持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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第十七話 久々の休暇、ハロウィンデートじゃい!!

 

「そいじゃあな、また明日」

 

「うんっ!!」

 

トレーナーさんの車に乗って数十分、私はレース疲れですっかり車内で眠ってしまい、同じように疲れているトレーナーさんに悪いことをしてしまったが、なんとかトレセン学園に戻ってきた、周りを見るとやはり今日開催されるレースに出走していたウマ娘達が帰ってきていた私たちはレースも終わって疲れていたのでお互いの部屋に戻った

 

「はぁ~…ただいま、私の部屋」

 

私は一人真っ暗な部屋に戻ってきて電気をつける、嗚呼、まるで故郷に帰って来たような感じがする、今日一日しか部屋を開けていなかったはずなのに何十年も来ていないような気がするのは気のせいだろうか、ベッドに飛び込み、天井のしみを数えながら今日のサウジアラビアロイヤルカップを振り返る、しばらく経ったあたりで私の事を眠気が襲ってきたので睡魔に従い目を瞑った。

 

そこからはいつも通りだった、朝起きてトレーニングをして、休憩して、時々トレーナーさんをぶっ飛ばして、あぁそうそう、グッドプランニングとの戦いで私の超前傾走りの欠点に気付いた私たちは、当然すぐに超前傾走りを坂に対応させようとしたんだけど…どうにもこの走り方だと坂を走ることができない、恐らく今まで直線で練習してきたから上体の角度の違いで体の間隔に誤差が生まれているのだろう。

当然トレーニングが失敗した際には地面に接触してしまったと言う事なので私が怪我しているのではないかと思うだろう、もちろん最初は私も接触してからぶっ飛ぶ程度で怪我をしていたのだが、最近は坂に対応できないイライラからムキになっているのか、接触した時の受け身が取れなくなってきている、それを危険視したトレーナーさんからこのトレーニングは保留の命令が出た、だから今はこのトレーニングはしていない、なかなか悔しい。

 

そんなこんなで私は普通の日々を過ごしていた、そしてサウジアラビアロイヤルカップが終わってから大体半月が経った、サウジアラビアロイヤルカップの開催時期を覚えている人はもう気づいているであろう、この時期の行事、ハロウィンが近づいてきたのだ。というわけでここはいっちょトレーナーさんを驚かせてやろう、そう思った私は朝早くに起きてトレーナー室に忍び寄って、どこかに吹き飛んでいくんじゃないかと言うくらいにドアを思いっきり開けた

 

「やっほ~トレーナーさん!今日はハロウィンだよ!トレーニング休もう!!」

 

部屋に入るなり私の今の欲望を包み隠さず一言ですべていい切った、トレーナーさんは突撃してきた衝撃と発言の内容で驚き、全身をビクゥッと跳ねさせていた

 

「いきなりトレーナー室入ってきて何を言っているんだお前は!!いや別にいいけど!!」

 

「マジで!?よっしゃ!!」

 

なんだかよくわからないうちに私のずる休みが認められていた、ハロウィンのような行事の日くらいは遊んで暮らしたいと思っていたのだが、休みなど認められないものだと思っていたので意外にも休暇をもらえたことに心の底から喜んだ、だがしかしトレーナーさんは少しだけ不満なようで

 

「といってもなぁお前、ハロウィンだからって何するんだ?俺はイマドキの子の遊び分からんぞ?」

 

トレーナーさんまでハロウィンを楽しむモードになっているのは置いといて、トレーナーさんはハロウィン等の行事の内容を知らないと言った、私はてっきり若いころにたくさん遊びほうけたものだと思っていたから意外だった。

 

「そんなの決まってるじゃん、お菓子用意して、ねだりにきた子供たちや友人に配る」

 

行事の内容が分からないと楽しめるものも楽しめないだろうと言う事で、トレーナーさんに申し訳程度にハロウィンの大まかな流れを説明した、するとトレーナーさんはおでこにしわを寄せて

 

「え、なに?ハロウィンってお菓子奢らないといけない行事なの?俺シャインのお祝い会の予算集めでなかなか苦しいんだけど」

 

