持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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第四十七話 超光速 再び③

 

 レースが始まり、すべてのウマ娘が坂を乗り越えてコーナーを回っている頃。シャインはこの地中山レース場で以前行った逃げの走りをするなどと言った無茶をせず、安定して最後方を走れていた。

 しかし異様なのはそのバ群だ。普通バ群というものは1つの塊が作られまとまる形や、縦長に変化し、後方集団と先行集団で二つの塊が生まれる形が殆どだ。だが今この皐月賞で形作られているバ群は、()()()()()()()に分かれていた。

 

 後方からシャイン、名も知らぬウマ娘が7人ほど差しの位置で走っており、その少し前をマックライトニングがスタート時から変わらない速度で走っている。そして先行集団が8人、ばらけながら縦長に走っている。ここまでで17人、最後の1人はいったいどこで走っているのか。

 

『坂を登ってからすごい速度で走っているシャイニングラン、もうすでに2番手と15バ身16バ身と間を離していきます』

 

「(やっぱりなんか私が相手する逃げウマ娘のレベルが上がって行ってるよなぁ……)」

 

 シャイニングランは、2番手を離して遥か30mほど先を走っていた。スピードのギアを上げて飛ばし始めた最初の頃は、皆釣られまいと冷静に落ち着くことを心掛けていた。しかしいざ15バ身も離され、焦り始めたウマ娘が出てくる。

 

 クライトの真横を走っていたウマ娘がまず掛かり、芝に躓いた。一度上げようとしたペースを躓くことで落とされるのは大きなスタミナの消費を伴う、このウマ娘はもう上がることができない。

 次にシャインの前を走っていた後方集団の2人ほどが掛かり、無駄にペースを上げている。これほどまでにペースを上げてしまえば最終直線で発揮するはずの末脚が輝かず、最終的に沈むことになってしまうだろう。

 

『どうやら掛かっているウマ娘が多くいるようです』

 

「(どいつもこいつも冷静じゃねぇな。……スタ公、沈むんじゃねぇぞ)」

 

 これはすべて、シャイニングランの思惑通りだった。いや、思惑通りではない、これがいつものシャイニングランだった。これがこれまでシャイニングランが勝ち続けることができた一種の作戦であり、武器だ。

 後先考えていない逃げウマ娘、ツインターボの如し走り方。将来輝かしい実績を残すほどのウマ娘がその才能を開花させていれば、このような場面に立ち会っても適度にペースを上げていけるだろう。だが、G1という頂に届くことができない、G1レースの場で大幅に離される緊張感に耐えきることができないウマ娘はこの時点でシャイニングランの武器に落ちる。

 

 そして今日、シャイニングランの武器に落ちるウマ娘はシャイン、クライト以外のほぼすべてのウマ娘だった。次第に次第に、1人1人確実に脚が死んでいく。そしてシャイニングランも着実に2番手との差を広げていった。

 

『さぁもう7……8……9……20バ身ほど開いていますシャイニングラン。これはこのまま逃げ切りの体制か?』

 

『少し前のセイウンスカイが走った京都大賞典を思い出しますね~』

 

 明らかだった。このままではシャイニングランが逃げ切るというのは、素人目の人が見ても明らかだった。

 

「げっ、やばいってやばいって! 前が詰まってきた……!」

 

 シャイニングランの逃げに誘われ、ペースを上げた後方集団。未だにペースを保っているウマ娘もいるが、その一部がスタミナを使い切りシャインの前に押し寄せてきた。前が詰まってきて、横に避けようかそのまま突っ切ろうか、思考が乱れシャインの態勢が少し崩れてしまう。

 

「(おっと危ない危ない、冷静に冷静に……態勢を正して)」

 

 最初こそ態勢が崩れてきていたシャインだが、何とか持ちこたえる。更にバ群を受ける態勢が出来上がったことで無駄な消費が無くバ群に好位置で入り込むことができた。これによりスタミナの消費がより少なくなる。

 

 時を同じくして中団、クライトも速水から提案された新しい武器を使用していた。

 

「なるほどな、トレ公。確かにこの走り方ならバ群に囲まれにくい。シャイニングランとかいう奴が大逃げの作戦を打って、先行集団が垂れ、俺がそのバ群を抜ける。あんたが言った通りの展開だ……。さしづめライトニングステップ、なんつってなぁ!」

