持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話 作:りのちゃん
「改めまして、ようこそ私達のトレーナー室へ!」
「なんだ、小汚いかと思ったら結構整ってんじゃねぇカ」
「それはそれは本当に……最初の頃は汚かったんですよヴェノムさん……」
セントライト記念が終わり、とりあえず菊花賞まで一ヶ月くらいの休みが始まったので、私とトレーナーさんはヴェノムを迎えるミニパーティをしていた。と言っても、何も豪華な料理が出る訳でもない、子供だましのようなパーティだが。
「そういえば速水さん、竹内さんはあれからどうなったんです?」
「しっかり家まで送り返したさ。あの人、俺と別れる最後の最後まで笑顔だったぞ。……いいことしたじゃねぇか、橋田」
「俺もトレーナーなんで、担当との関係を断たれた時の気持ちがなんとなくわかったんです」
「そうか……」
一応この歓迎会パーティには、竹内トレーナーを探し出しだすことに貢献してくれた速水さんも参加している。私のトレーナーさんと速水さんは、ずっとトレーナー室の角で何かを話しているが、私はヴェノムとの会話があるので、あまり聞いていなかった。
「そうだヴェノム、私の想いの継承に対抗する技、教えてよ」
「誰が教えるカ、技はウマ娘の命だゾ」
先のセントライト記念。そこで私はヴェノムに破れたのだが、どうにもその理由……いや理由はわかりきっているのだが、ヴェノムの武器の正体がつかめない。
あの時、私はバ群を抜け出したばかりでヴェノムと距離のディスアドバンテージがあった。それにスパートもかけられていないからスピードも同じだ。
私がヴェノムを見てからバ群を抜けるまでの時間を考えると、多分私とヴェノムの距離差はあの時にして5バ身くらいだったはずだ。そしてのこり300mほどと考えると……想いの継承を使った私に勝つには小さな武器を一つ使うだけでよいのだ。
しかし小さな武器と言うのはいくらでもある。その中からヴェノムが使ったものをピタリと当てると言うのは、難しい。
「(でも、距離やスピードのアドバンテージが無かったら勝ててたかもしれないんだよなぁ。そう考えると、想いの継承も便利じゃないな)」
このセントライト記念で、想いの継承を使うまでの道中、そしてその立ち位置や状態によっては想いの継承を使っても勝てないと言う事が判明した。
これからは誰を継承するかという問題の他に、道中しっかりと立ちまわれるかの問題も課題になるだろう。
なにはともあれ、私とヴェノムは菊花賞への優先出走権を手に入れた。これでデルタリボルバーと確実にリベンジマッチを行えるようになったのだ。
「(あいつのあの時の走り方、アグネスタキオンの走り方にそっくりだっタ)」
セントライト記念の景色を思い出ス。そこで思い出されるのハ、やはり最終直線でのシャインの走り方。あの走り方は紛れもないアグネスタキオンの走法。あいつの想いの継承については薄々気づいていたガ、まさかあそこまで同じとハ。
あの時俺が打った作戦は、単純なものだっタ。
ストライド走法で走っただけダ。
あの時、トレーナーの声が聞こえた気がした次の瞬間、俺はシャインを抜かしていタ。そして背後から想いの継承を発現する気配がし、俺は無意識にストライド走法で走っていタ。
その時はなんでストライド走法にしたのかわからなかったガ、後から考えてみるとこれはあるウマ娘の走りによく似ていることが分かル。
マンハッタンカフェ。
アグネスタキオンのライバルであるアイツの走り方がストライド走法だったのを思い出ス。
俺に想いの継承の素質があるのかもしれないのかもと一瞬思ったが、あの時は決して想いの継承をしたと言う感じではなかっタ。
もしかしたら、想いの継承に対応するには、発現者が継承したウマ娘のライバルの走り方が一番効果的なのかもしれなイ。俺はあの時きっとそれを無意識に分かって実行したのだろウ。これからシャインと走ることになったら、実行してみてもいいかもしれないイ。
