ヘスティアの灯火   作:ダンブルドア同好会会長

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第八話 泥の上に咲く美しい蓮のように

 

「ヘスティア、大丈夫か!?」

 

夜も更けはじめた頃。ヘスティアがレイブンクローの談話室に姿を現すと、青い顔をしたギルデロイが彼女の元に走ってきた。周りの人達もギルデロイと同じように顔を真っ青にさせている。結局夕時に大広間に現れなかった彼女のことを思って、彼らは厨房からひったくってきた料理をヘスティアに押し付けた。

 

「レギュラス・ブラックに脅されたんだってね」

「怪我させられたと聞いたぞ!」

「私は巨大鼻の呪いを掛けられたって聞いたわ!」

「全治三ヶ月の大怪我を負ったって――――――」

 

こういう話は雪だるま式に大きくなることが基本なのか、ヘスティアは若干チベスナ顔になりながら噂を一つ一つ否定していった。ギルデロイなんかいちばん酷くて、ヘスティアが許されざる呪文に掛けられ発狂して聖マンゴ行きになったと聞いたらしい。お前の耳はロバの耳。ヘスティアは顔を覆って呆れのため息を吐いた。

 

「ごめんね、このご飯ありがとう。悪いんだけど、ギルデロイとサシで話したいから少し外すわ」

 

ヘスティアは若干険しい顔でギルデロイの手を引っ張って談話室から抜け出した。

後輩たちは考える。ロックハートとフォーリーの事だ、きっと何か崇高で、“名前を言ってはいけないのあの人”についての議論をするに違いない。それは“名前を言ってはいけないあの人”に対しての頭の良さそうな対策で、自分たちには到底考えつきそうにないけど、足を組みながら顎に手を宛てて、今後の魔法界について話し合うに違いない―――――

 

「怖い怖い怖い怖い怖いマジで怖かった死ぬかと思ったあのクソスリザリン土に埋めてやる一対五で来やがって私女の子だぞ少しは自重しろよ臆病者のスットコドッコイのデブハゲカス―――――」

「落ち着けヘスティア、あと悔しいことにレギュラスはイケメンだ。僕には遠く及ばないけど」

 

―――――そんなこと無かった。

ぐわんぐわんとヘスティアに肩を揺さぶられながらギルデロイは死んだような目になる。そういえばコイツ酷くメンタルが弱い上に演技が異常に上手いんだった、と不動のプライドと岩ならぬ超合金の心を持つギルデロイは思い出した。号泣し始めたら手が付けられないし、傷つきやすさで言ったら嘆きのマートルとトントンである。

 

「よくもまあそんな皮を被れるものだよ。尊敬する」

「ありがとう」

「褒めてないからね」

 

ヘスティアは鳥肌のたった身体をぶるりと震わせて、懐からゴソゴソとあるものを取りだした。ダンブルドアの盗撮……………隠し撮り………………………ではなく、普通に強請って撮ったツーショットである。満面の笑みで微笑むヘスティアと、苦笑しながらも優しそうな眼差しでこちらを見るダンブルドア。

ヘスティアはそれを胸に抱き抱えながら、「内なる平和、内なる平和…」とブツブツ言いながら精神を落ち着けていた。ギルデロイは絶句である。数十秒そうしていただろうか、ヘスティアは瞑っていた目を開けて、空き教室の椅子に腰掛けた。ギルデロイもそれに倣った。

 

「それにしても、結局何があった訳?僕がメアリーとランデブーしてる間に」

「メアリーって、メアリー・スペンサー?今のガールフレンドはイージスじゃ無かったの?」

「何年前の話をしてるんだよ、イージスは前の前の前の彼女」

「別れたのは?」

「二週間前」

「私が知らないはずだわ」

 

ヘスティアは肩を竦めた。

先述した通り、ギルデロイは彼女が出来るスパンがとんでもない。しかも、彼女の側から「ギルデロイくんは私なんかには勿体ないの…!」だの、「私がいけないの…!」だの言われ振られるのだ。振られているのか振っているのかよく分からない構図、ヘスティアも最初はそれを聞いて大広間を転げ回るほど大爆笑したものである。閑話休題。

