このかと刹那にカモが学園長話し合い、ネギ、アスナ、見守っていた古菲があやかに大会の変更をお願いしている間、図書室にてハルナが筆頭となり、のどかと夕映がせっせとチラシを作成し、亜子と目を覚ましたプールスがつきっきりで、マギの看病をし、千雨はネットを使い、武道大会の戦いは全て演出で行った等のガセ情報を連続で流していた。
マギはというと、腕に包帯ではなく赤い布を巻いていた。赤い布は急遽家に戻ったエヴァンジェリンが掘り出したもので何なのかを訪ねると
「これは私が吸血鬼になったばかりのころに、吸血鬼になった私を哀れんだ一癖ある魔術師が私にくれた聖骸布を模して作ったものだ。これを身に纏っていればある程度の吸血衝動を押さえてくれる」
エヴァンジェリンの言う通り、この聖骸布擬きを腕に巻いてから腕が勝手に暴れることはなくなった。
「本当エヴァ様々だな。それに亜子にプールスも、戻ってきたばかりなのに……無理をしなくていいんだぞ」
「無理なんかしてへんよ。好きでマギさんの看病をしてるんやから」
「早く良くなって欲しいレス!」
ありがとうと亜子に礼を言いながら、左手でプールスの頭を撫でるマギは考え事をしていた。
「どうしたんですかマギ先生」
「いや、超の事を考えていたんだが改めて話し合いで解決するのは無理だろうかってな」
「無理ですね」
「即答だな」
千雨が無理と即答した後にだってそうでしょうと続ける。
「ネギ先生やアタシらを未来に跳ばす、マギさんを亡き者にしようと傭兵を雇う。どこに話し合いの余地があるっていうんですか。あっちが力で押しきって来たならこっちだって力で迎え撃つ。その後で話し合いが出来るならその時はその時です」
千雨の言うとおり超は強行手段をとってきた。そんな中で話し合いなど馬鹿な考えだ。話し合い交渉は対等か自分達が上の場合に成り立つもの、自分達が下の場合では話し合い等と言っている間に瞬く間に蹂躙されてしまうだろう。
と千雨と話していると、アスナにおぶる形でネギが戻ってきた。
「どうだった?」
「いいんちょが何とかしてみると言ったアルよ。ただ上手くいくとは思わないでとも言ってたネ」
ハルナがどうだったと聞き古菲が答える。答えを聞いたハルナはあやかが上手く事を進めることを願い、せっせとチラシ作りを再開した。アスナにマギの横に並ぶ様に寝かせられるネギ。
「超さんの事は僕たちに任せて。だからお兄ちゃんは自分がやらなきゃいけないことだけを集中してね」
それだけ言い終えるとそのまま目を瞑り、寝息を立て始めるネギ。長時間の時間跳躍の後にあやかへのお願いで限界が来たのだろう。労うようにネギの頭を優しく撫でるマギ。
「ありがとうな。なら俺は俺のやらなければいけないことをとことんやるさ」
マギもそのまま目を瞑り静かに寝息を立て始めた。
ハルナがチラシを作ったりあやかが大会の関係者に頭を下げ懇願すること数時間、日が上り午後の1時、千草とアーチャーが学園を歩いていた。千草は上がはだけた和服、アーチャーはバイザーに鎧と赤い外套、周りからの視線を釘つけにする格好だが今は学園祭で、2人の周りにも着ぐるみや奇抜なコスプレをしている者が居ることもあり、別段注目されることはなかった。
と2人が歩いている目の前の少女が手に持っていた風船を離してしまい、風船が空へ上ってしまう。
もう取れる高さは越えてしまい、持っていた風船が飛んでしまった事に泣き出す少女だが、アーチャーが魔力を使い上へ跳び風船を掴んで地上に下り立った。泣いていた少女と少女の親はアーチャーが風船を取ったのを呆然と見ていた。
「ほら、今度は離さないようにするんだぞ」
優しい声色で少女へ風船を渡すアーチャー。風船を受け取った少女はアーチャーへお礼を言い、親もアーチャーに頭を下げお礼を言った後去っていく。少女はアーチャーに手を振りながら。
周りにいた者達はアーチャーに風船を取ったことに対する称賛や驚異の跳躍力を見せた歓声を送っていた。
「ふ~ん、子供には優しいんやな」
