持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話 作:りのちゃん
第九話 3人分の休暇
「シャイン、今日は有マ記念の日だよ! ちょっと到着が遅いんじゃない?」
ふと私より先にレース場に来ていたサンが、私に「全くこいつは……」と言った様子でそう言葉を投げかける。今日、私たちはついに有マ記念を走るのだ。相手にはプロミネンスサンとプロミネンスサン、そしてプロミネンスサンがいる。他にもプロミネンスサンはこの有マ記念で私が一番危ないと思っているウマ娘だから、しっかりとマークしておかないといけない。
「今日はよろしく、シャイン」
私の後ろにいつの間にかプロミネンスサンがいた、足を軽く怪我したと言っていたが、話を聞いたところによるともう走っても大丈夫なくらいに治ったらしい
怪我をして走れないんじゃないか、という心配をしていた私はその報告を聞いて安心した
「うん! サンもプロミネンスサンもよろしく! 今日は絶対負けないからね!!」
私を除いて11人のプロミネンスサンが今日、私が経験した事が無いほどに灼熱するレース展開を巻き起こすのだろう。
絶対に私が、すべてごぼう抜きにする。
「どわあああああああああああ!!!!」
私はとんでもない悪夢のような何かで起きた……11人のサンってなんだ……?
っていうか、ライブの後の記憶がまったくないんだけど時間戻ったとかじゃないと思いたい。この目覚まし時計が魔法の目覚まし時計で時間が未勝利戦の前になってるとかないよね?
夢の中でよくわからない現象に遭遇したせいで、よくわからない心配をした私はとっさに自前のデジタル目覚まし時計を確認したが、特に日付も変わってないから今日は今日だった。よし。
とりあえず安心した私は誰もいない部屋で体を起こした。
そうそう、相部屋の寮で誰もいないかなんだけど、理由はわからない。だけど確実に誰かが住んでいるような跡はあるので、なぜいないのかわからない。入学した日に聞いてみたのだが、なんでも寮長によると『気にしなくていい』とのことだった
「ん……トレーナーからメール……」
『今日はジュニア期に向けた話し合いをする、トレーナー室に来い』
「そっか、もうジュニア級になるのかぁ」
私は窓の外の景色を見ながらそんなことを思う。私は未勝利戦に勝利し、ジュニア級になったのだ、私の目標の第一歩を踏み出したのだ。そんなわくわくを背中に背負いながらトレーナー室に向かい、元気よくドアを開けた。
「ん、おはようシャイン、……なんか、話す内容が楽しみで仕方ないって感じだな」
「もうジュニア級になったからね! これからとてつもない記録を作っていくんだよ、私は! そんなの楽しみじゃないわけないじゃん!」
「それもそうだな、かくいう俺も楽しみだ、これから頑張って行こう、シャイン」
「さて、ジュニア期のレーススケジュールに関して、次のレースは……と言いたいところだが、まだレーススケジュールが決まっていない」
「そうだね! まずはオープンから……って、え? トレーナー、今なんて?」
とうとう私の耳はおかしくなったのだろうか、トレーナーはホワイトボードの裏表を思いっきりひっくり返して、『レーススケジュールが決まっていない』と言ったように聞こえた。まだ、まだ私の聞き間違えかもしれないから、一応聞き返した。
「いや、だからレーススケジュールが決まってない」
「…………えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
何を言われたのかわからなかった。一応聞き間違いと言う事があるかもしれないから聞き直したというのに、あろうことかこのトレーナーは平然とした顔でとんでもないことを言いだした。レーススケジュールが決まっていない?
