持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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作者「んんんぱからいぶでいろいろ変わりましたねぇ。AIとはいえ三女神が出現してしまいましたか……今更どうしろと言うのか……。それはそれとしてジェット師匠実装おめでとう、ジャングルポケットおめでとう



いやちょっと待って前書き書いてたらいつの間にかアニメ発表されてるホワアアアア


……それはそれとして、どうやらセブンのロイヤルビタージュースは甘いらしいので、暇なときにツイッターの方で抹茶粉末ごりごりに入れた本物のロイヤルビタージュース創りたい

あ、一応言っておくとこの小説は別にメイクラではないですからね。G1にごりごり出走させますけどメイクラじゃないですからね。決して無理なトレーニングなどさせてないですからね。え?六十六話のトレーニングはどうなんだって?……知らん!」


第六十七話 二つの戦い 宝塚記念①

 

「マックライトニング、速水周作、プロミネンスサン、木村竜一、イーグルクロウ、アグネスタキオン。……そして橋田瑠璃、集まったわね……」

 

 いつもより重く苦しい空気が流れているスタ公のトレーナー室で、スロウムーンが着々と部屋にいる人物の名前を読み上げる。いよいよ迫ってきた宝塚記念、今日はその前日だ。

 

「大体事情は知ってるわね……。スターインシャインを奪還するために、私の方から作戦を提案させてもらったわ……」

 

 一通りメンバーの確認を終えると、スロウムーンは作戦について語り始めた。

 

「目標はスターインシャインをタルタロスに縛り付けているものの発見及び奪取よ……そのためにここにいる人に協力してもらうわ……」

 

 今更こんなことを悩んでも仕方がないが、スタ公の奴をタルタロスに縛り付けているもの、それが本当にあるかは定かではない。もしなかったらどうやってスタ公を助け出すべきなのだろうか。しかしまぁ、一度スロウムーンを信用すると約束してしまったのだからやるとこまでやるしかないだろう。

 

「まずイーグルちゃんに聞いて欲しい事、これがタルタロスのトレーナー室にある監視カメラの位置よ……目が見えないから書くの苦労したわこれ……ほぼ平面だから手の感触なんかで書き込み状況調べるしかないんだけれど、しっかりかけてるかしら……監視カメラの死角についてはアグネスタキオンさんが確実な数値で求めてくれたわよ……」

 

「冷たい言葉を投げかけるようだが、君がキグナスのウマ娘と言う以上あまり手伝いたくはなかったね……シャイン君を助け出す為と言われては仕方がないから求めたがね……」

 

 スロウムーンが机に紙を広げるとそこには、何度か指で擦った跡がある鉛筆の線で、タルタロスのトレーナー室の全貌に加えて監視カメラの位置や死角、潜入ルートについても詳しく書いてあった。よく数日間だけでこれほど調べたものだ。

 

「そしてプロミネンスサンは、イーグルちゃんについて行って護衛をお願いしたいわ。正直イーグルちゃんだけだとトレーナー室に誰かいた時に対応できない可能性があるわ……」

 

「う、うん。分かった……?」

 

 そう言ってスロウムーンはサンの野郎に指示を出した。続いてスロウムーンは、スマホを二台取り出した。その画面には二つの端末間でビデオ通話が行われており、どちらも机に置いてあるため常に天井を映し出している。

 

「イーグルちゃんと木村さんには、このスマホを使って原田の状況を確認して貰うわ。もし原田が何か、そうね……電話をしているような、不審な動きをしているようだったら、すぐに連絡をイーグルちゃんに送ってほしいの……。すぐにタルタロスのトレーナー室から撤退して貰うわ……」

 

「は、はい……?」

 

 スロウムーンはそう言い切って木村の野郎とイーグルの野郎にスマホを一台づつ渡す。

 

「そして最後に速水さん……あなたは……担当ウマ娘のレースを見たいでしょうから何もしなくていいわ。それだけよ」

 

「なんか俺だけ適当じゃない? ありがたいけど」

 

「……シャインさんを奪還する、というのはわかったのですが……スロウムーンさんはキグナスのウマ娘ですよね……なぜキグナスのウマ娘が私たちに協力を?」

 

 スロウムーンの野郎が作戦について大体話し終わった瞬間、木村が冷静に質問してきた。うん、まぁそうなるよな。他の奴らも反応イマイチだったもんな。

 