 

そんなこんなで、ヘスティアはギルデロイに先程あったことをペラペラと余さず話した。親友を維持する基本は、報連相、ただそれだけ。ギルデロイは腕を組みながらその話を聞いていた。

 

「ふむ、つまり地獄だったわけだな?」

「そういう訳だよワトソン君」

「で、ヘスティアのところはどうする訳?ご両親がヴォルデモート側に着くことは知ってたの?」

「知ってるに決まってるでしょ。話が来ていたことは知らなかったけど」

 

ヘスティアは周りに誰もいないことを確認すると、声を低くして言った。

 

「誰にも言っちゃダメよ。あなただから信用して言うんだからね」

 

そう言葉を挟むと、彼女はそっと喋り始めた。

 

◇◇◇◇

 

フォーリー家。

聖28一族にも数えられる純血の名家。

家紋に鴉とオリーブをあしらった生粋のレイブンクロー家系で、ひどく勤勉、家族思いの一面を持ち、マグルの世界を知らないせいか、魔法界への想いも並々ならぬものがあった。

フォーリー家の人間は、純血としての意識を高く持っており、魔法界の枢軸となって魔法族を守ることが誇りであると思っている。それ故、“魔法界に貢献する仕事”に就くことこそが、彼らの至上の喜びであり、使命であった。他の腐りきった家系と比べると随分と崇高な意識であるが、それは彼らが幼い頃から受けてきた洗脳まがいの教育と、過去の業の賜物と言えよう。

 

では、過去の業、それは何か。

それ即ち、“ゲラート・グリンデルバルドへの助力”である。

 

というのも、これは彼らの“純血思想”に起因する。まずはそれを説明せねばなるまい。

彼らは他の純血主義者たちとは違い、マグルやスクイブには優しいし、日常における差別もしない。それ故そうと見られないことが多いのだが、案外彼らもバチボコに偏った思想を携えている。

 

まず根底にあるのは、マグル出身者への信用のなさ。

魔法界でしか生きてこなかった彼らは、日々マグルから隠れて過ごさねばならない事に対して良く思ってはいなかった。あちらは何も考えずに勝手に戦争をするし、二次被害のことも考えないとは愚かったらありゃしない。これがマグルヘイト一つ目。

しかも、マグル出身者は、今まで我々が築き上げてきた文化の中に乗っかって、なんの苦労もしないで胡座をかいて好き勝手やっている。ダイアゴン横丁も、ホグワーツも、元はと言えば先々代から魔法族が尽力して作りあげてきたものだと言うのに、恵まれたマグル出身者はなんの苦労もせぬまま表を歩き、職に就いている。どうせ魔法が使えるということもラッキーぐらいにしか考えていないんだろう。イギリス魔法界並びに魔法省の基盤を造る事にかなり手を貸していたフォーリー家なので、余計に恨みは強い。これがマグルヘイト二つ目。

更に言えば、マグル出身者には帰ることの出来る場所がある。例え魔法界が崩れたとしても、また元のようにマグルの世界に戻って、幸せに暮らすのだろう。魔法界に執着する必要も無ければ、利用が出来なくなったら捨てる事まで出来るのだ。何食わぬ顔をしてコンピュータとやらを弄りながら、魔法界のことなんて忘れていく。随分都合がいいのではないか?これがマグルヘイト三つ目。

 

他にも色々積もり積もったものがあるし、大なり小なり偏見だが、決して全て間違っているという訳ではなかった。

現に今の闇の帝王が跋扈する時代においても、魔法界から離脱するマグル出身者は少なからずいる。闘うことを恐れ、分母が多く狙われにくいマグル界に逃げ込むのだ。そうやって知らん顔をしていれば、誰かしらが闇の帝王を倒してくれるだろうと読んでいるのだ。

 

別にマグル出身者全員にヘイトを向けている訳じゃない。リリーとはヘスティアも仲がいいし、その他マグル出身者とも彼女は円満にやっている。しかし、魔法省、ひいては魔法界を牽引していくとなった時、彼らはダメなのだ。