ただレーススケジュールが決まっていないだけと思うかもしれないが、レーススケジュールが決まっていないと言う事は、次に走るコースの研究、相手の作戦の予想、マークするべき相手の絞り、そのレースに向けたトレーニング、そのすべてが出来なくなる。すなわち今後の活動において大きなディスアドバンテージを生む。
「ちょいやちょいやトレーナーさん! どういうことよレーススケジュールが出来てないって!」
「いや……本当に……俺の問題なんだ……」
「え?」
トレーナーさんは突然私の前に正座して、申し訳なさそうに頭を掻き始めた。
「俺……担当持つの初めてでさ……どういうレーススケジュールが良いのかわからねぇんだ……」
「い……いや、トレーナーさん、サブトレーナーの経験あるんでしょ? それならレーススケジュールが大体どんなものかいくらかわかるんじゃないの……?」
前にも言った通り、トレーナーさんはサブトレーナーの経験がある、それならばレーススケジュールを聞くこともいくらかあったのではないだろうか。それなのに分からないとはどういう事だろうか。
「そ、それがな……俺はトレーニングメニューの提案と相談しか担当してなかったから、レーススケジュールに関してはノータッチなんだ……」
「ちょっと勘弁してよトレーナーさん……! レーススケジュールも立てれないでどうするの今後……!!」
「ちょ、ちょっと待っててくれ……木村さんや速水さんに頭下げてどういう風にすればいいのか具体的に聞いてくる……それまでシャインはどこかで暇つぶしててくれ……レーススケジュールが組み立てられ次第トレーニングメニューを組み立てる……!」
「ちょ……ちょま……はぁ……」
そういってトレーナーさんは私を強引にトレーナー室から追い出してしまった。ドアの向こうでは電話をする声が聞こえる。
「困ったもんだよ……まぁ暇つぶししろって言われたし、どこかで潰しますか」
「ステーキ! ステーキ! ステーキ!」
グラウンドには練習をしているウマ娘で溢れていた、恐らくどれもメイクデビューを乗り越えたジュニア期のウマ娘だろう
私はレーススケジュールが決まっていないからとりあえずの軽いメニューだけ終えてこうやって出かけてるけど、レーススケジュールが決まったらこうもいかなくなるのかなぁ
「ほえぇ……ジュニア期かぁ……」
「やぁ、暇つぶしかい?」
そこには見慣れた制服を着たサンがいた、おかしい、この時間はサンも練習をするだろうに
なぜジャージを着ずにうろうろしていたのか聞いたら、どうやらトレーナーさんに暇つぶしをしていてくれと言われたらしい、……原因はうちのトレーナーだろうな……
「と言われても一人で出かける先なんてないからねぇ」
「じゃあ、サンも一緒に出掛ける?」
「お、いいねぇ、デビュー前は練習だけだったからね」
「…………」
「あっクライトも一緒に出掛けよ!!」
「うるせぇ話しかけんな! うわっ二人で追いかけてくんな!」
「逃げウマから逃げようったってそうはいかないよクライト! ハッハッハッハッハッ!」
ついでにそこら辺をほっつき歩いていたクライトも誘って私たち三人でお出かけすることになった
ちなみにクライトもトレーナーさんに暇つぶししてくれと言われたらしい……本当に申し訳ない
なんだかんだメンツがそろってしまい、とりあえず私たちはゲームセンターに来ていた、話を聞いたところここにいる三人全員が意外とゲーム好きなことが発覚したため、ゲームセンターをとりあえずの暇潰し場所として選んでいた
「私は割と長時間やるゲームやってたかな、太鼓の音ゲーとか」
「どっちかって言うと私はサッと終わるタイプ、クレーンゲーム等、かな?」
私が長時間プレイできるゲームを遊び、サンが短いゲームをプレイする、もしかしたら好きなものの傾向は脚質適正で分かるのかもしれない
「……」
「クライトは何やってたの?」
「……」
「じゃああれやろ! サン!」
「私は別に好きなゲームをべらべらしゃべったりしな……っておい! 興味無くすのはえぇな!」
「えぇ? だって答えてくれなさそうだったから」
「だとしても!! もうちょっと粘るもんだと思ってたわ!」
「もしかしてもっと粘ってほしかったの?」
「……」
「恥ずかしがり屋なんだから~」
「うるせぇぶっ飛ばすぞ!」
そんなこんなで私たちはゲームセンターを堪能することにした
私とサンで太鼓のゲームをやっているとき
「ところでさシャイン」
「よ……よくリズム乗りながら喋れるね……」
私はリズムに乗っているだけで精いっぱいだと言うのに、サンはリズムを崩すこともなく私に何食わぬ顔で話しかけてきた
「クライトも聞いて欲しいんだけどさ」
「あん……?」
「私達ってさ、なんだかんだ良い三人組だよね」
突然サンがそんなことを言う、良い三人組、その言葉の意味はどういう事なんだろうか、普通に考えれば友達として良い三人組、だがサンの顔はそういう顔ではない、もっと重要な何かを言いたげな顔をしていた
「どういう意味だ?」
「いやさ、急に思ってさ」
サンはドンドコと太鼓をたたきながら続ける、私はリズムに全く乗れずボロボロになっている
「私とシャインは言わずもがなライバル同士、クライトもシャインと仲良し、「仲良くねぇ」私たち三人、なんだかんだ縁があると言うか、なにかと惹かれあうよねって思って」
惹かれあう、確かにそうなのかもしれない
私たち三人はみんな距離適性が同じで、入学当初からクラスも一緒、出るレースも何回かかぶっている、何かと惹かれあう三人組だ
私は相変わらず譜面を叩けずボロボロに負けている
「いつか……私たち三人で走れるといいなぁ、伝説になった私たち三人が走る伝説のレース、作り上げてみたい」
ドンッ! フルコンボ~!
