ヘスティアの灯火   作:ダンブルドア同好会会長

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第十話 どうか、月が綺麗ですねと

 

「ヘスティア、君もなにかマトモな趣味を作るべきだ」

 

遂に五年生に上がったらしい彼らは、天文台の一番上で駄弁っていた。

昼頃だと言うのにヘスティアはこの屋上で望遠鏡のピントを合わせている。ギルデロイはその横の日陰になった壁に背をもたれさせながら、手の中の羊皮紙に何やら文章を書いているようだった。時折鼻歌が出たり足でリズムをとったりしているあたり機嫌が随分いいらしい。目下の草原はさわさわと瑞々しく揺れ、吹き抜けになった柱の間から涼しい風が吹く。絶好の日和と言っても差支えは無かった。

 

「昼頃の星図を精密に描け」という宿題を出された彼らは、無理難題な課題に(主にヘスティアが)四苦八苦しながら取り組んでいるのであった。因みにサボっているように見えるギルデロイはヘスティアに付き合わされているため妥当っちゃ妥当だったりする。

今年から普通魔法レベル―――通称“OWL”が導入されることもあって、ヘスティアは燃えていた。去年卒業してくれやがったヘスティアの最大の敵、バーテミウス・クラウチ・ジュニアとかいういけ好かないスリザリン生が、五年生の時にホグワーツ史上4回目の12個のO優を取っていたらしいとヘスティアの耳に入ったからである。

というかアイツ、マグル学取ったのか。

ホグワーツのOWLでは最大12単位しか取れないことになっている。つまり、それはバーティが全ての科目を網羅したということであって。

思想的にアウトにならなかったのか?とヘスティアは疑問に思っていた。

まあバーティならシレッと猫被って満点を取りそうだ。

 

「アイツの打ち立てた記録を塗り替えて、抹殺するのよ。ホグワーツに名前を残すなんて許さないわ」

 

名を残すのはこの私よ。

ヘスティアは死地に行くような恐ろしい形相で、その日の夕食に出たチキンを噛みちぎった。いつの日かのグリンゴッツで健気に微笑んでいた少女は何処。

その時ギルデロイはテスト関係ではヘスティアに逆らわないようにしようと心に決めた。何も言わず着いて行くことである程度の成績が保証されたも同然だったからである。閑話休題。

 

「趣味ならあるわ」

 

ヘスティアは眉を顰めて言った。床に座り込んでいるギルデロイを一瞥して、またレンズへと目を移す。丁度木星が見え始めたところだった。

 

「黒魔術に傾倒し始めたって事ならマトモじゃないならパスだよ?」

「…他にもあるわよ」

「ダンブルドアの専門に手を出し始めたって言うのも無しね」

「ならどうしろって言うのよ。内容は健全よ」

「理由が不純すぎる」

 

ギルデロイはため息をついた。

 

「例えば、ほら、バンドを好きになるとか」

「貴方が自分の梟に“カブト虫”とか付けなかったら興味を持ててたかもしれないわね」

「好きなんだから仕方ないだろ」

「あんなクソダサいキノコヘッドの何処がいいわけ?」

「貴様は僕を怒らせた」

「ええ、怒って結構よ。マグルの流行は理解出来ないわ」

 

理解したくもないし。

涼しい風がぶわりと吹いた。ヘスティアのローブがはためく。ギルデロイの金色の前髪が優雅に揺れて、やっぱりキノコ化を止めて良かった、とヘスティアは過去の自分を褒め称えた。

 

「私、好きになるならダンブルドア先生で十分よ」

「それが依存を進めているとまだお分かりでない?ライトな好きで留めていればもう少し楽だったろうに」

「まあ、そうでしょうね」

 

ヘスティアは次の惑星に目を移し始めた。酷く退屈そうなその様子に気を悪くすることも無く、ギルデロイは言葉を続ける。

 

「ヘスティア、いい加減諦めるべきだよ。可能性なんてないだろ?目を覚ませよ。今の君なんてダンブルドアからしたら周りをうろちょろしてくるガキでしかないんだ」

「年齢なんて…たったこの差よ」

 

ヘスティアは人差し指を1本立てて、不満げに言った。

 

「そうだね、1世紀差だね」

 

ギルデロイは呆れ気味に返した。

 

「友よ、君はもう気が触れている。手遅れだ。だがね、残念なことに君は僕の親友でもある。つまり何が言いたいかというと、いつまでもこんな不毛な恋をしているんだったら、この先僕があの手この手でぎゃあぎゃあお節介を焼くことになる。それでもいいの?」

「それは嫌」

「だろう?考えてもみてよ、明らかに今の君の精神は正常じゃない。きっと憧れや親愛と恋愛感情がすり変わっているんだ。ギルデロイ・ファンクラブの子たちみたいなものさ。彼女たちはみんな口を揃えて僕と付き合いたいだの言ってるけど、それは僕がとても優秀で尊敬に値する人間だからで、誰も僕の性格なんて気にしてないんだ」

「貴方自分で言ってて悲しくないの?」

 

