パーパルディア皇国エストシラント沖
この日もワイバーンロードによる哨戒が行われていた。
いつも通りの日常。
しかし、それは突如として現れた巨大な物体によって破壊された。
「なんだあれは……」
第3文明圏最強の国家、パーパルディア皇国軍の精鋭竜騎士は、目の前に現れたものを見て絶句した。
彼の視界に映ったもの。
それは島ほどの大きさの鉄でできた船のようなものだった。
鋼鉄でできているのだろう。鈍い銀色の輝きを放っている。
それが11隻、こちらに向かってきていた。
「なんだ……あの船は……見たことがないぞ」
彼はそう言いながらも、魔信機で司令部に連絡を入れた。
「こちら第3竜騎隊! 未確認の船が接近中! 警戒されたし!」
『了解! そのまま監視を続行せよ!』
彼は通信を終えると、再び視線を前に向けた。
「ん?」
彼は目を凝らして、前方の船を眺めた。
「まさか……ロデニウス連合の軍艦か!?」
彼は驚愕し、その可能性を考えた。
「なんとしても司令に報告せねば!」
彼はそう思い、全速力で飛行する。
しかし、その必要は無かった。
凄まじい轟音が響いたと思った瞬間、彼の乗るワイバーンロードが爆発を起こしたからだ。
彼は爆発に巻き込まれて死亡した。
仲間の竜騎士も何が起きたのかもわからないまま爆発に巻き込まれる。
第3艦隊旗艦、戦艦「大和」艦橋
レーダースクリーンを見ていた操作員が叫ぶ。
「敵編隊発見!」
「対空戦闘用意!」
艦長大和の命令が響く。
「対空戦闘用意!」
艦内放送が流れる。
同時に、高角砲と機銃座が忙しく動き出す。
「主砲射撃準備完了!」
「撃ち方始め!」
大和が命令を下すと、前部2基の46cm砲が轟音とともに砲弾を放った。
空中で炸裂した三式弾は、無数の弾子へと分裂すると、パーパルディア軍のワイバーンロードに襲いかかった。
そして次の瞬間には、火だるまになった数体の飛竜が落下していく。
「敵飛竜全騎撃墜確認!!」
見張り員の声に歓声が上がる。
「いよいよですね。全艦、対空、対水上警戒を厳にせよ!」
パーパルディア皇国エストシラント海軍本部
第3竜騎隊から敵襲の報を受けたエストシラント軍港は混乱していた。
「どういうことだ? ロデニウスは我が軍と本土で戦ってるんじゃないのか?」
「そんなことより迎撃だ!」
第1艦隊、第2艦隊が出航の準備をする。そこへ伝令兵が息せき切って駆け込んできた。
「大変です!! 第3竜騎隊との通信が途絶えました!!」
「なにぃ! なぜだ!?」
「わかりません!」
伝令兵はそれだけ言うと走り去った。
「一体どうなっているんだ……」
海軍基地司令官は、頭を悩ませた。
ロデニウス連合海軍第3艦隊旗艦、戦艦「大和」艦橋
「右30度、敵飛竜300! 」
見張り員が声を上げる。
「対空戦闘用意!」
その号令と共に、46cm三連装砲が旋回を開始する。
妖精達は持ち場に一斉に走り出す。
「主砲三式弾、砲撃準備完了」
「全主砲薙ぎ払え!」
その言葉と同時に、46cm砲が轟音を響かせる。
上空へ放たれた砲弾は、目標地点で炸裂し、無数の弾子へと分裂した。
敵飛竜隊は密集していたこともあり、その攻撃をまともに食らうことになった。
数十体以上が炎に包まれ、墜落していった。
生き残った飛竜は散開して、反撃を試みる。
しかし、それは無意味だった。
「この秋月が健在な限り、やらせはしません!」
「照月、行っきますよ~! 撃ち方ぁ、始め!」
「よろしいですか。撃ちます」
「この程度...。温いっ!」
「なぁに、当たらなければいい 両舷一杯!」
秋月型駆逐艦の5姉妹が対空砲火で敵を蹴散らす。
その様子は、さながら天空の天使たちを駆逐する地獄の女神たちであった。
ワイバーンロード部隊 隊長の男は焦っていた。
「いったい何なんだあれは……! ただの船じゃないのか!?」
彼の目に映るものは、まるで天から降り注ぐかのような砲弾の雨だった。
先ほどまでは、味方が優勢に見えた。しかし、今は見る影もない。
敵の攻撃は熾烈を極めていた。
次々と味方の飛竜が落ちていく。
「クソッ!なんなんだ! あんな魔法みたいな攻撃があるなんて聞いていないぞ!!」
彼は叫びながらも、必死に回避行動をとる。しかし、それも限界があった。
「うわああああっ!!!」
彼は爆炎に飲み込まれ、絶命した。
「竜騎士団全滅!敵艦隊に被害なし!」
パーパルディア皇国艦隊旗艦レブレスタに報告が入る。
「なんということだ……!」
