持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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第二十一話 療養期間、そしてパーリナーイ!

 

「がああっ…ぐっ…いっ…ったっ…」

 

「シャイン!!おいシャイン!!シャイィィン!!!」

 

坂で超前傾走りの練習をしていた私の体は地面に接触してしまい吹き飛んだ、運悪く吹き飛んだ先にあった柵に衝突してしまった、しかも脚がだ。超前傾走りはいつもスパートの時に使用する武器だ、つまり私はスパートの速度で策に衝突したのだ、そんな状態でコースを守る柵に脚が衝突すればどうなるか、ぶつかって痛みに悶えている私の頭にはそこまで答えを出すことができなかった

 

「ごめ…ごめ…なさ…また怪我…」

 

「気にするな!!とりあえず保健室まで急ぐぞ!!」

 

私が頭をぶつけて怪我をした時のように、トレーナーさんは私を持ち上げて保健室まで連れて行ってくれた。運ばれている最中の脚に関しては持ち上げる寸前にアイスボックスに常備していたアイスノンを渡してくれたので運ばれながら冷やすことができた。冷やしたおかげなのか保健室に着くころには多少は痛みが引いていた

 

 

「すこし重い打撲ですね、しっかりと休んで3週間もすれば治ります」

 

「3週間…それじゃホープフルに向けての調整が…」

 

3週間、とりあえずホープフルステークスには間に合うが、3週間寝たきりになってはたして勝てるのかどうか、私の隣でトレーナーさんも顔を暗くして黙っていた。それならば少しでも早くトレーニングに戻れるようにちょっとだけ復帰の予定を早めてみようと保健室の先生に言ってみたが、すぐに却下されてしまった

 

「少しでも早く復帰しようとして無理するのはやめてください、脚はデリケートですから」

 

 

そう言われてしまうと何も言い返せなかった。結局その日はそのまま整形外科に行って診断書を書いてもらい、そのまま帰宅することになった。そして次の日から私は休養していた、やはり脚へのダメージが大きかったのか、思うように動かない。それでもなんとか早く治るように祈っていたが、祈りで怪我が治るなら苦労はしない、1週間経っても脚は治っていなかった。

そして一つ忘れていたことがある、京都ジュニアステークスだ、当然打撲した脚では走れるわけもなく、私は出走取り消しをやむなくされた。

出走取り消しになってしまい落ち込んでいた私は、ここ最近ずっと行っているトレーナー室での勉強をしていた、トレーナーさんは脚が治った後のトレーニングメニューをひたすらに書き出している、勉強している時とは打って変わって、タイピングするトレーナーさんからはまるで般若の顔が見えるようだった

 

「ふぅ…」

 

「お疲れ様、シャイン」

 

勉強に一区切りを付けてソファに座っていると、トレーナーさんがココアを持ってきてくれた、トレーナーさんは怪我をしてからというもの、特に気にしているわけでもなく普通に接してくれている。

 

「シャイン、あんまり気にするなよ、もともとトレーニングメニューを出したのは俺だ」

 

「でも…私がちゃんと坂を走れなかったからで…」

 

「走れないものを走れるようにするのがトレーニングだ、それなのに走れなかったことを悪く思うな」

トレーナーさんの言う通りかもしれないけど、やっぱり自分のせいだと思いどうしても自分を責めてしまう。それにしてもこのココア美味しい……。

それからしばらくするとトレーナーさんは自分のパソコンに向かって何かを打ち始めた。おそらく今度のレースのデータだろう。

 

私がココアを飲みながら休憩していると、トレーナー室のドアが開いた

 

「やっほ~、ごめんね~お見舞い行けなくて」

 

そこにいたのはサンだった、別に私はお見舞いなどしてもらおうとも思ってないのでサンを返そうとも思ったが、せっかくだからいいじゃないかとトレーナーさんが招いた、サンはショートケーキとオクラを持ってきてくれて、机の上にドンと置かれた、ショートケーキとオクラなんてミスマッチもいいところだが、サンの事だし好物だから持って来たとかいうのだろう