 

 ピッチを上げ、前方三方向に跳ねながらバ群を抜けて加速していく。その加速は決してシャイニングランに誘われたものではなく、レース中盤になった時のクライトの平均ペースだった。

 

「一発目は打った……二発目はまだ調整がいる……」

 

「(あ……? 誰だ今の声? まぁいいか)」

 

 そこからレースは滞りなく進み始めた。シャイニングランがひたすら差を開き続け、シャイン達はスタミナを切らさない様についていく。シャイン達にとってはシャイニングランが逃げ切ってしまうかもしれない展開の為、あまり喜べない展開ではあったが、逆を返せば末脚を溜めるチャンスでもあった。

 

 600mを通過して、第四コーナー手前あたりに近づいてきた。

 未だシャインは最後方に位置し、クライトは差しの位置で前を見据えている。シャイニングランはというと、最初に飛ばしたために流石にスタミナが切れたのか、だんだんと沈み始めていた。2番手との差は既に10バ身ほどまで戻っていた。

 

「よっしゃ、やっぱり逃げすぎてスタミナが切れたか。俺が追い越してやるぜ!」

 

 スタミナが切れて沈み始めたシャイニングランを見て、クライトが最初にスパートをかけ始めた。スパートをかけ始めた時はさほどスピードは出ていなかったが、着実に位置を上げていく。

 それを見てシャインもスパートをかけようか迷っていたが、橋田にスカウトされた時から決めていた、第四コーナーを超えたあたりから仕掛けるスタイルを崩さぬために仕掛けるのをこらえた。

 

「……そういえば、スロウムーンを任せた原田と言うトレーナーですが……ワタシと同じように地方から中央のトレーナーになったんですよね?」

 

「ええ、何か質問でも?」

 

「その原田と言うトレーナー、まだ地方から中央に転職して1年も経ってないじゃないですか。それほどまでに信頼できる理由でもあるんですか?」

 

「あの男はもう普通のトレーナーではない。私も出来る限り関わりたくなかったですが、ムーンの仕上げのためには仕方がなかった」

 

「ふん……ワタシに任せた方が良いと思いますがね」

 

 クライトがスパートをかけ始めて、疲れ切っていた他のウマ娘も前の方で沈みかけているシャイニングランに気付く。すでに道中掛かりスパートをかけるまでもないくらい疲れ切っているウマ娘達だったが、緊迫したレース中に掛かった自分の状態を分析できるわけもなく、沈み始めたシャイニングランを追い越すべく更にペースを上げスパートをかける。

 後ろから上がってきたバ群にじわじわと飲まれているクライトだったが、ギリギリのところでスピードで勝り前目の位置を保っている。

 

「うおおおおお!! 後ろからめっちゃ来るじゃねぇか! スタ公来れんのか!?」

 

「(正直私もこのバ群抜けれるか心配だなぁ)」

 

 第四コーナーを回り、2番手に位置するクライトが8バ身ほど先にいるシャイニングランを追いかけ続ける。

 

「よっしゃぁ! このまま抜いてやるぜオレンジ髪!」

 

 ある程度の所まで近づき、あともうちょっとでシャイニングランを追い越せるという位置に来た時、クライトが最後の最後にシャイニングランを抜こうとした。しかしその時、最後のスパートをかける時に、クライトはふと観客席にいた一人の男に目が行った。

 

「……お前……!?」

 

 次の瞬間、シャイニングランを躱そうとしていたクライトは突然スピードが落ち、まともに呼吸が出来なくなった胸を押さえながら沈んでいく。

 

「クライト!? クライト!!」

 

 だんだんと沈んできたクライトはいずれ最後方にいたシャインの横に来る。明らかに普通じゃない沈み方をして、走りのフォームがガタガタなクライトにシャインは心配する声をかけるが、普通に走っているウマ娘とスピードが死んでいるウマ娘では速度が違いすぎるためにすぐにすれ違ってしまう。それでも心配の気持ちを捨てきれないシャインは走りながら後ろを向いてしまう。

 

「(絶対動揺するなよ……スタ公コラ……てめー勝つんだろが!)」

 

