中央歴1639年4月19日 占領されたギムの町
「さて、そろそろエジェイへ向かいますかね」
ギム虐殺の首謀者である副将、アデムは出撃準備を始めていた。
「エジェイには、どんな美味いものがあるのかなぁ」
彼は、エジェイにいるであろう美女達を思い浮かべ、顔を緩ませる。
きっとまた、この世の天国のような光景が広がっているに違いない。
彼はそう思い、鼻歌を歌いながら準備を進める。
すると、伝令兵が駆け込んできた。
「大変です!北から飛竜の大群が接近中とのことです!」
「なんだと!?」
アデムは慌てる。
「数は?」
「およそ100ほどと思われます!」
「ちっ!迎撃態勢を整えよ!急げ!」
「はいっ!」
アデムは舌打ちする。
「全く、空気を読まない奴らだ。せっかくいい気分だったのに」
彼はイラつきながらも、部下達に指示を出す。
「Do217M」と「Ju87D」は護衛機の「Bf109G」と共にギムの町へ飛行する。
やがて、ギムの町が見えてくる。
敵機は数騎しか確認できない。どうやら敵騎が離陸する前に到着できたようだ。
編隊からBf109Gがスロットルを上げて加速する。その中には黒いチューリップを描いた機体もある。
ワイバーンとBf109Gの空戦が始まる。速度、運動性能共にBf109Gの方が上だった。
あっという間にワイバーンは撃墜される。
続いて、Ju87Dも爆撃を開始する。目標は飛行場だ。ダイブブレーキを開き、機体を回転させ背面飛行から機首を地面に向けて急降下する。
爆弾投下と同時に引き起こし、再び上昇して飛び去っていく。
編隊は2度、3度の空襲を繰り返し、滑走路、兵舎、竜舎を破壊する。
地上の対空バリスタも必死で撃ち上げるが、当たるはずもない。
彼らはそのまま、悠々と帰還していくのであった。
さらにDo217Mの編隊が市街地に250㎏爆弾の雨を降らせる。
こうして、ギムの町は瓦礫の山と化した。
「なんとも酷い有様だな」
将軍パンドールは呟く。
町のあちこちからは煙が上がり、破壊された家屋も多い。
「くそ!どうなって……」
一人の兵士が途中で言葉を止める。彼の視線の先には、こちらに向かってくる敵軍の姿があったからだ。
「敵襲だー!!」
ロウリア軍は戦闘体制に入る。
「敵の数は?」
「分かりません。鉄の怪物を先頭に、無数の歩兵が続きます」
「何だそれは?」
「とにかく、数が多いです」
敵の正体は分からない。だが、敵が迫っていることは間違いない。ロウリア王国軍はすぐに隊列を組み、迎え撃つ準備をする。
ロウリア軍の騎兵隊が突撃を開始した。槍を構え、騎馬は敵に向かう。
しかし、敵に近づく前に、敵からの攻撃が開始された。
第2SS装甲師団(妖精)とクワ・トイネ公国第1歩兵師団は、進撃を開始した。
戦車が前進し、歩兵がそれに続く。
ロウリア王国軍は騎兵隊を突撃させたが、戦車の砲撃と機関銃の弾幕で、瞬く間に壊滅した。
「なんて火力だ!化け物め!」
ロウリア軍のアデムは叫ぶ。敵は化け物の集団だった。
ひそかに用意した魔獣も投入したがすべて殺処分された。
ロウリア軍は、まるでゴミのように蹴散らされていく。
弓兵を無事だった家屋に配置していたが、戦車砲の集中砲撃を受け爆殺される。
歩兵部隊は接近戦へ持ち込むため突撃する。しかし、第1歩兵師団の歩兵隊による銃撃により次々に倒されていった。
重装歩兵も隊列を組んで突撃するが、自ら死にに行くようなものだった。戦車は機関銃を撃ちまくり、ロウリア兵をなぎ倒す。
戦車から放たれた砲弾が炸裂し、何人もの兵士を吹き飛ばす。
家屋内に手榴弾が投げ込まれ爆発する。破片がロウリア兵を殺傷する。
「なんだこいつらは!?」
アデムは目の前の光景を見て驚く。
「ば……化物だ!」
「助けてくれぇ!」
「逃げるんだぁぁぁ」
逃げ惑う兵士、(異世界式の)降伏した兵士達を次々と射殺しながら、灰色の服を着た敵兵が向かってくる。
アデムは部下達と共に後退しようとしたが、背中を見せた途端、銃撃を受ける。
「ぎゃあああ!」
アデムは倒れる。
「閣下!」
振り返った部下も撃たれてしまった。
アデムは、何とか立ち上がろうとするが、腹部から血を流していた。
「ちくしょう!こんなところで死んでたまるか!」
這ってでもその場を離れようとする。
「逃すな!撃て!」
さらに撃たれる。アデムは動けなくなった。
「はぁはぁ」
位の高そうな男が腰にあるホルスターからワルサーPPを抜く。
そして、アデムの頭に銃口を向けて引き金を引いた。
38口径9mm弾が脳天をぶち抜く。
そのまま2発、3発と撃ちこみ、アデムは絶命する。
パンドール将軍はどうなったかというと、彼はすでに逃げ出していた。
部下も置き去りにして、一目散に走る。
アデムの死を確認してから、第2SS装甲師団(妖精)とクワ・トイネ公国第1歩兵師団はギムの町を制圧していく。ロウリア軍は完全に駆逐され、町には静寂が訪れた。
1日後の4月20日、エジェイから撤退してきたロウリア王国陸軍第3軍団と第2軍、第4軍のわずかな生き残りが何も知らずにギムの町に到着したが、戦意を喪失し降伏した。