当然セントライト記念では距離やスピードの差もあっただろうガ、他のレースでも対抗手段として使えるだろウ。
「そろそろ失礼するよ」
「え~、もう行っちゃうんですか?」
「残念だけどなシャインちゃん……まぁクライトの神戸があるから。また今度サイダー奢ってくれよ橋田」
「はい、また」
俺たちが各々の会話をしていると、速水がトレーナー室を出て行っタ。残された俺たち二人と橋田は『一旦とりあえず……』というように、このトレーナー室で一番デカいソファに座っタ。
「まぁなんだ、今後のトレーニングについてだが……竹内トレーナーからはトレーニングメニューの参考表を貰っている。ヴェノムはそれをやりたければやってくれ。他のトレーニングがやりたければ俺に相談してくれ。シャインはまた個別でトレーニングメニューについて話し合おう」
「おっけ~!」
「分かっタ」
ソファに座ってすぐ、トレーナーが俺達の今後のトレーニングメニューについて話しだしタ。俺の前のトレーナーからトレーニングメニューを預かっていたのカ……変に忘れ形見みたいに残しやがっテ。
「……」
「どうしたの? トレーナーさん」
「いや、なんだかチームっぽくなったなって思って」
「確かニ、トレーナーはまだ新人だったカ?」
「そ、新人。まさかコネもなく新人がチームを受け持てるなんて夢にも思ってなかったさ」
俺はまだトレーナーと言う仕事についてから時間が経っていない。いわばまだ研修生みたいな立ち位置だ。それなのに担当ウマ娘を二人も持てるというのはなかなかに前例がないはずだ。
元々どこかのチームのサブトレーナーとして働いており、メイントレーナーがいなくなった時にそのチームを引き継ぐと言う形でならチームを受け持つこともあるが、俺のように全くチームを担当しておらず複数の担当を持つと言うのは珍しい。
以前は気軽にチームを組めるアオハル杯というものがあったようだが、今は経費の都合上開催停止しているようだ。
「橋……あぁいや、トレーナー」
「ん?」
「トレーナーってだいぶトレーナー歴短いよナ、トレーナーになる前に何の仕事をしてたんダ?」
「俺か?」
突然ヴェノムが俺にそのような事を聞いてきた。俺の前職について隠すつもりはないんだが……。うぅん……。
いや、別に恥ずかしい仕事と言うわけじゃないんだ、しかし……しかしなんだ、トレーナーと言う高収入な仕事に比べて差が凄いからあんまり言いたくない……。
「確かに~、私も聞いたことないかも。聞いたっけ……?」
「結構歳だよナ」
「歳って言うな」
「そんデ? 前は何やってたんだヨ」
「あ~……あぁ……もう、分かったよ。俺の前の仕事はただの建設業さ」
そう、俺の仕事は建設業。所謂土木と言う奴で、その業界でも下の下の企業で働いていた。
まともに勉強もしてこなかった俺は、そういう仕事に就くしか選択肢が無かったんだ。しかも人付き合いも苦手で、全然仲の良い人は出来なかった。仕事だって下手くそで、いつも怒られていた。どうせ全力でやっても怒られるのなら、適当にやってしまえといつも思い、よくサボっていた。
いくら土木でも、新卒ならきっと待遇も良いはず。そう考えて入社したところはただの地獄だった。
それでもこのトレーナーと言う仕事を目指したきっかけは、俺がいつものように建設作業を進め、休憩していた時に事務所のテレビで見たある一つのレースだった。
『トウカイテイオー、奇跡の復活!!』
そう、あの有馬記念だ。シャインと同じく、あの有馬記念を見たから、俺はこの仕事を目指した。
ゴール前、死に物狂いで走るトウカイテイオーの顔に、気迫に俺は感化されたのだ。
当然今まで何も勉強をしてこなかった俺に、トレーナーになると言うのは大きな壁になった。
うん、壁だった。
しかしトレーナー試験当日、俺は面接を何とか乗り切り、筆記試験も運で乗り切ったのだ。
鉛筆を転がすことによって。
「……で、少し働いた後に私に出会ったわけね」