去年恋愛二十五連敗だったギルデロイの言う言葉は重さが違う。

今も祭り上げられている彼だが、彼が二十一人目の彼女と付き合い始めたあたりで、ホグワーツの生徒たちはギルデロイの性質について薄々勘づいていた。

アイツ、恋愛にはことごとく向いていないんだ。

そんな噂をまことしやかに囁かれていることを知ったギルデロイは枕を涙で濡らしたとかなんとか。

おいたわしやギルデロイ、年の終わり辺りにはもう彼女を作ることをやめていた。ギルデロイ・ファンクラブの子たちも、彼に恋愛的なアタックをすることをやめていた。幻想は幻想のままにしておかねば。変に親しみを持ってはだめなのだ。

 

「確かに、私のダンブルドア先生への好きはある意味神聖化しているかもしれないわね。そもそも好きになったきっかけが一目惚れだし」

「“アレ”に!?!?」

 

駄目だ、ヘスティアはもう既に戻れない位置にまで来てしまっていたんだ。根本からおかしかったんだ。嗚呼、間抜けなギルデロイ。なんで気が付かなかったんだ!!!

ギルデロイは頭をぐしゃぐしゃと掻きむしった。

 

「成程ね、君にそんな性癖があったとは…ごめん…配慮も出来ず…」

「違うわよ、ダンブルドア先生のとっても魅力的な若い頃の―――勿論今も魅力的だけど―――写真を見て好きになったの。馬鹿みたいでしょ?でも、その時の私、どうかしてたの。丁度『薔薇の城』を読んだ時で―――分かるでしょ、半純血の女の子と偉大な魔法使いの寓話よ。五歳の私にとってはとってもロマンチックに感じたの」

「で、恋に落ちちゃったと。確かに偉大な魔法使いっていう括りならダンブルドアの右に出る者は居ないだろうね…まあそれにしたって年上好きには変わらないけど」

「会ったこともないのに恋焦がれたわ。写真の中の彼は背広だったから、幼い女の癖にスーツなんて父に強請って。偶に離れまで訪ねてお爺様に先生の英雄話ばかり聞いてたり」

「まあ、女の子がスーツを着ることぐらいはいいと思うけど。それにしてもそんなに重症だったなんて」

 

ギルデロイは困ったように眉を下げて項を摩った。彼の癖だ。ヘスティアを長いこと“改心”させようとしてきた彼だったが、そりゃあ簡単には揺れないわけだ。年季が違う。

ヘスティアも肩を竦める。何も悪びれていないあたり、彼女にとって後悔はないようだった。

彼女は強者主義者であり、能力の高い者を好む傾向にある。幼い頃に歴史上有数の魔法使いを知ってしまったのがよろしくなかった。

 

「多分最初は憧憬だったかもしれない…でも、いつの間にか別の感情に変わっていたわ。それが恋なのかも、はたまた別のなにかなのかも分からない。私、ずっと先生しか見てこなかったから。でもね、それでいいと私は思うの。例えどんな感情だったとしてもそれを私が“恋”って認識して、膨大な愛を注げているんだから」

「後悔はない?」

 

しみじみと言ったヘスティアに、ギルデロイは聞いた。

ないわ、と彼女も即答で答える。

その瞬間ぶわりと涼やかな風が吹き抜け、彼女のローブをはためかせた。高い高い天文台の塔の一番上で彼らは話す。何も邪魔をすることがない薄蒼の空に黒いローブがただ一つあって、晩夏が感じられる様だった。

もうすぐ秋が来る。

ヘスティアは爽やかな心地に目を閉じ深く深呼吸したあと、また望遠鏡に目を移した。

大分星図は出来上がってきていて、残すは空に大きく在る星、月のみであった。

 

「あのね、私、ダンブルドア先生がとっても好きみたい」

 

ギルデロイは何も言わなかった。

ヘスティアは顔に薄らと笑みを浮かべている。とても不気味で健全で、美しい笑顔だった。

 

「先生の専門分野を学んでいるとね、もの凄く彼に近づける様な気がするの。なんて言ったらいいか分からないけれど…先生の見ている世界ってこんなに素晴らしいものなのかと、時々驚嘆することがあるわ。誰にも考えつかないような事をやってのけるの。流石、世界一の魔法使いよね…」

 

穏やかにヘスティアは言った。

こんな純然たる狂気があって良いのだろうか。ギルデロイは考える。

もしかしたら、これが愛なのかもしれない。狂気こそ愛。相手の為になんでも…命までも投げ出してしまえるような感情。

確かに、愛は狂気だ。

 

「私、先生の為なら死んでもいいわ」

 

雲の影に丁度かかったヘスティアの顔は四年前から随分成長していた。

 

「死ぬなら僕の後にしてくれないかな」

 

こんな華奢な体にこんな大きな狂気を隠し持っているなんてね。ギルデロイは謎に感心すると共に、自分がこの先こんな敷居の高い恋をするのは難しそうだ、とため息をついた。

 

◇◇◇◇

 

「全く、あなた方は何度目ですか!一年前問題児たちがゴッソリ卒業してからは大人しかったでしょう!」

 

深夜、午後十二時を回った頃。

冷たい空気の漂う変身術の教室で、ヘスティアとギルデロイはガウンを来た寝起きバッチリのマクゴナガル(と、一応寮監であるフリットウィック)に怒られていた。

 

