それではどうぞ
「いや、私は未来に帰るヨ」
学園大戦は学園側の勝利。学生達がどんちゃん騒ぎの宴会をしている中で少しはなれた所で3ーA魔法関係者が別の意味でどんちゃん騒ぎを起こしていた。
ことの発端は最後の抵抗(悪のり)で超が取り出した。
その名は『超家家系図』。超の一族が誰と結婚し子をなすか書かれているもの。つまりネギが誰と結婚して子をなし超まで至るか書かれているもの。
更にはネギの名前の隣にはマギの名も書かれており、マギが誰と結婚しているのかが書かれている。
いきなりのアルテマウェポンの登場にネギやマギに好意を見せる女子達(しかも遠くにいたあやかとまき絵がとてつもない嗅覚で超が取り出した家系図を嗅ぎ付ける)は思考を停止した後に暴走。我先にと超の家系図を見るために奪い合いの大乱闘を勃発し始める。
先程まで自分を打倒するために協力しあっていたクラスメイト達の豹変ぷりにことの発端の超はけらけらと笑っている。ネギと戦っていた時の張り詰める雰囲気も無くなっており、今は年相応な少女のようだ。
そんな超にネギはこのまま卒業するまで一緒にいようと超に言う。ネギやクラスの皆と最後まで一緒にいる。それも満更ではないと思えた超。
だが超の答えは最初に言った未来に帰るだった。
「どっどうしてですか!?」
ネギは愕然としながら超に訳を訪ねる。周りの者達も今の流れはこのまま一緒に卒業する流れだと思っていたからだ。
超は苦笑いを浮かべながら頬を掻き
「どうしてモなニも2年もかけていタ計画が失敗した今の私に居場所はなイ……否それは違うナ。元の時代にやるべきことヲ見つけたと言うべきカ。私や同志達にはまだ明日があル。ならば明日を未来ヲ輝かせるためニ抗ってみせるサ。それにネギ坊主が言った。この時代ハ自分達に任せて欲しいと。ならばより良い世界にしてもらうためニネギ坊主達にこの時代を託す。ネギ坊主、いやネギ・スプリングフィールドやその仲間達なら必ず成し遂げることが出来ると信じてるヨ」
そう言って超は壊れていないカシオペアを取り出して起動させ、超の頭上に時間跳躍の魔方陣が展開される。
超と超に贈られた送別品が宙に浮かび始める。
「五月、超包子を頼む。全てを任せるヨ」
五月は頷き、安心して欲しいと目で超に答えた。
「ハカセ、今まで私の無茶に付き合ってもらって感謝ヨ。それと、未来技術の対処は打ち合わせ通りに。今回の計画のデータは厳重に保管しておいてヨ。それと、私のご先祖様が困っていた時は手助けしてくれると嬉しい」
「……全てお任せください。超さんと歩んだこの2年間は私にとってかけがえのない時間でした」
葉加瀬は涙を滲ませながらも超の旅立ちを笑顔で見送ろうとしていた。
「古!いつかまた手合わせするネ!」
「うむ!必ず!その時は私が勝つアルよ!!」
古菲と超はまた手合わせすると固く約束を結ぶ。
「ネギ坊主、ここにはいないエヴァンジェリンさんとマギさんに伝言を頼ム。私があの傭兵と契約したことによって皆に不快で不安なな気持ちを与えてしまったことを謝罪したイ。未来は変わるかもしれないのに一時の感情で暴走し傭兵と契約してしまったことは科学者の私の失態ダ。恐らくエヴァンジェリンさんは私を許そうとはしないだろうナ」
「……そんな事ありません、お兄ちゃんは過ぎたことは気にしないと思いますし、師匠も最初は渋るかもですけど時間が経てばきっと許してくれます!!」
「……そうカ、そうであれば嬉しいナ」
段々と光が収束していく。そろそろ時間なのだろう。
と今まで黙っていたアスナが超ちゃんと大声で呼ぶ。
「もう!嫌な事から逃げるんじゃないわよ!!」
「あぁ。もう逃げるつもりはないヨ。またあーだこーだと言い訳してたら今度こそ斬られてしまうかもだからナ」
アスナは思わず首を傾げてしまう。もしかして自分がキレた時結構やばかったのかと思った。キレた時の自分が何をしたのかとても気になってしまう。
そして光の強さが最大点に達した。
「ネギ坊主!!また会おう!!」
「はい!!いつかきっと!!絶対に!!」
超とネギが別れの言葉を交わした瞬間、一瞬で超は目の前から消えてしまった。時間跳躍に成功したのだろう。
「行っちゃったわね」
「はい強い人でした超さんは。僕があの人に出来た事ってあったんでしょうか」
アスナとネギが跳んだ超がいた空を見上げながらそう呟いていると