「う~ん、まぁ私の未勝利戦の時の賞金から少しだけ出せばいいんじゃない?別にそれくらいだったら私の生活にも響かないでしょ」

 

ウマ娘のレース賞金というのは、一応個人の学園口座に振り込まれていて、卒業する時にまとめて渡されるようになっている、これは今までレース一本だったウマ娘が社会に出てからも就職までの生活を出来るようにという事で設けられているシステムだが、少しだけなら卒業前に使う事が出来るので、私は未勝利戦の時に多少出た賞金から少しだけ捻出することにした。少ない金額に見えるが、普通の人から見れば普通に大金なので知り合いの分はおろか、近所の子供たちの分までお菓子が買えるだろう。

 

「本当にいいのか?行事ってだけで奢らせられるんだぞ?」

 

「だからいいって、こういう行事なんだし、楽しまないと。あ、そうだトレーナーさん、これ被ってみてよ」

 

私はあらかじめカバンに入れておいたサイレンススズカさんのなりきりマスクをトレーナーさんにかぶせてみた、するとマスクは凄くピッタリで、体がごついせいで違和感しかないが、これはこれで似合う仕上がりになっていた、体がごつごつのスズカさんが表情一つ変えずにこちらを見ているので思わず吹き出してしまう

 

「おい今笑っただろ」

 

「わ…笑ってない…くくく…」

 

私が笑いを堪えきれずに肩を震わせながら言うと、トレーナーさんは呆れた様子でため息を吐いた後、私に近寄ってきて、頭をガシガシ撫でてきた

 

「ハロウィンはこうやって楽しむってのか?…わかったよ、じゃあ今日は思いっきりふざけて楽しむか!」

 

「うぃ~っす!じゃあさっそく行こうよ!…ってあれ?トレーナーさん普段からふざけてないと思ってる?」

 

「え?」

 

私たちは早速外出の準備をして、ハロウィン用のお菓子を買いに行くことにした、ちなみにこの日の私の服装は、以前からハロウィンのために用意していた仮装で、黒を基調とした魔女の仮装だ。

そして外に出る準備をしていると、トレーナーさんがふと思い出したかのようにこんなことを言ってきた

 

「そういえばシャインのお祝い会だけどさ、どうせやるんだったら他の子たち、勢いに乗ってレジェンドも呼ぼうぜ、多ければ多いほど楽しいだろ?」

 

「レジェンドを呼ぶのはなかなか勇気がいるけど…確かにそれもそうかもね、じゃあまずはスカイさんに連絡してみるか」

 

「ああ、それなら俺はスペシャルウィークやサイレンススズカのトレーナーさんにも連絡取ってみるか、話したことないから緊張するな、これ」

 

こうして私たち二人は、それぞれのレジェンドウマ娘達にメッセージを送り、みんなでお祝い会をすることになった、だがここで問題がひとつ起きた、それは仮装をするかどうかである、別にお祝い会自体はハロウィンの後に行うのでしないという選択肢もあるのだが、せっかくの機会だし何かやりたいと思った、でもトレーナーさんはそもそもそういうものに興味があるかすら怪しい。そんな感じで悩んでいると、トレーナーさんが急にこんな事を言い始めた

 

「なぁシャイン、お菓子買った後なんだが、お前なんかしたいこと無いか?」

 

「え?なに突然?」

 

唐突に質問をされて驚いたが、特に何もないので素直に答えた

 

「いや、俺はこういうイベントにはあまり参加したことがないからさ、どんなものがいいのかわからないんだ」

 

なんとなく予想していたことだったが、まさか本当にここまで分からないとは思わなかった、そこで私はトレーナーさんにこう提案した

 

「う~ん、じゃあとりあえず二人で街を歩いてみようか、それで気になったものがあったらやってみれば?」

 

「ん~…おう、分かった、んじゃ行くか」

 

こうして私たちの初めてのハロウィンは始まった、街中ではたくさんの人が楽しげに行き交っていて、とても賑やかだった、ハロウィンの日はいつもより人通りが多いらしい、とりあえずトレーナーさんとハロウィン用のお菓子を買いそろえた私たちは街中を歩いていた