「マクゴナガル先生でもジェームズ達のことを問題児って言っちゃうんですね、やっぱり」

「お黙りなさい、ミス・フォーリー。そもそもあなた方はレイブンクローの監督生です。寮生の手本となる行動を心掛けなければならないのです!いつまでも遊んでばかり居られないのですよ」

「しかしねマクゴナガル先生、私たち、今回も学年一位でしたよ」

 

気取ったようにギルデロイが言った。

ツートップ、と言いたげにヘスティアは謎のドヤ顔で自分たちを交互に指さした。

 

「屁理屈はお辞めなさい!」

 

ピシャリとマクゴナガルが言った。額には青筋が浮かんでいる。

 

「深夜に水中人の観察?どう考えても危ないでしょう!植物の手入れをしていたスプラウト先生が気付いたからいいものの、あのまま湖の奥深くまで潜っていたら戻って来れませんでしたよ!あなた方には危機感が欠落していると言っても過言ではありません!」

「でも、」

「でももヘチマもありません!レイブンクローは四十点減点です!」

「そんなに少なくていいんですか?」

「“一人”四十点です!」

「でも、二年前禁じられた森でドラゴン爆竹を五十個爆発させたジェームズとシリウスは二人で六十点でしたよ」

「彼らは反省をしていました。“反省したフリ”をしていました。あなた方も少しは悪びれる素振りぐらいはしなさい!さもなければその胸元のバッジを取りなさい!」

 

マクゴナガルは顔を真っ赤にして怒った。定期的に問題児が現れるホグワーツで罰則担当を主に受け持つ彼女の心労は計り知れない。先程から一言も口を挟んでこないフリットウィックは呆れて声も出せないようだった。と言うより、コイツらの奇行に慣れているというか、諦めている節がある。

 

「罰則を課します。勿論課しますとも―――そんな顔をしてもダメです、ミスター・ロックハート。そうですね、今日は禁じられた森の巡回があったはずです。ハグリッドの元に行ってそれを手伝いなさい」

「ハグリッドのお手伝いですか?」

「嫌ならアーガスとやりますか?」

「いえ、お心遣い結構です」

「禁じられた森で少しは危機感というものを学ぶといいでしょう。多くは期待していませんが。もし巡回がなかったら、明日の朝私に伝えに来なさい。サボっては駄目ですよ」

「サボるなんてそんな!品行方正な私たちがするわけが無いではありませんか!」

「ミスター・ロックハート、もしこれ以上減点をされたくないのであれば、今すぐそのお喋りな口を固く閉じてここから出ていきなさい。ミス・フォーリーもそうです」

 

そう言われると、二人の問題児はそのまますごすごと部屋から去っていった。深夜に叩き起されたマクゴナガルの機嫌をこれ以上損ねるのは野暮だと悟ったのか、最後に失礼します、という小声付きで。

二人が去ったあと、マクゴナガルは深い溜息を吐いた。

 

「生き生きとしてましたね」

 

若干遠い目をしていたフリットウィックが呟いた。彼の表情はどことなく嬉しさを孕んでいる。ウフッと少しばかりの笑いが髭の向こうから漏れて、マクゴナガルに睨まれた。

 

「彼ら、一年生の頃から真面目な顔をして奇行をするのが得意でしたけれど、最近そういうのはめっきり減ってしまって。去年なんか常に気を張って城内を見渡していましたからね。無理をしているんじゃないかと心配していたんです」

「甘やかしてはダメですよフィリウス。彼らの校則破りが無くなって寂しがるなど…」

「それはそうなんですがね」

 

クスクスとフリットウィックは笑った。最早笑っていることを隠しもしなくなっていた。

 

「彼らは大丈夫でしょう。将来きっと立派な大人になるはずです。あなたもそう思っているのでは?ミネルバ」

「まあ、そうですが…」

「甘えているのですよ、きっと。彼らは学校でも頼られる位置にいますから…偶にはこういうことをしてルールの外側に出てみたいのでしょう。彼らが減らした80点だって、彼らなら一年で熨斗をつけて返しますよ」

「かもしれませんが…それでは他のレイブンクロー生の頑張りが報われないではありませんか。点をとっているのは何も彼らだけじゃ無いんですよ。彼らもそれは分かっているはずです」

「確かに、前からその部分は彼らも一応配慮していましたね。フォーリーとロックハートは、何か校則を破るにしても余っ程点が引かれそうな時は隠れてやっていましたから…。今回は大きく引かれることは分かっていたでしょう。何か思惑があるとしか思えませんな。そもそも水中人の観察がメインではないのかもしれません」

「…それにしては、湖に入る準備が嫌に万端ではありませんでしたか?」

 

それを聞いてフリットウィックは押し黙った。先日、『水中人と話すには―マーミッシュ語―』という本を、ヘスティアが馬鹿真面目に読んでいたのを見かけていたのである。

 

 

 

 

「あー、減ってる減ってる。学期始まりだからレイブンクローに溜まってるやつゼロになっちゃったよ。どうする?このままだと僕たちレイブンクロー生全員にシメられることになるけど」

「黙ってれば分からないわ。それに私たち最近大人しくしてたし、勘づく人間も少ないはずよ。それに、三年前から…三回?連続でレイブンクローが寮杯を取ってるし、圧勝なんてつまらないじゃない」

