皇都エストシラント南方海域上空、高度2000m。
雲一つない空の中、30機の航空機が飛んでいた。
翼に星が描かれたその機体は、B-17爆撃機である。
B-17Gには、250kg爆弾が8発積まれている。
「皇都上空まであと1分。各機、準備はいいな? 」
機長が僚機を見回しながら言う。
全員から問題ないという返事があったところで、彼は前を見た。
前方の視界いっぱいに、エストシラントの街並みが広がっている。
その街の中心部付近に、大きな建物が見える。
おそらく、あれが皇宮だろう。
「前方から敵機!」
僚機からの報告が入る。
その言葉と同時に、護衛戦闘機の一式戦闘機「隼」と三式戦闘機「飛燕」が一斉に散開した。
「全騎、小隊ごとに散開!敵を殲滅しろ!」
ワイバーンロード部隊の隊長が指示を出す。
「了解!」
彼の乗るワイバーンロードが、敵編隊に向かって加速する。
「さあ来い! 竜騎士の力を見せてやる!」
彼がそう叫んだ直後、敵が発砲を開始した。
曳光弾がすぐ横を通過する。
それが味方に命中すると血飛沫を上げながら落ちていく。
「なんて威力だ! 当たれば終わりじゃないか!!」
敵が放つ弾丸は、恐ろしく正確だった。
「クソッ!あんなものを食らったらひとたまりもないぞ!」
敵は自分たちより性能の高い兵器を持っているらしい。
しかし、負けるわけにはいかない。祖国のため、そして家族のためにも。
彼は覚悟を決め、敵に向けて突撃した。
数分前、皇都防衛隊基地。
基地司令のメイガは、執務室でコーヒーを飲みつつ書類を読んでいた。
そこに副官が駆け込んでくる。
「失礼します!敵襲です!!敵は、敵はこの基地を狙っています!」
メイガはその報告を聞いて、思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
「敵だと!?どこから来たのだ?」
「おそらくアルタラス島からと思われます」
「まあいい、上げられる竜は全て上げろ! 敵を迎え撃つ!」
「はい!」
「それと、陛下に至急お伝えしてくれ!」
「わかりました!」
基地の滑走路では、数十頭のワイバーンロードが飛び立つところであった。
「なんだありゃ……」
飛び立ったワイバーンロードのパイロットの一人が、遠くに見える飛行物体を見て呟いた。
それは飛行機と呼ばれる、空を飛ぶ鉄の塊である。
彼はそれについて知識があったが、実物を見るのは初めてだった。
「どうやら、俺たちは運が良いようだぜ」
隣にいた同僚が話しかけてくる。
「ああ……そうだな」
彼らは皇都を守る任務に就いていたため、これまで空中戦を経験したことはなかった。
つまり、彼らにとってこれが初めての実戦となる。
数の差を考えると勝てるかもしれないが、相手は未知の兵器を使っている。
油断はできない。
「行くぞお前たち! 俺らの力を見せつけてやるんだ!」
「おおっ!」
「いくぞ! かかれぇー!!!」
「「「「うぉおおおっ!」」」」
ワイバーンロードの部隊が、敵のいる方向へと向かっていった。
「おい!あれを見ろ!!」
一人の兵士が指差す方向を見ると、そこには巨大な飛行機械が見えた。
「でかい……」
ワイバーンロードよりも何倍も大きい。まるで巨人が飛んでいるようである。
「来るぞ!!」
その巨人を護るかのように、複数の小さな機体がこちらへ向かってきた。
「あれは戦闘機という奴じゃないのか? 」
別の兵士の言葉が聞こえた。
「確かにそう見えるな……よし、あのデカ物を狙うんだ! !」
隊長機が命令を下す。
数秒後、敵との距離が詰まる。
「撃ってこい! この距離なら当たるまい!」
「全騎、散開せよ! 敵を殲滅するぞ!!」
「了解!」
隊長の命令に従い、ワイバーンロードたちがバラバラに動き始める。
「ん? なんだ? 」
その瞬間、敵機から何かが発射された。
「避けろ!!!」
回避運動に入るが間に合わない。
次の瞬間、ワイバーンロードの首が吹き飛んだ。
「うわぁああっ!!!」
悲鳴とともに、僚機が落ちていく。
隊長は一瞬パニックに陥りかけたが、すぐに気を取り直して敵を探した。
しかし、その時にはもう遅かった。
「クソッたれめ!」
隊長の腹部に、弾丸が命中した。
「ぐふぅ……」
彼はそのまま地面に落下していった。
「隊長!?」
「隊長が落とされた! 」
「ちくしょう! こうなったら、この場で全滅させてやる!」
隊長を失ったことで動揺していた部下たちは、我を忘れて敵機に突撃した。
「ここだ、撃て!」
ワイバーンロードが導力火炎弾を発射する。
しかし、敵はいとも簡単に導力火炎弾を避けてしまう。
「クソッ! 当たらねえ!」
「落ち着いて狙え!もう一度だ!!」
再び導力火炎弾が放たれる。
敵はまたもやそれを軽々と避ける。
「畜生! どうして当たらないんだよ!」
それどころか、敵はこちらに向かって攻撃を始めた。
敵はワイバーンロードの周囲を飛び回りながら、機関砲を撃ち込んできた。
「ギャアアッ!!!」
「助けてくれぇっ!」
「逃げろぉっ!」
次々と味方が撃ち落とされていく。
「うわあああっ!!」
「ひぃいいいっ!」
皇都防衛隊基地では、各部隊の壊滅が伝えられた。
「そんなバカな!? 竜騎士団は無敵だぞ!」
