鬼神剣客伝【改訂版】   作:春好 優

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第4話

(速く、もっと早く斬らねば!)

 

桃色の髪をなびかせながら敵を倒し、血を浴びながらクリスは焦っていた。自身の護衛対象であるテレスとルーナを逃がした。そして敵兵を倒して直ぐに追いかけようとしたが次々と来る敵に苦戦しなかなか2人の元へ向かえないでいた。

クリスは城が襲われたあの日1人主君である王に呼ばれテレスを守るように命令を仰せつかった。その命令道理に仲間である騎士団と別れて帝国兵に渡さないように隣国へと逃れようとした。しかし敵にはその情報が既に知られていたのか網がはられていて自身の至らなさがあの二人を危険に合わしてしまった。だから先に逃がすと言う選択をしたのだが失敗だったのかもしれない。

 

(それに私はあの方を…いややめておこう今は集中しないと)

 

先程聞こえた悲鳴に焦らされながらクリスは目の前の敵を切り伏せる。だが先程から敵への手応えを感じなくなって来ていた。最初は普通であった。いつの間にか敵の死体は増えなくなっていた。

 

(何かおかしい。何か見落としている気がする)

 

クリスがそれに気づいたのは偶然だった。普段の彼女なら直ぐに気づいただろう。しかし今の彼女は数日の魔物による連戦と警戒のためにあまり寝ていないという最悪な状況によりまともな考えが出来なかった。それは倒れている死体が無いと言うこと、つまりは倒れた死体がまた立ち上がりクリスを襲っているということ。しかも落ちている死体は全て使われるというものではなく気づかれないようにクリスの視界にあるものは一切使われていないという念入りなもの。

死体を操るものは2種類あり1つは死霊術師(ネクロマンサー)と呼ばれる死体を蘇らせてゾンビなどにして使役するものであり、もうひとつは人形使い(ドールマスター)と呼ばれる魔糸を使い人形や死体を意のままに操るものである。

これはどう考えてもゾンビ等では無く、完全な死体、つまりはドールマスターという事になる。ドールマスターはネクロマンサーと違い必ず近くにいないと操れない。だからこの近場でクリスを見ているはずであった。

クリスは敵の攻撃を避けながら目に魔力を込めて魔力視と呼ばれる目を強化する魔法を使った。これは目を強化するだけで無く他にも魔力を宿すものや魔力そのものを見ることが出来るようになる魔法であった。相も変わらず襲ってくる敵を斬りながらクリスは集中する。

 

(見えた!木の上に魔糸が集中する場所が!)

 

術者の場所に直ぐに魔法を放とうとすると周りにある死体がいっせいにクリスに襲いかかった。クリスはそれに対処すべく剣に魔力を込めた。その魔力は全てを吹き飛ばすべく風の属性に変化を遂げる。

 

「付与魔剣・風翔閃」

 

クリスは剣を構え横に一閃する。すると風の暴力が死体を全てを吹き飛ばした。

クリスは飛ばしたものを気にすることなく先程の位置にまだ術者がいることを確認すると魔法を展開し放った。

 

「ライトニングランス!」

 

「グアァァァ!」

 

放った魔法が術者に直撃すると断末魔が直ぐに聞こえてきた。それっきり死体がクリスを襲うことは無かった。安心して力が抜けそうになるが直ぐにテレス達の元へ行くために倒れないように気力で立つ。限界は近いがクリスは倒れる訳には行かなかった。

 

「あそこにテレスティーナ様達が居るはず、急いで行かなければ」

 

クリスは先程大きな力の波動があった場所へと向かっていった。それは何か確信のあるものでクリスの感がそう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑side

(あれは…この女子(おなご)らの護衛か?)

 

目の前で般若の如く怒りを顔に出す桃色の髪の騎士を紫苑は冷静に観察した。体に血は多く着いているのに一切の傷が見えず相手の騎士の実力が高いと紫苑は考えた。

 

(大方この護衛が囮になったと言ったところか…意味は無かったようだが)

 

「おい!貴様聞いているのか!」

 

紫苑は女騎士自体が警戒することは仕方ないと思いつつも自分は助けようとした身であるために説明を試みた。

 

「聞いておる。だが俺はこの者らを助けようとしただけだ」

 

「そんなこと信じられるか!怪しいヤツめ!」

 

本当のことを言っている紫苑であるが一切信じて貰える様子はなかった。

 

(敵と戦ったことでの疲労で焦っておるのか?)

 

そこで紫苑は落ち着き彼女らを襲った兵士と無関係である事を伝えようとした。

 

「…お主らを襲った兵士は服装を統一されておるな?」

 

「それがどうした?」

 

「俺と明らかに違うでだろ?その時点で俺とその者らの関係は皆無だ」

 

「そ、それはたまたま服装が…」

 

「わざわざ俺だけと言うことはあるまい。そもそも国が違う俺は東方の出身だ。それとこの者らが死んでおって俺だけ生きておるのもおかしかろう?」

 

紫苑は理解してくれと思いながら彼女を見る。すると彼女は少し考える素振りを見せた。

 

「…確かに貴方の言う通りだ。状況から見て貴方が助けてくれたようです。すみません言い訳になりますが疲労が溜まっていて…」

 

女騎士は周りを見るとこちらに頭を下げて言う。紫苑は良かったと思いながら彼女に警戒させていることに気づく。

 

「とりあえずここを離れようか。このままではまたこやつらが来てしまうぞ」

 

そう騎士に言おうとしたら突然女騎士が倒れてしまった。何事かと紫苑は直ぐに様子を伺いに行く。何かあったのかと心配しているとどうやら気絶しているようだった。仕方の無いことだ。囮になりそれが終われば直ぐにここに駆けつけたのだ。しかも見た感じでは汚れや古い血の着いた鎧を見ればここ数日無理をしていたのが分かる。疲労は溜まるだろう。

 

「1人で運ぶのは流石にきついか…」

 

紫苑はそう言うと懐に手を入れ1つの札を取り出した。そこには中心に五芒星や他にもいろいろと書かれていた。これは札で魔法で言う杖のような触媒になる。杖は術の威力向上や補助などの役割がある。紫苑が今からしようとすることは彼にとって苦手なものであるために出したのだ。

紫苑は札を顔の前に持ってくると言葉を唱える。

 

「我と契約を結びし者、我が身に力を貸したまえ。

我、契約の名のもとに血と霊力を。

汝、契約の名のもとに力と知恵を。

汝が望む代償に沿うならば我が望みに応え謁見せよ!」

 

紫苑がそういう中で札は輝いていた。紫苑はそれを地面に向けて投げると術式が広がり強い光が現れた。

光の中には狐の耳と尻尾の影が浮かんでいた。

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