持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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第十四話 冬だ!堤防だ!釣りだ!・・・は?

 

「へっぷし!!う~…なんでこんなことやってんだろ…私…」

 

もう草木も枯れ果て、本格的に寒くなってくる時期、10月

そんな中私は超前傾走りのトレーニングに一区切りを付け、普通の走り込みや販路トレーニングをしていた、あと前回の未勝利戦で少しだけぎこちなかったウイニングライブの練習もしていた

 

超前傾走りの速度も最初の頃から比べるとかなり上がり、今では上がり3ハロンのタイムが34.4ってところだ、割と速い方…なのだろう、私はトレーナーさんみたいにそういう勉強をしてきたわけじゃないからいまいち分からないが、まぁ速いだろう

 

それはそうと、私は今何をしているか話そうか、今私は上着を2枚来て、堤防でトレーナーさんと2人で座っているのだ、目の前には静かにたたずむ細長い棒、聞こえるのはさざ波、そして潮風が目に染みる

 

そう、ここまで聞いたら大体わかるだろう、釣りだ

 

「は?」と思った人も少なくはないだろう、私も思っている、なにせ今は10月、クソ寒いのだ。

なんでそんな中でレースが本業の私が釣りをしているか、少しだけ遡ろうと思う

 

最初は普通にトレセン学園にいて、私とトレーナーさんがいつものようにトレーニングをしていたのだ、そしてトレーニングが終わった頃だった

 

 

 

「シャイン、サウジアラビアロイヤルカップも近くなってきたが、そろそろ休暇も必要だろう、今回はどっかでかけようと思ってるんだが、どこに行こうかシャインが考えてくれないか?」

 

トラックの外にいたトレーナーさんが私に近づいてきて今度の休暇の際、出かける先を聞いてきた、ぶっちゃけ私も疲労がたまってきて辛くなってきていたので、このお出かけはかなりありがたいものだ、しかし…

 

「お出かけ?う~ん、私こっちに来てから特にどこかに行った事が無いからなぁ…」

 

私は埼玉から東京に来てどこにも遊びに行った事が無いのだ、いや厳密にはこの前サンやクライトと行ったゲームセンターくらいしか行った事が無いのだ、そんな私にお出かけ先を聞かれてもどことも答えることができない、どうしようかと頭をひねるも何も出てこない

 

「そうだシャイン、こんな時お出かけ先は知り合いに聞けばいいんじゃないか?」

 

「知り合いか…なるほど、聞いてみるかぁ、出かけるのは明日でしょ?なら今日中に考えてメッセージ送るよ、とりあえず今は解散でもいい?」

 

「おう」

 

そうして私はトレーナーさんとトレーニング後の業務連絡を終えて学園内に駆り出した、お出かけ先を考えるなど両親と出かけた子供の頃以来だ、とりあえずサンに聞いてみようと思い、自分の教室を目指した

 

「おい…あれスターインシャインじゃないか?」

「本当だ、スターインシャインだ…!すげぇよなぁ、この前の走り方」

「あんな走り方ふつう無理だよ」

 

正門前にて私の事を知っている人たちと遭遇した、どうやらいい感じに私の存在は世間に知られているようだ、まぁそれもそうだろう、あの人たちも言っていたように超前傾走りと言う特殊な走り方をしているのだから。

 

こんな感じに噂されていると、私の存在をどんどん世間に知らしめていって、いつかは世界中の人たちに知られるくらいのウマ娘になるためにトレセン学園に来たのだと、今一度自分の目標を再確認できる

 

私の存在が知られていると知って、ルンルンで歩いているといつの間にか私の教室の前についていた、ルンルンな気持ちをとりあえず落ち着けて教室のドアを開けたが、どうやらサンはいないようだった、サンがいないならクライトだ、クライトがいそうなところと言えばどこだろうか…

 

一つだけ心当たりがあったのでそこに行ってみよう

 

「おや?君はもしかしてプロミネンスサン君ではないかね?」

 

クライトがいそうなところを目指し、誰もいない静かな廊下を歩いていると後ろから声がした、声の主は何やら怪しい雰囲気を持った白衣のウマ娘だった、なんだろうか、この人とはかかわってはいけない気がする

 

「いえ…私はスターインシャインですが…あなたは?」

 

「おや違ったかい、いや失礼、あまり印象が大きくない事を覚えるのは苦手でね、トレーニングも終わり、教室には用がないと思うが…どうしたんだい?」

 

