堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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大好きな貴方に想いを伝えたい

アーチャーと決戦の時間を決めたその日の早朝。マギとエヴァンジェリンはネギやアスナ達。まだ入ったことのない千雨と亜子にハルナを別荘へと入れさせた。

これはアーチャーの命令で、君の死に様を家族に見せる訳にはいかないだろう?ともう自分が勝つかのような言い回しで宣った。宙に浮かぶ剣達をちらつかせながら。

こいつに土の味を覚えさせてやると決意を固めながら、ネギ達を連れていくことにした。

がアスナを筆頭に納得いかない者達が抗議しようとするが、エヴァンジェリンによる無言の圧力で黙らせた。

のどかや夕映がマギへ心配の眼差しを向けてきたが、マギは心配をかけまいと笑みを浮かべ、大丈夫だと答えた。

しかしのどかはマギがこれからなにかをするということは感じ取っているだろう。マギはいまだに寝息をたてているプールスを預け、今度こそエヴァンジェリンがネギ達を別荘へと送った。

2人になり、少しの間沈黙が続く。

 

「んじゃ行くか」

 

軽く伸びをしたマギが今日の最初の予定、その待合わせの場所へ向かう。

 

「大丈夫か?そんな状態で」

「……正直大丈夫じゃあない。が、いまさらばたついてもしょうがないし、いつも通りにやるしかないだろ?」

 

心配そうな眼差しを向けるエヴァンジェリンに対して、いつも通りな態度を示し肩を竦めるマギは目的の場所へ向かう。

向かう場所には風香と史伽の双子が待っていた。マギの姿を発見した風香と史伽は大きく手を振り、マギも軽く手を振るう。

 

「悪い待ったか?」

「うぅん史伽と一緒にさっき来たばっかだよ」

「うん。結構急いできたから」

 

そう言った風香と史伽は互いに顔を見つめあうとふふっと笑う。首をかしげながら何がおかしいんだ?とマギが訪ねると

 

「こういうやり取りってまるで恋人同士でやるみたいで」

「一度やってみたかったんだよね」

 

やっぱこの歳じゃみんな恋する乙女なんだなと風香と史伽を見てそう思うマギ。そのマギの両腕を互いに引っ張り学園祭を見て回る。

 

 

 

 

まだ朝食を食べてないので、3人はとあるカフェに立ち寄っていた。席に着くと風香が朝食を3人前を頼んだ。何を頼んだんだ?とマギが訪ねると、来てからのお楽しみですと史伽が答えてくれた。しばらく待つと3人前のパンケーキがやって来た。

 

「これは?」

「占いパンケーキだよ!」

「占いパンケーキ?」

「パンケーキを食べ終えると、お皿に今日の運勢が書かれてるんです。結構当たるって噂で、今日のデート上手く行くかなって願掛けもかねて食べにくる女の子が多いんです!」

 

なるほどねぇと風香と史伽の説明で納得するマギ。だからこんなに女子が多いんだなぁと周りを見渡しながら思う。どこもかしこも女子女子女子、男はマギを含めて数人ほど。女子が発している圧で辟易してる男もいる。

しかし……とパンケーキを見ながらマギが

 

「デカイし多すぎなんじゃあねぇか?」

 

と呟く。そう思うのも無理はなく、パンケーキは皿を覆い隠すほど大きく、そして5枚ほど重なっておりまるでタワーのようだ。

しかし周りの女子達は今日の運勢のために、まるで覚悟を決めた戦士かの如くパンケーキと格闘を繰り広げていた。

現に風香と史伽もその小さい体の何処に入っているのかとツッコミたくなる位にパンケーキを次から次に頬張っていく。

マギも腹が減っていたので、ナイフとフォークを持ちパンケーキに食らいついた。

―――――パンケーキを食べ始め、これは食事じゃないひとつの格闘だと胃袋と舌が限界を迎えそうになったマギが最後の一切れを口に運んだ。

味に飽きが来ないようにジャムやシロップと使い、初めて食べ物に戦慄を覚えたマギ。

が最後まで食べ終えたことで、皿に書かれた占いを見ることが出来る。

 

「やったー!僕のお皿『気になるあの人に贈り物が送れる』って書いてあるー!」

「私のお皿は『今日は素敵な一日を送れるでしょう』って書いてあったよお姉ちゃん!」

 

2人の占いはとても良いことが書かれていたようだ。さて自分はとマギは自分の皿を見て顔を思わずしかめてしまう。

 

「マギ兄ちゃんはどんなこと書かれて……た?」

「なんか怖いよぉ」

 

2人が黙ってしまうほど、それはおどろおどろしいフォントの文字で『汝に一度絶望がその身を包むだろう。だが救いの使いは空から現れる。希望をしかと持て』とのことだった。