 

「お見舞いなんていいのに、サンは京都ジュニアステークスがあるんだからトレーニングしないといけないし」

 

「いいよいいよ、それにしてもまたシャインが怪我するなんてねぇ、私とクライトとシャインの3人の中で一番シャインが怪我してるよね」

 

「というか私以外怪我してないよね」

 

私の怪我をしたヒストリーを振り返ると、まず最初の頭を打った時の怪我、そしてその次に今日の脚の打撲だ、確かに私達3人の中で私しか怪我をしていない、なぜ私以外の2人は怪我をしないのか不思議でしょうがない、私がこんなにも高頻度で怪我をしているのに。

トレーナーさんが脂汗を書いている気がするが気のせいだろうか…?

 

「ま、まぁいいじゃないか、ほら、そうだ、せっかくだしシャインのお祝い会を今日にしよう、準備もしてきたしな」

 

突然トレーナーさんがお祝い会を今日にしようと提案をしてきた、よく考えてみれば確かに、これからクラシック期に移行するシーズンになるから、私達もこれまで以上に暇が作れなくなる、ならばこのタイミングでお祝い会をするのが一番ベストなのかもしれない

 

「え、なに?シャインのためのパーティするの?参加する!!」

 

「おう!サンは木村さん呼んできてくれ」

 

「ちょ…私はまだ今日にしようとは言ってな…まぁいっか」

 

結局私の重賞初勝利お祝い会は今日になった、サンは木村さんを呼びにトレーナー室を飛び出し、トレーナーさんは食べ物の用意をする。私はと言うと、打撲しているから動けない分、クライトや速水さん、サイレンススズカさんセイウンスカイさんなどに電話してパーティに呼んだ、みんな私の招待に迷うことなく返事をしてくれて、パーティはすぐに始まった

 

 

そうしてあっという間に準備が行われていった、みんなが集まり、きったねぇトレーナー室を掃除し、飾りつけをした、ここで驚いたのが、トレーナーさんは意外と料理ができるらしく、テーブルの上にポンポンとローストビーフやポテトサラダ、そしてついでにサンが買ってきてくれたショートケーキも私は食べれるのだ、これほどまでに豪華な食事はいつ振りだろうか、いやそれ以前に、私はこれほどの食事をしたことがあるだろうか。

 

「それじゃ、打撲してる時にこれやるのもあれだけど、シャインの重賞初勝利を祝って!」

 

『かんぱーーーい!!』

 

みんな各々手に持っていたニンジンジュースを天に掲げて乾杯をした、そしてみんな私の重賞初勝利を祝ってくれた

 

「誰にも越えられない記録に一歩近づいたわね、シャインちゃん…」

 

「けっ、俺が京王杯ジュニアステークスを勝ってりゃ、スタ公より祝われてたのによ」

 

「まぁまぁクライト、次がんばろう」

 

「シャインちゃんの末脚ともっかい走ってみたいなぁ~、な~んて☆」

 

みんながみんな、個人個人の方法で私の事を祝ってくれた。

乾杯からしばらく経ったあたりで私はトレーナーさんの作ってくれた料理に手を伸ばした

 

「さぁシャイン、食べてみてくれ、久しぶりに作るから不安だが、お前の注文通りローストビーフだ」

 

「料理の要望まで覚えててくれたんだね、ありがと」

 

圧巻の景色の前で私は手を合わせて箸で断面が赤い肉を掴む、トレーナー室の照明に照らされてさらに断面が輝く、私は同じくトレーナーさんの作ってくれたソースに肉をくぐらせてから、一気に頬張った、第1口目は私からと決めていたのか、みんながみんな私の方を向く、その景色に少しだけ羞恥心が湧いてくるが、気にしないようにして咀嚼する

 

「ど…どうだ、シャイン―――」

 

「おいしい!!おいしいよこれトレーナーさん!!」

 

私は打撲した方の脚に追い打ちをかけないように片足でソファから飛び上がる、口に入れた瞬間の肉の味が衝撃的だった、トレーナーさんが作ったこのソースもさることながら、きっといい肉のせいだろうか、噛まずに呑み込めてしまいそうなほどに柔らかく、そのまま喉の奥に流れ込んで行ってしまう、まるで冷奴を食べているようだ、尤も味は肉だけど!

