3月31日
「司令、大変です」
参謀の一人が部屋に入ってきた。
「どうした?」
「敵艦隊が、沖合に出現しました!」
「なんだと!?」
司令は窓の外を見る。確かに海上に黒い影が見えた。
その時、凄まじい轟音が響いた。
「な、何事だ!?」
「ほ、砲撃です!敵艦隊が発砲しています!」
司令部に緊張が走る。
「くっ、まさか奴ら、海から攻めてくるとは……」
司令は苦々しい顔をした。
「司令、ここは危険です。地下壕へ避難してください!」
参謀が叫ぶ。
「わかった。すぐに移動しよう」
「他の者にもそう伝えますので、司令は早く!」
「すまない。よろしく頼むぞ」
司令は部下に守られながら、司令部を後にするのであった。
市街地に砲弾の雨が降り注ぐ。あちこちから火の手が上がり、建物は崩れ落ちていった。
街には避難しなかった民間人もいたが、お構いなしに砲弾の餌食になっていた。
「ひぃっ!」
一人の男が路地裏に隠れる。
そして、必死になって頭を抱えてうずくまる。
「誰か助けてくれぇー!!」
しかし、その叫びに応える者は誰もいなかった……。
ストリーム司令は司令部の地下室にいた。
ここには、司令用の個室があり、彼はそこで指揮をとっていた。
「大丈夫ですか?司令」
「ああ、なんとかね……」
司令は青ざめた顔をしながら言った。
「地上はどうなっている?」
「まだ攻撃は続いています。しかし、幸いなことに敵の攻撃はそれほど激しくありません」
「そうか……」
司令はため息をついた。
すると、一人の伝令兵が駆け込んでくる。
「敵部隊が上陸してきます!!」
「ついに来たか……」
司令は覚悟を決めた顔になる。
「全部隊に通達しろ。敵を市街地までおびき寄せて接近戦に持ち込めと」
「了解しました」
伝令兵は敬礼して部屋を出ていった。
デュロ沿岸部にロデニウス連合の第1海兵師団(妖精)が先陣を切って上陸した。
何の抵抗も受けずに、市街地へ突入していく。先頭をM4A3シャーマン戦車が進んでいく。
そしてついに戦闘が始まった。
『前方、敵歩兵部隊を確認!』
無線機に報告が入る。
「よし、攻撃開始」
戦車長の号令のもと、75mm砲が火を吹く。
榴弾が敵兵を吹き飛ばしていく。
2挺の7.62mm機関銃が掃射を行い、敵兵をなぎ倒していった。
皇国兵もマスケット銃で応戦するが、射程距離の違いから一方的に撃たれていた。
さらに歩兵が前進し、敵陣地を蹂躙していく。
一方的な戦いだった。
「なんで蛮族が我々より優れた銃を持ってるんだ!」
「知るかよ!」
「とにかく撃て!」
皇国兵たちは死に物狂いで撃ちまくった。
何より恐ろしいのは、鉄の怪物だ。魔導砲の砲撃が全く効かなかった。
「くそ、なんて化け物だ!」
皇国軍の士官が悪態をつく。
その時、敵の砲弾が命中し、建物が崩れ落ちる。
運悪く瓦礫の下敷きになった兵士もいた。
工場地区でも激しい戦闘が始まっていた。
ロデニウス連合陸軍、歩兵師団3個師団が投入されていた。
慣れない銃であったが、今では全員が使いこなしている。
倒壊した工場を一軒一軒着実に制圧していた。
連合軍の兵士たちが次々と現れる皇国兵を銃撃する。
「ぎゃあぁっ!」
「ぐわあっ!」
銃弾を受けて倒れ伏す皇国兵たち。
「怯むな!反撃しろ!!」
指揮官らしき男が叫ぶと、数人の兵士が突撃してくる。
「ふんっ!」
「ごふぅっ!」
「げぼぉっ!」
しかし、彼らは返り討ちに遭ってしまう。
◆◆◆
司令部の地下室に、司令と参謀が集まっていた。
「状況はどうだ?」
「現在、我が軍は劣勢です。敵部隊は、我々の予想を上回る速度で侵攻しています」
参謀の一人が答える。
「市街地中央の部隊が包囲されつつあります」
別の参謀が報告をする。
「工場地区の部隊より、これ以上の防衛は不能との通信が入りました」
次々と悪い知らせが入ってくる。
司令部は絶望に包まれつつあった。
一時間経つと砲撃音や銃声が地下室に聞こえてくるようになった。
「まずいな……このままでは全滅してしまう」
司令が呟いた時であった。
突然、部屋のドアが開かれた。
「なっ!?」
そこには、全身血まみれの兵士がいた。
「た、大変です!敵が市街地を突破!!敵の一部が基地に侵入しています!!」
言い終えた後、彼は倒れた。
「衛生兵!」
「敵はどこにいるんだ!」
「地下通路に兵を配置させろ!!」
司令部は大混乱に陥った。
◆◆◆
地上では、激しい攻防が繰り返されていた。
しかし、戦況は圧倒的に皇国が不利だった。
シャーマン戦車の75mm砲が火を噴き、皇国兵がマスケット銃を撃ち込む。
魔導砲の砲弾が炸裂し、敵兵をなぎ倒す。
皇国兵は必死になって抵抗を続けた。
「ちくしょう!こんなところで死んでたまるか!!」
皇国兵たちは死にものぐるいだった。
そして、ついに敵が司令部へ迫ってきた。
椅子や机でドアや窓を塞いでいたが、75mm砲により吹き飛ばされた。
手榴弾が投げ込まれ、爆発が起こる。破片が皇国兵を殺傷する。
「うわああぁ!!」
悲鳴と銃声が響き渡る。
1階と2階を素早く制圧すると、地下司令部に敵兵が突入してきた。
M1A1サブマシンガンで武装したロデニウス連合の兵士が司令室に雪崩れ込んでくる。
無数の銃弾が飛び交う。
「敵だ!撃て、撃つんだ!」
皇国兵は必死の抵抗を続けていた。
しかし、彼らの努力も虚しく、次々に射殺されていく。
ストリーム司令のいる部屋にも銃声が響いていた。
「もうだめか……」
ストリーム司令は覚悟を決めた顔になる。
そして、引き出しの奥にあった白旗を取り出した。
「司令、何をされるのですか!?」
参謀の一人が慌てて尋ねる。
「降伏する。これ以上戦っても無駄だ」
「しかし!」
「いいから早くしろ!」
ストリーム司令の言葉に、参謀たちも従った。
3人の参謀たちは、手に持っていた白旗を掲げる。
それを見たロデニウス連合の兵士たちは、攻撃をやめた。
市街地中央区では、包囲された皇国軍の隊長が司令部からの通信を聞いていた。
『皇国軍司令部より各部隊へ。直ちに戦闘を停止し、武装解除して投降せよ。繰り返す……』
「なんだって?」
「どういうことだ?」
「おい、司令部は何と言っているんだ!」
皇国の兵たちはざわめく。
「どうやら、司令部が占領されたらしい」
「まさか、蛮族どもにか!?」
信じられないといった様子である。
「そのようだな……くそっ!司令部さえ無事なら、我々が負けることはなかったというのに」
悔しそうにする皇国兵。彼らは指示に従い武器を捨て、皇国兵たちは降伏した。