「シャイン……途中からボロボロだったね……」
「音ゲーの最中に話しかけないでくれぇ……」
「サン、次は俺がやる」
~~
「……//」
なんで急に思いついたからってさっきあんなことを口走ってしまったんだろう……
『伝説の』レースなんて……あぁぁ……恥ずかしい
私がこの三人組に対して不思議な縁を感じているのは事実だ、だからこそ伝説のレースを見たいのは本心だ
もし、この三人で本当に作る事が出来たら……
「おいサン、譜面と逆の操作してるぞ」
「あっ……ホントだ……」
「どうした? まさか恥ずかしくなって集中出来ねえってか?」ニヤニヤ
はぁ……シャインまで笑ってるよ……でも伝説のレースって言いたくなっちゃうじゃんさ……
「もう……伝説は忘れてよ……」
「まぁでも、お前にしちゃ良い事いうじゃねぇか、面白い」
「クライトももう少しサンみたいになってくれたらなぁ……」「るせぇ」
……やっぱり、この三人組が良いな、私はこの三人組で戦いたい
「そろそろ次のゲームやりに行こうか、二人とも」
「そ……そうだね……シャイン」
まだまだ私たちのお出かけは続くみたいだ
「おい、スタ公」
「ん? 何、クライト、わざわざこっそり話しかけてきて」
「ぜってぇ俺らで伝説のレース、作ってやろうぜ、ああいう無茶ぶりこそ、実現してやりたくなる」
「……やっぱり優しいね、クライトは」「るせぇ!」
「おーい! クライトが伝説のレース作ってくれるって!!」
「だから伝説は忘れてって!」
「ふぅ……だいぶ疲れたね……」
「……まだ全然時間あるんだけど」
「……」
騒音が鳴り響くゲームセンターの中、私たちはデビュー前には想像もしていなかったほどの暇を圧倒的に持て余していた、私たちはゲームセンターの二階に作られている、一階を見下ろす形の柵に寄りかかって上の空になっていた
あれから私たちはひたすらにゲームをして暇を楽しんだのだが、それにしても長い暇である、サンは音ゲーのやりすぎでリズムを取る感覚がまだ抜けていないようで、足がひたすらに何かのリズムを刻んでいる
クライトはどこで手に入れたのか、アミューズメント施設備え付けの袋いっぱいに詰まった板チョコをバリバリと食べていた、本人いわく、クレーンゲームで大勝ちしたらしいが、こんなにあると太り気味になっちまう、というかそれ以前に溶けると言っていた
「…………一枚分けてくれない?」
「ん」
一文字の返事をするとクライトはガサガサと袋からチョコを選ぶ、ゲッソリとした女の子に袋からチョコを渡そうとするその姿はあたかもサンタさんのようであった、まぁ今クリスマスシーズンでもないけど
「……ブラック、ミルク、ハイミルク、ホワイト、ざっと全部15枚ずつくらいあるけどどれ食う」
「ん~……ハイミルク」
「ん」
4種のチョコがざっと15枚、約60枚……と聞いてまた袋の大きさが気になった私は柵から再び身を引いて袋を見つめる、今にもはち切れそうな袋がチョコを咥えて耐えている、持って帰れるのか心配になっていると、クライトがチョコが欲しいのかと聞いてきたが、私はあまりチョコが好きではないので丁重にお断りしておいた
「チョコみたいな髪色してんのにな……」
余計なひと言が聞こえた気がしなくもないが、気にしないでおこう
クライトとサンがチョコを食べる音や、ゲームセンターの音だけが流れる、私たちの間に再び静寂が訪れた
すると私たちの前に二人のウマ娘と思われる人たちが来た、なぜ「思われる」などという表現をしたのかというと、この二人が帽子をかぶっているせいで耳が見えないからだ
片方はさらさらとしたロングヘアー、葦毛のウマ娘、もう片方はまるで海のように透き通った青色をしたこれまたロングヘアーのウマ娘だった
「あなたたちがキングスさんが言っていた3人ですか?」
葦毛のウマ娘がそんなことを言う、キグナス最強と言われていたウマ娘の事だろう、私とクライトがグラウンドで話していた人だ、この二人のウマ娘はキングスに何か関わりがあるのだろうか
「キングス? ……あぁ、あの気に入らない奴か、それがどうした?」
