持ち前の末脚を使って重賞レースを全て総なめしてやりたいウマ娘の話   作:りのちゃん

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第八話 未勝利戦を終えて

 

『シャインだ! シャインだ!! シャインだ!!! スターインシャインが前に抜け出したぁ!! スターインシャイン今圧勝でゴールイン!! 次元が違った!! 彼女の脚は次元が違った!!!! 一度沈んでからの復活劇、お見事としか言えない走りだった!!!』

 

 レース途中の妨害行為や、シャインのオーバートレーニング症候群などにより、荒れに荒れた未勝利戦は、

 スターインシャインが勝利を掴み取った。

 

「やったわね……シャインちゃん……」

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!! シャインがデビューだぁぁぁ!! 見たかよ木村さん!! 速水さん!!」

 

「すげぇ走りだぜ全く……スタ公」

 

「やっとシャインがデビューですね!! 橋田さん!!」

 

 序盤のブロックや激しいコーナリング、道中のタックル、そして終盤に起きた脚の痛みなどがあったが、最後の最後、私がもともと持ち合わせていた根性で最後はイーグルクロウを差し切ることができた。

 

「はぁっ……はぁっ……うっ……オエッ……か、勝ったぁ……!!」

 

 ゴール板を超えたのを何回も確認して、とりあえず私が一番にゴールできたのを確信した、あとは電光掲示板に着順が出て、確定さえしてくれれば私のデビューだ。

 

「(い……痛い……!? さっきシャインさんも足が痛んでいるようだったけど、私までその痛みが……!?)」

 

 先ほど、ゴール板を駆け抜けるコンマ数秒前、急に感じた脚への痛みによって、私はスターインシャインさんに並ぶ速度を継続して出すことが出来なくなり、結局スターインシャインさんを抜くことも出来ず、先にゴールされてしまった。

 

「早く……早く私もゴールしなきゃ……せめて入着しないと……早く……」

 

 だけどまだ諦められない、ある程度の着順になれば未勝利戦でも多少は賞金が出る。この未勝利戦で負けてしまった以上、デビューできる確率はさらに薄くなってしまったが、それである程度は母親に仕送りが出来るかもしれない、私が競争ウマ娘として稼げなくなる前に母親に少しは楽をしてもらえるかもしれない。そう思った矢先、ズゴッと言う鈍い音が私の足元から聞こえ、急に視界が揺らぐ。

 

「えっ?」

 

 私は芝に、ただの芝に引っかかって体勢を崩したのだ。

 まずい、この方向だとゴール板に直撃してしまう。ウマ娘の最高速度は世間一般的に60や70キロと言われている、そのことを加味した場合、プレオープンの私の速度は大体40、50キロと言ったところだろう。そんな速度でゴール板のような硬いものにぶつかったらどうなる?車の交通事故などでは、たとえ車体の固い壁に守られていても死傷者が出ることがある。それでは今の私はどうか、私を守る壁もなければ減速だってできるような状態じゃない、確実に大けがは免れない。もしかしたら死ぬこともあり得る、この速度だから助かるわけがない。

 

 あぁ、私結局、何も残せなかった。結局母親に何もしてあげられなかった。ちっさな頃から母親に助けられながら生きて来たのに、メイクデビューにも勝てず、自分の父親と同じ、事故で亡くなるのか、私。

 

 

 

「っっ!! あぶないっ!!」

 

 

 

 突然鹿毛のウマ娘が私の前に飛び出してきた。誰だと思いその顔を見ると、既に私より先にゴールしていたスターインシャインさんが私の目の前に出てきていた、私をかばう形で。なぜ? なぜ私の前に? この速度でこけたウマ娘がぶつかってきたら、あなたも無事じゃなくなるのに。

 

 あなたの脚は限界のはずなのに、もう数メートルでさえも動けないはずなのに、なんで私の前に……

 

 結局、私がぶつかるまでスターインシャインさんは絶対に退かなかった。全身に鋭い痛みが走り、クッションのようになったスターインシャインさんも一緒に吹き飛ぶ。

 

『なっ……なんと事故です! 6番イーグルクロウがゴール板間近でよろけてしまい、スターインシャインに直撃……いや、かばったのか!? し、しかしコース上にはあまりはみ出てない為、他のウマ娘達は無事にゴールイン!!』

 

「な……なんで……? 怪我しちゃったら、デビュー後に大変じゃん……」

 

「……あなたが怪我をしたら、未勝利戦の期間が終わってしまうから、私はまだ時間がある、けど、未勝利戦のシーズンは待ってくれない、だから庇った」

 

「そんな……そんな理由で……?」

 

 スターインシャインさんは、いとも簡単に、何も気にしていないような顔でそう言い切った。

 