「そういうことだ。いやぁあの時はマジですごかったよな、お前が出たレースを見てるトレーナー全員引っ張りだこ、そしてそれをすべて断るお前」
「『トレーナーからのオファーをすべて断るか……変わった奴だな』だっけ?」
「なんで覚えてんだよ」
「なんであの時ちょっと怪しい雰囲気出して口調が不審者だったの?」
「知らん」
「仲良いなお前ラ」
実を言うと、トレーナーを目指したのは有馬記念を見たからだけじゃない。俺と同じ企業に勤めていた社員の一人がトレセン学園のトレーナーに就職したから、『俺みたいな土木でもトレーナーになれる可能性がある』と希望を見出したからというのもある。そいつの事はトレセン学園に来てから見ていないが、元気にしているだろうか。あの企業で唯一何回か話した事のある社員だったからな。
「まぁ、おしゃべりはこの辺にして、まずはセントライト記念の疲れを癒すために寝るか」
「正気カ?」
「レースが終わって数日はいつもこんな感じだから気にしないで、期限迫ってきたらトレーニング始まるだろうから」
「そ、そうカ……なんか、面白いやつだナ」
「でしょ」
「桜花賞……負け。オークス……負け。ローズステークスも……負け。はぁ……」
「こんなきれいな景色が見えるところで、どうしたんですか? サン」
「いやぁ、今までツインサイクロンに負けたレースを振り返ってみてたの」
良い風が吹き、トレセン学園の周りに広がる街の景色が見える屋上。そこで私とトレーナーさんは秋華賞に向けての話し合いをしていたのだが、話に区切りがついたあたりで私は過去のレースを振り返った。
桜花賞では突然現れたツインサイクロンの風神に破れる。
オークスでは風神の正体を知り、もう一度破れる。
ローズSでは風神の怒りを買い、気絶する。
ツインサイクロンが現れてからというもの、私の戦績は全くふるっていない。
いくら落ち込まないようにしていると言っても、少しは焦るというものだ。
3連敗もしている相手に、今更秋華賞で勝てるだろうか。という不安は、ずっと前から私の中を泳いでいる。
「風神に勝つ方法が必要ですね……しかし……」
トレーナーさんだってわかってるはずだ。あの風神は私の事を完全にターゲットにした、もしツインサイクロンが負けそうになれば再び私の事を気絶させにかかるだろう。2レースも連続で気絶すれば世間は異変に気付くかもしれないが、これは物理的に証明しようがないものだ。私が何を言っても風神など信じてもらえないだろう。
脚に巻きつく風はどうにかして防ぐことができた、それでも首に巻きつく風がある。
首に巻きつく風を、どうやって防げばよいと言うのだ……?
どうやって……。
考えても負ける未来しか見えない。
『ダブルティアラを取ろうよ』
「ダブルティアラ……トリプルじゃなくて……ダブル……」
「……サン?」
「どうにかして勝とう、秋華賞までに、あの風神への対抗方法を見つけよう。見つけ出して、私だけの
「……えぇ、必ず。そのためにも、多くトレーニングをこなしましょう」
「よ~っし!! ここからはトレーニングの時間だぁぁぁぁぁ!!」
桜花賞の時の私ならここで再び落ち込んでいた。でもトレーナーさんにはもうみじめな姿を見せたくないって、見せないって決めたから。私のできる限りの武器を使って頑張ろう。
「こんにちは、サン」
「ん……? あっ、ノース! 久しぶり!!」
トレーニングを始めようとシューズの靴ひもを整えていたら、ノースがトレーナーさんと一緒にこちらへ歩いて声をかけてきた。しばらく見かけていなかったが、こうして話すことが出来て嬉しい。彼女達だって氷野トレーナーにとって目の上のたんこぶ、忌み嫌われるような状態なのに良く消されずにいてくれているものだ。
「ランスは?」
「風邪ひいて寝てるわ」
「……そう言えばもう9月かぁ、そろそろ本格的に冷えてくるね。といってもまだ風邪ひくような季節じゃないけど」
「ほんとね。まぁトレーニングで良く張り切ってるから……」