「えっいや…いや、そうでした、あの…」

 

名前を聞いたのに返ってこなかったことに関してはツッコまないでおいた、私はクライトがいるのではないか、というような場所の方向を聞いてみた、え?場所はわかっているんじゃないかって?それに関してなんだけど、私はいっつも目的の場所が分かっているはずなのになぜかいっつも目的地が遠くなるとたどり着けなくなるのだ、なぜなのだろうか

 

「ふぅン、そこならあっちを曲がってすぐのところさ」

 

「ありがとうございます、それじゃあ失礼します」

 

「なぁ君、足が速くなる方法に興味はないかい???いや別に怪しいものではないんだ、ただ効果が出たかどうかのレポートを提出してあわよくばこれからも私の実け…おほん、研究・・・ぅん?治験に付き合ってくれればいいのだが…」

 

「あっすいません本当にそういうの興味ないんで!!」

 

私が目的の場所に向かおうとすると突然その人は目の色を変えて怪しいものに私を誘ってくる、なんだかとんでもないものに片足を突っ込みそうになったがとりあえず勢いで振り切ったが…結局あの人はなんだったのだろうか、まぁいいだろう、とりあえず目的の教室についたので、クライトがいるか確認してみよう

 

「ん…?スタ公じゃねぇか、なんだこんなところに来て、なんかあったのか」

 

「いや、まぁ用事と言う用事はあるんだけどさ、少し邪魔だったかな?」

 

教室のドアを開けるとそこではクライトとゴルシ先輩、そしてフェスタ先輩が麻雀を打っていた、私は麻雀に関してはルールを知っている程度なのであまり詳しくはないが、とりあえずゴルシ先輩が親の東一局の…8本場で、クライトがあと1000点と言う事だけはわかる

 

「クソッたれが…なんで勝てねぇんだよ…」

 

「ふふ…オメーのは昼間の麻雀だ…だけどアタシたち玄人(ばいにん)は…夜の麻雀を打つんだぜ…特にこの剣崎ゴルシちゃんには、昼間の麻雀なんて通用しないぜ…嬢ちゃん…」

 

とりあえず麻雀が終わってからクライトに話を聞こうと思い、私はクライトの後ろで麻雀の行方を見ていた、ゴルシ先輩は「夜の麻雀」と言っているが今は大体午後4時くらいなのでまだ昼間ではないだろうか、と思ったが、あの破天荒なゴルシ先輩に対してそんなことを言ったら私まで麻雀に巻き込まれるかもしれないので黙っておこう

 

「クソっ!通れ!!」

 

「悪いな、そりゃロンだ、国士十三面待ち」

 

「どうしたぁ嬢ちゃん、ずいぶん動揺してるじゃねぇかよ…ロン、大四喜、字一色、四暗刻単騎、そして八連荘、六倍役満だ…残念だけど頭ハネは採用してないぜ…」

 

「うああああああ!!!!」

 

どうやらもう決着は付いたようだ、残り1000点で役満をダブロンされたのではどうしようもない…クライト…ご愁傷様…

 

「六倍役満とはな、またアンタに点数で勝てなかったか」

 

「この剣崎ゴルシちゃんはいつでもリベンジを待ってるぜ☆じゃーなー嬢ちゃん!!もっと玄人っちゅうもんを理解しやがれよ~っ!!」

 

そう言うとゴルシ先輩はいきなり窓の方向に走り出し急に窓を開けたと思ったら、どこから取り出したのかグライダーを背中に着け、窓から飛び降りてどこかに飛んで行ってしまった

 

「えぇ…」

 

「そいじゃアタシもこの辺で去るかな、じゃあな、また打とうぜ」

 

そう言って二人の先輩はあっという間に消えてしまった、教室に残されたのは麻雀卓と悲惨な卓上の牌、そして怒りに震えるクライトだった

 

「……あ~…クライト、今いい?」

 

割と聞くのが怖かったが、恐る恐るクライトに声をかけてみた

 

「……なんだ」

 

「私、今度のお休みにトレーナーさんとお出かけしようと思ってるんだけどさ、お出かけ先が決まらなくて…」

 

クライトにそう質問したが、しばらく回答は帰ってこなくて、数分の静寂が訪れた、そのうちにクライトが口を開いて一言だけ

 

「・・・釣りとかいいんじゃないか?」

 