「それについてはこういう事情があって、実はこいつも意外といいやつっぽくて……」

 

 ほかの連中も疑問に思っているような顔をしていたので、スロウムーンの前を陣取って説明をした。

 

 正々堂々とレースをしたい事、スターインシャインを助け出したいこと、原田のやり方を止めたいこと。

 

 今一番したいのはスロウムーンを味方と思わせる事なので、全力でスロウムーンが良いやつと思えるように説明したつもりだ。

 

「ってなわけなんだよ。意外といいやつだろ?」

 

「……それで」

 

「ん?」

 

「それで……最後に裏切るつもりだったら?」

 

 あらかたスロウムーンの奴について説明を終えると、橋田の奴が口を開いた。今まで聞いたことのない橋田の声、スロウムーンに対する不安や怒りや恐怖が混じった声だった。

 

「おいコラ、スタ公を助けるには今のところこれしかねぇんだよ。信頼するしかねぇだろ。それに」

 

「もうこりごりなんだ! キグナスやタルタロスに振り回されるのは! 俺は俺自身のやり方を見つける。シャインは別の方法で取り戻せるはずだ!」

 

 橋田の野郎はそう言ってトレーナー室を出て行ってしまった。

 

「……困ったわね……橋田さんにはまたちょっとした話があったのだけれど……クライト、伝えてきてくれるかしら……?」

 

「……別にいいけどよ」

 

「他の人は外してもらえるかしら……? 本来は橋田さんにだけ伝えたいことなの……」

 

 

 

 流れていく景色、いつかの時にスタ公とレース場に向かったが、今は後部座席に座っているのは橋田の野郎だけ。一人だけ少ない車内だ。俺は()()開催される宝塚記念に出走するため、阪神レース場に向かっていた。

 

「それじゃあクライト、今日の宝塚について展開を話し合おうじゃないか」

 

「うるせぇ前見て運転しろ、今話し合う気分じゃねぇ」

 

「当たり強い……しゅんッ……」

 

 もしここで俺が話し合う気分だったら、運転しながら阪神レース場のコースを思い浮かべてレース展開について話しやがったのだろうか。脳味噌二つあるんじゃねぇのか。

 

 今日の宝塚、というトレ公から出た単語を聞いて再び今日が宝塚当日なのだという事実を実感する。

 

 スロウムーン、イーグルの野郎と何度も作戦の内容について話し合って、完璧に原田の野郎を欺ける作戦になったはずだ。それなのになぜだろうか、やたら落ち着かない。本当に成功するのか不安で仕方がない。

 

「おい、クライト」

 

「あ? なんだよぁっ……」

 

 名前を呼ばれたのでトレ公の方を振り向いたら、俺のほっぺにトレ公の左人差し指がふにっと刺さった。

 

「……何してんだよ」

 

「いや? ただ、ガラスの反射で見えるお前の顔がやたら不安そうだったからな。運転に集中できないったらありゃしない。お前は勝てるんだろ? 今更なに心配してんだ。シャインちゃんを救い出す作戦なら、俺たちに任せとけ。お前とスロウムーンは何も考えず、宝塚記念で存分に戦えばいい」

 

「……そんなこと言ってる暇があるなら、両手でハンドル掴んで運転しろよ、ヒゲ面」

 

「おいコラ、ヒゲ面て」

 

「悪いな、気遣わして」

 

「だ~から、今更なに心配してんだよ。宝塚終わったら、神戸牛でも食いに行くか」

 

 確かに不安が残ってはいるが、トレ公からもらった安心で何も感じなくなった。

 

「……橋田ぁ」

 

 ちょっとだけひげが生えてきたトレ公の顔をイジってから、車が出発して以来一言もしゃべっていない橋田に話しかけてみた。

 

「なんだクライト……」

 

「スロウムーンの奴からはよ、ジュニア期のスタ公みたいな情熱を感じたんだよ。だからよ、信頼してやってもいいんじゃないか? たしかにあいつはキグナスに忠誠を誓ってるようなウマ娘だ。でも、正々堂々と勝負したいって言う気持ちは本物だと思うんだよ。だから信頼してやってくれ」

 

「……」

 

 橋田の野郎から返事はなかったが、バックミラーで顔を見てみると椅子に座って俯いているようだった。

 

 

 

「さ、て……着いたな。俺たちの最初の試練かな」

 