「そんな事ないアルよ。超の奴笑ってたアル。心配するなネギ坊主」
古菲が超にとってネギが心の支えになったとそう言い切る。
「……はい!」
とても強い相手だった。ネギは超や超の仲間達、そして未来の人達が幸せに暮らせるように自分が立派な魔法使いになれるように新たに決意を固めるのであった。
「無事かえアーチャー?」
楓が修行場にしている山に千草とアーチャーがいる。千草が鷹の妖怪を召喚しアーチャーを掴んでこの山まで逃げてきたのだ。
「まさかマギ・スプリングフィールドが彼処まで抗うとはな。あの男を見誤った私の失態だな。マスターの方はどうだったかな?」
欠けたバイザーを一度外し乱れた髪をかきあげた後にまたバイザーを付け直し千草に戦果を聞いてみた。
「上々!……と言いたい所やけど何人かの魔法使い共を病院送りにしただけや。本当は何人かを葬ろうと考えたけど、あんなお祭りで死人が出てしまえば何の関係もない人達にトラウマを植え付けてしまうのは申し訳ないと思ったんや」
そんな千草の報告を聞きながらアーチャーは微笑みを浮かべる。
「やはりマスターは少々悪人には向いていない性格のようだな」
「なっ馬鹿にすんな!魔法使い共だけならウチは幾らでも外道になるえ!そこん所勘違いすんな!」
千草のむきな返しに吹き出しそうになるアーチャーは直ぐに思案にふける。
あのマギは完全に不死身の存在になってしまった。恐らく自身が魔力で具現化させた不死殺しの武器が通用する可能性はかなり低くなった。
自身がマギを殺すにはどうすればいいのか……
「やっぱりこの場所にいたんだね」
第三者の声が聞こえ、聞こえた方向を振りかえるとかつて京都で行動を共にした少年、フェイト・アーウェルンクスが佇んでいた。
「あん時のガキ!何でこんな所にいるんやえ!?」
いきなりフェイトが現れたことに驚き思わず噛みつくように叫ぶ千草をアーチャーが宥めていると
「僕達の組織が次の段階に進もうとしている。そこで君達をスカウトしに来た所だよ」
「スカウトぉ?得体の知れない組織なんてお断りや。それにウチとアーチャーでも魔法使い共に一泡吹かせられる。他人の力なんて借りなくてもウチらはやれるんやえ」
「僕らに協力すれば君が言う魔法使い達に一泡も二泡も吹かせられるよ。因みに月詠という子は僕らに協力するそうだよ」
と今度はアーチャーの方を向くフェイト
「君はマギ・スプリングフィールドを亡き者にしたいそうだね」
「だから何だというのかね?」
「僕らに協力するのなら、あっちの世界にある不死を断つ武器の情報を提供すると言ったら?」
フェイトの情報にアーチャーは
「……分かった。君達に協力しよう」
「ちょっアーチャー!?」
ほぼ即決でフェイトに協力すると言ったアーチャーに目を見開く千草。
「悪いなマスター。私としてはマギ・スプリングフィールドを断ちきる術があるならば何でも利用するつもりだ。それと、マスターもどこかでは大人数の方がやりやすいと思っているのではないかね?」
「~~~っ……分かった、分かったえ。一応マスターて呼ばれてるからウチの方が立場上だと思うんやけどな……協力するから、ウチらもとことん利用させてもらうえ」
「取引成立だね。それじゃあこっちに僕の仲間がいるから着いてきてほしい」
フェイトに連れられ、森の奥へ行き消えていったアーチャーと千草である。
「何だ超の奴とっとと未来に帰っていったか。色々と言いたい事が山のようにあったのだがな」
超が未来に跳び、空も白く朝日を迎えそうになり始めた頃、エヴァンジェリンが茶々丸に横抱きにされたマギを連れてネギ達の元へやってきた。
「お兄ちゃん!?師匠、お兄ちゃんはどうしたんですか!?」
ネギはボロボロになり目を瞑っているマギを見て驚きなぜこうなった訳を聞く。
「どうしたも何もこの馬鹿はあろう事か闇の魔法を同時に3回も発動したんだよ。何とかあの傭兵を追い払えたが、その反動でこの様だよ」
茶々丸が柔らかそうな原っぱにマギを降ろす。静かに呼吸をしているマギにのどかに夕映に亜子と千雨にプールスが心配そうにマギを見る。
「エヴァンジェリンお姉ちゃん、マギお兄ちゃんは大丈夫レスか?」
「心配するなプールス。マギは反動で疲れただけだ。時期に目を覚ますだろうさ」
心配そうにしているプールスを宥めるエヴァンジェリン。そうこうしている間にマギがゆっくりと目を開ける。
「お兄ちゃん!」
「マギお兄ちゃん!」