「それにしてもマクゴナガル先生の怒った顔は傑作だったね。久しぶりに見たよ」

「実家に帰ったような安心感があったわね。やっぱり年一で叱られるべきよ」

 

寮の点数が分かる大きな砂時計の前で、ヘスティア達は平然と話し合っていた。

彼ら、授業中や普段の行いから優等生で教師に従順だと思われやすいのだが、別にそんなことは無い。というか、彼らを優等生だと言うのは本当の優等生に失礼である。教師の間では完全に悪童認識なのだ。一般の生徒の前ではそんな顔を出していないだけで。

悪戯仕掛人よりタチが悪いとまで言われるまでに至る。先人たちの失敗を学んでいるからかもしれない。

 

スリザリン気質で、時たまなんでレイブンクローに居るのか不思議がられるヘスティアと、そんなネジの外れているヤツと気が合う、どうでもいい事に対しては妙に頭の回転が早いギルデロイ。二人が合わさって話し合うことといえば、大抵ろくな事じゃなかった。

休日にホグワーツ近くの山で狩ってきた兎の肉や山菜でBBQをやろうとしたり、レンズを十八枚重ねた超・望遠鏡を作ったり、大イカに餌付けして腰に触手を巻かれたまま黒い湖の遊覧をしたり。しかもそれをシレッとなんでもないような顔をしてやっている。“悪戯が成功したような顔”では無いのだ。

 

何故コイツらが監督生に選ばれたのか。一重に、フリットウィックのお気に入りだったからである。あと、「勿論ヘスティアさんとギルデロイ君が監督生ですよね?」というギルデロイ・ガールズからの目線が痛かったからというのも少しある。

大イカでバナナボートみたいに湖を滑っている姿を見たら少しは見解を変えるだろうか。

それとも、近所で捕ったネズミを嬉々としてペットの猛獣に与えている姿を見たら?

 

ヘスティアとギルデロイはスキップをしながら坂を下っていた。目指すはハグリッドの森番小屋である。

 

「ハグリッドー?」

 

ドンドン、とギルデロイは小屋の扉を叩いた。不躾な来訪だったが、分厚い扉なのでこれぐらいしないとあちら側に聞こえないのだ。

罰則で巡回にお供することになりましたー!と、ギルデロイは叫んだ。しかし待ち受けるは静寂のみである。ヘスティアとギルデロイは顔を見合わせた。

 

「もしかしたら、もう巡回に行ってしまったんじゃない?」

「後日出直すのは面倒臭いな」

「追い掛けてみる?多分行ったにしてもまだ遠くに行っては無いはずよ」

 

そんなことを彼らが話していると、小屋の奥の方からドンガラガッシャーンというベタな効果音が聞こえてきた。どうやらあちらさんの足取りがおぼついていないらしい。ファイアウイスキーをがぶ飲みでもしたんだろうか。それだったら弱みを握った上で口止めして罰則サボるんだけど。ヘスティアは考えた。

 

「お前さんたち…またやったのか…」

 

バァン!!と思い切り扉が開いた。若干の土埃が舞い、風圧で彼らのローブはバサバサとはためいた。多分扉の開閉圏内にいたらただじゃ済まなかったろう。危機一髪ギルデロイの目と鼻の先を扉が掠めた後、二人は文句を言おうと顔を巨人の高さまで傾ける。なんならこれに文句をつけて罰則を(以下略)

しかしハグリッドの様子を見た彼らは絶句した。ハグリッドは顔を真っ赤にして、フラフラとしていたのだ。目は熱湯に浮いたように空を漂わせており、額からは尋常ではない汗が流れている。ヘスティアとギルデロイはドン引きである。

 

「あの…これはなんというか…」

「飲み過ぎ?」

「違うわい!」

 

音量バーの調節をミスったハグリッドの声がヘスティアたちの耳にビリビリと響いた。闇夜の静寂を切り裂きすぎて向こうの塔まで聞こえていそうである。レイブンクローの寮室の明かりがつかない事を祈りながら、二人はハグリッドと対峙していた。頭をゆらゆら揺らしながらハグリッドは言葉を紡ぐ。

 

「多分…何か変なものにあたったんだ…今朝から気分が悪い」

「本当に大丈夫?マダム・ポンフリー呼んできましょうか?」

「イヤ、いい。寝たら明日にゃ…治っちょる。今日の巡回は無しだ…」

「僕たち、伝染らない病気なら看病しようか?」

「これ以上悪化させんでくれ」

 

うう、と呻きながらそう言い終わるや否や、コイツらに押しかけられるのはゴメンだとハグリッドは扉を物凄い勢いで閉めた。暴風で二人のローブがバタバタとはためく。よく見ると若干木製の扉が欠けていた。発熱すると力加減が馬鹿になるらしい。ヘスティアとギルデロイが耳を澄ませると、向こうの方でベッドに倒れ込むような音が聞こえた。軽い地響きのようだった。

 

「一応…大丈夫なのかな?」

「本当に大丈夫かしら」

「やっぱりマダム・ポンフリー呼んでくる?」

「そうじゃないわ。私が心配しているのはそっちじゃないの」

「はい?」

「あのハグリッドをあそこまで苦しめるものがこのイギリスに存在するって言うの?」

 