少なからずマグル界への情も残っているので毅然とした魔法族第一主義の立場が取れず、結果よく分からない煮え切らない行動を起こす羽目になる。なんならこちらが損を被る可能性だってあるのだ。

 

そういう訳で、フォーリー家は純血が魔法界を牽引していくべきだし、魔法界とマグル界は隔絶されるべきであると主張している。

 

そこで最初に立ち返ると、最早フォーリーがグリンデルバルドに加担する意味は言うまでもなかろう。

マグルに抑圧されることの不満、第一次世界大戦のマグルへの不信感の中第二次世界大戦の勃発、更にグリンデルバルドへの恐れから逃げるマグル出身者。

 

聖28一族の中でもかなり人数の多かったフォーリー家からは、ゲラート・グリンデルバルドに付いた者が多く居た。今と変わらず魔法省のコネクションは強かったので、随分利用されただろう。ただ、ヘスティアの曾祖父、シルヴェスターと祖父、ウォードがダンブルドア側に付いたため、フォーリー家の血筋の断絶は免れた。それだけである。

 

しかし、いくらグリンデルバルドに加担したからと言って、彼らも馬鹿じゃない。歴史学者のレオナルド・ブラッドフォードが言うように、ゲラート・グリンデルバルドの醜悪とも言うべき歪んだ考えの前では、より彼の近くにいた人間こそ付いていけなくなるのである。それは彼の周りを固めていたフォーリー家の人間も例外ではなく、すぐに目を覚ます者たちが現れはじめた。しかしグリンデルバルドを簡単に裏切ることが出来る訳でもないし、ダンブルドア陣営としても何か手土産が欲しいものである。

 

そこでヘスティアの曾祖父、シルヴェスターが考えたのが、“左右二分化”であった。

 

まず、魔法界が二つに分裂した時、家族も二つに分ける。

この時点でだいぶぶっ飛んだ発想なのだが、フォーリー家では常識である。

二分割することによって、必ずどちらかの陣営にフォーリー家の人間が存在するようにしたのだ。フォーリー家が存続することこそが、魔法省、ひいては魔法界の為。

純血の人間は魔法界の宝である、という歪んだ純血思想と、魔法界にとってフォーリー家は必要だ、という高潔なプライドが合わさった結果、一種の自己犠牲的な価値観が生まれているのだった。

 

グリンデルバルドの時代で言えば、フォーリー家全体としての意向は、ダンブルドア陣営を勝利させることであった。グリンデルバルドに任せては、恐らく魔法界の未来は暗い。

そこでダンブルドア側にヘスティアの曽祖父と祖父が、グリンデルバルド陣営には他の親族が残ることによって、家族の二分化を図ったのである。

ダンブルドア側に人が少ないんじゃないかという考えもあるだろうが、フォーリー家はグリンデルバルド傘下の中で出来るだけ多くの人間の命を助けて来たのである。

貴族ゆえに根付いたノブレス・オブリージュの意識。敵側にいることで救える命もあることは確かなのである。

 

それが、フォーリー家が自分自身に課した責務。

誰に言うでもなく、彼らは粛々とそれを熟す。例え自分たちが評価されなくても、魔法界が存続することこそが本望なのだ。

 

そして、今、歴史は繰り返されようとしている――――

 

 

◇◇◇◇

 

「ちょっと待って」

「なに」

 

妙にカッコつけて説明を終えたヘスティアは、険しい顔で唸るギルデロイに怪訝そうに首を傾げる。

 

「今の話によると、グリンデルバルド側に付いていた人たちも内通者って扱いだったんだよね?」

「そうね」

「なら、なんでヘスティアの血筋しか残ってないの?情状酌量は?」

「グリンデルバルド側に付いていた人間が全員殺されたからに決まってるでしょ」

 

結局あのクソ野郎には隠し通せなかったって訳よ。

グリンデルバルドが失墜する数年前、フォーリー家の人間は一点に集められ、彼直々に手が下されたそうだ。それはもう目も当てられないほど悲惨な最期だったと言う。

 