「え?釣り?この時期に?」

 

「なんか問題あるか?」

 

「いや…寒くない?」

 

「おう!!アタシたちで日本最大サイズのデンキナマズ釣り上げてやろうぜ!!」

 

すると突然私の真後ろにさっきどこかに飛んで行ってしまったはずのゴルシ先輩が立っていて、釣り道具を丸々持ってきていた、そしてその釣りセットを私に押し付けたと思ったら今度は

 

「あ、いっけね、アタシこれからトレーナーと泳いで西ヨーロッパまで行くんだったわ、第564回長距離水泳大会シード権獲得不戦勝で優勝したゴルシちゃんの実力を見せてやるぜ!!それじゃ、ゴルッ☆」

 

急にゴルシ先輩の足元から煙が上がったと思ったらゴルシ先輩がどこかに消えてしまった、いったいなんだったのだろうか…あとこの釣り道具をどうしようか悩んでいると、クライトもいつの間にか出て行ってしまった

 

「え…どうしよ、マジでこれ」

 

 

 

そうして今に至るのだ、最初は私だって釣り道具を部屋に放置してどこか別の場所に行こうとしたけどさ、釣り道具の中身を覗いたらその中に「このセットは明日の内に使用しないと爆発します☆」と書いてある紙があって、いくら嘘だと分かっていてもこう書かれてしまっては使うしかなくなってしまったのだ

 

「シャイン、なんか釣れたか?」

 

「いんや、なんにも」

 

ていうか私釣りに関しては全く詳しくないのだが、こんなに寒い時期でも釣れる魚などいるのだろうか

 

「サウジアラビアロイヤルカップに出走するって言う、グッドプランニング、あの子すごく強そうだよねー、トレーナーはどう思う?」

 

話す話題が絶望的になさすぎて、ふとこの前話しかけてきたグッドプランニングについて話す、私自身はあの子がレースを支配するものだと思っている、グッドプランニングは先行の作戦を打つウマ娘で、毎回対戦する相手の情報を確実に、細かく記録してレースに臨むらしい、恐らくこの前の質問責めで私の情報もある程度抜かれているのだろう、それこそセイウンスカイさんみたいに私の超前傾走りの対策を立てたうえでレースに出走するかもしれない、そうなれば強敵となるのは免れないだろう

 

「グッドプランニングの強さの秘訣、恐らく前に行っていた『レースドミナント戦術』だろうな」

 

「あ~、確かに言ってた気がする、結局なんなのそれ?」

 

「レースドミナント戦術という用語はない、がドミナントって言うのは支配的、優位に立つと言う意味だ、と言う事は多分シャインのように、回りより上の立場を手に入れ、レースに出走しているウマ娘の精神を一時的に超える戦術に似ているかもしれないな、お、かかった」

 

私の戦術、実はトレーナーさんに聞いたのだが、レース中の私はとてつもない威圧感を放っていると言う、それを使ってレース中、メイクデビューのサンのように他のウマ娘を掛からせ、勝つと言った戦術を勧められているのだ、威圧感に関しては私は出しているつもりはないのだが、どうにも威圧感が出ているらしい、まぁ末脚と並んで武器になるから別にいいんだけど

私の横でトレーナーさんがタチウオを釣り上げた

 

「へぇ~、優位に立つかぁ、ってうぉあ、でっかいねそのタチウオ」

 

「トレセンに帰ったら天日干ししておくから一緒に食べようぜ」

 

「いいね、タチウオの天日干し」

 

ひとしきり会話が終わってしまい、私たちはもはやこれまでかなどと思い始めていた

するとその考えはすぐに打ち砕かれることとなる、暇すぎて速水さんに電話していたトレーナーさんが突然携帯のマイクを押さえ、口を開く

 

 

 

「そういえばさぁ…シャインってキスは好きか?」

 

「ブファッ」

 

急にトレーナーさんが接吻の話をし出した、なぜこの釣りをしているタイミングで、しかも接吻の話なのだろうか、本当にこのトレーナーさんは私が高校生と言う事を理解しているのか?