「私はマギ・スプリングフィールドを亡き者にしようとしてるが、悪者になりたいと思ってはいないよ」
千草がにやにやと笑いながらアーチャーを茶化し、アーチャーも肩を竦めておどけた。
歩くのを再開し、千草は周りを見渡す。家族や恋人友人との笑い声や笑顔。危ないことは精々格闘系の部活の野試合だけだった。
「平和やね……」
ぽつりと呟く千草。これが後数時間もすれば混乱が渦巻く惨事になるとはとても想像出来なかった。
「どうしたマスター、今更になって後悔か?」
「ばっ馬鹿言うんやないえ!関東のぼんくら魔法使い共に一泡吹かせるためにお嬢様のクラスメイトのガキに協力したんやえ今更退けるわけないわ!それに、それにあんたが心配なんや。あのマギって男の事になると1人で突っ走ろうとするんやから……」
「そうか、ならしっかり着いていく様に手綱を握っておくんだな。自分で言うのもあれだが私は結構暴れ馬だぞ」
千草の心配もバイザー越しでニヒルに笑うアーチャー。心配してるのに笑われたことに腹を立て、頬を膨らませる千草。
とどこかで騒がしい声が聞こえてきた。何事かと興味本意で近付く2人、そこには3ーAの生徒達が各々ナースや魔女着ぐるみとコスプレをしていた。そして手には何かのチラシを持っていて配っている最中であった。
「はいどーぞ!」
「あぁ、ありがとう」
まき絵がアーチャーにチラシを渡してきたので、アーチャーもにこやかにお礼を言いチラシを受けとる。チラシ内容は……
「『火星ロボ軍団VS学園防衛魔法騎士団』?なんやねんこれ」
チラシにはイベント変更のお知らせと書かれており、中央には大人びているが明らかにネギだと思われる男がオモチャの杖を握っているイラストが描かれていた。
これが配られていると言う事は、無事話が通ったということだ。現に中学生としては際どい聖女のコスプレをしたあやかがイベントにおける実演をしていた。
ローブを着た桜子が手に持っていた杖を呪文を唱えながら空へ向かい振るうと閃光が空へ駆け巡り破裂する。他にも祐奈がバズーカの引き金を引くと杖と同じ閃光が発射される。
実演を見ている者達は歓声をあげるが、千草とアーチャーはあの武器が魔法の武器だと見抜く。
「何でお嬢様のクラスメイトの奴等が魔法の武器を持ってるんえ!?まさか、マギ・スプリングフィールドがばらしたんか!?」
「いや、マギ・スプリングフィールドがそうべらべらと話すとは考えられないな。失礼、この大会の発案者は誰か聞いても宜しいかな?」
アーチャーがチラシを配ったまき絵に尋ねると
「えっと、スポンサーはいいんちょのお家だけど、この大会の発案者はネギ先生って私達の先生が提案しました!」
バカレンジャーの1人のまき絵は馬鹿正直にアーチャーに答えた。アーチャーはまき絵にお礼を言うと千草を連れて、実演が行われている広場を後にすると人気がない路地裏へ入る。
「どうやら1週間後へ飛ばされたネギ・スプリングフィールドとその一行が何らかの方法で戻ってきた様だな」
「どうするん?超に報告するか?」
「そうだな、一応報告しておこう。といってもあの超鈴音の事だ、これぐらいのイレギュラーは予想済みだろう」
暫しの休息を終え、アーチャーと千草は超の元へ戻るのであった。
一方、学園長に召集された魔法先生と魔法生徒は学園長からの話を聞きどよめきが走る。
「とまぁそういう訳じゃ。超君は持ち前の頭脳と科学力をもって魔法の存在を強制認識させようとしておるわけじゃ」
最高責任者である学園長の話を信じたのと同時に超の事を侮っていたと痛感する。一般人を戦力にする事に対してガンドルフィーニや高音といった一部が渋っていたが、戦力を増強するなら致し方ないと言う意見を仕方なく呑んだ。
相手を天才少女というだけで侮る事はせずに準備を始める魔法使い達。
それとと話を続ける学園長
「超君に関西呪術協会の天ヶ崎千草と高畑先生を拘束したアーチャーと呼ばれる傭兵が超君に着いておる。そしてそのアーチャーと名乗る男はどうやらマギ先生の抹殺が目的の様じゃ」