ヘスティアは訝しむように呟いた。

一時の静寂。ギルデロイとヘスティアはお互いの顔を見て、青い顔をもっと青ざめさせた。

 

「ハグリッド!!!まさか魔法省規制にかかる様なカラフルなキノコなんて持ち込んでないだろうね!?」

「ピフトーイも駄目よ!前欲しいって言ってたけど、ノクターン横丁とか怪しいパブで買ってないでしょうね!?先月魔法省の危険魔法生物輸入規制リストの猛毒部類に載ったのよ!!!」

「付き添うから一緒に自首しに行こう!きっとヘスティアのお父さんが出来る限りの便宜を計ってくれる!!!」

 

二人は扉をドンドンと勢いよく叩いた。完全に病人の家に対してする行為ではないが、ハグリッドには前科がある。ヘスティアたちが知る限り前科四犯だ。

 

一頻りやっていると、彼らが叩いている扉に向こうの方からとんでもない勢いで何か鉄製のものが投げつけられた音がした。ズゴン、と木製の扉がしてはいけない音をして、その鉄製の何かは床にガン、と落ちた。音を聞いた限り2キロはあるなにかだろう。この扉が分厚くて良かった、とヘスティアとギルデロイは肩を竦めて扉を叩くのを辞めた。ハグリッドは煩い音が消えたからか、大きないびきをかいているのが聞こえる。うるせえ黙れ、という意思表示だったようだ。

 

「注意の仕方が野蛮だね。これだからハグリッドは…」

「自分は一ミリも悪くないっていうあなたのスタンス、嫌いじゃないわ」

 

では悪い事をやっているという自覚ありでドンドン叩いていたヘスティアは何。

 

「どうする?このままじゃ出直さなきゃダメそうだけど」

「でも巡回しないっていうのはいけないんじゃない?」

 

ヘスティアはニヤリと笑った。ギルデロイもニヤリと笑う。

ここにセブルス・スネイプでも居れば、“悪魔のような醜悪な笑み”と形容することだろう。そして今から彼らのする愚行をネチネチ文句を言って止めようとするだろう。

しかし残念でした、セブルス・スネイプはいません。

 

「ヤッパリホグワーツの安全を守るために重要な事だからね、巡回っていうのは」

「今夜愚かな生徒が禁じられた森に入っていって、一ヶ月後骨になって見つかるのは本意じゃないわ」

 

君たちが今その愚行を犯そうとしていて、一ヶ月後骨になって見つかるかもしれないのですが。

なんて、そんな野暮なツッコミをする人間はこの場にはいない。完全にヘスティアとギルデロイの独壇場である。

 

「一応杖腕は両方空いてた方がいいわね。ランプは?」

「ここにある。他になにか必要かな?」

「猟銃も持ってみたいけれど、中にあるから無理ね」

 

結局ろくな事にならない。一種の才能なのではないだろうか。この現場をマクゴナガルが目撃したらどうなるか見ものである。

ヘスティアは杖を振ってランプに灯りをともした。チキチキ・禁じられた森肝試しの始まりである。

 

「行くわよ」

「何処まで?」

「危険を感じたら引き返しましょう」

 

ヘスティアは首をポキポキと鳴らした。占い学が優秀なせいか、はたまたその原因か、彼女はサンダーバードの尾羽が芯の杖を持つ者らしく、危険を察知することに長けていた。第六感と言うべきか、危険な時はビリビリと背筋が震えて鳥肌が立つのだ。五割ぐらいの確率で。

特に超自然的な危機には強いので、完全に二人は舐めプをしていた。

 

サクサクと彼らは森の中を進んでいく。時折パキッと木の枝を踏んで少し驚くことはあれど、十分も経てば二人も慣れてきていた。白にさえ見える霧が森一面を薄らと覆っている。不気味な雰囲気だった。普通の女の子ならぶっ倒れてしまいそうな空気である。

 

「あんまり怖くなくない?」

 

コイツは論外だ。

 

「普通、こういうところに来たレディは怖がるもんだけどね」

「多分あなたが居るから怖くないのよ。お供にしては頼りないけど」

「ならあえて二手に別れてみる?」

「それこそ洒落にならないわよ。二人ともお陀仏だわ」

 

恐怖心がやっと顔を出したのか、ヘスティアは若干ギルデロイに近付いた。二人とも恐怖心がバグっているようにズンズンと奥まで進んでいる。時々ゴールデンレトリバーぐらいの蜘蛛がガサゴソ出てくることがあったが、ヘスティアが燃やしたりギルデロイが爆発四散させていたため特に問題はなかった。

 

「私、蜘蛛って本当に嫌いだわ。ギョロリとした目、毛むくじゃらな脚…何考えてるか分からないし」

「完全に同意だね」

 

危険察知能力とは。

 

「そういえばこの森ってどれぐらい広いんだろうね」

「さあ。端まで行けたら面白いわね」

「地図でも作る?」

「禁じられた森の?頭おかしいんじゃないの?」

「でも、完成したら偉業だよね」

「そうね。確かに。今回出来そうか下調べしておきましょ」

 

因みに、読者諸君はここで、おまいら帰り道わかんのか?と思われたと思う。

大丈夫だ、問題ない。ギルデロイが七年生で習う道標の呪文を習得済みだ。

やはり持つべきは呪文学が得意な友人である。

 