 

「そうかそうか、シャインの口に合ったようで何よりだ」

 

「実は少し前からトレセン学園のシェフにおいしくなる作り方学んでたぞっ」

 

私の後ろの方で速水さんが早口にトレーナーさんのヒミツを暴露した、どうやらもともと料理が出来る訳ではなかったようだ

 

「へぇ~、私の為だけに料理を学…んでくれたんだ~、へぇ~」

 

私はイジるつもりで言葉を発するが、トレーナーさんが私の為だけに料理を学んでくれた、あの怖いシェフにお願いしてまで学んでくれたと言う事実がこっぱずかしくてまともに言えなかった

 

「うるせぇ担当を持っちまったぜ、さっさと食えこんにゃろ」

 

トレーナーさんが私の頭に拳を軽くポカっと置いた、私の方は恥ずかしくてそれどころではないのだから本当にやめてほしい、ぶっ飛ばそうかとも思ったがこの場でぶっ飛ばしたら空気が冷める気がしたのでやめておいた、私たちがそうやって恥ずかしがったり笑い合ったりしていると、突然トレーナー室のドアが開いた

 

「あなたたち、ずいぶんと暇そうね、それにスターインシャインに関してはトレーニング中に打撲するなんて…バカ丸出しね」

 

ドアの先に立っていたのはノースブリーズだった、いつも一緒にいるシーホースランスは今日はいないようだ、ノースブリーズは何やら呆れたような顔でそう言った

 

「出やがったなキグナスのムカつく野郎、ってかスタ公は自らの技術を磨こうとして怪我したんだ、バカってのはいただけねぇな、この前チョコ投げそびれた恨み晴らしてやろうか?」

 

ノースブリーズが来るなりクライトが立ち上がってそういう、私は怪我をしてしまった事を悔やんでいたが、クライトのフォローによって少しだけ気持ちがホッとする

 

「野蛮な事はよしてもらえるかしら、それに私に言わせればあなたの声こそ聞いててうざったいわよ、黙っててもらえる?」

 

クライトはこの前とは全く違うノースブリーズの態度に怒るわけでもなくただイライラを押さえて後ろに下がるだけだった

 

「クライトがダメなら私が言ってやる、シャインは自分の目標を叶えるために一生懸命練習して怪我したの、それをバカ丸出しって言うなんてどうかしてるんじゃないの?」

 

そしたら今度はサンが前に出てきてそう言いきった、二人ともが私の怪我を悪いと思っていないこの空気、いやもしかしたら私以外の全員悪いと思っていないのかもしれない、そう思うと涙が出てきそうだった。

 

「バカよ、トレーニングして怪我して、トレーニングできなくなるってバカよ。」

 

二人がある程度話し終わって静かになったのを見計らってなのか、すぐにノースブリーズは自分の目的を言いに前に出た

 

「―――私の目的、それはあなたに宣戦布告をしに来たわ」

 

ノースブリーズは突然サンに近づき、そう言った、そういえば忘れかけていたが、京都ジュニアステークスにはサンだけでなく、今学園内で一番注目されているチームのキグナスのメンバーが出るのだ、そしてキグナスのメンバーを除けば京都ジュニアステークスで一番脅威になるのはプロミネンスサンと言うわけだ。そのため今日、宣戦布告しに来ることによってサンを揺らしに来たのだろう。

 

「…いいの?私にそんな宣戦布告をしちゃって」

 

「なに?」

 

「あなたがさっき言った通り、私の友達スターインシャインは足を打撲している、だけどそれは同時に、私の気持ちが高ぶっていることも意味するんだよ、怪我をしている友達が、出れなくても良かった、このレースを見れてよかったと思えるくらいのレースを作り上げようと私は気持ちが高ぶってる、そんな私を相手にして勝てると思ってるの?」

