。……言うまでもないけど勿論狙いました。

 

「あーあ、コージーか。御愁傷様」

「待て待て待て!そ、そんな決め方でいいのかよ!?」

「クラスメイトを切り捨てるんだし、どうせ誰を選んでもしんどくなるさ。ここは無関係な俺がランダムで選んだ方が、君も気が楽でしょ」

「それに、あまり山内君もあまり気に病まなくてもいいでしょう。貴方はこの試験直後に、プロテクトポイントを持ち逃げすることになります。必然彼等には恨まれるでしょうし、交遊関係はこの機会に一新されるとでも考えてください」

「……そっか、そうだよな……俺はもうAクラスみたいなもんだんだし、あまり気にすることないよな」

 

あーあ……前にも思ったけどさ、ここまで手玉に取りやすいと逆に騙し甲斐が無いよ。

 

「では今日は解散しましょう。……それと山内君、近々クラスメイトになる貴方には最後に1つ忠告しておきます」

「へ?忠告?」

「私の指示をしくじるならともかく無視したりするような方は、残念ながらAクラスには必要ありません。もし貴方がグループ作りと綾小路君への票集中を怠るようであれば、私達は貴方を助けませんのでどうかお気をつけて」

「わ、わかってるって!」

 

黒い笑みを浮かべながら遠回しに脅す有栖に、山内君は姿勢を正しつつそう答える。……敢えて黒い部分を明け透けに出すことで真実味を持たせ、自分は嵌める側だと思い込ませたね。正直彼を騙すのにそこまで念入りにする必要があるか疑問だけどね。

ようやく今日の話し合いが終わり明日再びここに集まると約束して解散する。有栖と2人で寮に帰りつつ、俺はしみじみと物思いに耽る。

 

あーあ。結局は有栖の目論見通り、3人とも地獄を見ることになっちゃったなー……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼休み。

俺はメールで生徒会室に呼び出され、デスクに座るみやびん先輩と向かい合っていた。

     

「コランダム先輩が会長の頃はTHE・堅物みたいだったこの部屋も、なんか随分とごちゃごちゃした様相になったすね」

「坂柳も以前似たようなことを言っていたな。仲が良いようで何よりだが、主従揃ってこの部屋がお気に召さないようだ」

「何か息苦しいです。もっと花とか観葉植物とか置きませんか?」

「何が狙いで法外なプライベートポイントを支払ってまで植物園を設置したのか以前気になっていたが、まさかただの趣味だったとは流石に予想外だったな。……とても賢いポイントの使い方とは言えないぞ」

 

別にいいじゃないか、所詮あぶく銭なんだから。

 

「まあいい、さっさと本題に入ろう。今日呼び出したのは他でもない……お前ら1年だけ追加された特別試験に関することだ」

「俺の心配してくれてるんですか。嬉しいなー」

「そんなわけないだろ。なんで俺が絶対安全圏にいるお前を心配しなくちゃならない?」

「ですよね」

 

総合的な実力、実績ともにAクラスのトップである俺に批判票を入れる理由など微塵も無いし、1億分の1クラスが結託し俺を嵌めようとしたところで、自力で退学を免除できる。満場一致で俺が最も安全圏にいる生徒だろうね。

 

「これは他言無用だが、俺はある生徒に条件付きで多額のポイントを貸すと約束している。……この情報だけで俺がお前に何を言いたいのか、わかるか?」

「卍解ちゃんこと一之瀬帆波ちゃんに交際を条件にポイントを貸すことになってるから、俺はでしゃばるなってことですね」

「正解だ。まあ坂柳は以前のことをお前に話してるだろうし、ある程度予想できていただろうがな」

 

以前みやびん先輩は有栖に卍解ちゃんの秘密……過去に万引きしたという情報を与え、有栖がその情報を活用し精神的に追い詰めた卍解ちゃんを慰め、自分を彼女の寄り処にすることで交際に持ち込もうというマッチポンプ計画を企ててたらしい。正直倫理的にどうかとは思うけど、本人が後ろめたく思っていないなら俺から言うことは特に無い。

 

「この前といい今回といい、随分と彼女にご執心なようっすね」

「あいつは俺が女に求めるルックスを満たしている。私物として側に置けば見栄え的価値があるからな」

「うーわ、黒い部分を隠しもしませんね」

「お前に隠し事は通用しないんじゃなかったか?」

「おやおや、これは一本取られた」

「それで、お前の返答は?」

 

