持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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第三十三話 ジュニア期を終えて.txt

 

 20■■年 1月2日 ジュニア期を終えて 記入者:橋田 瑠璃

 

現在の時刻は昼の12時、シャインのトレーニングがもうすぐ始まろうとしているが、このようなレポートを残しておくのも良いかと思い、一人寂しいトレーナー室でパソコンを叩いている。

 

このノートを他人に公開するかどうかはまだ決めていない、もしかしたら誰にも見せずに終わる可能性もあるが一応それっぽい事は書いておこう。俺の名前は橋田、トレセン学園でトレーナーをやって2年経つトレーナーだ。担当ウマ娘は『スターインシャイン』というウマ娘だ、脚質は追込、適正距離は未だに測ってないのだが……走っているレースからして中長距離は行けるだろう。

そんな俺の初めての、なんだ。そうだな『トレーナーノート』とでも名付けるか、我ながらシャインには笑われそうなネーミングだが、このトレーナーノートに俺なりにジュニア期を振り返った記録を書いていこうと思う。

 

どこから振りかえろうか迷ったが、まぁ最初だし俺がシャインを担当したところから振りかえって行こう。あれは確か4月の入学シーズンだった、あの時の俺はトレーナー業に楽しみややりがいを見いだせておらず、とにかく腐った日常を過ごしていた。だがある時「担当ウマ娘を持ってみたらどうだ」と、速水さんという俺の先輩に言われたので、トレセン学園のウマ娘が出走する模擬レースを見るようにしていた時期だった。

 

あの時もいつもと同じように、新入生が出走する模擬レースを見ていた時だった。俺は最初、プロミネンスサンという、シャインと一緒に走っていたウマ娘をスカウトしようと思っていた。レースが始まってからも俺の気持ちは変わらず、プロミネンスサンはどんどん先頭の方で加速し続ける一方。だがレース終盤、プロミネンスサンの勝利が決まったと思ったその瞬間に、後方でバ群に呑まれて負けることが確定していたであろうウマ娘、スターインシャインが上がってきたのだ。そうして一気にプロミネンスサンを倒した彼女に俺は、まさに一目ぼれ、というのだろうか。彼女の驚異的な末脚を見て、すぐに俺は彼女をスカウトしようと決めたのだ。

 

最初こそシャインに拒絶はされていたが、俺の助言でレースを勝てた事や、俺の目標である「担当を誰にも負けないようなウマ娘にする」と言う目標が彼女の目標とつりあった事が気に入ってもらえたようで、見事スカウトに成功したのだ。今思い出しても、よくあんな引っ張りだこになりそうなウマ娘をスカウトしようと思ったもんだよ。

 

あそうそう、彼女の目標についてなんだが、彼女は「誰にも越えられない記録を作る」と言う目標がある。誰にも越えられない記録、そんなものの定義や基準はどこにもない、だからこそ彼女は、この三年間でその答えを見つけるために走るつもりのようだ。俺も彼女の目標をかなえてあげたいので、熱心に担当しているつもりだ。

 

話が脱線したので戻そう。そうして彼女を担当することが決まり、俺はサブトレーナー時代に作っていたトレーニングメニュー表を持ってきた、どこのチームにいたかについては伏せさせてもらう。敢えて言うとしたら、G1に出走して勝利したウマ娘を沢山輩出しているチームと言うくらいだ。G1ウマ娘がこなすようなメニューに、シャインは最初の頃、本当に苦戦していた。だがしかし、彼女の目標に対する信念が彼女を突き動かしたのだろう、彼女はG1ウマ娘がこなしていたメニューを難なくクリアできるようになるまでに成長した。そうして迎えたメイク

 

 

 

「……眠くなってきたな、コーヒーでも淹れるか」

 

久しぶりにこれほどのタイピングをしているので、目がシパシパしてきている。この調子だと体調が酷くなってシャインにまたびゃーびゃー言われるので早く書き終わらなくては。

 

 

 

していたメニューを難なくクリアできるようになるまでに成長した。そうして迎えたメイクデビューでは、なんと同じく出走していたプロミネンスサンにリベンジされ、敗北となった。

なぜ負けたか、それは単純だった。プロミネンスサンは逃げウマ娘でありながら先行集団に紛れ込み、体を前にわざと倒して走行していたのだ。そうすることによって著しい体力の消耗が起こり、いくら加速しても疲れない状態であるセカンド・ウィンドに誰よりも早く到達できる、そのため勝つことができると言う作戦だった。

 

敗因であるプロミネンスサンの作戦にどハマりしたシャインの顔は今でも鮮明に覚えている。あの時のシャインはまだ精神的な面で本番のレースに対応していなかったため、俺はしっかりとレース中に訪れる緊張感や恐怖感に対応できるトレーニングを施した。

 

シャイン自身、最初のメイクデビューに負けてから気持ちが落ち込んでいる時期もあったが、シャインの同期であるマックライトニング、先輩レジェンドであるサイレンススズカのおかげで何とか気持ちが復帰した。それにシャインは未勝利戦に出走する前に、自分なりの武器を見つけた、それが超前傾走りだ。