マギはこの占いはこの後のアーチャーとの決闘の時になにかが起こることだとわかった。もうちょっと気をきかせてくれよと内心で悪態をつきながらも、マギの占いを見て不安がってる2人の頭を両手で優しく撫でてあげた。

 

「あんま気にすんなよ。こんなの所詮占いだろ?それに俺には幸運の女神がついてるから、こんな占い関係ないさ」

 

マギが心配させまいとした台詞だが、それを聞いた2人はクスリと笑い

 

「なんかキザ過ぎて」

「マギ兄ちゃんらしくないかんじ」

「だな。なんか自分で言ってて痒くなってきたぜ」

 

そう言って飲み慣れていないブラックを飲み干す。

 

「苦げぇ……」

 

マギの渋った顔を見て、大笑いをする風香と史伽であった。

 

 

 

 

 

 

朝食のパンケーキの占いを気にしないために、マギと風香と史伽は色々な場所で動物と触れあったりアトラクションに乗ったりゲームをしたりと色々と遊んだ。

今もアトラクションに乗った後で興奮止まない風香が前を見ずにはしゃいでいた。

 

「お姉ちゃん!前を見てないと危ないよー!」

「平気平気ー!大丈夫だって!」

 

そう言いつつも全然前を見ようとしない風香。ハラハラしながら見ている史伽。これじゃあ姉妹逆だなと思いながら危なくなったら止めようとマギはそう思った。

 

「あっいた!」

 

がマギが止める前に柄の悪い男にぶつかる風香。

 

「チッ!気をつけろガキが!」

 

怒鳴りながら風香を突き飛ばす男。勢い余って尻餅をついてしまう風香。

 

「お姉ちゃん!!」

「いたた、ぶつかった僕が悪いけど突き飛ばすことないじゃないか!」

 

史伽が駆けつけ風香を助け起こす。ぶつかった自分が悪いが男に文句を風香が言うが

 

「うるせぇ!ガキが楯突くじゃねえ!ぶっ殺されてぇかあぁ!!?」

 

男の怒鳴り声に完全に萎縮してしまった。

 

「おい子供相手に大人げないぞ。ごめんなお嬢ちゃん。こいつ、今さっき女に振られて機嫌が悪いんだよ」

 

男の友人の1人が男を落ち着かせようとするが、男の興奮は収まりそうもなく、さらに風香と史伽に怒鳴り散らそうとするが、そこでマギが2人の前に立つ。

 

「そこまでにしてくれねぇか?ぶつかった風香が悪いが、突き飛ばしたり怒鳴り散らすのはどうかと思うぞ」

「マギ兄ちゃん」

「マギお兄ちゃん」

 

マギが助けに入ったのが気に入らないのか、マギを睨み付ける男。

 

「てめぇ、こいつらの男か?だったら詫びとして一発殴らせろ。それでチャラにしてやるよ」

「おい!なに言ってるんだよ!?それは流石に警察沙汰になるだろうが!」

「うるせぇ!ぶっ殺さないだけありがてぇ話しじゃねぇか!!」

 

男のもう1人の友人が止めようとするが、男は頭に血が上っているため意味不明な事を叫び止まる気配がない。

 

「落ち着けよ。苛ついているのは分かるが暴力に走るのは―――」

「うるせぇ!とっとと死ねやぁ!」

 

マギも男を落ち着かせようとするが、問答無用でマギに殴りかかる。

風香と史伽の悲鳴が聞こえるが、マギの頭の中ではこの男の身勝手な要求とアーチャーの要求が重なってしまった。

キレたいのはこっちだよ……!マギが軽くキレそうになった瞬間、また右腕が軋みだし、勝手に動き男の腕を掴んだ。

瞬間、ぱきょっとなにかが折れる音が聞こえた。見れば男の手がマギの右手によって複雑に折られていた。

 

「は?へ?……っお俺の手があぁぁ!?」

 

数秒は何が起こったのか分かっていなかったが、数秒経ち自分の手が握り潰された事を知り、さっきまでの威勢は消え去り泣き喚き散らしていた。目の前の出来事に、風香と史伽はさっきまでとは別の恐怖で固まっていた。

マギはいまだに喚いている男の胸ぐらを右手でつかみ、自分へ近づかせ

 

「失セロ……!!」

 

マギとは別のナニかが男を脅し黙らせ、そのまま突き飛ばした。突き飛ばされた男は叫びながら尻尾を巻いて退散していった。男の友人達はマギを恐ろしい化け物でも見るかのように見ながら男を追いかけていった。

周りにも野次馬が出来ており、マギの凶行に戦々恐々しており何も言えなかった。

マギは血走った目で野次馬を見渡す。マギに見られた野次馬の何人かが悲鳴をあげる。

 

「マギお兄ちゃん!」

「マギ兄ちゃん落ち着いて!!」

 

恐怖から解かれた風香と史伽がマギを強く揺さぶる。2人に揺さぶられ、ハッとするマギ。

 

