道中、田中や妖怪を蹴散らすマギとエヴァンジェリン。見れば魔法先生や魔法生徒の何人かも対処している。武道大会に参加していた豪徳寺率いる武道家達も何とか戦っている様子だ。
マギとエヴァンジェリンはそんな者達へ助太刀はせず、張本人の元へ急いでいた。
そして――――
「来たか。待ちくたびれたよ」
世界樹前の広場にて、アーチャーが大胆不敵に佇んでいた。
「悪かったな。アンタら学園に放ったお邪魔共に時間を食ってたんだよ」
悟らせないように飄々と返すマギであったが、そろそろ限界であった。先程から骨の軋む音が鳴りっぱなしであるからだ。
「ここまで派手なことしやがって。この落とし前はつけさせてもらうからな」
「それは出来ない相談だ。なぜなら貴様は私の手によって葬られるのだからな」
「お前ってそればっかりしか言えねぇのか」
「貴様限定への台詞だありがたく受けとれ」
「生憎NOThank Youだ」
マギは拳を構え、アーチャーは黒と白の双剣――雄剣の『干将』、雌剣の『莫耶』を具現化させ構える。
「おい。私の存在を忘れていないか?そう簡単に自身の勝利宣言を宣うものじゃあないぞ」
エヴァンジェリンが爪を伸ばしアーチャーを睨み付けるが、仮面越しでも分かるぐらいアーチャーは涼しげな表情を浮かべている。
「申し訳ないが、君の相手は他にいる。頼むマスター」
それが合図だったのか、世界樹の後ろから屈強な鬼達がぞろぞろと現れた。
「という訳で、京都以来ですなー吸血鬼。あのときのかり、今ここで返させていただくつもりなので覚悟していただくえ」
鬼のど真ん中で大物感を出しながら千草が不敵に笑う。
「あのときのへっぽこ陰陽女か。チャチャゼロが仕留めそこなったからな。今ここで貴様の命刈り取ってやろう」
「ふっふっふ……あんときの私と思うんやないえ!!やってもうたれ!!」
千草の命令で鬼達が金棒や大刀等各々武器を掲げ吠えながらエヴァンジェリンに向かっていく。
「エヴァ。まだ周りには戦えない人達が多くいる。難しいと思うが気をつけて戦ってくれ」
「難しい注文だな。まぁやるだけやってやろう。それと私からもだ……無理をするな。そして勝て」
「……あぁ」
エヴァンジェリンは鬼達へ向かっていく。そして改めて対峙するマギとアーチャー。互いに構え、暫し時が過ぎる。
そしてどこかで大きな爆発が起きる。
「「!!」」
それが合図となり、同時に間合いに突っ込むのであった。
学園祭最終日に起こした超のクーデター。湖から次々と田中と蜘蛛型のロボットに超巨大なロボットが現れ、次々と人々を丸裸にし、修行やら世界樹の魔力を利用し、次々と鬼が率いる妖怪を召還し、学園都市を破壊する千草。
学園祭は混乱に渦巻いているが、マギとアーチャーは激闘を繰り広げていた。
「ドラァッ!!」
「フッ!」
咸卦法で強化+断罪の剣を振るい、アーチャーの干将とぶつかり合い火花が散る。
「オラァッ!」
「ハァッ!!」
今度は莫耶とぶつかり、限界が来たのか莫耶に罅が入り砕け散り、そのまま消える。
「ッもらったぁ!」
片方の剣を失ったことにより、隙が出来る。その隙を逃さず、右腕を突き出す。先程から暴れそうなのを食い止めていたが、暴れたいなら目の前の相手に使ってやる。
だがアーチャーが何かを呟くとまた莫耶が現れ、右腕を防ぐ。
「クソ、折ってもすぐ新しいのを出しやがって。厄介だなおい……!」
マギの悪態に涼しげな顔で笑いながら、後方に下がり大きく飛び上がると、今度は黒弓を具現化させる。そして矢を数本具現化させると、マギに向かってマルチショットで放つ。魔力で強化された矢はまさに弾丸と同等かそれ以上の速さでマギへ向かっていく。
「ハッしゃらくせぇ!」
自分の元に最初から向かってくるのだ。断罪の剣で全て叩き落とした。
「ほう、ならこれでどうだ?」
と今度は空中に剣を無数に出現させ、マギに向かって射出させる。
「無駄だ!闇の業火!」
射出された剣を無詠唱の闇の業火で消し飛ばす。消し飛ばしたことに手応えを感じるがそれは直ぐに霧散する。
何故なら今度は巨人が使うような巨大過ぎる剣を射出してきた。
