中央暦1640年3月20日
フェン王国を包囲しているパーパルディア皇国軍第6艦隊は、首都アマノキに砲撃を加えて占領した。
これにより、フェン王国の政治機能は麻痺状態に陥り、事実上の無政府状態となった。
そして、皇国の陸戦隊は、王宮を占領して国王を軟禁状態においた後、首都周辺の町を制圧していく。
その最中、フェン王軍の精鋭部隊である『近衛騎士団』と戦闘になった。
彼らはパーパルディア皇国に対して徹底抗戦を主張し、戦いとなった。
この戦いにおいて、近衛騎士たちは奮戦したが、多勢に無勢であり、敗北する。
「はっはっはっ、圧倒的だなわが軍は」
艦隊司令官バルスレイ少将は、満足げに言った。
「さすがは閣下です」
副官が追従を言う。
「そろそろ、ロデニウスの連中が来る頃合いかもしれん。艦隊に警戒態勢を取らせろ」
「了解しました」
「蛮族どもめ、目にもの見せてくれるわ」
第6艦隊司令部は笑った。
◆◆◆
フェン王国沖南部上空。
正規空母「翔鶴」「瑞鶴」軽空母「龍鳳」「瑞鳳」から飛び立った「烈風」、「零戦52型」、「零式艦戦53型(岩本隊)」「彗星一二型甲」、「天山一二型甲」、「流星改」合わせて200機からなる攻撃隊が、皇国海軍第6艦隊を目指して飛行していた。
「何だあれ?」
哨戒中のワイバーンロードが何かを発見した。
最初は小さな黒い点だったが、徐々に大きくなる。やがてそれは、はっきりと形を認識できるようになった。
「まさか……飛行機械!?」
竜騎士は驚愕の声を上げた。
「バカな! 飛行機なんてものが、この世界に存在するはずがない!!」
彼は叫びながら、味方へ緊急魔信を送った。
「こちら第1編隊! 未確認の飛行物体を発見!! これより攻撃を行う!」
彼の所属する第1編隊の編隊長が、即座に反応する。
「全騎聞け!! あの飛行物体は敵航空機だ! 絶対に撃ち落とすぞ!!」
「了解!!」
◆◆◆
「何だ!?」
パーパルディア皇国海軍第6艦隊旗艦の艦橋で、見張り員が叫んだ。
見張り員は双眼鏡で空を見上げ、信じられない光景に絶句する。
「なんだありゃあ……」
そこには、真っ黒な点が浮かんでいた。それはどんどん大きくなっていく。
「竜母は、すぐにワイバーンロードを出せ!」
バルスレイ少将は怒鳴るように命令した。
「了解!!」
第6艦隊に所属する竜母が動き出す。
だが、彼らがワイバーンロードを発進させる前に竜母が爆発した。
ドガァアアン!!
凄まじい爆発音が響く。
「報告します!正体不明の攻撃により竜母の被害が拡大!」
「第1編隊、全騎撃墜されました」
「なんだとぉ!」
バルスレイは怒声を発した。
その間にも敵航空機は距離を詰めてくる。
「対空砲用意! 撃てぇ!」
バルスレイの命令と共に、第6艦隊の艦艇から無数の魔法弾が発射された。
しかし、それらは敵機に当たらない。
「クソッ! なんなのだ!?」
バルスレイは悪態をつく。
その時だった。
凄まじい爆音と共に隣の戦列艦が吹き飛んだ。
「なっ……」
バルスレイ少将は何も言えなかった。
敵航空機は次々と艦隊を攻撃していく。その度に轟沈する船が現れ、炎に包まれる船員たちの姿が見えた。
「来るぞ!火炎弾用意!」
竜母から何とか飛び立つことのできたワイバーンロードに乗る竜騎士たちは、必死に叫ぶ。
「敵の数は!?」
「わかりません!」
「ええい!とにかく撃つんだ!!」
彼らは自分たちを鼓舞するように、そう言い放った。
彼らの眼前でまた船が沈む。
ワイバーンロードから放たれた火球は簡単に避けられて、逆に20mm機関砲によって撃ち落とされていく。
「うわぁああ!!」
悲鳴を上げる間も無く、彼らはバラバラにされて海へと落ちていった。
「敵機接近!!」
竜騎士の一人が絶叫する。
「回避ぃいい!!」
竜騎士は叫んだ。
次の瞬間、彼の乗るワイバーンロードが血飛沫を上げて海に落下した。
ワイバーンロード隊を壊滅させた烈風や零戦は、戦列艦や輸送船、上陸していた兵士に機銃掃射を喰らわせていた。
地上部は為す術もなく倒れていき、抵抗らしい抵抗もできず、壊滅していく。
「敵航空機接近!」
「回避行動!!」
輸送船の艦長らしき男が、伝令に向かって叫んだ。
直後、零戦の7.7mm機銃が甲板の兵員を薙ぎ払った。
「クソォオオ!! 当たれェエ!!」
生き残った竜騎士たちが、必至の形相で火球を放つ。
烈風は急上昇してそれを避け、零戦は降下して避ける。
そして烈風の機首にある13mm機銃が、容赦なくワイバーンロードを撃ち抜いた。
「グギャアアアアア!!!」
ワイバーンロードは断末魔を上げ、絶命した。
◆◆◆
1時間後、第6艦隊旗艦「オーデルバンセン」。
「な……何が起きたのだ!?」
「我が方の攻撃は、まったく当たりませんでした。敵の攻撃は、一方的に我々を蹂躙しております」
「バカな! 飛行機械ごときに負けるなど!!」
「提督!敵艦隊が、こちらに接近してきています!!」
「なんだと!?」
バルスレイは窓の外を見た。そこには、こちらへ迫りくる艦隊の姿があった。
「総員戦闘配置!! 急げ!!」
残存艦艇をかき集め、艦隊は迎撃の準備を始めた。
◆◆◆
「全艦突撃せよ!!」
バルスレイの号令の下、第6艦隊は全速力で敵艦隊へ向かっていく。
敵艦隊までの距離は残り10kmほど。
「敵艦発砲!」
見張り員が叫ぶ。その声は震えている。
「怯むな!10km離れているんだぞ!! 当たるはずがない!」
バルスレイは怒鳴りつけた。
だが、彼の言葉は間違っていた。
敵艦の大砲が光ったかと思うと、轟音と共に砲弾が飛び出してきた。
ヒュウゥウン!! という音が聞こえたかと思った時には、それは第6艦隊の中央付近に着弾した。
ズガァアアン!! 凄まじい爆発音が響き渡る。
バルスレイの乗艦である「オーデルバンセン」が、真っ二つになって吹き飛んだ。
バルスレイ少将以下乗組員全員が即死であった。
「ばかな……」
第6艦隊の生き残りは、この一言しか口にできなかった。
その光景を目の当たりにした他の艦艇は、完全に戦意を喪失してしまった。
バルスレイの死がきっかけとなって、第6艦隊と陸軍の兵が次々と降伏していく。
こうして、パーパルディア皇国・フェン王国攻略部隊の生き残りはロデニウス連合に降伏することとなった。
艦隊決戦をするつもりだったのに、不思議ですね~