ギルデロイが懐から金の懐中時計を出した。カッコよかったから買った馬鹿高い時計である。その時計は、二人が既に森に入って二十分経ったことを示していた。

その時だった。

 

「そこの子供たち」

 

不意に後ろから声を掛けられて、ヘスティアとギルデロイは瞬時に杖をそちらに向けた。木の影から人…イヤ、それより大きい。

人と馬の混合種とも言うべき、ケンタウルスがそこには立っていた。ヘスティア達は急いで向けていた杖を下げる。

 

「ごめんなさい。杖を向けてしまって」

「全く、屈辱さ…まあいい、この森で警戒するのは賢い判断だ。例え杖を向けられたとしても、寛大な心で許そう。ここでは決して杖を仕舞わぬことを心に留めておきなさい」

「ありがとうございます」

「それにしても、こんな時間にここの領域まで生徒が来るのは感心しないな。ハグリッドは?」

「原因不明の熱でダウンしてます」

「では、ここには君たちふたりで?」

「はい、そうです」

 

ふむ、とケンタウルスは険しい顔をした。

 

「もう少しでケンタウルスの集落のテリトリーに入る。うちには魔法使いが侵入することを歓迎しない者が多いから、引き返しなさい」

「ケンタウルスの集落、ですか」

「そうだ。偶に魔法使いを許容する物好きもいるがな…凡そ皆魔法使いとは相容れない」

「では、貴方は…「イオエルだ」…イオエルさんは、物好きの部類なんですか?」

「イヤ、違う」

「じゃあいやいや、警告をする為に来てくれたんですね」

「そういう訳でも無い。魔法使いのことはどうでもいいんだ、私は。何も思っていないというのが正しいのかもしれない」

 

気高い茶髪を胸元まで伸ばした彼は、フン、と息を吐いた。逞しい胸板を見る限りケンタウルスの中でも強そうだ。恐らく集落を警護している若者の一人なのだろう。

 

「なんで集落をこんな奥地に?光を浴びたくなりませんか?」

 

ヘスティアは聞いた。どうやら世間話をしたいらしい、と気がついたイオエルは溜息を吐く。普通ならここら辺で逃げ足で去って行くのだが、彼らはここ二十分の間で恐怖心がバグってしまっているらしかった。

 

「テリトリーを守る為だ」

「何からです?」

「君たちに教える必要があるのか?」

 

イオエルは二人をギロリと睨んだ。

 

「いえ、でも、一つ気になることがありまして。ここの森、蜘蛛多すぎないですか?」

 

しかも、ゴールデンレトリバーぐらいのやつが。

遂に問題の核心をついた彼女の発言に、イオエルは若干固まった。

 

「信じたくないんですけど、よく見るとアクロマンチュラに似てるなって」

「……」

「まさかね。勘違いですよね。魔法生物飼育学がいくら得意な私とはいえ、見間違いですよね」

「……」

「なんとか言ってください」

 

微妙な顔で瞼を閉じて黙りこくるイオエルにヘスティアとギルデロイは遠い目をして聞いた。

 

「その蜘蛛、突然住み着いたりしませんでした?」

「…そうだな」

「嫌に図体がデカい男が放したりしませんでした?」

「…そうだな」

「よし。ハグリッドを絞めてこよう。丁度弱体化している事だし」

「待ちなさい」

 

意気揚々と一歩踏み出した彼らは、イオエルから静止を貰った。思わぬ所で二の足を踏み、彼らはイオエルを見上げる。

 

「このままでいいんですか?」

「いや、よくはない。が…あの忌々しい奴らは既に勢力が絶大だ。君たちが来る時に見た奴らも氷山の一角だろう。ハグリッドがアイツらの長…アラゴグに掛け合っているおかげで私たちのテリトリーは守られている」

「長っていうことは、その群れのマザーですね」

「いや、雄らしい。マザーはモサグという。そちらは人間を食べないことを不満に思っているらしいがな…。兎に角、奴らは何百匹にも膨れ上がっている。生態系にも多大なる影響を及ぼしているんだ…私たちが治めているのは禁じられた森の半分。これでも随分と前線は後退した。君たちが奴らのテリトリーに入っていたら、四方八方から狙われる羽目になっていただろう」

 

ヘスティアとギルデロイは幸運なことに、ケンタウルスとアクロマンチュラのテリトリーの境の上をビッタビタに歩いてきたのだ。もし彼らのコロニーに突撃隣の晩御飯していたら、彼らが晩御飯になったこと間違いなしである。

 

「私たちはこの森の奥から出ることは出来ない。出たが最後、アクロマンチュラどもが覇権を握ってしまう。あとは我々はこの地を追われてしまうだけだ」

「それは酷いですね。やっぱりハグリッドを「辞めなさい。いや、うーん」

 

少しあちらも考え始めてきた。やはり考え直してみるとハグリッドは戦犯すぎるのだろう。

ヘスティアとギルデロイは顎に手を当てて考え始めた。

 

「アクロマンチュラ数百匹ですか…よくそこまで力をつけましたね。まあどこぞの髭モジャが庇ったのでしょうが。多分完全に駆除するには、マザーを叩き潰してから次のマザーが現れる前に全匹殺すしかないですね。私たちだけじゃ無理ですね」