「うっそだろおい……!」
こればかりは無理だと判断し横に飛び緊急回避する。巨大な剣が地面に衝突した瞬間、衝撃波で吹き飛ばされるマギ。先程までマギがいた場所には大きなクレーターが出来ていた。紙一重で避けていなかったら今頃巨大剣の下敷きとなりミンチと成り果てていただろう。
「剣を壊したと思ったら新しいのを出してきたり剣を無数に発射してきたり終いには巨大な剣とか、テメェはビックリマジックショーの手品師かこの野郎」
「諦めて頚を差し出す気にはなったか?」
「言ってろ。これからマギさんの逆転劇が始まるから見てやがれ」
仕切り直しとマギが構え直した瞬間、マギの後方から魔法の矢がアーチャーへと向かっていく。
アーチャーは後ろに跳び、魔法の矢を難なく避ける。
「今のは……」
「マギ先生!ご無事ですか!?」
現れたのは高音と愛依と名前の分からない魔法先生や魔法生徒が何人か。どうやら今の魔法の矢は高音達の仕業だったようだ。
「マギ先生、私達が来たからにはもう大丈夫です。そこの貴方!貴方が超鈴音と繋がってこの騒動を起こした事は調べがついています!この高音・D・グッドマンの正義の名の元に神妙にお縄につきなさい!」
高音は影人形を出しながらポーズを決め口上をアーチャーに向かって高々と言った。
しかし、実力がある高音や高音が連れてきた先生や生徒では敵わないと直感で察するマギ。
「よせ!高音、お前じゃアイツには勝てねぇ!なにもするな!」
マギが止めようとするが
「見くびるな!相手は1人!数は此方が上だ」
「私達の正義があんな小悪党に負ける筈がない!」
マギの忠告に聞き耳を立てることをしない。自分達の正義に盲信しているのか、それとも現状によって多少ながらもパニック状態になっているのだろうか。
「……やれやれ、マギ・スプリングフィールド以外に邪魔なおまけがやって来たか。少々鬱陶しいため、≪この体の本来の持ち主の力≫を使って蹴散らしてあげよう」
そう言うとアーチャーは何か詠唱を呟き始める。すると蒼電が迸り、アーチャーとマギ達を取り囲む空間が段々と歪み始める。
何が起こるか分からず警戒する魔法先生や生徒達。そしてその時が来た。
「―――――――!!」
アーチャーの詠唱が終った瞬間眩い光がマギ達を包み込む。
光に目を焼かれないように反射的に目蓋を閉じたマギ達。
暫くして、目を開けると、目の前の光景に絶句する。
「なんだよ、ここは……!」
マギ達が立っている地は世界樹前の広場ではなく、燃え盛る炎と、正に無数と言っていいほどの大量の剣が荒野に突き刺さっている。そして空には巨大な歯車が浮かんでいた。
「どうだ?≪本来の持ち主の力≫は?心象風景により空間をねじ曲げ結界を作り上げた。地面に刺さっている剣はかの聖剣、魔剣、邪剣、宝剣を魔力で複製したものだ。複製、つまりは偽物ではあるが、さてどう防ぐか見物だな」
そう言い、手を掲げる。すると突き刺さっていた剣が地面から抜け宙に浮き、切っ先をマギ達へ向けている。
「――――全員、死ぬ気で防げぇ!!」
マギが叫んだのと同時に無数の剣が向かってくる。剣を障壁で防ぐが、数の暴力に加え剣が障壁にぶつかった瞬間、次々と爆発していく。
そして悲鳴をあげ1人また1人と剣の餌食となっていく。
剣の猛攻が終った頃には立っているのはマギと辛うじて立っている高音と愛依。その他は爆発による火傷か剣による裂傷により血を流して動けないでいた。
「ほぉマギ・スプリングフィールド以外に立っている者がいるとは正直驚いた」
「っ馬鹿にしないでください!私の正義の心がそう簡単に折れるとは思わないことです!」
しかしこれは高音の虚勢である。今にも崩れそうな膝を啖呵を切って何とか踏ん張っているだけであった。
「素晴らしい姿勢だ。だがこの舞台では君はお呼びではない。お引き取り願おうか」
そう言い再度干将と莫耶を具現化させると、魔力で高音の背後に一瞬で回り込んだ。
「お姉さま!」
愛依の悲鳴で自分が背後を取られた事に気付き後ろを振り返る。眼前に迫ってくる干将と莫耶。
