堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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お引っ越し

「俺、この部屋を出るわ」

 

学生にとって避けては通れない道、期末試験が迫る中の休日の朝。朝食を食べ終えたマギが開口一番に言ったことにネギ達が驚く。

 

「どっどうしたのお兄ちゃん!?急になんでそんな事を言い出したの!?」

「いや急に言ったが、ふと思ったんだよ……俺がこの部屋に居るの可笑しくね?」

 

マギが思ったことを口に出して辺りがシンと静まる

 

「え?そう?アタシ達別にマギさんがいても可笑しいと思ってないわよ」

「そりゃなんやかんや長い時間一緒にいたから別にいいかなって思ってるだけだろ。だがネギのように子供だったらまだ大丈夫だが家族や恋人じゃない男が寝食を共にするのは一般的に可笑しいだろ。というか可笑しいと思わなかったのか過去の俺……」

「それは……確かに……」

 

一般常識を説かれアスナも何も言えなくなる。マギとネギが最初にここに来たときは反対していたが、数ヶ月も一緒に過ごしてたら段々と気にしなくなっていた。

 

「うちは別に気にしてないえ。むしろマギさんが一緒の方が楽しいし」

 

このかがここにいても大丈夫と言ってくれている。マギはこのかにありがとうと礼を言うが首を横に振る。

 

「そう言う風に言ってくれるっていうのは、俺の事を信頼してるっていうことなんだろうな……ありがとう。けど俺が可笑しいと思った瞬間に、ここに居てはいけない。そんな違和感が頭の中を巡ってるんだ」

 

このかのフォローの言葉にも頷かないそんなマギ。部屋に気まずい空気が一向に晴れる様子がない。

 

「そう言うことだから、学園長のじいさんに話してくるよ。それじゃあ」

 

そう言ってマギはネギ達が止める間もなく身支度を済ませ部屋を後にした。

 

 

 

 

「なるほどのう。部屋を出たいと……して、その子は何故マギ君の足にべったりくっついておるんじゃ?」

「どうやら俺が急に出るなんて言ったから居なくなると思ったんだろうな。急に俺言い出した俺が悪いんだから別に気にはしてないさ」

 

そう言って未だに足にくっついているプールスの頭を優しく撫でるマギ。

何故プールスがくっつき蟲が如くマギの足にくっついているのか、それはマギが部屋を出た後にプールスが部屋から飛び出して泣きながら行っちゃいやレスとマギの足にくっついて離さない。

どうやらマギが自分を置いて何処かへ行ってしまうと思い込んだのだろう。別に何処かへ旅立つわけじゃないが、今のプールスに言っても分からないだろう。仕方ないからこのまま行こうという訳で今に至る。

 

「こうなったらプールスも一緒にっていう流れになってさ」

「じゃったらネギ君もまぜて兄妹仲良く暮らせばよいのではないのかのう」

 

ネギの名前を出した瞬間にマギの顔が複雑に歪む。どうやら訳があるようだ。

 

「いや、ネギはこのままアスナとこのかの部屋に一緒にいてもらおうと思ってる」

「今凄い顔を浮かべておったが、どうしてじゃ?」

 

話すか否か数秒迷うマギだが、ぽつりぽつりと話し始める。

 

「ネギの奴俺に俺に合わせようと無理してるのか、一瞬気を抜いた時に辛そうな顔するんだよ。俺はネギにそんな顔をして貰いたくない。それに俺は不死身の存在になった。つまり時間の概念から逸脱した。そんな奴が自分の弟の1分1秒を無駄にしたくない。そう思ったんだ」

「お主記憶を失ってから難儀な性格になったのう」

 

困ったもんじゃと頬を掻く学園長にマギが再度

 

「後正直に言うと不死身になったからなのか、あの部屋にいると自分が異物感のように感じて居心地が悪い」

「あーわかったわかった。許可するから自分が住みやすいところを見つけるがよい」

「ありがとなじいさん。それじゃ」

 

礼を言い、プールスは会釈をして学園長室を後にした。マギが退出して暫くして溜め息をつき、机に備えてあった黒電話のダイアルを回してある人に電話をかける。

 

「もしもしわしじゃよわし。いやふざけてはおらんわ。ちょいとお主に頼みたいことがあるんじゃよ―――」

 

学園長が誰かに連絡を取っている間に学校から出てこれからどうするべきかマギが考えていると

 

「やあマギ君。体の調子は大丈夫かい?」

 

声が聞こえ振り替えると微笑みを浮かべているタカミチが歩み寄ってくる。

 

「えっと、タカミチ?」

「良かった。分からないじゃないかと思ってひやっとしたよ」

 

半ば恐る恐るといった形でタカミチの名を呼ぶマギ。タカミチの事も覚えておらず、タカミチを見た瞬間にタカミチだと理解した。

 

「それで休日に学校に来てどうしたんだい?」

「実は……」

 

マギはタカミチにネギ達と離れて暮らす旨を話す。一通り聞いたタカミチはマギにある提案を出す。

 