「まだ諦めちゃダメだよ、諦めなければ、勝てるよ。 だってあなた、1着の私より速く走れてたじゃん……!」

 

 そういってスターインシャインさんは笑顔で微笑む、その言葉を受けて、このレースで私が行った悪行に対する罪悪感が襲ってくる。

 

 ……私は、この人をレース中妨害するなんて、なんてひどいことをしたのだろう

 

『お知らせします、6番 イーグルクロウは、事故発生の為、失格とし、その他の着順に、影響はありません、掲示板に表示されている着順で、確定いたします』

 

 

         Ⅰ 8       

             >6

         Ⅱ 4

             >クビ

         Ⅲ 1

             >2/1

         Ⅳ 5

             >1

         Ⅴ 12

 

 

 こうして、私たちの未勝利戦は終わった、見事私がデビューした形で。

 サンもクライトも、もちろんトレーナーさん、木村さん速水さんも喜んでくれた。

 

「いでぇぇぇぇぇぇぇ……いっでぇぇよぉぉぉ……」

 

 レースが終わった後、私はもう歩けない状態になってしまったので、サンやクライトに運ばれながら医療班から応急処置を受け、ウイニングライブの時間が来るまで控室の床に布を引いてダウンしていた。

 

「派手にぶつかったからな、お前今日怪我しかしてねぇじゃん」

 

 そういってトレーナーさんが椅子に座ってからかう様に笑う。確かに私は今日は怪我しかしてない気がするので、いっそ振り返ってみることにした。

 

「えっと……タックルでしょ……疲労でしょ……そしてゴール後のあれでしょ……もう私ボロボロよ……」

 

「まぁ勝てたし良いだろ……よくやったな、シャイン」

 

「当り前~ってね、いで……」

 

 その通りである、私は見事未勝利戦に勝利し、デビューを果たした。未勝利戦に勝った今、怪我してようが関係ない。私は私の全力を出して、かつ勝てたのだ、何も言う事はない、満足である。

 

「ほれ、ここマッサージしてやる」

 

「~~~~」

 

 突然トレーナーさんがぶつかったところをもみほぐしてくるので痛みから私は声にならない声を上げた。そんなことをやいのやいのとやっていると、突然私の控室のドアが開いた。控室に入ってきたのはイーグルクロウだった。あの衝突事故の後、イーグルクロウの方も少し怪我をしたようだが特に大きなけがじゃないようでよかった。

 

「あの……スターインシャインさん……今日は本当に申し訳ありませんでした……」

 

 イーグルクロウは申し訳なさそうに私に謝罪した。私は別にそんなことを言われるとは微塵も思っていなかったので少しだけ困惑する。

 

「い……いいよ別に、気にしないでよ、あなたも今回の敗北で諦めないで、次の未勝利戦でデビューしよう、待ってる人がいるんだよね」

 

 とりあえず何かしら反応しないとイーグルちゃんも不安になるかと思ったし、私も別に気にしていなかったので言葉をひねり出した。

 

「でも……怪我が……」

 

「だ~から気にしなくていいよ、私意外と頑丈だし」

 

 それでもイーグルちゃんは納得していない様子だったが、その後も説得を続けて勢いで推し切ることができた。最終的にはイーグルちゃんの顔に笑顔が戻っていたので、きっと大丈夫だろう。

 

「そうそう、こいつ体だけは頑丈だから」

 

「トレーナー、復活したら覚えておいてね」

 

 トレーナーが横から余計な事を言ってきたが、とりあえずトレーナーは後で蹴るとして、イーグルちゃんを私は帰そうとドアの方へ誘導してあげた。すると部屋を出る直前、イーグルちゃんが私の方に向きなおしてかわいらしい顔で。

 

「あの……私のこと覚えておいてください! 必ず……必ずデビューして、お礼を言いに行きます!! だからそれまで覚えておいてください!!!」

 

「言われなくても、私はそうするつもりだったよ、イーグルちゃん」

 

 特に何も考えずに私の本心を伝えたら、イーグルちゃんは少し驚いた顔をした後、自分自身の目が思わず閉じるほど表情筋を上げた笑顔で返事をして、楽屋から退出していった。

 あ”~、可愛かった。

 

『さぁ、間もなくウイニングライブです。今回は見事な逆転劇を見せつけてくれましたスターインシャイン、前回のメイクデビューを乗り越えて、何とかデビュー出来ました』

『そうですね、今回見せた彼女の特殊な走り方でどれほど重賞を勝ち進むのか楽しみで仕方ありません』

 

 イーグルちゃんが帰って間もなく、楽屋についている放送機器からウイニングライブの時間までのトークが始まった。ぶっちゃけ私の方は体がぼろぼろなのでウイニングライブなんて行きたくないのだが……そういうわけにもいかないだろう。