すると私は目の前の光景を見て驚いていた

 

「ねぇトレーナーさん、あれなに?」

 

私は街中を歩いていて目に留まったものがあったのでトレーナーさんを呼び止め、その気になる物を指さす

 

「ほら、あの屋台みたいなの」

 

「あぁ、あれはたこ焼き屋じゃないか?行事に疎い俺でも分かるくらいハロウィンに出すものではないと思うが、10月だしな、多分あったまるぞ」

 

「へぇ、たこ焼き、美味しいのかな」

 

「さぁな、ま、試しに行ってみるか」

 

私たちはそのたこ焼き屋に近づいていき、メニュー表を見た、そこには普通のソース、ちょっと変り種のハダカ、からしたこ焼きなど、いろんな種類のたこ焼きが載っていたが、その中でひときわ目立つ写真があった

 

「おぉ~!!見てよトレーナーさん、これすっごく大きい!!」

 

「おお、本当だな、でかいな、でかい、でか………でかすぎないか?」

 

私の目に映っていたのは『特大ジャンボたこ焼き』と書かれた看板だった、おそらく普通の大きさのものよりも一回り以上大きく、しかも中にタコの脚が丸々入っているという、まさに規格外のサイズだった。

 

「うぅ~ん、すごい迫力、食べ切れるのかな……」

 

「レース中のシャインにも負けず劣らない迫力だな、まぁ食べきれなかったら俺が半分貰ってやるよ」

 

「ほんと!?トレーナーさんサンクス!」

 

私たちは注文をして、出来上がるまで待つことにした、その間も私はずっとそわそわしっぱなしだったので、店員さんから少し心配された。

 

「はい、お待たせしました!こちらジャンボたこ焼きです!熱いので火傷しないように気を付けてくださいね!」

 

大きなトレーの上に乗っているのは本当に写真のものと同じ大きさで、大きくきれいに焼かれているジャンボたこ焼きが3つ、一応先に断らせてもらうと私はたこ焼きを割って食べる派なのでジャンボたこ焼きも割ってみたのだが、中には大量の具材が入っているのが見えた、そしてその横には普通のサイズのものが2つ、こちらは普通に売ってあるような形をしたものだった

 

「おいシャイン、はしゃぎすぎて落とすなよ、一応それ高いんだからな、マジで」

 

「わかってるよ、落として汚したら大変だもん」

 

私はゆっくりと慎重にトレーを持って席を探していると、ちょうどいい場所を見つけたのでそこに座った

 

「よし、じゃあ食べるか」

 

「うん、いただきます」

 

まずは私が頼んでいた特大のほうを食べてみた、口に入れた瞬間に中に入っている具と生地が絡み合い、とても濃厚な味がした、というかタコの脚がデカすぎて食べごたえがあるどころの話ではない、私はたこ焼きの出汁を楽しむつもりでいたのだが、海鮮のうまみが口いっぱいに広がっていく、しかしそれと同時に灼熱のような液体が私の口の中にあふれ出てくる

 

「おいひぃ……おいふぃよ……おいふぃけどあふ…あふいあふいあふいよ!」

 

「わかったわかった、落ち着いて食えよ、ほれ水」

 

私は助け舟と言わんばかりのタイミングで出てきたトレーナーさんが買った水を貰い、口の中を消火した

 

「んぐっ…ぷはぁ……はぁ…はぁ、死ぬかと思った」

 

「そりゃ良かった、で、どうだった?デカいたこ焼きは」

 

「うん、すごく美味しかった、けど滅茶苦茶熱かったわ…今度は普通に小さいのを買って一緒に食べようね」

 

「ああ、そうしよう」

 

そうして私達は食事を済ませ、次にどこに行くか考えていた

 

「ねぇトレーナーさん、次はどこに行こうか」

 

「そうだな、せっかくだし色んなところ回ってみるか」

 