「だから言ったでしょ?私は家族に甘やかされてるの」

 

まあ、逆に闇の帝王が勝ったら私が殺されちゃうんだけど。その時は後のことを兄さんと両親に任せて一人で特攻に行くわ。

ヘスティアはなんともないように言った。

ギルデロイは生憎純血主義者でも、自己犠牲を尊ぶ人間でもなかったが、ヘスティアの事を尊敬した。

 

◇◇◇◇

 

あれから一週間経ち、ヘスティアの言っていた“嵐”は着々とホグワーツを蝕み始めていた。

端的に言うと、ホグワーツの中で派閥が出来始めたのである。

 

ホグワーツは、

例のあの人を崇拝するポスト死喰い人の“闇の帝王過激派”

なるべく事を荒立てたくない例のあの人腫れ物扱いの“対闇の帝王穏健派”

そして、例のあの人許すまじ過激派〇ねの“対闇の帝王過激派”

の三つに分かれ、混沌を極めていた………。

 

闇の帝王穏健派が居ないあたりお察しの状態なのだが、子供の頃から闇の帝王の思想にシンクロしてるとかやべえやつしかいないことは明白であろう。

 

まず、グリフィンドールは流石勇猛果敢を掲げる寮なだけあって対闇の帝王過激派が最も多い寮である。あとの少しは穏健派。闇の帝王過激派もいるかもしれないが、表明した瞬間針のむしろにされる事は間違いないので皆黙っている。寮の有名人たるクィディッチのプレイヤーには「グリフィンドールに闇の帝王好きな人いるの?」と言うほどの対闇の帝王過激派しかいないので、当たり前と言っちゃ当たり前だろう。声がでかいヤツほど勇気があるのである。

次にハッフルパフ。ここは清々しいほど穏健派一色である。もうあそこに関わりたくない、という意思が見え見えの集団。先述したマグル返りをする人間が一番多い寮である。特に害なし、と両方の過激派から思われているあたり一番美味しいポジションを頂いていると言っても過言では無い。

レイブンクローは本当に混迷を極めている。目まぐるしいほどに色々な人間がいる。自身の利益と研究意欲だけしか視界にないワンマンプレイ連中が多いせいだろう。あとただ単にスリザリンと負けず劣らず、寧ろ優れているかもしれない陰湿さを併せ持つので闇の帝王過激派は割といる。ただ寮の顔とも言えるギルデロイがヘスティアと同じく対闇の帝王派なので、それに追随する人間が多いことも事実。

スリザリンは言うまでもないです(投げやり)。闇の帝王過激派一色、偶に対闇の帝王穏健派…とか言ったら何をされるか分かったものでは無いので、中立、僕しーらないの立場をとる者がいるばかりである。今まで仲良かった人やら寮で力を持つ人間が闇の帝王過激派となったため自身もそう見せているが、実は仮面を被った対闇の帝王穏健派でした、というのもよくある。

 

と、言うわけで、遂にホグワーツにも戦いの余波が出てき始めたのだ。

しかも派閥を作りかたがるのは主に下級生に多い傾向がある。多感でよく考えることもせず、知識や自己抑制能力もないからか。自身の主張を積極的に共有しようとするのである。

ヘスティア含めその他色々魔法情勢に詳しい上級生たちは、派閥システムに決して良い顔をしなかった。

勿論狙われるからである。彼らが、では無い。彼らの家族がである。

 

しかしいくら言っても聞かないし暴走が止められない所まで来ているのは事実。

ここで教授陣が出しゃばってくるのが一番いいのだが、彼らもまた生徒間の問題に上手く口を挟めないでいた。彼らが言ったとしても、生徒間の軋轢を無くすには、生徒同士で何とかするしかないのだ。

そしてまた対闇の帝王過激派の中には闇の帝王を崇拝する人間をホグワーツから追い出すのが一番いい方法であると主張する者がいるが、それは教育者として許せるものではなかった。それにここはイギリスで一番安全な場所である学び舎である。闇の帝王を崇拝しているとはいえ、ホグワーツにいる間は彼らは守られるのだ。