「っ……ごめん、クライト……」

 

 そのまま入学当時からの友人を心配しているがためにクライトの方をずっと見ていたシャインだったが、自分が沈んだせいでスタ公の走りまで邪魔するまいというクライトの眼圧を察し、シャインは前を見て走ることを決断する。

 

 第四コーナーを抜け最終コーナーに入ったあたりで皐月賞は残り400mとなった。クライトは完全に最後方に沈み、シャインは先行集団やや前目の位置まで上がってきている。そして道中20バ身ほど離していたシャイニングランは2番手の2バ身先まで落ちている。

 

『さぁ外からグリーンノオチャ、ハヤシポケットも上がってきている! 最初には驚くほど縦長になっていたバ群がひとまとまりになって先行集団が一気にスパートをかけ始めた!』

 

「さぁ……最初の頃に十分スタミナを使ったでしょ……もうシャインお姉ちゃんにスパートをかける体力は残ってないでしょ……」

 

「(たしかにその通りだ……道中スパートの速度に届かないまでも劣らないスピードで走っていたから、100%の末脚は発揮できない……)」

 

 レース中であり、さらに約8mも離れているのにもかかわらずシャインとシャイニングランはお互いの声を鮮明に聞きあっていた。

 

「(がっ……)」

 

 しかしそんな時だった。

 突然シャインに頭痛が走った。またあの頭痛だった。しかし今回もおかしな点が二つある、それはドンナと走った時と同じようにその場にうずくまるほどの痛みじゃないという点、そしてまた末脚が回復している感覚があることだった。

 

「いけ……シャイン君……! 君の可能性はそんなものではないだろう……!」

 

 そしてシャイン自身は知りようがないが、もう一つおかしなことが起こっていた。

 

「いたっ……」

 

「ん? どうしたんだアグネスタキオンさんよ」

 

「ん、い、いや、なんでもないよ、シャイン君のトレーナー君」

 

「(おかしいねぇ……片頭痛の季節でもないと思うが……)」

 

 観客席で見ていたアグネスタキオンにも同じように頭痛が走っていたという点だ。そしてその痛みは次第に薄れていき、タキオン自身も体に活気が満ち溢れる感覚を感じていた。

 一方でコースを走っているシャインの脳内には今まで経験したことの無いような感情が展開されていた。

 

「(一体なんなんだろう……この好奇心、私のこの体に秘められた無限の可能性にとてつもなく惹かれる……ウマ娘の可能性……こんなの、まるでタキオンさんみたいな……)」

 

 自分の中に広がる自らの限界への好奇心を冷静に分析し、まるで自らがアグネスタキオンになったような、そのような感覚をシャインは覚えていた。

 

『自らの可能性を導き出す悦びは、クラシック級の特権だよ』

 

「(……可能性、か)」

 

 頭痛が次第に薄れていき、最後に残ったのは完全に回復した末脚だけだった。

 シャインは思考の中でタキオンの言葉を反芻し、目を瞑って精神を集中する。

 

 標識は200mを切る寸前、シャイニングランとシャインはほぼ並んでおり、ここで焦ったシャイニングが残ったスタミナを全て振り絞り、逃げ切るための微かなるスパートをかけ始める。

 

 シャイニングランが微かなスパートをかけ、2番手に上がったシャインは1バ身ほど離されている。そんな中でもシャインは精神を集中し続け、そして最後の最後、集中が終わった瞬間に目を開き、腹部に残った酸素を全て使い高らかに叫んだ。

 

 

「さぁ、可能性を導き出すよ!!」

 

 

 その声は観客席にいるタキオンにも聞こえていた。そしてその言葉を聞いたタキオンは、その赤く滾る瞳を輝かせ、腕を組んだ状態で下を向き笑い始めた。

 

「……クックックック、ああそうさシャイン君! 君の可能性はそんなものではない! 導き出せ! 君の可能性を!」

 

『200の標識を通過した! シャイニングランが先頭を走り続けているが、バ群を抜けて出てきたスターインシャイン! 速い! 速い! あっという間にシャイニングランを躱していく! そのままセーフティラインをじわじわ広げていく!』

 

 突然地面を抉るように踏み込んだと思ったら、シャインは既に加速し、先行集団の真ん中を抜けて先頭を走っていた。ここで普段からウマ娘の走りを注意深く見ている人なら分かることが一つあった。