「キングスはキグナスを倒すだろうと言っていたが、メイクデビューが終わってすぐにこんなゲームセンターで遊んでいるようなら、私達でも倒せそうだな」
青毛のウマ娘はそういうと黄色く煌めく瞳で私の事を見た、私達も好きでゲームセンターでぐったりするほど遊んでいるわけではないのだけれど……それにはツッコみたいところだったが、そういう空気でもないので黙っておいた
どうやらこの二人はキグナスの中でも若い二人みたいだ、確かに前にトレーナーさんから話を聞いた時、キングスのように小さいころからの実績を残していないメンバーが何人かいたはずだ、恐らくそのメンバーがこの二人なのだろう
「いきなり突っかかってきて何? あなたたち、名前は?」
「私はノースブリーズ」
「……シーホースランス」
葦毛の方がノースブリーズ、青毛の方がシーホースランス……確か前者が「北風のようにコースを駆け抜ける」、後者が「ダートも芝も関係ない、コースの鬼」と言われていたはずだ
「んでその二人がわざわざなんで私たちに突っかかってくるんだよ、暇なのか?」
「あいにくお前らみたいに暇なわけじゃないんだ、ただ潰す相手の姿を見ておこうと思ってね」
「あ……? いい度胸じゃねぇかよ、喧嘩すっか?」
「もしお前たちが私たちと同じ競争ウマ娘なら、レースで証明したらどうだ? 喧嘩っ早いと人生を損するぞ?」
「あんだとぅ……!?」
クライトが顎をしゃくれるほどに前に出してイライラしている、潰す相手……確かに、私達と同時期にデビューしたのだから、それならば同じレースに出走するかもしれないのは事実だ。
いずれぶつかる相手の姿をただ見つめ、しっかりと目に焼き付けた
キグナス、恐らく私達と何度もぶつかり争うチーム、その一部を目の前にして、私の内側から闘志がわきあがるのを感じる
「さぁランス、もう帰ろう、私達もトレーニングの時間がある」
「……私たち二人がジュニア期でお前たちの中の二人を潰す、覚悟しておけ」
そういうとノースブリーズとシーホースランスはゲームセンターの階段を下りて出て行ってしまった、……クライトがおでこにシワをつくってイライラを抑えている
「おうおうおう、ちょっとあいつらにチョコぶん投げてくるわ」
「恥ずかしいからやめてクライト……!」
「離せぇ! スタ公!!」
「……」
「お……落ち着きなってクライト……」
あの後クライトを落ち着けて、近場の喫茶店に入ったのだが、喫茶店に入ってもクライトのイライラは収まらず、今現在ずっと貧乏ゆすりをしている、多分相当頭に来たのだろう、本当にごめんクライト、私のトレーナーが迷惑をかけているばっかりにあんなことに巻き込まれてしまって
「それにしても、あの二人はなんだったんだろうね、私たちを潰すって」
クライトをなだめているとサンがそんなことを聞いてくる、そんなもの私の中では答えが一つだ、そのまんまの意味、キグナスの敵になりそうな奴は片っ端から潰すと言う事だろう、それでも敵わないようなら他の奴らも出てくるだろう
「私さ、あの二人が階段を下りていくときに聞こえたんだけど、ホープフルが何とかって言ってた」
「ホープフル……? ホープフルステークスの事?」
ホープフルステークス、中山競バ場にて行われる芝2000mの中距離レース、私たちの適性にもあっているし、中距離の競争ウマ娘として生きていくなら必ず通るくらいの道だ
開催時期は有マ記念の後に行われ、年末最後のG1として扱われている
「多分あの二人ホープフルステークス出走するんじゃないの? どうせ潰されるかもしれないなら、こっちから仕掛けたらどうかな」
「さっきから私達一つのチームみたいに話してるけど一応ライバル同士だからね? サン」
「わーかってるって、シャインは出るの?」
こちらから仕掛ける、というより結局私たちの誰かしらはホープフルステークスに出るのだろうから仕掛けるもくそもないのだろうが、サンはキラキラとした瞳で聞いてくる
「私のとこはまだレーススケジュールが決まってないから出走するか分かんない、二人は?」
「……俺は出るぜ」
「え~いいなぁ、私はクラシックまでG1はお預けだって、というよりまだG1を見据えるほどじゃないってさ、焦らず強くなっていこうって言われた」