 

戦いに身を投じれば、命が儚いのは敵も味方も同じこと。

教え子たちが、たった10代の若さで命を落としていく。何度やるせない気持ちになったことか。ホグワーツの教授たちには、闇の帝王を支持する人間なんていなかった。

 

 

 

ヘスティアとギルデロイは、ポケットに手を入れながら腕に教科書を挟み込み、長い脚を見せびらかしながら廊下をズンズンと歩いていた。長い付き合いになると行動や癖も似てくるんだろうか。ギルデロイの追っかけの女の子たちはキャアキャア言いながらギルデロイに手を振っている。

ヘスティアは心の中でゲンナリとした。あのクソ眼鏡達が卒業してやっと廊下を静かに歩けると思ったら、これだ。まあ魔法を使ったことによる罰則をくらわないだけマシなのだろうか。あの頃は毎日のように罰則を受けていて、罰則番長であるマクゴナガルに顔パスで通される程であった。一応廊下では魔法を使うことは禁止なのですが、とお小言を貰いながら。

その度にヘスティアは自分は被害者なのに、と憤慨したものである。何気にお前楽しんでただろ。

 

三階の廊下に出た時である。彼らの耳に悲鳴が聞こえてきた。女の子の悲鳴だ。

自称世界中の女の子の味方・ギルデロイは弾かれたようにその方向に向かってダッシュし始める。ヘスティアは呆れた顔で彼の後を走った。

 

そこには、一人の女の子がいた。恐らく一、二年生の背の小さい女の子である。頭から水を被って廊下の真ん中で立ち竦んでいる。ヘスティアの視界の端には、廊下の角をパタパタと走っていく複数の生徒の足が見えた。ちらと見えた制服から考えるに、恐らくグリフィンドールの生徒だろう。

その女の子はがたがたと震えており、足元に散乱する羊皮紙や教科書は魔法で切られたようにぐちゃぐちゃだ。ギルデロイとヘスティアはひゅっと息を飲んだ。

 

彼らが着いた数十秒後には、人が随分と集まってきていた。ヘスティアは女の子の髪を乾かし、ギルデロイは散らばった教材を元に戻している。どうやら並々ならぬ事が起こったらしい、という事は周りの人間にも分かったのか、段々と彼らはざわめき始めた。ヘスティアは咽び泣く女の子を抱きしめながら背中を摩っている。これはまずい、と思った時だった。

 

「うちの生徒に何をしているのかな?」

 

野次馬の群れの中から、学友を引き連れたレギュラスが現れた。彼も彼でこの現状を見て絶句しているようだった。

この手の中で震えている女の子は、スリザリンの寮生である。それがどうしようもなく嫌な予感がしていただけに、ヘスティアは項垂れた。

 

「僕は監督生だからね、君には説明する義務がある」

「私たちが着いた時にはこうなってたわ」

「どうだか」

 

ヘスティアは負けじとレギュラスを睨む。一触即発の空気が流れていた。

違います、助けて頂いたんです、とヘスティアの腕の中で震えていた女の子がしゃくりをあげながら言った。しかしこの空気は変わらない。いつの間にか野次馬の群れの中から、グリフィンドールのクィディッチチームの女キャプテン・リアーナも出て来て、腕を組みながらこの会話の行き先を見守っている。

 

「全部、私たちのせいよ。私たちが争っているせい」

「馬鹿を言わないでくれ。こっちは何もしていない」

「私だってそうよ。でも、私たちが争うことで下に軋轢が生まれてる。そんなことも分からないの?」

 

無言の時間が続いた。誰かがマッチを擦れば、たちまち爆発を起こしそうな空気だった。

ギルデロイはヘスティアと女の子を隠すように気取った様子で前に出る。

 

「君たちだって分かるだろう?ここはホグワーツ。闇の帝王の権威を振りかざせる場所じゃない。きちんと歩み寄るべきだ。少なくとも学生のうちは」

 

