中央暦1640年2月2日
アルタラス島の西部沿岸にある港街アルタラ。
パーパルディア皇国軍に占領されたこの街の港には皇国海軍の戦列艦100隻、竜母10隻が停泊していた。
町の一部は砲撃によって破壊され、建物の瓦礫は片づけられたものの、戦闘による破壊の跡が生々しく残っていた。
まだ朝早い時間帯にも関わらず、街の住民達は不安そうな顔で家の中に閉じ籠もり、外の様子をうかがっていた。
皇国海軍の戦列艦のうち、20隻が沖合で哨戒任務についている。今日も住民たちは恐怖におびえながら、時間が過ぎるのを待つしかない。
しかし、運命の歯車が動き出す時が来た。
「おいっ! 見ろよあれ!」
1人の住民が指さす先には、空に羽ばたく影があった。
「なんだありゃあ!?」
「飛竜か? でも、デカすぎるぞ!」
その影の正体は、ロデニウス連合海軍所属、泊地艦隊の空母から飛び立った「烈風」、「彗星」、そして「流星改」からなる攻撃隊であった。
「目標上空到達! 攻撃開始!!」
隊長の声と共に、彗星が急降下を開始した。爆弾投下後、機体は急上昇して離脱していく。
「やった! 命中です!」
後部銃手の報告通り、大きな爆発が起きて船体が折れ曲がる。次から次へと戦列艦が爆発する。
竜母からワイバーンが発艦しようとするが、間に合わずに竜母ごと沈められる。
「敵機、こちらに向かってきます!」
見張り員が叫ぶ。
「回避!!」
艦長の号令の元、舵輪が回される。
だが、敵の攻撃の方が早かった。無数の火箭が飛来し、船体を貫く。
轟音とともに爆炎が上がり、戦列艦は燃え盛る残骸と化す。
その光景を見た乗組員たちは、呆然と立ち尽くすばかりだった。攻撃開始から30分も経たないうちに、艦隊の半数以上が撃沈もしくは戦闘不能にされてしまったのだ。
「ば……ばかな……。たったこれだけの攻撃で我が軍が……」
旗艦艦長が呟いた。
「艦長!! あれをご覧ください!!!」
士官の一人が叫んだ。その視線の先では、遠くからでもわかるほどの巨大な軍艦がゆっくりと接近してくるところだった。
「なっ……なんだあの船は!? バカでかいぞ!」
その時、パーパルディア軍の艦艇に向けて砲弾が次々と降り注いだ。
「敵襲! 砲撃されているぞ!!」
見張り員が叫ぶ。その直後、再び戦艦が砲撃を行った。
「ぐわぁ!!」
砲弾が戦列艦に命中し、大爆発を起こす。
「敵艦発砲!!」
「避けろぉーっ!!」
パーパルディア艦隊は必死に砲撃を避けようと、回避行動を取る。
「クソッ! この距離で当ててくるのか……!!」
艦長は歯ぎしりしながら言った。
皇国海軍の魔導砲の射程距離は2kmである。
それに対し、敵艦との距離は10km以上離れているはずだ。
にもかかわらず、この命中率とはどういうことなのか。
「とにかく距離を詰めなければ勝てん! 全速前進だ!!」
「了解!」
パーパルディア艦隊は、全速力で敵艦に突撃する。
「敵艦突っ込んできます!!」
見張り員が報告を行う。
「よし、撃ち方始め」
戦艦「霧島」の射撃指揮所にて、砲術長が命じた。
その瞬間、爆音と共に猛烈な速度で砲弾が飛翔し、パーパルディア艦隊のど真ん中へ着弾。炸裂した。
戦列艦の1隻が木端微塵になり、破片が飛び散った。
軽巡「Helena」も砲撃を行い、3隻の戦列艦を沈めた。
パーパルディア艦隊は混乱に陥った。今までこのような事態は想定していなかったのだろう。
「敵は蛮族だ! 数は少ない、物量の差で押し潰せ!!」
指揮官らしき男が叫び、パーパルディア艦隊は隊形を組み直す。そして突撃を敢行してきた。
「撃てぇっ!」
「砲撃開始!!」
戦艦「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」の4隻が主砲を撃ちまくる。
砲弾が雨のように降り注ぎ、パーパルディア艦隊の船を次々と粉砕していった。
「うあああっ!!」
パーパルディア軍の指揮官は絶叫を上げた。
何が起きたかわからぬまま、彼は乗艦もろとも、炎に包まれていくのであった。
「そんな、こんな馬鹿なことが……」
この様子を皇国陸軍兵らは、呆然と眺めていた。
艦隊が1時間足らずで全滅してしまったのだから無理もない。
しかし、彼らはすぐに我に返り、武器を取って戦闘態勢に入る。
「奴らを上陸させるな! 絶対にここで食い止めるんだ!」
隊長の予想通り、小型艦とボートが砂浜に接近する。