クライトは貧乏ゆすりをしながら、サンはオレンジジュースを口に含みながらそう答えた、クライトは出るとして、サンの非出走理由、まぁ、確かにそうだろう、トレセン学園に入学しているウマ娘はみんながみんなこぞってG1に出れているわけではない、スズカさんやスペ先輩のレベルになるとG1は当たり前なのだろうが、私達みたいなまだ名前が売れていないウマ娘にとってはG3ですらとても大きな功績なのだ、そうやすやすと出走できるわけでもあるまい
「クライトは出るんだ、じゃあ私とライバルになるね」
「スタ公はまだレーススケジュール組んでないんだろ? なんでもう出走することになってんだよ」
「あれ? 話したことなかったっけ? 私は誰にも越えられない記録を作るんだ、だからジュニア期のホープフルくらいは出るつもりでいたけど」
「初耳だな、伝説のレースと来て今度は誰にも越えられない記録だって? おいおい、お前ら二人して夢見がちな単語ばっか使ってんじゃねぇよ、もっとリアリティがある言葉選べ」
クライトの貧乏ゆすりのビートが32ビートから16ビートくらいになった、私たちを笑ってだいぶ落ち着いてきたのだろう
「じゃあリアリティがある単語を使ったら何になるの?」
「『シンボリルドルフのような唯一無二の記録を達成する』でいいだろ」
「え~……唯一無二もどうなの?」
「かっけぇ~っ」
サンがまたかっこいいと思う言葉に惹かれている……
結局私たちはその後も2時間ほど話したのだがそんな話をしているうちに、私たちは「レースの時の風圧がすごく痛い」だの「ゴール板に直撃したメイクデビューの話」など、関係ない話で盛り上がって行った、最初は32ビートを刻んでいたクライトの貧乏ゆすりも、最終的には0になっていて、私たちは楽しくお話をして一日を過ごした
最初に話していたホープフルステークスの話を思い出したのは、私が寮に帰ってからである
「ふぅ……」
私は一人誰もいない部屋でベットに座る、今日は結局トレーナーさんから連絡は来なかったが、レーススケジュールは完成したのだろうか、そんなことを心配していると、ちょうど私のウマホに連絡が来た
メッセージの文面を見る限りどうやら一日である程度レースケジュールの組み方についてしっかり教えてもらい、さらには完成までしたようである、一日でレーススケジュールの考え方を教えれるなんて、流石木村さんと速水さんだ
私は連絡が終わったのを見て、ウマホの画面を閉じる、誰もいないベッドでこれからについて考える
ふとゲームセンターで出会ったあの二人、キグナスに所属するノースブリーズとシーホースランスの事を思い出す、あの二人が恐らく私達、というより私と戦う最初の相手なのだろう
ホープフルステークス、誰にも越えられない記録を作るための第一歩として、必ず希望のレースを制してみせる、キグナスに私の栄光は渡さない
「くぁ……んん……」
そんなことを考えていると、眠気が襲ってきた、今日は一日中動き回っていたのでもうくたくただ、体をポキポキと鳴らした後、明日はトレーニングもあるということで今日は早めに寝ることにした
「ホープフル……制覇……いえいっ……」
眠くなってちょっとおかしくなった私は、そんなことを最後に言って眠りに落ちた
オマケ
「すんません!!レーススケジュールの組み方を教えてください!!」
「えぇ……そんな土下座までしなくても……」
「まぁ、そう来るだろうとは思ってたけどよ」
「マジで、申し訳ないです!!」
「まぁまぁ橋田、とりあえずお前が直感で組んでみろ、これが中央のレース表だから」
「速水さん…!分かりました!」
「あ~…橋田、これは?」
「とりあえずG1を見据えていこうかと思いました」
「・・・まず有馬記念や宝塚記念はジュニア期のシャインじゃ出れないし、天皇賞秋は皐月賞より後だ・・・というかお前これ…G1見据えてるとかじゃなくて、G1しか入れてねぇじゃねぇか・・・」
「それに皐月賞は5月じゃないですよ、橋田さん」
「え?そんなに間違ってました?」
「お前本当にサブトレーナーやってたんだよな…?」