 

「……私たちもそろそろみたいだね、行こっか」

 

「あぁ、しっかり踊ってこい」

 

「……やっぱりいでぇ」

 

 私は全身から危険信号が出てくる体を無理やり起こし、ウイニングライブのステージへ向かった。

 ……あまりダンスの練習はしなかったのだが大丈夫だろうか。

 

 

『勝利をつかんだウマ娘が歌う場所、ウイニングライブ、今回の楽曲は『Make debut!』です』

 

 少々ぎこちない動きながらも、ある程度形になってはいるので大丈夫だろう。強いて言うなら体の節々が痛んでもはやそれどころじゃない事だ。

 

 ……少しは痛みに慣れてきたところで、私はメイクデビュー、そして未勝利戦の事を振り返る。観客席の方を見ると、私の知り合いがみんな見に来てくれている、私はいろんな人のおかげでデビューすることができたんだと改めて感じた。

 

「シャイィィィン!! 愛してるよぉぉぉ!!」

 

 私に勝ちたいと言う意志をむき出しにし、私に越えるべき試練を与えてくれた親友。

 

「テンションあがりすぎてなんだかすごいことになってますよ、サン」

 

 その親友に秘められた強さを極限まで引き出してくれたトレーナー。

 

「こっちむいて~~~!! シャインちゃぁ~ん!!」

 

 私のトレーナーに担当を持つことを手ほどきしてくれ、アドバイスをかけてくれていた人。

 

「トレ公うるせぇ!! 周りの目がこっちに向いてんだろうが!! 静かに見ろ!!」

 

 不器用ながらも、影で私の事を治療してくれたり、私自身の技を見つけられるように支えてくれた人。

 

「……ふふっ」

 

「この曲を歌ったのが懐かしいですね、スズカさん」

 

 私に目標を与え、私を応援してくれて、大切な事を気づかせてくれた人。

 

 そして……

 

「シャイン……グスッ……シャイーーーン!!!」

 

「オメーもか!! 黙って見ろよ!!」

 

 みんなが各々の好きなように私の晴れ姿を見てくれていた。私のトレーナーさんに関しては涙まで流していて、おかしくなって思わず目元が熱くなる。

 

「(ふっ……涙まで流しちゃって、バ鹿みたいじゃん)」

 

 私の事を信じてくれて、私をこの勝利の場まで導いてくれた人、私の大事なトレーナーさん。

 きっと今私も涙を流しているのだろう、顔を伝う一筋の熱さが物語っている。

 

 ふと横の方を見ると、その横では、イーグルちゃんがウイニングライブを見に来てくれていた。私も初めて知ったことなのだが、失格になるとバックダンサーの立ち位置もないため踊らないようである。

 

「(必ず勝ちあがって……私と同じように、這い上がってこれる脚がイーグルちゃんにはあるんだから!)」

 

 イーグルはただ、私の方を見て力強くうなずいた。私はイーグルちゃんが3回目の未勝利戦にて立ち上がることができると確信し、自分のライブへ意識を戻した。

 

 サンやクライトに続いて、私もこれから駆け抜けていくんだ、自分だけの道を・

 誰にも越えられない記録を作るために!! 目指すは重賞超制覇だ!!

 

 

 

「ふむ……」

 

 レース終盤で彼女が見せた根性、圧倒的に無茶な走り方。

 それにレース途中ブロックやタックルもされていたのにそれでもなお一着でゴールする粘り強さ。

 

「やはり、君たちとはいつかぶつかることになるだろうね……」

 

 観客席の後ろの方にぽつんと一人だけ、キングスクラウンがシャインのウイニングライブを見ていた。シャインに何かの才能、そして運命を感じていたキングスは、メイクデビューで敗北したシャインがこの未勝利戦で這い上がることができるのか、見に来ていた。

 

「ターフで出会うその時を楽しみにしているよ、スターインシャイン、プロミネンスサン、マックライトニング」

 

 私はウイニングライブのステージに背を向けて暗闇を進む、その暗闇の中である考え事をする。

 

 もちろんあの三人組のことだ。私は今まで敗北を考えることはなかったが、彼女らなら、もしかしたらキグナスを打ち破るほどに成長するかもしれない。

 

 コツコツとキングスの靴の音だけが鳴り響く観客席への通路で、キングスは急に立ち止まり、一言だけ小さく呟く。

 

「他の11人が負けようが、最後に残った私が必ず勝つがね……」

 

 希望の新星、スターインシャイン プロミネンスサン マックライトニング

 

 君たちは必ず、この私、キングスクラウンが倒そうじゃないか。

 

勝つぞ!!メイクデビュー編 完

 




めちゃくちゃ徹夜したので、7000文字越えれなかった…お許しください
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