 

超前傾走り、軽く説明すると、かの怪物、オグリキャップがかけるスパートのように前傾させる走り方だ。それも生半可な前傾ではない、もはや自分の前に足を蹴りだすことが出来なくなるくらい前に傾くのだ。文章で説明しても分からないだろうが、今の俺には解説はこれが限界だ。とりあえず、このレポートを見て気になったトレーナーがいるならシャインのレース映像を見てもらえればわかると思う。

 

そして迎えた未勝利戦、シャインは途中イーグルクロウと呼ばれるウマ娘にタックルをされたが、シャインの持ち合わせている武器、根性、そして驚異的な末脚で何とか制する事が出来た。今でも昨日の事のように思える、始めて持った担当のデビューの瞬間、あの瞬間ほど俺は喜んだことはないだろう。

 

デビューしてからも、俺とシャインは前に進み続けた。最初は俺がレースメニューを組めないことが災いしてぐだぐだしていたが、今では速水さんと、同じく先輩である木村さんの鬼トレーニングのおかげで何とかレースメニューが組めるようになっている。あの鬼トレーニングは今でも思い出したくないトレーニングだ。

 

ジュニア期に突入して、最初に出たレースはサウジアラビアロイヤルカップだ。これを読んでいる人も驚くだろう、なぜいきなりG3に出走するのだと。だがシャインは「誰にも越えられない記録を作る」という目標がある、そこに重きを置いた俺は、初出走をサウジアラビアロイヤルカップにしたのだ。事実として、いきなりG3に出走すると言われ、シャインも不安がっていたが、最終的には納得していた。

 

ちなみにこの際、シャインとは釣りに行ったりして、なかなか楽しいお出かけをしていた。この時シャインにはなんだか怒られてしまったが、イマイチなんで怒られたのかわからない。俺はただシャインの釣竿が重そうだったから一緒に引いただけなのだが……

とまぁ少し関係ない事を書いたところで、サウジアラビアロイヤルカップについて振り返ろう。

サウジアラビアロイヤルカップでは、グッドプランニングと言うウマ娘がライバルだった。

 

このグッドプランニングと言うウマ娘がなかなかに強敵で、観客席から見ている俺でも分かるくらいにバ群が動いていた。レースが終わった後にシャインに聞いてみたのだが、グッドプランニングはレース中バ群を好きなように動かせる、一種の超能力のような力を持っていて、レース中自分の天敵になりそうなウマ娘を沈めるための武器らしい。今思い出しても恐ろしいウマ娘だ。

しかしグッドプランニングは、バ群の位置を気配で察知していた、そこが弱点だった。シャインはレース中他のウマ娘を威圧して減速させるのを得意とする、グッドプランニングはシャインの圧倒的な気配によってバ群の位置を読めなくなったのだ。そのためシャインは、バ群の壁から抜け出すことができ、勝つことができた。

 

G3を勝って自信もついたシャインは、次の目標を京都ジュニアステークスに定めた。G3を勝ったのだから次は一呼吸置いてから重賞に行くのではないかと思うだろう。だが俺たちは無鉄砲に挑んでいるわけではなく、ちゃんと勝てると思う重賞レースに出走している。そのため、特に心配はない。

 

次の目標を定めたシャインと俺は、サウジアラビアロイヤルカップにて課題となった『坂に対する超前傾走り』の練習を始めた。というのもこの超前傾走り、なんと平らな地形でしか発動できないのを忘れていたのだ。だから、俺とシャインは、トレセン学園のグラウンドについている疑似的な中山の坂で、ひたすら超前傾で走っていた。この超前傾走りは使用者にとてつもない疲労を与えるようで、超前傾を使った後のシャインは目を真っ白にしながら過呼吸気味な呼吸をしていたのは今でも懐かしい。今では反動を多少抑えられるようになったようで、息の入りが速くなっている。

 

だがそんな時、シャインは坂の超前傾を練習している時に、こけてしまったのだ。とんでもないスピードで走るウマ娘がこけた時の被害は大きく、シャインは足を強く打撲してしまった。当然京都ジュニアステークスの出走は取り消し、しばらく療養期間にすることになった

 

同じく京都ジュニアステークスに出走する予定だった、シャインの同期であるプロミネンスサンは、京都ジュニアステークスにてあるウマ娘と戦った。それはトレセン学園にて今一番注目されているチーム、キグナスのメンバー『ノースブリーズ』である。彼女は今ではシャインやサン、クライトたちと仲良くなっているのだが、出会った当初は本当に仲が悪かったのだ。そうして半ば戦争のような空気でサンは京都ジュニアステークスに臨んでいた。

 

ノースはどうやら深呼吸を使ったスタミナの回復術を持っているようで、レース中に何度も息を入れるタイミングを作ることで、どれだけ高速で走っても疲れないと言うような武器だ。息を入れるタイミングを見極めるノース自身の力もあるため、シャインはまだ武器を奪えていないのだが、いつか機会があれば覚えさせてみたいと思う。

 