マギの抹殺と聞いてまたどよめき出魔法使い達。
「そしてマギ先生の言伝てじゃが『あのふざけた傭兵野郎は俺がけりをつけるから手を出すな』じゃ。場所は世界樹前の広場だそうじゃ。ので諸君らには一般人を世界樹前広場に入れさせないように頼みたい」
話を終えた瞬間に高音が学園長の机を両手で叩く。高音の行動に何人かが目を見開き愛衣も冷や汗を流していた。
「学園長!そんな危険人物が学園を彷徨いているなら今すぐに捕まえるべきです!それにマギ先生も何故1人でそんな相手と一騎討ちをするつもりなんですか!?今すぐ彼の元へ行き馬鹿な真似をしないように説得すべきです!」
「ならん」
「っ何故ですか!?」
意見を突っぱねる学園長が納得出来ずに再度詰め寄る高音。
「マギ先生を狙う男はどうやらかなりの危険人物の様じゃ。修学旅行中もマギ先生と戦闘を行ったようで、観光客が居た映画村でも危険な魔法を使った様じゃ。そしてこの学園祭でもどうやらクラスの子を人質に取られた模様でな。もし儂らが動いたらクラスの子達を殺すだろうとマギ先生がそう言っておった。業腹じゃが、今はマギ先生を信じるしか他はない。分かってほしいのじゃがな」
「……分かりました」
渋々納得する高音。改めて準備をする魔法使い達の中で高音はこれから戦うであろうマギの無事と健闘を願っていた。
一方願われていたマギはというと
「……ふぅ、少しは良くなってきたかな」
聖骸布を腕に巻いていたマギ、顔色も戻ってきて体調も万全までとは言わないが回復したようだ。
「よかったです。こっちもようやく終わりました」
タイピングをしてenterキーを押した千雨がそう答える。千雨も武道大会の戦いは主催者側の演出、さっきまでの魔法などの発言は全てガセ情報だったと流していたのが今終わった所だ。これで少しは掲示板を見た人達が信じてくれればと千雨の談である。
「おはようございますマギ先生。ゆっくり休められましたか?」
「なんや心配してた割には元気そうやなマギ兄ちゃん」
「まっ大丈夫そうならそれで問題ないさね」
少しおどおどしながらも手をこちらに振るさよと少年らしい笑顔を浮かべた小太郎、カメラを持ちながらふっと笑顔を浮かべる和美の姿があった。
「お前らなんでここに?」
「いやぁ学園をぶらついてたら面白そうなイベントが始まるなって思ってたら外を見て回っていたアスナ達に見つかってね。それで……聞いたよマギ先生、どうやら未来じゃ人類滅亡の一歩手前まできているってね。目の前の真実よりも今回は世界を護るために協力させてもらうよ」
「よく言うわよ。超さんの大会で実況やってたくせに」
「あはは。まぁあの時は真実を公表するっていう大きな餌に釣られた哀れな鯛だと思ってほしいさね」
制服ではなく鎧を纏った騎手の格好をしたアスナに呆れられ、苦笑いを浮かべる和美。なんでそんな格好をしているのか聞くと、アスナはイベントのお助けキャラとして参戦するようだ。
「俺もアスナの姉ちゃんから聞いたで。ネギとの決着やマギ兄ちゃんと戦う前に世界が滅んじゃたまらんからな」
拳を手の平にぶつけ自身もイベントに参戦する小太郎。小太郎が参戦すればこれは大きい戦力である。
一方のイベントの参戦者もあっとう言う間に2500人が揃っていた。
カモが用意した魔法具は人体には害はなく、田中率いるロボ軍団に有効なものとなっている。一般人が使っても充分に渡りあえるものだ。
準備も万端となり後は超が来るのを待つだけである。とのどかと夕映に亜子がマギの元へ歩み寄ってくる。
「マギさん、お願いがあります。もう一度仮契約をお願いします」
「仮契約?なんでだ?俺とのどかはもう仮契約を終えてるだろ?」
もう一度仮契約をして欲しいことに首を傾げる。すると夕映が自身のカードをマギに見せると、カードは夕映しか描かれておらず、白紙となっていた。
「この時間に戻ってきてから見たらこのような状態になっていたです。おそらく、一週間後のマギさんが氷で眠ってしまってそれでパスが切れたのではと考えているです」