旗艦艦長はうめき声を上げた。
「敵の数は不明か?」
「おそらく11隻と思われます」
「そうか」
艦長は考える素振りを見せた後、命令を下した。
「全艦戦闘態勢! 敵艦隊を撃滅せよ!」
敵はたったの11隻と考えた艦長は、数の優位を生かして各個撃破を図ることにした。
「了解しました!」
伝令が走り去る。
「敵はたかが11隻のはずなのに、なぜこんなにも嫌な予感がするのだ……」
艦長は呟いた。
「大きい! そして速い!」
見張り員が叫ぶ。
パーパルディア皇国艦隊は、ロデニウス連合海軍の巨大戦艦を視認した。
「敵艦発砲!」
見張り員の声が響く。
「まだ20㎞ほど離れているぞ。何のつもりだ?」
艦長は敵の意図を図りかねた。
その直後、轟音とともに巨大な水柱が立ち上った。
「なっ! なんだ!」
「て、敵艦発砲! また来ます!!」
「なにぃ!」
再び大きな水柱が立つ。
今度は、戦列艦が被弾した。
「被害を報告しろ!!」
「戦列艦『アルラ・マクラ』轟沈!」
「なにぃ!?」
20㎞の射程を持つ魔導砲。それに戦列艦が一撃で沈むなど聞いたことがない。
しかし、現実には起こっている。
「馬鹿な……。一体どうなっているんだ? あの船は」
さらにもう1発が艦隊の中央付近に着弾し、巨大な水柱が上がる。
「なんだと!」
その衝撃で発生した高波が戦列艦を襲う。
「総員、何かに掴まれ!」
艦長の命令により、水兵たちが近くの手すりや壁などにつかまる。
次の瞬間、船体が大きく傾いた。
「おぉおおおっ!!!!」
激しい横揺れに襲われ、何人かが床に投げ出される。
運悪く味方艦と衝突した戦列艦が、真っ二つに折れる。
「なんだこれは!」
艦橋にいた全員が混乱に陥る。
そんな中、艦長は気を取り直して叫んだ。
「通信士、本土のワイバーンロード部隊に救援を要請しろ!」
「りょ、了解!」
通信兵が走り出す。
「敵艦隊、なおも接近!」
見張り員の言葉通り、敵艦隊との距離は徐々に縮まっていた。
「まずいな……」
艦長がつぶやく。
その時、敵艦隊が発砲を開始した。
その数は11隻分だった。
「クソッ!」
艦長が悪態をつくと同時に、砲弾が命中した。
凄まじい爆発音が響き渡り、戦列艦が炎上する。
「戦列艦『アルクドリア』、『ルキアノス』大破! 」
見張り員から報告が入る。
「戦列艦の防御力では耐えられないか……!」
「敵艦隊発砲! また来ます!」
「回避行動!」
艦長は即座に命令を出す。
しかし、砲弾の雨の前には無意味だった。
次々と味方が撃沈されていく中、敵艦隊は接近してくる。
「射程距離まであと10kmです!」
「なんだと!? なぜそんな短時間でそこまで近づくことができるのだ! 奴らの砲は何門あるんだ!!」
艦長は恐怖を覚えた。
今まで見たこともないような大きさの船が11隻もいるというだけで恐ろしい。
それが、自分たちの方へと向かってくるのだから尚更だ。
「敵艦隊発砲!」
「回避行動! 急げぇえ!!」
戦列艦は必死に逃げる。
しかし、敵の砲撃はそれを許さなかった。
2隻の戦列艦が直撃を受け、轟沈する。
「戦列艦『カルディナ』、『アルシア』轟沈!」
見張り員の報告を聞きながら、艦長は覚悟を決めた。
「敵艦隊との距離は?」
「10kmを切りました!」
「よし! 全艦突撃! 敵艦隊に攻撃を加える! なんとしても敵の数を減らせ!」
「敵艦隊沈黙しました!」
「何だと!?」
旗艦レブレスタの艦橋内に驚きが広がる。
「いったいどういうことだ?」
「わかりません……」
その瞬間、戦列艦が爆発した。
「戦列艦『ラフィオント』轟沈! 」
「戦列艦『アグライアス』大破!」
「戦列艦『アルケディス』轟沈!」
次々に報告が入り、旗艦レブレスタの周囲が爆炎に包まれる。
「戦列艦『カリオサーク』轟沈!」
「戦列艦『オルムト』轟沈!」
戦列艦が次々と沈む。
「一体何が起こっているんだ……」
艦長は呟いた。
「戦列艦『ラフィーア』轟沈!」
見張り員の声が響く。
「全艦撤退! 本国へ帰還せよ! 繰り返す、全艦撤退しろ!!」
旗艦レブレスタからの伝令が走る。
その直後、轟音とともに戦列艦が火を噴き、海の底へと消えていった。
パーパルディア皇国海軍皇都防衛艦隊はロデニウス連合海軍によって壊滅させられた。
残存艦艇は、かろうじて攻撃を免れた数隻が逃げ帰るのみである。
この海戦の結果を受けて、列強ムーはついにロデニウス連合の実力を認めざるを得なくなったのである。