「魔導砲、発射用意!」
「装填完了しました」
しかし、その命令が実行されることはなかった。
軽巡「阿武隈」「Helena」駆逐艦「睦月」「如月」「霞」「満潮」による艦砲射撃が行われたからだ。
砲撃で魔導砲や兵士が吹き飛ぶ。接近するボートに砲撃を行うどころではなかった。
「敵が上陸してくるぞ! 全員配置につけ!」
隊長の声で、皇国軍兵らが陣を組む。
「いいか、敵を一人たりとも生かすんじゃない。全員殺せ!」
「応!!」
「来るなら来い!! 皆殺しにしてやる!!!」
「撃てぇっ!!」
怒号と共に、銃声が鳴り響いた。
しかし、マスケット銃の弾は明後日の方向に飛び、当たらない。
「 撃ち続けろ!!」
皇国の兵は必死になって銃弾をばら撒くが、人数が少ないため、なかなか当たらない。
「怯むな! 撃って撃って撃ちまくれ!!」
隊長の叱咤が飛ぶ。
「ぎゃぁああ!!!」
「ぐええ!!」
「ひぃいっ!!」
断末魔の悲鳴を上げながら、次々と兵が倒れていく。
お返しと言わんばかりに、敵の銃撃が皇国兵をなぎ倒す。
「ちくしょう! なんで当たらねえんだよ!!」
「ふざけやがって!!」
「落ち着け!! とにかく撃つんだ!!」
「畜生! 死にたくねぇよぉ!!」
皇国はパニックに陥っていた。パーパルディア軍の兵士たちは、圧倒的な戦闘力を見せつける日本軍(妖精)に恐怖していた。
「なんだあの化け物は!? 」
さらに、鉄の怪物(戦車)が現れる。
皇国兵の放つ弾丸など意にも介さず、鋼鉄の獣たちは進撃していく。
「ぎゃぁああっ!!」
「助けてくれぇ!!」
「にげろぉ!!」
パーパルディア兵たちが逃げ惑う。
「ば、化け物め! くるな!」
マスケット銃で武装した歩兵が発砲するが、全く効果がない。
逆に九七式車載重機関銃でハチの巣にされる。
「た、助け……」
皇国兵の一人が助けを求めるが、彼の言葉はそこで途切れた。
パーパルディア軍にとって悪夢のような光景だった。日本軍の攻撃によって、瞬く間に味方が倒されていく。
「こんな馬鹿なことが……!!」
部隊長が叫んだ直後、九九式小銃の狙撃により、頭部を吹き飛ばされる。
「隊長ーっ!!!」
部下たちの叫び声が響く中、パーパルディア軍は市街地へ後退した。
日本軍は容赦なく追撃を行い、市街戦へと突入した。
九七式中戦車チハを先頭に、皇国軍を蹂躙する。
皇国陸軍が配備している牽引式魔導砲も、九七式中戦車には通用しなかった。
「クソッ! 何だこの鉄の化物どもは!!」
パーパルディア軍の指揮官が叫ぶ。
「撃て撃て! 撃ちまくるんだ!!」
皇国軍の兵たちはマスケット銃で攻撃を行う。
しかし、九七式中戦車の前面装甲を貫くことは出来ず、逆に反撃を受けて薙ぎ払われる。
「うわぁああっ!!」
「ぎゃっ!!」
皇国兵の死体が量産され、血の海が出来上がっていく。
防衛線はあっという間に市街地中央まで押し込まれてしまった。
「後退だ! 後退しろ!!」
「ダメです! 後ろからも敵が来てます!」
「挟まれたのか!?」
「隊長! どうすればいいんですか!!」
「知るか!!」
もはや指揮系統は崩壊寸前であった。そして、その混乱に乗じるように日本軍の歩兵部隊が押し寄せてくる。
「ぎゃぁあああっ!!」
「来るな! 止めろぉおおおっ!!」
「うああああっ!!」
皇国兵は絶叫しながら殺されていく。
「くそっ! このままでは全滅してしまう!」
その時、ふと閃いた。
「おい! お前たち、地下の水道へ行け!」
「は?」
「いいから早く行くんだ!」
「は、はい!!」
皇国兵らは隊長の指示に従い、地下の水道へと向かった。
「よし! これで奴らを撃退できるはずだ!」
隊長はそう言うが、実は彼は何も考えていなかった。
ただ、目の前の地獄から逃れたい一心だったのだ。
やがて、パーパルディア軍は壊滅状態に陥った。
「く、くそ……。ここまでか。撤退するぞ!!」
指揮官の言葉を受け、残存部隊が撤退を開始する。
その退路を塞ぐように九七式中戦車と九五式軽戦車が現れた。
「ひっ!! 化け物!!」
皇国軍の兵士が悲鳴を上げる。
57mm砲と37mm砲が火を噴き、パーパルディア軍の兵士は次々に吹き飛んでいった。
やがて、皇国軍は地下水道へ逃げ込んだ数十名を除き全滅した。
アルタラス島の西部に上陸したことにより、パーパルディア軍の戦線は大きく後退し、皇国軍が上陸した地点にまで押し戻された。