 

三人とも頭を抱えた。おい、近所の森に危険生物とかいう範囲で収まらないぐらいの人喰い蜘蛛のコロニーがあるぞ。大丈夫かホグワーツ。

 

「集落の皆さんはそれでいいんですか」

「良くはないだろうな。しかし、変に刺激して襲われたら一溜りもない。魔法族に貸しを作りたくない者も多いし…」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう。あんなコロニー、絶対いつか獲物が足りなくなって照準を見定めてきますよ」

「それが自然界の理かもしれんな…そうなれば、私たちはここから出ていかねばならなくなる」

「あのねえ、無礼を承知で言うわよ。結局自然界の理なんてエゴでしかないの。自分が殺されそうになったらどんな手を使ってでも相手を絶滅させる勢いで行かなきゃ」

 

段々敬語が崩れてきたヘスティアは諭すように言った。

 

「多分そんなメンタルでいるのはヘスティア以外に滅多にいないと思う」

「でも、そういうことでしょう?私、正直蜘蛛嫌いなのであなた達に加担するわ。あっちが命乞いをしようと知ったこっちゃない。どうせどんな地に移動させても厄災になるんだから、一思いに殺してあげた方が優しさというもの。弱肉強食とはこういう事を言うのよ」

「なんで君は私たち以上に文明に生きているのに考え方は脳筋なんだ?」

「この子はそういう子なんです」

 

強者こそ正義。生き残ったものこそ強者。やはり力は全てを解決する。

 

「でも、やっぱり災厄になるのかならないのかなんて人間が決めるべきじゃないと思うよ、僕は。尺度が違うんだから。アクロマンチュラが栄えることで、救われる生物もいるかもしれない」

「…うーん、哲学的ね、なんか」

「要は人それぞれ信念は違うんだ。以下に自身の信念を曲げずにいられるかってことが大事なんだと思うよ。で、イオエルさんたちの信念は?」

「ゑ」

 

急に振られたイオエルはびっくりしてどもった。

そもそもこんな通りがかりみたいなホグワーツ生が生物の盛衰についてここまで討論するとは思わなかったわけで。実はこのケンタウルスの集落の長である彼なのだが、その事は口に出さず話を聞いていた。

 

「さあ…しかし私はこの集落を守るという義務と責任がある」

「じゃあ、もう贅沢は言っていられないんじゃなくて?」

「そこまで覚悟決まってるなら、どうにかしないと」

「一応魔法省管轄でもあるホグワーツ魔法学校の近くにアクロマンチュラなんていたら何も言わなくても魔法省が動くわ。原因調査が始まるかもしれないけど、どうせ放されたのは数十年前なんでしょう?ハグリッドがシラを切れば大丈夫よ」

「外来種が在来種を脅かすのは良くないしね。しかし僕らはハグリッドに恨まれるぞ」

「ハグリッドにとっては愛おしい…愛おしい何ものかではあるものね。まさか友人なんて言わないわよね?」

 

イオエルは思案した。ここに来るまで、数人のケンタウルスが離れたところから見ていたが、どうやら彼らは蜘蛛を倒すことには長けているらしい。実際容赦なく蜘蛛を爆発四散させていた。ここは恥を捨てて頼み込むべきなのだろうか。

ケンタウルスとしての矜恃と、群れを守るべき長としての意思が戦っていた。

 

「別に私たちに頼まなくてもいいわ」

 

ヘスティアが悩ましげなイオエルに言った。

 

「この森にアクロマンチュラが居ることで、貴重な純血の血が襲われてしまうかもしれないもの。そうなれば魔法界にとって不利益だわ。あなた達に言われなくても、私たちは勝手にやるわよ」

「ただ、ハグリッドに上手く丸め込まれるかもしれないという事は覚悟していてくれよ。僕達が本来関わらなくていい事だからね」

「了解した…感謝する」

「良いのよ。私達も安全にここに立ち入りたいし」

「あわよくば遊び場にしたいし」

「一応知り合いに魔法生物関連に詳しい方がいるわ。こっちの方でも調べてみるから、私たちがこの森に入ってきたら弓矢で撃ってこないでね」

「君たちを親愛なる訪問者として丁重に扱うことを約束しよう。…お帰りだ!」

 

イオエルは声を張り上げた。付近の木々から次々とケンタウルスが現れる。その数ざっと十ぐらいだろうか。皆弓矢を持ち、険しい顔をしている。つまり、ヘスティア達が何か少しでもおかしい挙動をしていたら殺されていた訳だ。アクロマンチュラより話が通じる分マシか?