あっ自分死んだなと何故か呑気にそう思ってしまった高音。スローモーションで迫ってくる双剣に切り裂かれる。そう思った次の瞬間、マギに思い切り突き飛ばされた。
「まっマギ先せっ―――!?」
突き飛ばされた高音はマギの方を見て目を見張った。
自分を突き飛ばしたマギの右腕が、アーチャーの剣によって肩の付け根から鈍い音と同時に切断されてしまった。
「ぐっがぁぁぁぁ!?」
傷口から焼けるような痛みが走り、思わず膝から崩れ落ちる。
止めどなく流れる血を止血するために強く押さえつける。
「いっいやぁ!!……あ」
「お姉さま!?」
目の前で自分を助けたことによって腕を切断されてしまったマギを見て、ショックを受け気を失う高音に駆けつける愛依。
「女を護るために自身を犠牲にするか。見上げたものだ。そのまま出血多量のショック死になるだろうが、せめての情けでその首をはねてやろう」
アーチャーはマギの首筋に干将を当てる。意識が朦朧としてきた。
エヴァンジェリンは自身の血をマギへ輸血したことによって不死の吸血鬼になったと言っていたが、生命の要の血が失っていくのを見てそうは思えなかった。
このまま死んでしまうのではないか、死にたくないと思った同時にアーチャーに対する憎悪が一気に膨れ上がった。
そして振り上げた干将を首目掛け振り下ろされた瞬間それは起こった。
切断された右腕が蜥蜴の尻尾のようにひとりでに暴れ、それが止んだと思いきや、今度は断面からどす黒い泥のような闇が溢れだし、ひとりでに動きマギを包み込んだ。
アーチャーも闇に襲われないように後方へ跳んで様子見をする。
愛依は目の前でマギが闇に包まれるのを見て、脳が追い付かなくて口をパクパクすることしか出来なかった。
そして闇に包まれたマギ本人は薄れ行く意識の中であらゆるものが書き換えられた。
殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ殺せ壊せ壊せ殺せ殺せ壊せ殺せ壊せ壊せ壊せ殺せ殺せ殺せ壊せ殺せ殺せ殺せ殺せ壊せ壊せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺ころころころころころころこここここここここここKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKK
今まであった感情が殺戮と破壊の衝動に上書きされていく。今までの出会いや自分が味わった思い出も段々と薄れていく。
自分を好きだと言ってくれたのどかや夕映に亜子達、ネギやプールス、ネカネと大事な家族の顔も段々と薄れていき分からなくなる。
そして最後に残っていたのは口づけをした千鶴と自分を信じてくれていたエヴァンジェリンの力強い表情。それも直ぐに霞んで消えてしまった。
(……やれやれだぜ。わりぃ皆、俺、もうここまでみたいだわ)
皆に謝罪をした瞬間、マギの意識はブラックアウトした。
闇に包まれ、暫くしてまた闇からマギが姿を見せた。しかしマギの体は褐色に染まり、赤髪もほぼ白髪に染まり所々に赤が見える程度だった。
目は虚ろであるが、体から衝撃波を発し、アーチャーが発動した結界の世界を破壊する。空間をねじ曲げるほどの魔力で作られた世界を衝撃波で荒廃した世界から元の世界樹の広場に戻る。
「こっこれは!?マギ」
「アーチャー!これはどういうことかえ!?」
多少土埃で汚れたエヴァンジェリンと肩で息をする千草が互いのパートナーの元へ駆け寄る。
「マスター」
「なっ何かえ?」
「どうやらここまでようだ」
「は?」
そう言い、アーチャーは干将と莫耶を手から離し、双剣は霧散する。
「私はどうやら面倒なものを呼び覚ませてしまったようだ」
アーチャーの体から諦めの色が醸し出されていた。
「おいっおいっマギ、しっかりしろ」
エヴァンジェリンはマギの体を大きく揺さぶる。右腕が斬られているのを見てぎょっとし目が虚ろなのも出血多量だと思ったのだろう。
虚ろで何の反応も見せなかったマギがゆっくりとエヴァンジェリンの方を向く。反応を見せたことにほっとするエヴァンジェリン。
「もういいマギ。後は私がやっておくからお前は下がってい―――」