「そういうことか。でも俺のカードはまだパスが繋がってるんだけどな……こういうのっていわゆるタイムパラドックスってやつなのか?」
「そういう事だと理解していただけたら幸いです。あの、やっぱり図々しいですか?もう一度キスをお願いするというのは……」
「そういう事じゃあないさ。ただ、もう一度契約してももし俺がまた暴走したらと思うとな」
そう渋っているとそんな事を言わないでくださいとのどか
「そうならないために私達は戻ってきたんですから。それに、好きな人とまたキスをしたいって気持ちはいけないことですか?」
「……なんかのどか雰囲気変わったか?」
微笑みを浮かべるのどかを見て頬を掻くマギ。一週間後の未来でまたのどかを変えたのだろうとこれ以上何かを言っても無理そうだとマギは折れた。
もう一度仮契約をするためにマギに歩み寄るのどかと夕映、そして亜子と千雨。
なぜ亜子と千雨もと思っていると、亜子が胸の前で手を握りまっすぐマギを見つめ
「ウチ、正直言えばちゃんとお付き合いしてキスがしたい。魔法とかファンタジーでちょっと怖いけど何かあったらマギさんを少しでも手助けしたいって思ってった。けど、あんな光景を見て、あんなマギさんを見てそんな悠長事を言ってる暇なんてないって。だからウチも出来ることがあるならなんだってする」
「あんなクソッタレな世界になるぐらいなら仮契約だろうがなんだろうがやってやりますよ」
亜子と千雨がそう言ってくれたが、マギは黙ってしまった。
力を貸してくれるのは嬉しい。だがそれは死ぬかもしれない怖い思いをしたせいで得た答え。つまり自分のせいで考えを変えさせられた。
またマギが自責の念にかられそうになった時に、千雨がマギの両頬を思い切り横に引っ張る。
行きなり引っ張られた事に数回目を瞬く。
「マギさん今自分のせいでとか思っただろ?あぁそうだよ、マギさんが色々と抱え込んで自分一人でやろうとして失敗して、あんな世界にしてあたしらがどれだけ死ぬかもしれないって怖い目にあったか。だから精神的苦痛の責任を取ってください」
「千雨、すまな―――――」
「また謝ろうとするなら股間蹴りますからね」
男にとっては物騒な発言をする千雨に思わずマギや小太郎にカモが内股になる。
さすがに股間蹴る発言は恥ずかしかったか赤面しながらそっぽを向き数回頭を掻く。
「責任云々言いましたけど、結局マギさんがやらなければいけないことは変わりはないので、自分のやるべき事のためにアタシ達が支えます」
「……ありがとう」
「お礼もいいです。ですから絶対勝ってくださいよ。折角戻ってきたのに辿る未来が同じじゃあ笑い話にもならないですから」
「あぁ、絶対負けねぇさ。カモ頼む」
「合点でさ」
いつもだったら茶化すカモだが、今回は黙って魔方陣を描く。
そしてのどか、夕映、亜子、千雨の順に口づけをするマギ。
改めてのどかと夕映は仮契約のカードを手にし、亜子と千雨は初の仮契約のカードを手にしたのだった。
「―――――そうカ、私の計画をそういう風に利用するとワ」
学園の地下深く、アーチャーからの報告に数回頷きポツリと呟く超。
「私としては別にこの計画がイベントに変わろうが目的はマギ・スプリングフィールドの排除だ。最悪一般人やマギ・スプリングフィールドの生徒に危害が及んだとしても私は責任を取るつもりはないがそれでいいかな?」
「それは良くなイ。私の目的は魔法を世界に公にすることであリ、人の命を奪ウことではなイ」
「マギ・スプリングフィールドの抹殺を依頼しておいて随分虫のいい話だな。まぁ善処しよう」
肩を竦めるアーチャー。そのアーチャーの後ろに千草、葉加瀬、茶々丸と同じ姿のガイノイドが数体、そして数千体の田中や蜘蛛型、超巨大ロボットが佇んでいた。
「元々隙ヲ突いて奇襲をかけルような計画だったガ、此方としてハ都合がいイ。盛大に暴れさせテもらウ」
超が指を鳴らした瞬間、それに連動するように田中、蜘蛛型、巨大ロボットの目が怪しく赤光し起動する。