 

「…いや、わかんないよ」

 

「えぇ?食ったことないの?」

 

「食うって言う表現やめようよ!?」

 

「え、なに、じゃあ食べる?」

 

「同じじゃん!!!」

 

一応言っておこう、私はキスなんてしたことはない、なにせ小学生の頃はそんなこと考える年ごろでもなかったし、中学の頃は荒れ狂っていてそんなことしていなかったし、そして高校生の頃は…って言うか今が高校生だし、生まれてこの方ファーストキスは守り抜いているし相手も考えてない、少なくとも私はトレーナーさんみたいな人じゃなくてもっとイケメンな人とキスするから

 

「えぇ…俺なんか若いころは田舎住みだったからさ、暇があったら自分の竿で釣りに行ってたよ」

 

「自分の竿!!釣る!!なんてタイミングになんて表現するのよ!?」

 

「表現!?竿って表現だったの!?」

 

「表現だよ!!ガッツリアウトな表現だよ!!」

 

私とトレーナーさんは釣りをしていると言う事も忘れて二人で向き合い騒ぎ合う、だって私悪くないよ、急に接吻の話し始めるトレーナーさんが悪いじゃん、しかも竿なんて言っちゃって、とんでもないセクハラ親父になってしまっている

 

「え、いやだって竿で釣らなかったら何で釣るの」

 

「まず釣るって言う表現をやめようよ、トレーナーさんそういうことしてたの?」

 

「いやそういう事って言うか、普通にキスを釣ってたんだけど…」

 

「やっぱ釣ってんじゃん!!」

 

はじめてトレーナーさんの意外な一面を知った瞬間だった、トレーナーさんは普段クマばかりでお世辞にも若いころブイブイ言わせていたと言うような外見ではない、なのに若いころはさ…竿でキスを釣っていたなんて…被害に遭った女性たちがかわいそうでならない

 

「ちょっとトレーナーさん、仮に昔釣ってたのはいいとして、なんで私にそんなこと聞いてきたの?私一応高校生だからトレーナーさんがそういうこと聞くとセクハラになるよ?」

 

「え!?セクハラなの!?」

 

「どう考えてもセクハラでしょうよ!!えちょっとまってよ、むしろわかってなかったの!?」

 

「知らないよ!!今までの人生で初めてだよこの質問がセクハラって言われたの!!」

 

「オーマイゲァッ!!信じられない!!トレーナーさんの人脈まで信じられなくなってきた!!」

 

ホントの本当にどういう事なのだろうか、トレーナーさんの周りはさっきの質問をセクハラだと思わない人だらけなのだろうか、もしかしたら木村さんや速水さんもそうなのかもしれない、やば、そう考えるともう信じられなくなってきた

 

「ちょぉっとまて!!シャイン!!」

 

「なによ!?」

 

「…お前、まさか接吻の方だと勘違いしてないか?」

 

「え?そうじゃないの?」

 

「………俺が言っているのは、魚の方のキスだ!!」

 

 

 

 

あ~~~もう、思いっきり私は後ろの方にのけぞった、トレーナーさんから会話の矛盾点を指摘されてから、自分の早とちりを一瞬で理解して恥ずかしさと「やってしまった感」で後ろにのけぞらざるを得なかった

 

 

 

「…ほんとにさぁ、スターインシャインさんさぁ、確かにキスだけで質問した俺も悪いけどさぁ、だからってこの釣りをしている場面で接吻と勘違いするってどうなの?」

 

「いや、本当に、ごもっともでございます、トレーナーさん」

 

私はトレーナーさんに謝罪したのち、二人とも釣りに戻っていた、相変わらず連れているのはタチウオ一匹のみだ

 

「まぁいいんだけどさ、実際どうなの?キス」

 

「そうだなぁ、キスは昔実家でよく食べてたから好きだよ」

 

「ほう、シャインのご両親がキス出してくれたのか」

 

「うん、両親もキス大好きでさ、だからその影響で私もキスが好きになっちゃったんだ」

 

やはりキスと言えば揚げたのが一番うまいだろう、あの揚げたてを食べた時のカプッという音の後にじゅるっと出てくる衣の油と淡白な身が混ざり合い、ちょうど良い味になるのが何とも言えないうまみを引き出してくれるのだ、その味が私はたまらなく好きで、外食でもよく食べていた

いかん、考えたら食べたくなってきた

 

「っ!?」

 

キスの話をしていると突然私の釣竿に魚が掛かる、めちゃくちゃ重い、というのもゴルシ先輩が残していったこの釣竿、なんか知らないけど針が何個もついていて一度に複数の魚が釣れる?用になっていて、恐らく今水面の下では何匹も私の釣竿に掛かっているのだろう、それにしても重い、ウマ娘の私が引いて苦戦するなんて