禁じられた森には立ち入るな、というホグワーツの校則は割と正しかったのだと二人の問題児は思った。欲を言えば、「魔法族に敵意を持ったケンタウルスの集落と人間を肉としてみているアクロマンチュラのコロニーがあるので立ち入るな」と懇切丁寧に言って欲しかったところだ。

 

「森の入口まで見送れ」

 

イオエルは周りのケンタウルス達に命令を出した。ギルデロイはなにかに勘づいたように目を細める。

 

「もしかして、あなた様がケンタウルスの長?」

「先程からの御無礼、大変失礼しました」

 

二人は目線は外さぬまま勢いよく頭を下げた。変わり身はええな。ギルデロイもヘスティアもまた大きなものには一応巻かれておくタイプであった。間違った事であればどんな奴にも噛みつきはするが。ホグワーツで尖った性格の角が少し取れたと言っても過言ではない。

丁度彼らの頭はイオエルが前脚で蹴るにフィットする高さになっている。これが彼らとしての最大の謝罪なのだろう、とイオエルは少し微笑んだ。

 

「いや、そんなに畏まらなくても良い。今日はもう帰りなさい。ケンタウルスが守るだろう」

 

ヘスティアとギルデロイは言われるままに方向転換してケンタウルスの輪の中に入っていった。

 

「また来ることを、心待ちにしている」

 

背中にそんな言葉を受けながら。

月明かりも届かない禁じられた森の中で、二人は家路に着く。

途中途中でアラゴグの指示を無視したゴールデンレトリバーぐらいの蜘蛛が襲ってくることはあったが、最早過剰戦力とばかりに皆がボコボコにしていた。なんなら途中から誰が一番早く蜘蛛を見つけられるかということに精を出し始めていた。

 

ヘスティア達はレイブンクローの暖かいベッドの中に帰るべく、森を抜けて、城へと坂を登る。一回ずつハグリッドの小屋の扉を思い切り蹴ったあとで。多分彼は気付いてもいないだろう。大きないびきが小屋の外まで聞こえていたから。

 

「なんでこう、私たちの学校生活って波瀾万丈なんでしょうね」

 

ヘスティアは動く階段の手すりに寄りかかりながら言った。

 

「でも、波瀾万丈じゃなきゃ面白くないよね」

 

ギルデロイはニヤッと笑って言った。




ダンブルドア豆知識その10
シチュエーションボイスがない
は????????????????????
この前、ハグリッドのシチュエーションボイスがYouTube上で投稿されているのを見ました。どう考えてもダンブルドアの方が需要あるだろうがいい加減にしろ。なんでダンブルドアは二次創作が少ない?何故?10000件ぐらいヒットしろよpixivこの野郎。

P.S. 没ネタ
ギルデロイとヘスティアはある違和感に気が付いた。何か…とても、嫌な予感がする。二人はどちらからともなく立ち止まった。

「何か、音がしない?」
「布擦れみたいな…いや、違う…」

二人はお互いの顔を見た。そしてヒュッと息を飲んだ。
相手の背後に、大きな蜘蛛が、上から糸を垂らして鋏を構えている。
ギラギラとした赤い目と、ジャキジャキと鳴る鋏、身の毛もよだつ太い毛むくじゃらの脚。
二人の顔は真っ青になった。真っ青も通り越して白くなっていた。
そして二人は相手の反応から、気が付いてしまったのだ。自分の背後にも“いる”と。
蜘蛛が段々と近付いてくる。二人は恐怖で固まってしまい、動けない。
近付いて来る、近付いて来る、近付いて来る…

その鋏が相手の喉をかっ切ろうとした時、二人は目にも止まらぬ速さで杖を抜いた。

「インセンディオ!」
「インペディメンタ!」

その瞬間、その二匹の蜘蛛は吹っ飛んだ。片方は脂ぎった脚を大炎上させ、もう片方は完全にノックアウトされている。
ヘスティアとギルデロイはアドレナリンによる興奮で息を大きく吸って、落ち着いていられないようだった。

「君、危機察知能力はどうした?」
「見事に五十パーセントを外したみたい」

周りを見ると、一方の遠くの方からガサゴソと、地平線を覆い隠すように蜘蛛の群れが二人に向かわんとしていた。

「逃げる?」
「考えてる」

ヘスティアとギルデロイは取り敢えずその群れの反対方向に全力疾走で逃げていた。足元が木の根などでボコボコとして足取りが覚束なかったが、そんなことは言っていられなかった。
目の前に待ち構える蜘蛛をギルデロイは爆発魔法を唱えて塵にする。ヘスティアの灰色の脳細胞はこの後どうするべきか考えているようだった。

「ギルデロイ」
「何!」
「恐らくアイツらはアクロマンチュラよ。バジリスク持ってない?」
「バジ…なんだって?」
「いいわ、気にしないで。兎に角、多分数百は居るわね。逆に言うと、千は居ないわ。そんなに大きなコロニーになる前に共食いを起こすから。精々禁じられた森程度の敷地なら四百が限界ね。で、どうする?」
「どうするって何!?応戦はしないよ!!!!」

ギルデロイは声を張り上げた。二人の足はこんな軽口を叩きながらも回転を緩めることは無い。運動神経が余程高くなかったら後ろの蜘蛛集団に一気に追いつかれていまいそうである。彼らが大イカでアクティビティしているような魔法族には珍しい体育会系で良かった。

「帰ったら殺虫剤作りましょ!アクロマンチュラのコロニーを壊滅させられるぐらいの!」
「いいね!気に入った!」

二人は恐怖に頭を支配されながらも、無事森から転がり出た。どうやら森の外までは追ってこないらしく、蜘蛛の大群はすごすごと引き下がって行く。
その晩、無事ヘスティアとギルデロイは蜘蛛のことが大嫌いになった。

後書きを書いている時に気まぐれで没ネタも書いてみました。
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