薔薇色の青春時代をドブに捨てたくはないだろう?とギルデロイは言った。

その時、彼らの後ろから拍手が聞こえてきた。生徒たちは弾かれたように振り向いた。

アルバス・ダンブルドア。彼は優しい瞳を携えて、ただそこに佇んでいた。

ヘスティアは目を見開いて呆然とする。

 

「そうじゃな、人生は一度きり。そろそろホグワーツでも何か催しをしようと思っていたところじゃ」

 

学生時代に何も無いのは辛いじゃろう、とダンブルドアは言った。

近年、闇の帝王が情勢を掻き回していることもあり催し事が開催されることは無かった。それを暗に言われたように上級生たちは固まる。ダンブルドアがヘスティアたちの元へと足を進めると、モーゼのように群衆は道を開けた。

 

「ダンスパーティーなんでどうじゃ?」

「ダンスパーティー?」

「そうじゃ、冬休み明けにでも開催しようかと思っておる」

 

闇の帝王のせいで冬休みには戻ってくるな、と大半の子供たちは言われている。その間に色々支度すれば、間に合わないことはない。

確かにそれはそうなのだが、なぜ今?なんでこんな緊迫した状況にイベント情報をぶっ込んできたのだ?

ダンブルドアはニコニコするだけで、それ以上何かを言うということは無かった。生徒たちの頭はハテナでいっぱいである。

 

そこでははーんと気が付くのがヘスティアである。長く想い人を見てきたせいで段々彼の言いたいことを察する力が上がり始めたのがヘスティアクオリティ、彼女は女の子を腕の中から一旦はずし、レギュラスの前にカツカツと歩いていった。

そして、彼女は手の甲を差し出す形で手を差し伸べた。

 

「つまり、先生が仰りたいのはこういう事よ」

 

レギュラスもそれを察せないほど馬鹿ではない。ヘスティアの手をとると、恭しくお辞儀をした。貴族らしい洗練された動きだった。

 

「私のお相手を願えますか?」

「喜んで」

 

ヘスティアは全然喜んでいる顔では無かったが、そこで察しのいい者達も気が付いた。

つまり、派閥を超えてパートナーを組むことで軋轢を軽減しようとしているのだ。何もこの状況を産んでいるのだって、闇の帝王側としても、対闇の帝王側としても、本意では無いのだ。

先程から状況を読んでいたらしいリアーナも、レギュラスの隣にいたバーティの前に立つ。

 

「貴方で良いわ」

「失礼だな」

「上が示さないと下も動かないでしょ、腹括りなさい。それとも何、断るって言うの?」

「…いや…」

 

バーティはせめてもの抵抗か何も言葉を話すことはなく恭しくお辞儀をした。リアーナはフン、と頷く。バーティの形相は物凄いことになっていった。

 

一方スリザリンの女子たち。彼女たちの間には、異常な緊張が伝っていた。今は派閥も関係無い、という風に、誰もが誰もを睨み、ぴくりと動きもしない。軋轢が緩和されていると言うよりもっと軋んでいる気がするのは気の所為だろうか。

原因、ギルデロイ・ロックハートはこの間ものほほんと誰を誘おうか迷っている。コイツが昨日彼女のビアンカと別れたことはギルデロイファンクラブの間ではもう共有されている事である。派閥という意味では、どんな過激派よりもギルデロイファンクラブが最大手であろう。愛は世界を救うのだろうか。

 

先程より緊迫した空気が漂う。結局ギルデロイのパートナーの権利を獲得したのは、スリザリンの女子筆頭にしてギルデロイファンクラブ会員番号0015、ミラベル・トッドであった。

 




ダンブルドア豆知識その8
夢小説の数がひじょーーーーーに少ない
先生は怒っています。なんでか分かりますか?
ハーメルンも、pixivも、占ツクだって調べたのにアルバス・ダンブルドア夢の小説が両手で事足りるしかないっていうのはどういうことですか?貴様の目は節穴か?腐っているのか?
YOU LOSE
ダンブルドアを愛せなかった時点でお前の負け。
なんで負けたのか、明日までに考えといてください。
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