 俺たちの最初の試練。確かにそうだろうな、この宝塚記念はキグナスや原田の野郎が育てたスロウムーンと俺の決着をつけるレースでもあり、原田の野郎の裏をかいてスタ公の奴を助け出す時間でもある。

 

 まだほっぺに残る左人差し指の感覚をつまみながら宝塚に向けた気合を装填する。まだ駐車場だというのにこのヒリつきようがたまらない

 

「にしても驚いたよな~、まさかゴミ拾いで俺たちの名前が少しだけ認知されて、ギリッギリ人気投票上位に滑り込むなんて。俺初めて聞いたよ、ゴミ拾いで宝塚記念出走」

 

「ホントにな、俺も驚いたぜ」

 

「なんで成功できない可能性もあったみたいな言い方なの?」

 

 今更俺のゴミ拾い作戦に驚いているトレ公を差し置いて、俺は阪神レース場の中に進んでいく。

 

「細かい作戦内容については覚えてるな? 木村の野郎とイーグルの野郎とサンの野郎が宝塚記念の発走直前にタルタロスのトレーナー室に潜入するはずだ。一番原田の気が宝塚記念の方に集中するだろうからな」

 

「おうともよ、俺らは特に何もする事が無いよな。強いて言うなら原田に作戦が感づかれない様に話すことか?」

 

「んだな。おら橋田もいくぞコラ~」

 

 俺が橋田の野郎を呼ぶと、後ろの方にいたはずの橋田から返事が返ってこなかった。不審に思って後ろを振り返ると橋田の野郎がいなかった。

 

「……まずくね?」

 

「ん? どしたクライ……まずくね?」

 

 今回の作戦、橋田の野郎も作戦の一部に関わっている。関わっているのだが、その役割が来るのはレースが始まってから。今動き出す必要はないのだ。阪神レース場の中に向かったわけでもないだろうし、今の橋田の野郎の態度から考えられるのは……。

 

「ウッソだろ信じらんねぇ! アイツ作戦から逃げやがった!!」

 

「おおお、落ち着けクライト。きっと、きっとまだ何とかなるはずだ。まずはあいつに連絡してみる!」

 

 すぐにトレ公は仕事用携帯を取り出して橋田の野郎に連絡を取っているが、顔を見るに全く出てこないようだ。しばらく電話を繰り返していたが、最終的にトレ公はパカパカ携帯を閉じて覚悟したような目でこちらを向いて喋り始めた。

 

「……しかたねぇ、お前の宝塚記念は間近で見たかったが、レース映像で我慢することにするよ。俺は全力で橋田を探してくる! レースが始まるまでの流れはわかってるから一人で行けるよな?」

 

「お、おい……マジで言ってんのか? いや、別にいいけどよ……」

 

 俺がキグナスのウマ娘と戦うところをトレ公にリアルタイムで見てもらいたかった、というのが俺の心境だが、それとスタ公のレース人生を重要性の天秤にかけたら後者が勝るだろう。悲しいがトレ公を見送るしかないだろう。

 俺は橋田の野郎を探しに走り出したトレ公を見つめながら思い切り声を出して叫んだ。

 

「行くからにはしっかり橋田の野郎を見つけてこいよ! コラァ!」

 

「はよ控室いかんかお前はぁ~!!」

 

 なんかやまびこみたいなものが帰ってきた。

 

 トレ公の奴を見送って阪神レース場。宝塚記念を見るべく集まった観客で埋まっているが、その中にスロウムーンの姿を見つけた。

 

「お~……怖……」

 

 今までスロウムーンの奴から感じたこともない覇気を感じる。いくら昨日まで味方として話していたウマ娘とはいえ、流石にレース前となるとシニア期の貫録を感じる。

 

「クラシック期のウマ娘が宝塚記念に勝った前例がないのもうなずけるな……あんな奴らがごろごろいるんだし……」

 

 あらためて宝塚記念というレースの重さについて振り返ろう。

 

 まず宝塚記念はウマ娘の中で行われる人気投票の上位10名に滑り込まなければならない。しかしこれは所謂優先出走権というもので、上位10名のウマ娘の一部が出走回避すれば、上位10名に入れなかったウマ娘でなくとも出走権が与えられるレースだ。

 

 しかし俺のようにクラシック期の時に宝塚記念で勝負するウマ娘はそうそういないだろう、勝てる確率が少なすぎるからな。

 

 なぜ勝てる確率が低いか。

 