そうしてキグナスと戦った京都ジュニアステークスは、ノースが息を入れるタイミングに生まれる隙に、サンが決死の覚悟で真似したシャインの威圧感を叩きこみ、加速を邪魔した。

それもサンは完璧にタイミングを掴み、ノースの武器を圧倒的に封印した。そしてサンの持ち前の根性で勝利し、京都ジュニアステークスは幕を閉じた。

 

シャインとサンが驚異的な快進撃を見せているとき、それに負けるまいと、速水さんの担当であるマックライトニングも快進撃を見せていた。シャインが療養期間を乗り越え、ホープフルステークスに向けての調整を行っているとき、なんとクライトは阪神JFを制していたのだ。だが本人が言うにはあまりつまらないG1だったらしく、どうやら出走メンバーが弱かったようだ。俺に言わせてみれば、クライトが強すぎてつまらないと感じている、所謂勝者の余裕だと思った。

 

打撲してまともに練習が出来ていなかったシャインも、ホープフルステークス直前にはまた前のような走りを取り戻していた。唯一の問題は、坂の超前傾がまだ習得できていないと言う点だった。だがそんなことを言っていても仕方がないと言う事で、俺たちはホープフルステークスに出走するべくレース場に向かったのだ。

 

ホープフルステークスの出走メンバーは圧巻だった、スターインシャインは当然の事、阪神JFを制したマックライトニング、そして、ノースブリーズの親友であったシーホースランス。

ノースはランスと色々あって、あの時は喧嘩をしていたらしい、そのため、ノースはシャインに、勝ってランスの目を覚まさせてほしいと、願いを託してくれた。

 

シャインが走る初のG1、最初はかなり危なかった。なんとシャインがまだ完成していない坂の超前傾を使ったのだ、ホープフルステークスのコースは、スタート直後とゴール前に坂があるため、1回目の坂に超前傾を使ったのだ。当然、決まらなかった。坂の超前傾が失敗すると、反動によってシャインは足を止めてしまうのだが、今回シャインは減速こそしたものの、走りを止めることはしなかった。

 

ほっと一息ついたのもつかの間、なんと先行の脚質を持つシーホースランスが逃げの作戦を打ち始めたのだ。シャインが坂の超前傾に疲れた隙を突き、レースのペースを上げることによってシャインをさらに疲労させようとしていたのだ。

 

しかしシャインは沈まなかった、逃げの作戦を打ったシーホースランスに対抗して、シャインも逃げの作戦を打ち始めたのだ。最初に言った通り、シャインは追込の脚質、逃げなどできないと思われるが、シャインは以前に学園内で、あのセイウンスカイと逃げの作戦でマッチレースを行っている。そのため多少なりとも逃げの適性は上がっていたのだ。適性の数値をアルファベットで表すとするなら、Dと言ったところか。

 

シャインは逃げの作戦を打ち、先頭を取られそうになったらランスが対抗して前に出てくると思ったのだ、だからこそ、ランスは一番威圧感を受けやすい背中を社員に晒すことになった。ここまでの流れでもうわかるだろう、シャインは威圧感でランスをバ群の中に沈め、何とかレースのペースを遅めにした。

 

だがこの時、油断していたシャインは、こっそりと脚を溜めているクライトに気付くことが出来なかった。最終直線にて、クライトはシャインを追い越すべくスパートをかけてきた、当然スピードは向こうの方が上で、シャインはあっという間に抜かれてしまった。

 

しかしシャインは、ここで大博打に出たのだ。先ほども言っただろうが、ホープフルステークスはゴール前にもう一度坂がある、2回目の坂にて、シャインはもう一度超前傾に挑戦したのだ。

当然俺も無茶だと思った、だがシャインは末脚を輝かせ、上半身を地面につけることなく坂を超前傾で走りきった。

 

クライトは坂のスピードが遅かったようで、坂を上っているうちにシャインが前に出ていた。そしてゴール板まではさほど距離もないので、そのままシャインが一着でゴールする事が出来たのだ。

 

 

 

とまぁ、こんな風にシャインのジュニア期について振り返ってみたが、本当にすごいウマ娘だと思う。

 

 

 

「はぁ~っ、書き終わった」

 

「何してるの?トレーナーさん」

 

「うぉあっ!?」

 

突然背後から声がしたので、驚いて後ろを向くと、シャインが立っていた。どうやら授業の方が終わったようで、熱心にパソコンに向いていた俺を邪魔するまいと一呼吸着くまで待っていてくれたらしい。

 

「……ふーん、私のジュニア期について書いてたんだ、ま、ちゃんと綺麗に書いてくれればどうでもいいけど☆」

 

「まぁ、忘れないようにな」

 

「それじゃ、トレーナーさん行こっ!!これからクラシック期も始まるんだよ!!」

 

「……あぁ!!行くか!!シャイン!!」

 

これからクラシック期に突入し、もっと大変な日々になるだろうが、これからもあの子の活躍を確定的なものにすべく、俺もトレーナーとして頑張って行きたいと思う。

 

 

快進撃を見せちゃうよ!ジュニア期編 完

 

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