「敵は未知の兵器を持っているようです」
「なんだと! クソッ……予備部隊も全て出撃させろ!」
「はい!」
基地司令官のメイガは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「監視塔より報告! 敵が来ます!」
「なんだと!?」
監視員の報告を聞いた司令は、慌てて窓の外を見た。
すると、巨大な飛行機械が複数近づいてくるのが見える。
「なんじゃありゃ……」
その光景を見て呆然としていると、敵が基地上空へと到達する。
「なにをする気だ?」
その時、ヒュウウウウウ……と風を切る音が聞こえてきた。
「まさか……」
嫌な予感がしたので、急いで部屋から出る。
その直後、凄まじい轟音と共に爆発が起こった。
「うおっ!」
あまりの音の大きさに耳を押さえる。
爆風で吹き飛ばされ、廊下まで転げ出た。
「痛てて……一体何が起きたんだ?」
辺りを見回すと、そこには地獄のような光景が広がっていた。
「なんてこった……」
目の前には、無残にも破壊された建物があった。
恐らく、先程の爆撃によって崩れてしまったのだろう。
「これは酷い……」
「おい!大丈夫か!?」
「怪我人はいないか!!」
「誰か手伝ってくれぇ!!」
建物の中からは、大勢の人の声が聞こえる。
「早く救助を!」
「待ってください、まずは敵の状況を確認すべきでしょう」
「そうだな、ここは一旦離れるか」
彼らは敵の姿を確認するため、建物の外へと移動した。
「なんだこれは……?」
そこには、信じられない光景が広がっていた。
滑走路は完全に穴だらけになっており、竜舎は跡形もなく消え去って、火災も発生している。
周囲には無数の死体が転がっている。その中には見知った顔もあった。
「そんな……ワイバーンロードがこんな簡単に倒されるなんて」
「ちくしょう! 俺の相棒がぁっ!!」
生き残った者たちは口々に絶望の言葉を口にしていた。
「クソッ! どうすれば良いんだ!!」
司令官であるメイガは、頭を抱えながら天を仰いだ。
◆◆◆
その頃、リゼルの街も大混乱に陥っていた。
突然、飛行機械が飛来してきたと思ったら、街の工場地区から火の手が上がったのだ。
しかも、その正体不明の敵は、ワイバーンロードを次々と撃墜していった。
そのせいで、街はパニック状態になっていた。
「敵襲だぁあああっ!!!」
「逃げろぉおおおっ!」
「うわああああっ!!」
人々が悲鳴を上げながら、我先にと逃げ出している。
しかし、そんな中でも冷静に行動できる人間はいるもので、避難誘導を行っている兵士もいた。
だが、それでも工場で働く多くの市民が犠牲になった。
「畜生、なんてことだ!」
「隊長! 俺たちはこれからどうしたら!」
「落ち着け!とにかく今は逃げるんだ!!」
ワイバーンロードに乗っている竜騎士たちは、なんとかその場を凌いでいた。
しかし、それも長くは続かなかった。
「クソッ! もう限界だ!」
ワイバーンロードが次々に撃ち落とされていく。
敵の飛行機械は攻撃力、運動性能共に桁違いだった。
「駄目です! これ以上は持ちません!」
「撤退しろ! 総員退避!!」
隊長の指示に従い、ワイバーンロードは一目散に逃げていった。
その後、飛行機械も同じように撤退し始めた。
「助かったのか?」
「ああ、なんとかな……」
竜騎士たちが安堵のため息をつく中、基地の方角から爆音が響いてきた。
基地の方を見ると、巨大な煙が立ち上っていた。
「まさか……そんな」
「嘘だろ……」
彼らの表情は青ざめていた。
「急ぐぞ!今すぐ基地に戻るんだ!!」
「はい!」
「了解!」
そして、彼らは基地へと戻っていった。
基地に戻った彼らの目に映ったのは、変わり果てた姿になった基地と、雲より高い位置を飛ぶ飛行機械の姿であった。
「あれは……」
「あんなに高いところまで……」
「なんという高さだ……」
あまりの高さに圧倒された竜騎士たちであったが、すぐに正気を取り戻した。
基地の状況を確認しようと基地の中に入ると、そこは酷い有様となっていた。
建物は破壊されており、至る所に血の跡が残っている。
また、瓦礫の下敷きになっている者も多数いた。
生存者の確認を行ったが、その数は驚くほど少なかった。
部隊の生き残りと基地の職員を合わせても百名に満たない人数しかいなかった。
そのため、生き残った職員たちもショックで呆然としている。
しばらくすると、一人の兵士が慌てた様子で司令室へと入ってきた。
彼はこの基地の副指令を務めている男である。
彼は、焦燥しきった顔で報告を行った。
「大変です! 先程、通信がありました! 皇都エストシラントも攻撃を受けています!」
「なんだと!?」
その言葉を聞いて、全員が驚愕の表情を浮かべる。
「本当なのかそれは……」
「はい、間違いありません! 現在、防衛に当たっている部隊からの報告によれば、敵が空から攻撃を仕掛けてきているとのことです!」
「なんてこった……」
「皇都は大丈夫だろうか……」
「わかりません……こちらと同じように敵の攻撃を受けているようです」
「そうか……」
彼らは、不安そうな表情を浮かべていた。
感想お待ちしています
リクエストでも構いません(パ皇戦には間に合いません)