「だったら僕の部屋に来るかい?」

「タカミチの部屋?」

「あぁ。僕も学園の近くで部屋を借りているけど、最近ほぼ出張で部屋を空けていてね。帰ってきてもご飯を食べて眠るっていう最低限のことしかしてなくてね。きちんと家賃は払っているけど、正直払い損かなって思う所もあったし、マギ君が住んでくれるなら家賃分のお金が無駄にはならないと思うのだけどどうかな?」

 

マギにとっては美味しい話だろう。家賃は払わずに暮らしていけるのというのだから。

だがマギはそんな魅力的な提案にも首を横に振る。

 

「とても魅力的だが断るよ。タカミチがお金を払っているならそこはタカミチの場所だ。そんな所に甘えて暮らすのは寄生となんら変わりないと思う。だから俺は自分で自分の居場所を探す。断ってごめん。それと俺の事を心配してくれてありがとう」

「そうかい。どうやら意思は強いみたいだね。マギ君に合った場所が見つかることを祈ってるよ」

 

タカミチ礼を言い別れてからマギは部屋を貸してくれる不動産屋へ足を運ぶ事にした。そこでマギはある意味洗礼を受けることをまだ知らないでいた。

 

 

 

 

 

「……知らなかった。部屋を借りるというのがあんなにも過酷だったなんて」

 

学園のベンチに深々と座り込み、これまた深い溜め息をついてしまう。何故マギがこんなにも疲れているかというと、不動産屋に行ったことが始まりである。

まずマギが部屋を借りたいことを話すと、不動産屋にいた仲介業者が目を光らせ次々と物件の情報を話し始める。

その早さ、まさにマシンガントークと言っていいほどだった。

更に家賃の他に光熱費、電気代水道代ガス代も自分が払わなければいけない事を失念していた。他にも生活するために欠かせない家具も購入する必要がある。これらの費用は今働いているから大丈夫であると思っていた。だがマギはある意味お金よりも大事なことを忘れていた。

―――今の自分生活するスキルが全くの皆無だ―――と。

掃除もまだ一人で出来るレベルではない。食事などゼロに等しい。このままでは毎日コンビニのお弁当という結末になってしまう。

家事を毎日に行って先生としての業務を行う。……無理だ。マギは即断する。今の状態で一人で何でもこなすことは

浅はかだった。お金さえ出せばそこから暮らしていけると自身の智慮のなさに嘆いてしまいそうだ。

そんなマギを見てプールスは泣き出しそうになり、プールスを心配させないために頭を優しく撫でるマギだが焼け石に水である。

これからどうするか、やはり諦めてネギ達のいる部屋に戻るしかないかと振り出しに戻ろうとしたその時

 

「漸く見つけたぞマギ。こんな所にいたのか」

 

腕を組ながら茶々丸を連れたエヴァンジェリンが現れた。

 

「エヴァに茶々丸。どうしてこんな所に?俺に何かようか?」

「ふん。どうやら住みかを探すのに苦労してるようだな」

「何で知ってるんだ?」

「私を誰だと思ってる?私位になれば貴様のことなど手に取るように分かる」

「とマスターは仰っていますが、実際は学園長にマギ先生の家探しを協力して貰いたいと頼まれてマギ先生を探して今に至ります」

「おい!何で直ぐに喋るんだこのボケロボ!!」

 

不敵な笑みを浮かべていたのに茶々丸があっさりとネタバレをしたため急にカッコ悪くなったため顔を赤らめて茶々丸を怒鳴るエヴァンジェリン。

すっかり微妙な空気となってしまい、仕切り直すために咳払いをするエヴァンジェリン。

 

「お前が今すぐにでも住めるような物件、私は1つ知っているぞ」

「本当かエヴァ?」

「あぁ。それにお前も知っている場所だ。着いてこい」

 

エヴァンジェリンに着いていきその物件へと向かった。そして到着して思わず呆けた顔をしてしまう。何故ならその物件というのが

 

「ここエヴァの家じゃないか」

 

そうエヴァンジェリンの家であった。

 

「空き部屋もまだあるし、私と茶々丸だけじゃこの家は大きすぎると思ってな。家具もあるし、まぁ私の趣味でアンティークものが多いがそれは目を瞑って貰うとして、家事はそこにいるメイドロボがやってくれる。世にある最新の家電より高性能だ」

「メイドロボットって……それでいいのか茶々丸」

「はい。私はマスターやマギ先生にプールスさんのお役に立てられるのならばそれはとても嬉しいです」

 

別段茶々丸が気にしていないのならば、マギがこれ以上何かを言ってもしょうがないために黙ってしまう。

 

「でもエヴァや茶々丸と暮らすことになったら結局アスナやこのかと暮らすのと変わりがないような……」

「それはあいつらがお前よりも歳が下だからだろう?茶々丸なんてロボットであるから歳の概念などないようなものだし、私だってお前よりも数百も歳上だ。なら問題ないだろう?」

「それは、そうかもだが……」

 

エヴァンジェリンに歳云々のことで論破されて渋い顔をしてしまうマギ。

 

「それに……お前があの部屋を出ようと思うようになったのは私の責任だ」

「それはどういうことだよ」

 