エヴァンジェリンは最後まで台詞を言えなかった。何故なら突如動いたマギがどす黒い断罪の剣にてエヴァンジェリンの右腕を切り落としたからだ。
「……うここは?私は何をして……」
「お姉さま気がついたんですね!」
気を失った高音が気がつき目を覚ます。愛依が安堵の声をあげる中、荒廃した世界からまた世界樹の広場に戻っているのを見て、先程の記憶を思い出す高音。
「っマギ先生は?あの人は無事なんですか!?」
高音はマギの安否を確かめるために、マギを探す。
すると、どこからか固いものを砕く音と、咀嚼音が聞こえた。
見ると、マギが踞って何かを食べていた。見ると今度はエヴァンジェリンの右腕がなくなっていた。そして見るとマギが食している物……少女の指が微かに見えた。つまり今、マギが食しているのは……
「……」
またも猟奇的な現場を見て、今度はうめき声をあげずに白目を向いて、静かに倒れる高音。
「お姉さまぁぁ!……ぁ」
今度は愛依も限界が来て、高音に覆い被さるように倒れこんだ。
「まっマギ、おっおい……何をやってるんだ?やめないか」
右腕が再生した自身の腕を喰い続けるマギを止めようとする。だがそんな静止の声にも耳を貸さず、文字通り骨まで完食してしまったマギ。
目はまだ虚ろながらも、血がこびりついた口で笑みを浮かべていた。見たら震え上がるような狂気な笑みを。
マギの斬られた右腕の付け根からどこぞの大魔王ように新しい腕が生えてきた。人の腕ではない異形の腕だ。
そしてマギの皮膚が少しずつ剥がれ落ち、剥がれ落ちた所から漆黒の人とは別の肌があらわになる。
腰の付け根のには太い尻尾が生え、背中にはコウモリや鳥とは全く別物の図書館島であったドラゴンの様な翼が広がった。
エヴァンジェリンの目の前には恋い焦がれていたマギではなく、全く別のナニかであった。
「G――」
マギであった何かが口を開き
「GyaaaaaHaaaaaHaHaHaHaHaHaHaHaHaHaHa――――!!」
狂ったように笑いだし、そのまま黒い魔力の大爆発を起こした。その大爆発に近くにいたエヴァンジェリンに、気を失っていた高音に愛依。アーチャーと千草、戦闘不能になっていた魔法先生や生徒を包み込んだ。
―そしてこの日この時間、ひとりの魔法使い"だった"者に、世界は滅ぼされた―
所変わってエヴァンジェリン別荘にて、ネギ達は限られた時間の中で修行をし、各々かなりのレベルアップをしたと思っている。
ハルナはネギと仮契約をし、クロッキー張に描いた物を簡易的なゴーレムとして召還し使役できるアーティファクト、落書き帝国を手に入れ、僅かばかりだが戦力がアップしている。
一方夕映はマギと仮契約し手に入れたアーティファクト世界図絵は残念だが即戦力になれるような能力ではないとのことで落胆もあったが、それでも自分が出来ることを探し少しずつ成長していく。
まだマギと仮契約していない亜子はのどかや夕映を羨み、別荘の存在やネギとキスをした2人を羨みながらも終始頭を痛めていた千雨とまだ戦力になれない者もいれば、仮契約しなくても実力がある忍者の楓とネギの中国拳法の師匠である古菲も自分の修行で功夫を積んでいた。
そしてネギもまだ超のやっていることが正しいのか間違っているのか迷っていたが、迷いを断ち切った。そしてそんなネギをサポートしたアスナにこのかに刹那。
「皆さん。短い間でしたが、お疲れさまでした。超さんが行おうとしている歴史の改竄、それが正しいことなのか、まだ分かりません。けど、成功した暁に世界がどう変わるかも分かりません。もしかしたらもっと酷いことが起こるかもしれない。けど、それ以前に僕は先生として、危ないことをしようとしている超さんを止めなきゃいけない。正直身勝手なお願いだと思ってますが……どうか、力を貸してください!」
ネギの頼みにアスナ達は力強く首を縦に頷く。
「ありがとうございます。それと何が起こるか分かりません、どうか慎重に。それじゃあ……開門!」
決意を固めたネギ達は別荘から外へ出る。
……外へ出たら、自分達が知っている世界とは全て変わっていると知らずに……