中央暦1640年4月24日、皇都エストシラント皇宮パラディス城内、皇軍司令部。
皇軍最高司令官アルデは、顔を真っ青にしながら地図を眺めている。
日に日に悪化する戦況の報告を聞きながら、どうすれば良いのか必死に考えていた。
その時、伝令兵が部屋に入ってきた。
「失礼します! 緊急報告です!」
「何事だ?」
「敵がアルーニを占領しました!」
アルデの顔色がさらに変わる。
「な、なんと……それで被害状況は?」
「はい、我が軍は市街地で甚大な被害を受けました。死傷者の数は把握できておりません。捕虜も大量に出ています」
「それはまずいな……。すぐに対策を考えねばなるまい」
「はい、早急に作戦会議を開く必要があります」
伝令兵は敬礼すると部屋から出て行った。
アルデは頭を悩ませ、地図を見る。
敵の目標は皇都エストシラントだろう。
今の状態で敵が攻めてきたらひとたまりもない。
「これはまずいことになった……」
アルデは冷や汗をかいていた。
◆◆◆
4月26日
皇都エストシラントでは住民の避難が進められていた。
皇軍の兵士達が住民達に避難を促す。
避難先はパールネウス地方だ。
そこは連合軍によって非攻撃地域に指定された場所であり、安全が確保されている。
避難する住民たちは不安そうな表情を浮かべながらも、皇都から離れて行った。
その住民たちと入れ替わるように各地方からかき集められた皇国軍が集結していた。
彼らはこれから来るであろう敵を撃退するために待機しているのだ。
皇国軍は数の上では勝っていたが、質では劣っており、苦戦は免れないだろうと思われた。
皇国軍総司令部の一室で司令官が集まっていた。
最高司令官アルデを始めとして、参謀や将軍達が勢揃いである。
「皆さん、よく集まってくれた。これより臨時の対策会議を行う!」
総司令官の言葉に集まった一同がうなずく。
「すでに皆知っての通り、皇国は危機的状況に陥っている。このままでは敗北は必至だ。しかし、我々がここで諦めれば、我が国は滅亡してしまう。そこで我々は徹底抗戦の道を選ぶことにした!」
「「おお!」」
会議室にどよめきが起こる。
「だが、問題はどうやって戦うかだ! 何か意見のある者はいないか!?」
「はい!」
1人の若い士官が手を挙げる。
「なんだね? 言ってみたまえ!」
「はっ! 敵は現在、我々の本拠地である皇都に向かって進軍中とのことです。そのため、敵軍の進路上に待ち伏せして、これを叩くべきかと思います」
「ふむ、確かに悪くない考えだ。他にはないか!?」
「はい!」
また別の人物が発言する。
「ここはエストシラントの市街地を利用して、敵を迎え撃つべきです。そうすれば、敵の戦力を分散させることが出来ます」
その提案にアルデはうなずき、同意を示す。
「そうだな、私もそれを考えていた。他に意見はあるか!?」
誰も反対意見を言わないため、この案は採用されることとなった。
「それでは、各自持ち場についてくれ! 必ずや勝利を手にしようではないか!!」
「「はッ!!!」
こうして、皇国軍最後の戦いが始まろうとしていた。
◆◆◆
戦闘の準備はその日から始まった。
家具や壊れた建物の瓦礫を使ってバリケードを作り始める。
皇国軍は街の各地に散り、皇都防衛の陣形を組み始めた。
「敵の侵攻予想地点はここだ! ここに防衛線を築くぞ!」
「了解しました!」
「おい! そっちは終わったのか?」
「ああ、これでいいはずだ。それよりこっちを手伝ってくれ!」
皇国軍は大忙しであった。誰もが休む暇もなく働いている。
2日後の4月28日、ついにその時が来た。
その日は朝から連合軍による砲撃が始まっていた。
砲弾が次々と撃ち込まれ、街に爆発音が響き渡る。
皇国兵達は怯えながら、連合軍の砲撃に耐えていた。
そして、敵軍が姿を現す。
「報告! 敵軍が見えました!」
「よし! 総員配置につき、迎撃態勢を整えろ!」
皇軍兵士は一斉に動き出す。
エストシラント攻防戦が幕を開ける
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