 

「ふぅン、シャイン君の走りが私の走り方に似ているように見え…………いや……まるっきり同じじゃないか……!?」

 

「え? シャインの走り方が?」

 

 そう、シャインの走り方がアグネスタキオンの走り方と全く同じになっていた。当然シャインはアグネスタキオンのレースは見た事が無く、映像で見ていたとしてもカメラが遠すぎてあまりよく分からない。しかし今シャインが形成しているフォームは間違いなくアグネスタキオンの走り方であり、その証拠としてありもしない白衣の袖を握るような手の形をしている。

 

「そんな! なんで! なんでよ! スタミナはもうないはずでしょ! なんでなの!」

 

 経験したこともない景色。自らが逃げに逃げてスタミナを消費させたウマ娘が自分の前にいる光景は、シャイニングランにとって初めての体験だった。

 しかしシャイニングランもキグナスのウマ娘、冷静にシャインの事を躱そうと、自らの限界を超えて走り始める。

 

「私は負けるわけない! 今までだってそうだった! それが覆されるわけないもん!」

 

 半分泣きそうになりながらシャイニングランは走り続ける。しかしその情熱が余計にシャインの勝負根性を呼び覚ましてしまい、シャインはさらに加速した。

 

「奇跡は、起こすものだあああああああ!!」

 

『スターインシャイン離す! スターインシャイン離す! シャイニングランも必死に巻き返そうとするがどうだ!? しかし! シャイン! シャイン! 大丈夫ーッ!』

 

 シャイニングランは一手、いや三手遅かった。すでに100mすら切っている状況で加速したところで、最高速以上のスピードを出しているシャインを躱すことなどできるはずがなかった。

 

 すでにハイペースだったレースをさらにハイペースにし、そんな中で1と2分の1バ身も離した、まさに超光速と言わざるを得ないその走りで、スターインシャインがゴール板を真っ先に駆け抜けた。

 

「……負けたの……? 私が……?」

 

 地面に倒れ込み、シャイニングランは初めて体験する敗北の味を噛みしめていた。涙が溢れそうなほどに目を潤わせ、放心状態になっていた。これまでの人生で自分が負けることがなかった、負けるビジョンなどなかった。しかし今負けたのだ。その悔しさは、ウマ娘に潜在的に眠った負けず嫌いな魂が何倍にも乗算していく。

 レース後と言うのは感覚が鮮明になっており、遠くから静かにシャインが歩いてきたことにシャイニングが気付くのは容易だった。

 

「シャイン……お姉ちゃん……」

 

「見た、でしょ……私、シャイニングちゃんに勝った……。あなたに、誰も消させなかった……だから、さ……私を信じて。私に立ち向かうキグナスのウマ娘は、全員薙ぎ倒すって奇跡、見せてあげるからさ。別に、シャイニングちゃんに私と同じレースに出るなってわけじゃないよ、ただ一緒に……一緒に、楽しく走ろ? シャイニングちゃん」

 

「うっ……うえぇええ……シャインお姉ちゃん、ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

 レース前、ゲートインの際にシャインにあのような事を言った事を、内心後悔していたシャイニングラン。それでも優しく接してくれるシャインの優しさに、ついに感情が溢れて周りの目も気にせず泣き叫び、そして謝罪した。シャインへ反抗的な言葉を吐いたこと、負けると決めつけていたこと。シャイニング自身が悪いと思った事はすべて謝罪し、シャインはその謝罪を受け止める。シャイニングランに沸いていた悔しさは、ライバル心という良い方向へと割り振られた。

 

 散々スタミナを減らされ、苛立ってシャイニングに文句を言いたかったウマ娘もいただろう。だが二人の邪魔しようとするウマ娘は誰ひとりいなかった。観客はひたすら歓声をあげ、1着と2着のウマ娘を称えていた。

 

 

 

「やったわランス! シャインさんの勝ちよ!! シャインさんの!!」

 

「……スターインシャイン、どうやらお前の強さは本物みたいだ……私たちが敵う相手じゃなかったというわけだな……」

 

