アルタラス島東方海域
パーパルディア皇国海軍、竜母艦隊計15隻は綺麗な隊列を組み、南下していた。
その様子を水中から観察している者がいる。潜水艦「U-511」だ。
「……敵艦発見」
彼女は潜望鏡深度まで浮上すると、双眼鏡を覗き込んだ。彼女の眼には、はっきりと敵の姿が映っていた。
敵の数は20隻。
「……すごい数」
U-511はそうつぶやく。
「魚雷発射準備完了です」
副艦長が報告する。
「Feuer!」
魚雷は敵竜母へ吸い込まれるように命中する。
その爆発は水柱となって海面上にそびえたち、敵竜母は轟沈する。爆発は四回起きた。
竜母艦隊は混乱におちいる。
「何事か!?」
旗艦艦橋で指揮官が叫ぶ。
「わかりません! いきなり、味方の竜母が爆発し、沈みました!!」
「馬鹿な! どういうことだ!?」
「わ、分かりませぬ!! 」
その瞬間、もう1隻の竜母が爆発した。
「お、落ちるぅー!!!」
竜母の甲板上にいた水兵たちは悲鳴を上げる。そしてそのまま海へと落下していった。
さらに3隻目も爆散した。
4隻があっという間に撃沈されたのだ。
「一体何が起こっているんだ!!」
指揮官は叫ぶ。しかし、答えられる者はいない。
艦隊は竜母を4隻失い、任務を果たせない状態になっていた。
指揮官は決断を迫られる。このままでは全滅だ。撤退するしかないだろう。
「撤退! 全艦反転!」
「了解」
艦隊は逃げるようにしてその場を去った。
こうして、パーパルディア皇国は、ロデニウス連合との海戦で貴重な戦力を失った。
◆◆◆
1月22日
パーパルディア皇国陸軍は王都ル・ブリアス北方約10㎞まで迫って来た。
「全軍前進!蛮族どもを叩き潰せぇっ!!!」
将軍ベルトランの号令の元、パーパルディア軍は進撃を開始する。地竜リントヴルムを前面に押し出し、歩兵がその後に続く。
「ロデニウスの奴らめ! 我が軍の恐ろしさを思い知らせてやる!」
ベルトランは意気揚々と言った。しかし、ここで予想外のことが起こる。
ロデニウス・アルタラス連合軍が陣地から砲撃を開始したのだ。
「ぐはぁ!」
「ぎゃあああ!」
皇国兵は、榴弾によってなぎ倒されてゆく。
「怯むなぁ! 進めぇ!」
被害を出しながらも、皇国軍は前に進む。
長十二糎自走砲の120mmの砲弾がリントヴルムの顔を叩き潰す。続いて九六式十五糎榴弾砲の150mm弾も炸裂する。
「うおおぉぉ!!」
パーパルディア軍は雄叫びを上げながら突撃を続ける。しかし、ロデニウス軍の火力は圧倒的だった。
数両の九七式中戦車チハによる集中攻撃が、リントヴルムを穴だらけにする。
九二式重機関銃の掃射が、兵士の体をズタボロに引き裂いていく。パーパルディア軍に動揺が走る。
ロデニウス軍が使用する銃は皇国のものより射程、威力ともに上だった。
「な、なんだあの武器は……」
「魔法か?」
「ば、化け物だぁぁ!!」
皇国兵の士気は一気に低下した。
「ひるむなぁぁ!!」
ベルトランは絶叫する。
「そうだぁぁ! 蛮族のクズどもなど恐れるな! 我等の方が強いぞ!!」
将軍の声に兵士たちは奮起する。
「おおおぉぉ!!」
皇国兵は再び突進する。
しかし、地竜はと砲兵隊は全滅し、歩兵も半数近くを失っている。その状態で突撃するのは無謀だった。パーパルディア軍の動きが鈍ったところへ、ロデニウス軍が一斉に銃撃を行う。
皇国兵がバタバタ倒れていく。
「ああっ! 隊長がやられた!」
「助けてくれ!」
「俺の腕がないぃ!」
阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられる。パーパルディア軍は、もはや戦意を喪失していた。そこへ、ロデニウス軍の攻撃が集中する。
パーパルディア軍は、組織的抵抗能力を完全に喪失していた。
「将軍! 撤退しましょう!」
副官の言葉にベルトランは歯噛みする。
「クソッ!! こんなはずではない!!」
彼は、部下たちの命を無駄にすることはできないと思い、撤退を決意する。
「総員退却! 後退せよ!!」
ベルトランの命令により、パーパルディア軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
◆◆◆
王都西方も悲惨な状態だった。
森に隠された魔導砲の攻撃で地竜が全滅、約800mまで接近したところで銃弾の雨を浴びた。
大型の銃は連射力が凄まじく、一瞬で腕や足が千切れる。一瞬で血まみれになり、痛みを感じる暇もなく死んでいくのだ。
歩兵部隊は機関銃の掃射を受け壊滅状態となった。
「ひいいぃ!!」
「逃げろーっ!!」
「助けてくれえぇ!!」
皇国軍は、パニックに陥り、ただひたすら逃げるしかなかった。
「おい! どこへ行く!? 味方を置いて逃げるのか!」
「そんなことを言っている場合か! 早くしないと死ぬんだぞ!」
「お、俺はもうダメだ……」
「うわぁぁぁ!」
悲鳴を上げながら、皇国軍は散りじりになって逃げた。