マギが何故自分のせいなのかとエヴァンジェリンに問うと負い目があるのか申し訳なさそうにエヴァンジェリンはこう答えた。

 

「じじいに自分が異物感だって言ったそうじゃないか。不死身になったことで時間の概念から逸脱したことによって、ここに居たくないと直感で感じ取ったのだろう。お前がそう思うようになったのは私の責任だ。不死身の先輩としてお前が不自由にならないように支えてやる。だから一緒に暮らせ」

 

暮らせと高圧的な感じで取られてしまいそうだが、マギを思っているのは確かなエヴァンジェリン。

エヴァンジェリンと一緒にいるとどこか安心感があるのは確かなマギ。だがそんな誘いをマギは首を横にして答える。

 

「色々と心配してくれてありがとな。けどエヴァに迷惑をかけるのは俺としては申し訳ないというか、だからもう一度自分で暮らせる場所を探すよ」

 

当たり障りのない断りを入れてマギはその場を去ろうとする。これでいいと自分に言い聞かせていると急に動けなくなった。

エヴァンジェリンがマギの手を掴み離さないでいたからだ。

 

「……くな」

「エヴァ?」

 

俯いているエヴァンジェリンが顔を上げ、マギは思わず息を飲んでしまう。

 

「行くな。行かないでくれ。お前がそうなったのは私の責任だ。けど同時に嬉しかった気持ちもある。漸く私と一緒に歩いてくれる者が出来た。もしお前がこの場を去ってしまったら私もう独りになってしまう。そうなったらもうお前を真っ直ぐ見ることが出来なくなる。お願いだ、勝手な事を言っているのは分かってる。けどもう私を置いて行かないで……私を独りにしないでくれ!」

 

目に涙を溜めて今にも流れそうで懇願をするエヴァンジェリン。その切なそうな表情を見れば誰もが同情するだろう。

エヴァンジェリンの悲痛な表情を見てのマギの答えは

 

「分かっ……た。俺はお前と一緒に暮らすよ。それでいいかエヴァ?」

 

思わず言ってしまった所もあるが、ここでエヴァンジェリンと一緒に暮らすことに決めたのだ。

 

「……ふふ。そうか。これからよろしくなマギ」

 

と先程まで泣きそうな顔を浮かべていたのに次の瞬間にはいつもの調子に戻っているのを見て思わず唖然としているマギにエヴァンジェリンが

 

「まさかこの私が泣くと思ったか?数百年も経っていれば非力な少女を演じないといけない場が出てくるし、泣き落としをすれば同情し私の味方になってくれる者が増えていく。つまり、お前は私に騙されたのさ。これこそ長年の経験の差だ。覚えておくといい」

 

マギを騙してやったとしたり顔を浮かべるエヴァンジェリンを見てそうなのだろうかと思ったマギと茶々丸。

あの泣きそうな顔は本心だと思ったマギ。1人ではなく独りと言った。それはもう自分が独りでいることに耐えるのが厳しくなってきたからだろう。だからこそマギに一緒に居て欲しい気持ちが高まったのだろう。

だから非力な少女を演じるとか泣き落とし等の事を話し始めたのは涙を見せたのが恥ずかしくて我がマスターは誤魔化しているのだろうと茶々丸は分析した。

今の涙は本物だよねと口には出さずに心の片隅に置いておいて

 

「改めてよろしくなエヴァ」

「あぁ歓迎するぞマギ。ようこそ悪の住み処へ」

 

不敵な笑みを浮かべてマギと握手するエヴァンジェリン。こうして色々とあったが、最終的にエヴァンジェリンと一緒に暮らすことになった。

自分で暮らす場所を探すと意気込むが上手くいかず、エヴァンジェリンと暮らすとなった時に一度は当たり障りのないように断りをいれたがエヴァンジェリンの涙を見て折れたマギは考えを変えて結局エヴァンジェリンと一緒にいることを決めた。

 

「あー……俺だって、ほんとは一緒に暮らそうと言ってくれて嬉しかったのにあーだこーだ言い訳して、泣かせて、面倒な奴だな俺ってホント……」

 

と小さく呟いた。その呟きは誰にも聞かれずに風に流れて消えたのだった。

 

 

 

 

後日マギがエヴァンジェリンと住むことになるという話は直ぐにクラス中に知れ渡り、アスナやこのかにのどかや夕映に千雨や亜子の他に風香や史伽に千鶴や噂好きの何人かがエヴァンジェリンに詰め寄った。

何時もなら鬱陶しい顔をするエヴァンジェリンだが今回だけは

 

「別に、あるべきもとに帰って来た。それだけだな」

 

とどこか勝ち誇った笑みを浮かべているエヴァンジェリンに対して何人かがブーイングで抗議をし始める。そんな中でのどかは勝ち誇った笑みを浮かべていたエヴァンジェリンを見て、本心から嬉しいということを感じ取っていた。

 

「良かったですね。エヴァンジェリンさん」

 

確かにマギを想い合うライバルの関係ではあるが、今はエヴァンジェリンを祝福するのどかであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずるいなぁ♪」

 

 

 

 

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