「森田さんも久しぶりですね。時間が経っても、ノースはうちのサンとよく遊んでくれるから助かってます」
「はは、まぁ……まぁ、ね」
それにしても、あのノースが話しかけてきたと言う事は何か理由があると言う事だと私は考えているが、本題はなんだろうか。
「……あなた、秋華賞のことで悩んでるでしょ」
「ギ、ギクッ」
「その効果音、口で言うんですね……サン……」
ある程度落ち着いてからノースにかけられた言葉は、ドンピシャで図星だった。
まさに先ほど私は秋華賞の事で悩んでいた、まさかそれをノースに言い当てられるとは思っていなかったため、私は思わず口で効果音を出してしまった。
「秋華賞まではまだある……。それまで、私が一緒にトレーニングしてあげるわ」
「ほんとに? いいの?」
「ウソついてどうするのよ」
私が秋華賞で悩んでいることを看破して何をするつもりなのかと思っていたが、ノースが提案してきたのは秋華賞までの共同トレーニングの事だった。
確かに、ノースは元キグナスのウマ娘と言うだけあって、競争ウマ娘としての能力はピカイチだ。秋華賞までは大体一カ月、それまでノースと一緒にトレーニングすれば、秋華賞までにツインサイクロンを倒す手掛かりが見つかるかもしれない。
「それに、あなたには恩があるしね。私を倒してくれた恩が」
「そ、そんなの恩にならないよぉ……」
「いいえ、あなたが私を倒してくれなければ、私はアルビレオに所属する未来を掴めなかった。あのままキグナスにいる未来よりかは、こっちの方が楽しいわよ。だからありがとう、サン」
「は、恥ずかしいからやめてぇぇぇぇぇ!!」
「……校舎に向かって走って行きましたね」
「……相変わらずなのね、サン」
「いや、はは……はは……」
「ようトレ公、なんだかデコにシワ増えてんじゃねぇか」
「……」
「急に『メシ行くか』なんて言って、こんな高そうな店連れてきやがってよ」
「……」
「どうしたんだ、なんか悩みでもあるのか?」
俺の問いかけに対して、トレ公は全く反応してくれなかった。深刻な顔をしているばかりで、ご飯も進んでいないようだった。
心配だ、地方時代から俺の面倒を見てくれたトレ公が、いつも笑顔を絶やさなかったトレ公が今、笑顔を消している。
トレ公だって一人の人間、何か悩みがあるのかと思って聞いてはいるが……。今日中に答えてくれるだろうか。
そう思う俺の考えは、杞憂だった。しばらく問いかけ続けていると、トレ公からは答えが返ってきた。
「セントライト記念が終わり、次はお前の神戸新聞杯だ。神戸新聞杯が終われば、次は秋華賞、菊花賞のシーズン。一年が終わろうとし始める時期だ。その時期になれば忙しくてこうやってご飯を食べる時間も減るだろうからな。とりあえず連れてきたかっただけだ」
「だからって無難にこんな高そうな店にしなくても、いつもみたいな隠れた名店探しすればいいじゃねぇか」
「いや、隠れた名店探しは外れた時のリスクも大きい、今回は無難に選ばせてくれ」
「そ、そうか……」
意外にもトレ公が心配しているのは、俺が満足に休息を取れるかどうかの心配だった。話し終わったらトレ公はいつもの余裕な顔に戻ってご飯を食べ始めた。食べている最中の顔を見ても特に違和感はない……。何か重大な事で悩んでいるのかと思ったが、違ったようだ。
「それで? デルタリボルバーに勝つ方法はあるのか? スタ公を倒した相手だぞ」
「正直なところ、思いついていない」
トレ公の表情が元に戻ったところで、俺も俺で聞きたいことを切り出した。もう少しで俺の神戸新聞杯が開催される。しかしそこに出走してくるデルタリボルバーは、ダービーでスタ公を倒した相手。そう簡単には倒せない。きっとトレ公が何かしらの武器を思いついているだろうと思い聞いてみたが、やはりトレ公でも思いつかないようだ。
「しかし……相手はスタミナ勝負を仕掛けてくる。そこでひとつ、もしかしたらある武器が使えるかもしれない」