 

サンは曇り一つない顔でそう言った、それを受けてノースブリーズは「そんな気持ちの高ぶりなんてくだらない」と言い鼻で笑った、サンは鼻で笑われても何一つ表情は変えず動じていなかった、しばらくしてノースブリーズは

 

「京都ジュニアステークス、楽しみにしてればいいです、童話の『北風と太陽』では、北風は太陽との勝負に負けてしまいましたが、これはレースです、北風は太陽系の中心に佇んで、全く動かない太陽よりかは速いですよ。では」

 

そういってトレーナー室から出て行ってしまった、サンは京都ジュニアステークスに向けての士気が高まったようで、ご飯はおろか飲み物にすら手を付けずに、真剣な表情で座っていた。

そうしたら仕切り直しのつもりなのか、トレーナーさんがクラッカーを鳴らしてパーティは再開された。

 

その後は速水さんや木村さん、サイレンススズカさんなどの他の人たちも一緒に食べ始め、ポテトサラダの方も食べてみたのだが、これもまたおいしかった、まるで高級レストランのような味わい、ポテトサラダなのにこんなにもおいしいなんて…… 私はもう何度目か分からないが、再び感動してしまった

 

それからしばらくすると、パーティは終わり、みんな帰り支度をはじめる。私はというと、まだ残っている料理を冷蔵庫に入れてもらっていた、また別の日に食べたいしね。その時、サンが話しかけてきた

 

「シャイン、私京都ジュニアステークスで頑張ってくるよ」

 

「うん、私の分まで走ってきてね。でも大丈夫かなぁ?相手にはキグナスがいるんだもん、一筋縄じゃいかないよ~?」

 

私は少しふざけたようにサンにそう言う、だがサンは何も気にしてない様子で

 

「私を誰だと思ってるの?トリプルティアラを志す逃げウマ娘、プロミネンスサンだよ?太陽が京都の観客席を照らしちゃうよ」

 

「ふふっ…そうだったね、サン。それじゃまた今度、レース見に行くからね」

 

「待ってるよ、シャイン」

 

サンは最後にその一言だけ言ってトレーナー室から去って行った

 

「なぁ、シャイン」

 

パーティが終わり、装飾も外されてがらんとしてしまったトレーナー室で二人きりになってしまってから数秒後、突然トレーナーさんが話しかけてくる、その声はとても柔らかく、まるで絵本の読み聞かせをするような感じだったのでびっくりして後ろを振り返った。トレーナーさんは窓の外に見えるパーティ参加者たちを見て話しかけてきていた

 

「なんかずいぶんと優しい声色だね、どしたの?」

 

「いやな、なんだかシャインはいい仲間持ってるなって思って、何にもしてない俺なんかより全然いい仲間だ」

 

「何言ってるのトレーナーさん、トレーナーさんがここまで導いてくれたからみんながいるんでしょ、人生はいろんな選択肢が積み重なって結果が出来上がるの、トレーナーさんが私の人生が良いと思っているならその時点で、私に関わっているトレーナーさんのおかげって事にもなるんだよ。それに第一、トレーナーさんは私のトレーナーでしょ?私の一番の仲間だよ!!」

 

私は私のできる最大の笑顔でそう言ってやった、だって仕方がないだろう、何にもしてないだの俺なんかよりだのお門違いな事ばっかり言うんだもん、だから私は説教のつもりで、この場で惚れさせてやると言わんばかりに言ってやったのだ。

 

「…ああ、ありがとうな、シャイン。お前のトレーナーになれてよかったよ」

 

…でも全く効いてないみたいだけどさ!

 

「ちょいちょい、私たちはこれからだよ?まだまだそんなこと言うのは早いって、私の打撲が治ったらまたよろしくね、トレーナー!」

 

「了解だ」

 

私たちはそれで会話を終え、外はもうオレンジ色になっていたので各々自分の部屋に戻った。

サンの京都ジュニアステークス、必ず見ようと私は心に誓った。

 

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