 皐月賞が始まる前、夢を託すという話をしていたノースとランス。この二人はシャインの勝つところを自らの目で見て、互いにそのように言葉を発した。シャインの事をすでにライバル兼友達と認めているノースは当然の事、忌み嫌っていたランスでさえ、シャインの勝利を喜んだ。口角を上に上げながら。

 

「そうか……そういう事か……」

 

「どうしたんだ? タキオンさん」

 

「シャイン君の想いの継承について……分かったかもしれない……」

 

「何!? 本当か!?」

 

 レースをおとなしく見ていたタキオンが突然口を開いてそのように切り出す。目線はゴールしたシャインから離さず、歓声の中でも聞こえるように橋田に話を続ける、ノースとランスも静かにその話を聞いていた。

 

「普通思いの継承と言うのは、1年の始まり、具体的には3から4月ごろに発現する現象だ。しかしシャイン君にはこの現象が起こらなかった。ここまでは知っているね? 君」

 

「ああ」

 

 まず最初に、想いの継承が何をもたらすのか。それをタキオンは丁寧に説明し始めた。それは1年間で距離適性が幅広くなったり、または局所的に適正レベルが上がる。いわば想いの継承とは、将来的に出てくる持続的な現象ということを橋田に説明する。

 

「ではシャイン君はなぜ想いの継承が発現しなかったのか。それは……」

 

「それは……?」

 

「シャイン君の想いの継承は、そう、恐らく()()()なんだ」

 

「一時的っていうことは、ど……どういうことだ?」

 

「スイッチはわからないが……シャイン君はレース中、特定のウマ娘の想いを急速に継承し、自らの走りや脚の特性に取り込む、その結果があの完全にコピーされた私の走り方というわけだ。これは私の仮説だが、特定のウマ娘が深く関わっているレースに出走した場合、もしその近くに特定のウマ娘がいれば、自動的にシャイン君の想いの継承は発現するのではないかと思う。あくまで仮説の域を出ないがね」

 

 タキオンの説明を受け、橋田は目を煌めかせる。今までシャインの短所かと思っていた想いの継承が発現しない体質。しかし今形は違えどシャインにも想いの継承が発現すると知り、橋田はこれからのシャインに心を躍らせていた。

 

「単純に考えて、短期的に他のウマ娘の力を取り込んだ際のステータスは2倍近くになる……その負荷に耐えるシャイン君の体も気になるが、一時的に発現する想いの継承というのは実に興味深い」

 

「一時的な、想いの継承か……!」

 

「ああ、面白い! 分からないことだらけというのは本当に興味をそそられる! 早速研究室に戻って実験だ!」

 

 

「バカな!! ワタシがトレーニングを施したんだぞ!? 何故勝てない!!」

 

 同時刻、シャインが皐月賞を勝った瞬間に、別の場所でも大きく話が動いていた。

 部屋にいるのはレース前にシャインが見つけていた金泉と、キグナスのトレーナーだ。

 

「……スターインシャインは少し面白い体質のようですね。しかしキグナスのサブトレーナーとして、どんな相手でも勝たなければならない。金泉トレーナー、あんたはキグナスの看板を汚した。失望しましたよ。今後信頼を得られるとは思わない事ですね」

 

「なんだと……!? ふざけるなよ、もともとはお前のスカウトしたウマ娘──」

 

 突然威圧するように壁を叩き、キグナスのトレーナーは金泉を睨む。その圧倒的な気迫に金泉は脂汗を流しながら黙ってしまう。

 

「見苦しいですね、多額の依頼金は振り込んだはずです、信頼が無くても生活は出来るんじゃないですか? ……そうですね、一つチャンスを上げます」

 

「なんだ……?」

 

「スターインシャイン、あのウマ娘はこのまま放っておけば間違いなく三冠を取る。私のチームキグナスをスポットライトの影にしてね。だからスターインシャインの三冠を阻止してください、リボルバーで」

 

 キグナスのトレーナーの発言に、金泉は何も答えずに関係者専用の観戦部屋を出ていく。残されたトレーナーは、何事もなかったかのように資料の整理を始めた。しかし数分経った後、突然資料を整理する手を止めて天井を仰ぐ。そして深いため息をした後にぽつりと一言だけ呟いた。

 

「……ドリーム、まだ待っててくれ」

 

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