「マギさん!」
「マギさん。よかったです気がついて」
「マギさん。よかったぁウチマギさんに何かあったらと思うと」
「お疲れさんマギさん。あたしも今回は結構頑張ったんだよ」
「お疲れ様でしたマギ先生。それと今回はあまりお力になれずに申し訳ありません」
「全く、色々と無茶をしすぎだ馬鹿者。でも、よく頑張ったな」
ネギ達がマギへ呼び掛けると、マギはそれに答えるようにゆっくりと口を開く。
「…………だ?」
「え?お兄ちゃん、何て言ったの?」
マギが言ったことを上手く聞き取れず、ネギ達が黙りもう一度マギが何を言ったか聞こうと――――――
「……君達は………誰だ?」
「……え?」
しんと静まり返る空気、マギは頭を押さえながら悲痛な声で
「……ここは、何処だ……俺は……誰だ……!!」
それを言い残しまたも意識を失うマギを見て、マギを囲うネギ達の空気がずんと重くなり沈んでいくのを感じた。
マギが払うべき代償、それはネギ達にとってかけがえのない大きく辛い代償であった。
「ネギ、エヴァ、のどか、夕映、千雨、亜子、茶々丸、プールス、アスナ、このか、刹那、風香、史枷、千鶴、それに皆……すまないな」
マギの精神世界にて、マギは届かないであろうネギ達に謝罪の言葉を口にした。
マギは払う代償は『マギ・スプリングフィールドの記憶』である。
「俺はもう不死身の存在になった。よくある代償は魂だが、不死身の存在が自分から命を断つのはほぼ無理だ。なら俺自身が歩んだ軌跡、記憶が魂の代用となる。今ここでマギ・スプリングフィールドとしての俺は一度死んだことになったんだなこれが」
白マギが何処か呆れた様子で淡々と言う。
「でも別れの言葉を言わなくて良かったのか俺?絶対ネギやプールスにのどかは泣いて、エヴァはプッツンってキレるだろうぜ?」
「そうだな。けどこればっかりは言ったからと何か変わる訳じゃあない。なら黙って去った方が良いかもしれない。そう思っただけさ」
溜め息を吐きながら白マギがマギの額を何回もつつく。
「本当に分かってるのか俺?これから俺達がやるのは暴れる黒マギさんを手懐け闇の魔法を上手く制御することだぞ。そう簡単に出来ることじゃない。下手すればもう皆と再会することが出来ない今生の別れになるかもしれないんだぞ?」
黒マギはとても強力な存在である故にマギや白マギだけで上手く制することが難しいかもしれない。不死身という永劫の存在ということもあって最悪100年経っても制御しきれないかもしれない。
「大丈夫さ。黒マギさんも同じマギさんだからよ。直ぐにでも黒マギさんを手懐けて自分自身の力にしてやるよ」
「んな楽観視しすぎだろ俺」
マギの楽観視にまたも溜め息を吐く白マギ
「昔からへんに悪ぶったりめんどくさがったり、もっと素直に生きてればこんなことにならなかったかもしれないのにな」
「そうだな。だからこそ、今まで中途半端な自分とはもうさよならだ。黒マギさんを制してマギさん完全復活してやるよ」
そう言ってマギと白マギは構える。目の前で黒いもやが現れ、それが集まり、化物の姿になった黒マギになった。
『GRUUUU―――!!』
黒マギは唸り声をあげながらマギと白マギを交互に見る。今からお前らを食い殺すと言っているようだ。
「一瞬でも気を抜くなよ俺。そのままあいつに呑まれて暴走する化物の完成だ」
「抜くつもりは毛頭もないよ。こんなどうしようもない俺を慕っているあの子らにまだ何も伝えていないからな」
マギと白マギが構えた瞬間
『GAAAAAAAAAAAA!!』
黒マギが吠えて四つん這いになりマギと白マギに向かって来る。
「「行くぞおおぉぉぉぉぉぉ!!」」
マギと白マギも雄叫びをあげて黒マギに突っ込んでいく。
―――じゃあな皆。少しのあいだのさようならだ―――
………はい、前書きの苦手、嫌いといった展開は「記憶喪失」です。
なぜ記憶喪失にしたのか、それは本日の9時以降に活動報告にてお話しようかと思います。
今回の話で一応学園祭編は終了となります。そして今回の話をもって第一部完として次回から第二部とさせていただきます。
今回の展開で納得いかない読者の方もいらっしゃると思います。
ですが自分の稚拙な作品の次回を少しでも楽しみに待っていただけると幸いです。
長々と自分語りをしても鬱陶しがられるかもかもしれませんので。区切りとさせていただきます。
それでは!!