 

「シャインあぶないっ!!」

 

私が釣竿の勢いに引かれそうになっているとトレーナーさんがとっさに私の体を掴んで一緒に釣竿を引いてくれる、トレーナーさんに身体を掴まれていると言う状況を認知し、なぜか私はドキドキしていた

 

「ちょ…やば…私一人で引けるから…」

 

「バ鹿いうな!お前さっき釣竿に引かれかけてたろ!!絶対離さないからな!!」

 

「もぉぉぉぉぉぉ!!!引けるから!!」

 

魚が掛かっていると言うのに水の上では二人がやいのやいのと騒いでいた、二人は釣竿の力に負けかけている瞬間もあったため、可能性としては二人とも水に落とされると言う可能性もあったのだが、この時二人はそんなことを考えている余裕もなかった

 

 

ザバァァァン……―――――

 

 

「すげぇぇぇぇぇ!!!アジが4匹もかかってるぅ!!かかってるぞシャイン!!」

 

「……うるさぁぁい!!」

 

私とトレーナーさんは数分格闘してやっと釣竿を上げることができた、その先端には、先ほどトレーナーさんに抱きつかれる原因となったムカつく顔をしているアジが4匹もかかっていた、私はトレーナーさんを一回ひっぱたいた

 

 

「シャインさ~ん、いつまで機嫌悪いんですか~」

 

私たちはアジを4匹釣った後、ここら辺が一区切りだろうと言う事で帰りの車に乗っていた、そこで私はずっと抱き着いてきたトレーナーさんに対して不貞腐れてずっとだんまりを決め込んでいた

 

「わるかったって、今後は気を付けるから」

 

「…今度から気を付けてよ、本当に、トレーナーさんが近いとなんか知らないけど鬱陶しいから…」

 

「鬱陶しいって…なかなか心に来る言葉ですなぁ」

 

「…今日の釣り、楽しかったよ、またお出かけしよっか」

 

いくらトレーナーさんとはいえ、私も鬱陶しいって言うのは言いすぎな気がしたので、一応楽しかったと言う旨だけは伝えておこうと思い、私は静かな車内で静かに呟いた

 

「…少しは機嫌直ってくれたようでよかったよ」

 

「そりゃね、トレーナーさんと仲が悪いと、メンタル的な面で私の走りに関わってくるかもしれないから」

 

「まぁな、それも俺がどうにかして直るんじゃなくて、自分で直ったしな、本当によかったよかった」

 

「…トレーナーさん、私は、明日のサウジアラビアロイヤルカップ、勝てるかわからない」

 

私はこれまでの話の流れをぶった切って、突然レースの話をしてしまった、不安だったのだ、勝てるかどうか、あの熱意を持っているグッドプランニングに勝てるのか心配だったからだ、そのことをトレーナーさんに相談してみると

 

「何言ってんだ、シャインは誰にも負けない熱意を持ってるだろうが、喧嘩して少しだけメンタル弱ったか?帰ったらアジ焼いて寮に送ってやるから待ってろ」

 

…そっか、そうだったよね、私は誰にも負けない熱意をもってレースに挑んでいた、この人のこういう熱い部分があるからああいう時鬱陶しいのかもしれない

 

「それじゃあトレーナーさん、明日のレースは私を期待していない観客をみ~んな釣っちゃうから、よろしく!!」

 

「おうよ、シャイン!!」

 

 

 

「…橋田、電波悪くてお前が俺との通話忘れてる間の会話よく聞こえなかったんだが、お前なんでシャインとキスの話してるんだ?」

 

「あっ…」

 

急にトレーナーさんの胸ポケット、スマホを入れていたポケットから速水さんのものと思われる声が聞こえる、そういえばトレーナーさんがキスの話をする際、トレーナーさんは速水さんとの電話を切らずに話し始めていた、…トレーナーさんは通話を切り忘れていたらしい

 

「橋田、運転中悪いが少しだけ説教に付き合ってもらおうか」

 

「あっいや速水さんこれは違って」

 

「いくら仲良いとはいえ担当に『キスが好きになっちゃった』なんて言わせるのはトレーナーとしてだな!!」

 

 

 

…こりゃしばらく速水さんの説教が続きそうだ、私はトレセン学園につくまで欠伸をしながらその説教を聞いていた

 





次回 サウジアラビアロイヤルカップ
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