こうして私たちは様々なところを回った、そして歩いているうちに、一つの店が目に入った そこは小さめの雑貨店だった、だが店内にはたくさんのぬいぐるみが置いてあり、見ているだけで心が癒される空間になっていた 私は吸い込まれるように店の奥に入っていった、するとそこには小さなカゴの中にたくさんの猫のぬいぐるみたちがいて、みんな可愛く寝ていた。

私はそのうちの一匹を手にとって撫でてみると、その子はとても気持ち良さそうな顔をしていた

 

「お前、こういうの好きなのか?」

 

トレーナーさんは猫のぬいぐるみを愛でている私の横で同じように猫を愛でながらそう聞く

 

「うん、可愛いよね、この子達」

 

「ああ、まぁ確かに可愛いな」

 

「この子たち、買っちゃおうかな」

 

「え?マジか、そんなに気に入ったのか?」

 

「うん、だってこんなにたくさんいるんだよ?全部欲しくなっちゃうよ」

 

「まぁ欲しいなら別にいいけど、でもあんまり無駄遣いするなよ、いつの間にかレース賞金無くなってても知らないぞ」

 

「うっ……それは嫌かも、じゃあとりあえず1匹だけにするね」

 

こうして私はその店で猫のぬいぐるみを1匹だけ購入し、店を後にした その後も私たち二人は色々な場所を見て回り、とても楽しい時間を過ごした、気が付けば日も暮れていて、空はオレンジ色に染まっていた。

 

私たちは講演で休憩していて、そろそろ帰ろうと思い二人でベンチを立った直後、そこでトレーナーさんは突然立ち止まり、何かを思い出したかのように言った

 

「あっ、そういえばまだ渡してなかったな」

 

「ん?何を?」

 

「ほら、今日はハロウィンだろ?だからこれ、本来はお菓子なんだろうけど、プレゼントだ」

 

そう言うと彼は手に持っていた紙袋の中から、さらにラッピングされた箱を取り出した

 

「開けてみてくれ」

 

私は言われた通りに包装を取り除き中身を確認した、その中には先ほど購入した猫のぬいぐるみが入っていた そしてその横にはもうひとつ別のものが入っていた それは黒地に白いドット柄が入ったリボンだった なんだろうと思い、それを持ち上げると、タグのようなものがついており、そこにはこう書かれていた 【シャインの夢が叶いますように】

私は驚いてトレーナーさんの方を向いた、するとトレーナーさんは恥ずかしそうに

 

「最近、シャインがメキメキ強くなってるからな、もっと俺も力になりたいと思って、そういう意味のメッセージだ」

 

「最高…最高だよトレーナーさん!!」

 

私は思わずトレーナーさんの後ろに回り持ち前の脚力で一気にトレーナーさんの肩に乗った、トレーナーさんの体は私をいきなり乗っけても頼もしく、私を支えてくれていた、安心感を与えてくれた、私の夢が、願いが、想いが、どんどん大きくなっていくのが分かった。

 

「ありがとう!本当にありがとう!最高のハロウィンになったよ!」

 

「そう言ってもらえると買ったかいがあったってもんだ!ほら、そろそろ帰るぞ!門限に間に合わなくなる!」

 

「うん!そうだね!早く帰ってご飯食べよう!」

 

「ははは、ほんとに食いしん坊だな!」

 

私はトレーナーさんの肩から下りて、トレセンへ帰ろうと歩き出した、しかし歩き出して数秒、私もあることを忘れていることを思い出した、私はトレーナーさんの方に向き直り

 

「トレーナーさん、トリックオアトリート!!お菓子をくれなきゃ、超前傾走りでぶっとばしちゃうぞ☆」

 

「一種の殺害予告かな…」

 

私たちはトレセンに到着するまでお互いに笑いが絶えない話をしながら歩き続けた

こんな楽しい日々がずっと続くといいけど、私たち競争ウマ娘はそうはいかない、いつかきっと必ず戦わなくちゃならない相手が出てくる、だからその時が来るまでにこういう幸せは噛みしめておかないといけないよね…!

 

私の上京してからの初めてのハロウィンは、とても最高な形で幕を降ろした

 

 

 

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