「ある武器?」
「『スタミナイーター』……」
「スタミナイーター? たしかあれって長距離でゆっくり仕掛ける武器だろ? 神戸新聞杯は2400m。確かに長い方だが長距離とまではいかないぜ?」
スタミナイーター。
レース中盤まで後方で押さえ、強烈なプレッシャーで前方にいるウマ娘全てのスタミナを削り取る武器だ、以前メジロブライトというレジェンドから聞いたことがある。恐らくそれの事だろう。
しかしメジロブライトは長距離で使える武器と話していた。神戸新聞杯で使える武器じゃないはずだ。
「たとえ距離が足りなくとも、きっと効果はあるはずだ。使って損はない。それにしたって、デルタリボルバーのスタミナは異常だ。すべて削り切れるか分からない……」
「そんな武器使わなくたって、限界まで追い込めばきっと領域が……」
「そんな不確定なものに頼るくらいなら、俺は普通の武器を使った方が良いと考えている。領域なんかに頼りすぎるんじゃないぞ」
「な……」
何気なく言われたトレ公の発言、俺はそれにひどくショックを受けた。トレ公が今まで俺の提案を却下する事はあったが、否定することはなかった。それが今、俺の領域と言う武器を否定している。
「第一、領域が発動したからと言って、必ずしも勝てると言う確信が持てないだろう。お前だって宝塚記念で何が起きているのかわからなかっただろう」
「意識が研ぎ澄まされて……脚が軽くなって……視界も広がって……」
「単純に身体能力が引き伸ばされただけじゃ、デルタリボルバーに必ず勝てるとは思えない。いいか、絶対に神戸新聞杯では領域を使うなよ」
どうしてだ、だって、俺だって。
頭が混乱している。領域に目覚めた宝塚記念以来、トレ公に領域について何か言われることはなかった。それなのになぜ急に、こんな、領域を全面否定するような。俺が目覚められた強い武器なのに、そりゃたしかに発動するまでに追い込む必要があるが、それでも発動すれば強いはずだ。
「……言いすぎた、すまん」
「お……おう……」
少しだけ、悲しかった。トレ公に否定されたのが。
もしかしたら涙も出ていたかもしれない。一応出ていたとしてもトレ公にばれないようにしたが、まぁ、ばれてるだろ。
結局その話が終わってからは普通に最近の話をして時間を過ごした。ご飯も美味しかったが、正直味がしなかった。
店を出てからも、私……俺の気持ちは落ち着かなかった。
「……今日は色々すまん。神戸新聞杯、気張るぞ」
「……おう」
俺たちは、黙って寮へと帰った。
「速水トレーナー。君の担当ウマ娘、マックライトニングについてだが……」
「なんでしょう? 生徒会長直々にお呼び出しなんて、2回目くらいですかね?」
クライトが宝塚記念に勝利し、嬉しい気持ちの中で俺は生徒会長シンボリルドルフに呼び出された。ついつい俺はおちゃらけたような口調になってしまったが、ルドルフの表情は深刻そのもので、どうやら真面目に聞かなくてはならないようだった。
「マックライトニングが宝塚記念の最終直線で使っていたあの武器……君が教えたのか?」
「いや……クライトがぶっつけ本番で思いついた、というか発現した武器みたいですね。調べたら領域とかいうやつみたいです」
「……やはり領域に似ているようだな」
「……?」
俺が質問に答えると、ルドルフは再び表情を曇らせた。まるで『言うか言うまいか』という表情だな。
「言ってくれて構いませんよ。なんでも受け止めるつもりです」
俺がそう言うと、ルドルフは気持ちを読まれたことに驚いた表情を浮かべた。そしてしばらく下を向いて深呼吸したのちに、俺に発言した。
「マックライトニング……彼女が発現したのは、領域じゃない」
「領域じゃない?」
「彼女が目覚めたのは……彼女だけが持つ特殊な武器。そしてそれは……」
「それは……」
「使うたびに、彼女の脚を蝕んでいくだろう」
「使うたびに……脚を……?」
大したことないだろうと考えていた俺の思いは、あっという間に打ち砕かれた。