軽薄な笑みを浮かべつつ、みやびん先輩は試すような眼差しでこちらをまっすぐ見据える。

うーん……釘を刺されるまでもなく、実はもう昨日の放課後に彼女の頼みを断ってるんだよね。「つい先日俺の譲渡を拒んでおいて、困ったからポイントを貸してほしいなんて虫の良い頼みごとを受け入れるわけがないだろう」みたいな理由を適当にでっち上げて。

普段なら二つ返事でオーケーしてあげるんだけど、俺がポイントを貸したらある生徒の退学が確定しちゃうからね。勿論みやびん先輩が貸しても確定しちゃうんだけど……そこはまあしょうがない、そういう運命だったと諦めよう。

だから返答は……そうだね、興が乗ったしこれでいこうかな。

 

「別に構いませんが、1つ条件を付けて良いですか?」

「ほう、生徒会長である俺と一丁前に交渉しようってか。つくづく今年の1年は面白い奴が多いな。……条件ってのは何だ?内容次第では聞き入れてやる」

 

興味深そうに聞いてくるみやびん先輩に対し、俺は浮かべていた友好的な笑みを消しながら言い放つ。 

 

 

 

「二度と茜さんに悪意を向けないでください。一度は見逃しましたが、次は俺も容赦できませんので」

 

敢えてプライドを刺激する言い回しをした俺に、みやびん先輩は浮かべていた笑みを消し忌々しそうに俺を睨みつける。高校生にしてはなるほど大した圧力だが、残念ながらこの間の綾小路パピーに比べたらそよ風にも劣る。

……幾多の根回しと下準備を重ね、コランダム先輩の鼻を明かすためだけに用意した策略を台無しにした俺に対して、みやびん先輩が良くない感情を抱いていることは勿論わかっていた。それでも今はもうすぐ卒業してしまうコランダム先輩に勝つことに集中したいから、来年じっくりといたぶれると俺に対する悪感情を抑え込んでいたことも当然把握していた。……だからこそ好奇心が湧き出てくる。つい逆鱗を抉りたくなってしまう。

しばらく俺を睨み続けた後、みやびん先輩は嘲笑するように吐き捨てる。

 

「……随分と調子づいているな本条、ここまで俺を舐めた奴は初めてだぜ。坂柳と違ってお前は、この学校で生徒会長と敵対する意味を、まだ理解できてないらしい」

「さてさて、何のことやら。それでみやびん先輩、条件は飲んでくれるんですか?」

「…………ああ、別に構わないぜ。どうせ堀北先輩に同じ様な手は効かないだろうし、橘先輩なんてもう狙う価値も無いからな」

「そうですか、それは良かった。……それじゃあ用件も済んだことだし、俺はもう帰りますね」

「まあ待て」

 

踵を返した俺をみやびん先輩は呼び止める。……ふむふむなるほど、俺の視野の広さまでは知らないのか。後ろを向いて油断したのか、煮えたぎる怒りを抑えきれなくなっている。

 

「お前こそ、随分と橘先輩にご執心じゃねぇか」

「そうですね、もし有栖に会ってなければ惚れちゃってたかもしれません」

「ほほう?あくまで本命は坂柳ってわけか。だったらあいつを条件に含まなくて良かったのか?」

「ええ、ご自由にどうぞ。有栖は他人から悪意や敵意を向けられていないと生きていけない人種ですし……あの娘が遅れを取るとはとても思えませんしね」

「っ!テメェ!」

「それじゃあコランダム先輩との戦い頑張ってくださいね、応援してますから」

 

適度に火薬を放り込みつつ、俺はみやびん先輩の制止を無視し振り返ることなく生徒会室を後にした。きっと部屋の中で荒れていることだろう。

来年からは執拗に狙ってくるだろう……学校生活も随分と楽しくなってきたぜぃ。

 




桐葉「(意訳)お前の浅知恵なんてバレバレだったし、いつでも潰せるから見逃してやったんだよ。……は?有栖を狙う?お前ごときが敵うわけないだろ」
南雲「(#^ω^)ピキピキ」

先日の事件への綾小路君の関与とか色々問い詰めるつもりだったようですが、露骨に見下されてそれどころでは無かったようです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。