「……俺、なにやったんだ」

 

マギは今さっきの出来事の記憶がないようだ。風香と史伽はマギの腕を引っ張りこの場から急いで立ち去った。

 

 

 

 

 

 

「―――そうか……俺がそんなことを」

 

かなり離れた場所にて、風香がさっきの出来事を教えてくれた。ついさっきエヴァンジェリンが血と一緒に悪い魔力を吸出したのにもう勝手に動きだした。これは対処を急がないとなと色々と考える。

とりあえず今はおっかなびっくりさせた詫びとして風香にはリンゴ、史伽にはオレンジのジュースをおごった。

 

「びっくりしたよ。急にマギ兄ちゃん人が変わったみたいな感じになっちゃうんだから」

「もしかして疲れてるのに私達のせい無理させちゃったですか?」

 

2人が心配そうに見つめてくるので、大丈夫。びっくりさせて悪かったがもう心配ないと、風香と史伽の頭を交互に撫でた。

両手を使いたいが、また腕が暴走してはいけないから今回は片手だけだ。

 

「マギ兄ちゃん何か悩みでもあるの?」

「あるんだったらお姉ちゃんと私に話してみてください」

「大丈夫さ。悩みなんてないし、それに男はそう簡単に女に弱味を見せないものさ」

 

とマギが似合わないキザな仕草を見せると、2人は吹き出した。2人が笑顔を見せて、ひとまず安心する。

 

「それよりも2人には今悩んでる事とかないか?今だけの特別相談室として何でも聞いてやるぞ」

 

無理矢理な形で話題を変える。悩みがあるか聞いてみると、さっきまでの元気は何処へ行ってしまったのか急にしおらしい表情を浮かべる風香と史伽。

 

「僕と史伽なんだけど共通の悩みがあるんだけど」

「私とお姉ちゃんには気になる相手がいるんです。けど……」

「僕と史伽はこんなにちっちゃいでしょ?下手すると小学低学年に見間違われることも何回かあるし」

「私とお姉ちゃんが大人っぽい仕草をしても周りから背伸びしてると思われて可愛がれる始末ですし……」

「ねえマギ兄ちゃん」

「子供っぽい私とお姉ちゃんが恋をしたり」

「大人っぽい仕草をしたら」

「「駄目なこと?」」

 

幼い容姿をした双子の悩みを最後まで聞き終えたマギ。

暫くの間黙っていた。そしてフッと小さく微笑むマギ。まさか馬鹿馬鹿しい悩みだとバカにされるのではと内心不安が溢れそうになる2人だが

 

「駄目なことじゃねぇさ」

 

答えは否だった。

 

「気になる相手のために自分を磨くなんてとてもいいことじゃねぇか。言い方はひどいが自分達の背の低さ子供っぽいといった事を理解しながらもそれでも不貞腐れず、諦めないで自分を成長させようとするなんて凄いことだと思う」

 

それに……と頬を軽く掻きがながら

 

「時折お前ら凄く大人っぽい仕草が似合う時があるから、ガールじゃなくて立派なレディだと俺は思うぞ」

 

いい終えた後に小恥ずかしい気持ちになり少々頬を赤くしながら頭を掻くマギ。

 

「なんかマギお兄ちゃんからキザっぽいことあまり聞いたことないからちょっと面白いです」

「ありがとマギ兄ちゃん。僕たちの悩みをしっかり聞いてくれて」

 

元の元気な姿になってくれてほっとするマギ。やはり彼女らは元気な姿が似合っているものだ。

 

「僕たちの悩みを聞いてくれたマギ兄ちゃんにプレゼントがあるんだけど、受け取ってくれる?」

「プレゼント?まぁいいけど」

「じゃあ、目をつむってください」

 

史伽に言われた通りに目をつむるマギ。が一向に2人がマギにプレゼントを渡す気配はない。

 

「なぁそのプレゼントって一体な―――」

 

言葉は最後まで言えなかった。何故ならマギの唇に柔らかい感触が2回襲ってきたからだ。

いきなりの感触にしばし反応が遅れ、目を開けると風香と史伽は結構離れた場所でマギに手を振っていた。

 

「今日は楽しかったですー!」

「僕と史伽の占い、ちゃんと当たったよー!ありがとねマギ兄ちゃん!」

 

大声で言い終えるとそのまま元気に走り去っていった。

彼女らのプレゼント、それはリンゴとオレンジの甘酸っぱいものだった。

 

「やれやれ、大胆なプレゼントだったな……ッ」

 

2人のプレゼントに天晴れさを覚えていた瞬間、またもや腕に激痛が走り、軋みながら勝手に動こうとしていた。

 

「あんまり、うかうかしていられないな……」

 

暴れる腕を押さえつけ、少しずつ痛みが引いていくのを感じながら、次の目的の場所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 


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