中央歴1639年9月25日
フェン王国軍祭における一連の出来事は、各国に大きな衝撃を与えていた。
例えばグラ・バルカス帝国。
「なに?ロデニウス連合は少なくとも我々と同レベルの技術を保有しているだと!?」
情報局職員ナグアノは驚きの声を上げた。
「はい。間違いありません。先日の軍祭において、ロデニウスは戦艦1隻、駆逐艦4隻を派遣していました。駆逐艦は我が軍のキャニス・ミナー級にそっくりです」
「なんだと!!」
「それに戦艦は三連装砲が3基、かなりの数の対空砲を装備していました」
おそらくロデニウスも航空機が実用化されているだろう。
「陸軍も同レベルであろうと考えられます」
いくらなんでも、たった半年足らずでそこまで進歩するはずはない。そう思ったが、目の前にある情報を否定することができなかった。
「分かった。引き続き調査を続けてくれ」
「分かりました」
一方、トーパ王国では「巨大艦船」が話題になっていた。
「おい聞いたか? この前、軍祭に来た船がどうやら軍艦らしいぞ」
「ああ、俺も聞いたぜ。なんでも、大砲をたくさん積んでいるんだってな」
「信じられねえな。そんなものを作れる国が本当にあったのかよ」
「なんでも、鉄でできた船なんだとさ」
「鉄で船が造れるわけないだろう。お前バカか?」
「いや、だって見た奴がいるんだよ」
「そりゃ、誰かが勘違いしたんじゃないのか」
「いや違うね。確かに見たっていう人がいたんだよ」
「ふーん。まあ、俺は信じないがな」
王都ベルンゲンの王城では国王を交えた御前会議が行われていた。
「それでは今回の軍祭での一件について報告させていただきます。まず、ロデニウス連合の戦艦でございますが、我が国の戦列艦よりも大きな船体をしており、主砲は我が国の物より強力なものを積んでおりました」
「それは本当か!?」
「はい。間違いございません」
「まさか……」
「はい。あれだけの巨砲を持つ船は我が国にも、ムーの戦艦にも存在しませんでした」
「うむ。そうだな。あの巨大な船を見ただけでも、それが分かる」
「続いて、小型艦も戦列艦よりも大きな船体をしており、こちらも主砲は強力でありました」
「なるほど」
「そして、ロデニウスの兵器は我が軍が採用している武器とは一線を画すものでした。パーパルディア皇国の銃より性能が高いと思われます」
「なんと!それほどなのか!」
「はい。パーパルディアのマスケット銃は単発式なのですが、ロデニウスの物は連発式のようで、威力も高いように思われます」
「連射できるというのか。恐ろしいな」
「はい。しかもその射程は長く、命中精度も高く思えました」
・・・
「以上です」
「うむ。御苦労だった。下がって良いぞ」
「はっ」
王城は静まり返っていた。
皆が沈黙している中、大臣の一人が発言する。
「陛下、ロデニウス連合と国交を結ぼうというのはいかがでしょうか?」
「おお!それだ!!」
全員が同意した。
「ロデニウスは我がトーパ王国にとって、友好国となりうるかもしれぬ」
「そうですな。あの国は列強国といっても差し支えない技術力を持っているようですからな」
「うむ。今度の軍祭でも見たが、パーパルディアのワイバーンロードを相手に圧勝していた。これは無視できない」
「そうですな。外交官を派遣してみましょう」
こうして、トーパ王国はロデニウス連合との国交樹立を目指すことになった。
二週間後の10月6日、第二文明圏ムー国
ムー国のムー統括軍情報通信部・情報分析課の一室は異様な雰囲気に包まれていた。
理由は一つである。先日の軍祭におけるロデニウス連合が原因だ。
机にはアメリアが撮影してきた写真が大量に並べられている。
情報分析課のトップである技術士官マイラスは、それらの写真を眺めながら、難しい顔を浮かべていた。
まずは一枚目。
「何度見ても信じられんな」
彼は呟いた。
「これがロデニウス連合の戦艦か……」
その写真に写っているのは、まさに戦艦と呼ぶにふさわしい姿であった。
全長は200mを超えているだろう。砲塔は三つあり、三連装砲となっている。連装砲の副砲らしきものも見える。
ワイバーン対策なのだろう、対空砲が無数に搭載いている。
まるでハリネズミのように対空砲が配置されていた。
なぜここまで搭載するのかはわからない。だが、ロデニウスの技術力が尋常ではないということだけは理解できた。
次に、小型艦の写真を見る。
「こいつは小型艦か? ずいぶん大きいな」
この世界には、駆逐艦という艦種はない。
なぜなら魚雷が存在せず、砲戦能力を重視した艦艇が主流だからだ。
しかし、ロデニウス連合の兵器はどうも違うようだ。
小型艦には連装砲が3基ついている。
また、対空機銃が多数装備されている。
艦中央付近には謎の兵器が装備してあった。
「なんだこりゃ? こんなもの、どうやって使うんだ?」
続いて、陸軍の写真を見る。
なんとボルトアクション式ライフルや半自動小銃、携帯式機関銃、手榴弾まで所持しているではないか。
「これは…………凄いな」
この世界には存在しない銃器ばかりである。
「まさか、これほどとはな」
彼の予想では、ロデニウス連合の科学技術力は我々のそれを遥かに凌駕しているのではないかと考えていた。
「ロデニウスの軍事力は侮れんな」
彼は改めて認識した。
「ここは、外務省に任せるしかないか……」
10月13日 ムー国はロデニウス連合への使節団を派遣する。目的は情報収集と友好関係の構築にある。使節団を乗せた飛行機は、大空を飛んでいった。