 一つは前にも話したように、ダービーの直後に行われるレースと言う事で、調子が本調子じゃないまま挑むことになるからだ。

 そしてもう一つ、宝塚記念に出走できるのはクラシック期・シニア期のウマ娘、クラシック期とシニア期では経験が1年分違う。それくらい経験値の差があれば武器の熟練度も大幅に違うため、クラシック期のウマ娘をシニア期のウマ娘がひねりつぶすなど容易い事なのだ。

 

 ここ最近でクラシック期の時に宝塚に出走して掲示板に入ったウマ娘と言えば……ネオユニヴァースというウマ娘くらいか……。

 

 俺は今回の宝塚唯一のクラシック期ウマ娘。そのせいか人気もイマイチ低いし話題にもなっていないが、俺を人気上位10名になんとかぎりぎりすべり込ませてくれた商店街の人たちの為にも、ここまで育ててくれたトレ公の為にも、タルタロスに引き抜かれたスタ公の為にも、負けるわけにゃあいかねぇ。

 

 

「……!?」

 

 揺れた、今間違いなく揺れた。私の全身、骨、心臓が揺れた。この感覚は……。

 

 宝塚記念の最中に行われる二つの戦い。そのどちらもが私の思い描いた通りになるか脳内でイメージしていると、突然私の体に暴力的なオーラがぶつかってきた。

 

 何事かと思い私はすぐに空気のソナーを読み、誰が私の周りにいるのかを読み取ろうとした。しかし読み取る必要もないほど、それは強烈なオーラを醸し出していた。目の見えない私が何もせずともどこにいるか場所が正確にわかり、誰かも分かるほどの圧倒的なオーラを醸し出していた。

 

「(……いるわね、やっぱり近くに、クライトが……)」

 

 この感覚は賭けレースの最中に感じた武器と同じだ。キグナスに入り、数年間レース人生を生きてきて様々なウマ娘と出会ってきたが、まだレースが始まってもないのにここまでの圧を感じるなんて初めての事だった。

 

「ん、どうした? スロウムーン」

 

「いいえ……何でもありません……大丈夫です……」

 

 心配そうに私の事を呼ぶ原田トレーナーに言葉を返し、再び控室に歩き始める。

 

 珍しい、私がこんなにワクワクしているなんて。まだ見ぬ武器を持ったウマ娘に勝利する瞬間が待ち遠しくて仕方がない。本当にこの宝塚記念は面白くなりそうだわ。

 

 

 

「……今更キグナスを信頼しろと言われて、信頼できるかよ……」

 

 クライトと速水さんの後ろから急いで逃げてから数分が経ったころ。そろそろ追われても大丈夫な圏内だと思い、歩き始め、ぽつりとつぶやく。

 

「シャインを救い出す方法……方法方法方法!! クソッ……何があるって言うんだ……!」

 

 適当なところに座って頭を抱える。

 裏切られるのが怖い。あのスロウムーンと言うウマ娘を信頼できない俺も嫌だ。しかし信頼してしまって裏切られる俺も想像してしまって嫌だ。何もかも嫌なんだ。

 

「シャイン……」

 

 こんな時、いつも俺を照らしてくれたシャイン……。今となってはもういないけどな……。

 

 

 

「そろそろ動き出す頃か……?」

 

 黒いドレスを着て、ゲートの前でぶらぶら歩きながらそんなことを思う。

 

 もうすぐだ、もうすぐ一世一代の大勝負が始まる。

 

 スタ公を取り返すための作戦。プラス宝塚記念。ふと後ろから大きな存在を感じて振り向くとそこには。

 

「……へへっ。とんでもねぇ殺気、感じるぜ……スロウムーンよぉ」

 

「……変なものね……あなたと出会ってからまだ数日だというのに、あなたと戦いたい気持ちでいっぱいだわ……」

 

 俺達が感じてるこの熱い気持ちは、(私達が感じているこの闘争心は、)ウマ娘の本能からだろうか。(ウマ娘の本能からでしょう……。)

 

 それだけじゃないかもな。(でもそれだけじゃないわ……。) 俺たちはお互いを(私たちはお互いを)

ライバルとして、(ライバルとして、)見てるのかもな……。(認知してるのかもしれないわね……。)

 

……だからこそ

 

 だからこそ、どっちが上か、(だからこそ、どちらが上か)どっちが下か。(どちらが下か。)白黒つけようじゃねえか!!(白黒つけようじゃない!!)

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