堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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悪魔再来

「ひどいじゃないかマギ君。まだそんなに経ってないのに私の事を忘れてしまうなんて」

「いや、忘れたんじゃなくてつい最近記憶を失くしてあんたの事を覚えてないだけだ」

 

そう言ってマギはまるで世間話をするようにへルマンに自身の記憶が失くなった経緯を話始める。

へルマンの後ろには殺気だった悪魔が鼻息を荒くするか、唸り声をあげるものもいる。そんな中で自身の事を話すのは変な光景である。

マギの話を聞き終えたへルマンは深い溜め息をついたあとに、残念そうではあるが、嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「その戦いでマギ君は記憶を失った訳か。折角優雅に挨拶し緊迫な空気を作りたかったのに残念だ。そして、君は我々寄りの存在になったようだな。我々と同じような匂いをしている。しかし君は不死身の存在になってしまったのか……もう成長することもなく、その成長を潰し、潰されるのを見ることが出来ないのもまた残念だ」

 

へルマンの勝手な物言いにマギは眉を寄せることもせず、おあいにくさまと月光の剣の剣先をへルマン達に向ける。

 

「俺は自分が不死身だからって胡座をかくほど怠惰に腐る積もりは毛頭もない。生に限界がないのならとことん前進して強くなるだけだ。俺が強くなるのを止めた時、それは平和な日常を謳歌している時だ。だから、今は目の前の障害を排除するだけだ」

「いいぞ、よい啖呵だ。流石はネギ君のお兄さんだ」

 

満足そうに微笑みを浮かべているへルマン。すると

 

「――――!―――!!――――!!!」

 

悪魔の群れの方から女の金切り声のようなものが聞こえてきた。

見れば鎖でがんじがらめになり、口には猿轡をはめられた、マギに返り討ちにあった女悪魔のサキュバスがマギを血走った目で睨んでいる。全身からマギを殺そうと殺気が溢れていた。

 

「あいつは何だ?嫌に俺を敵視してるが、俺があいつに何した?」

「あぁ彼女は前に私が麻帆良に来た時に同行してね、マギ君と対峙したのだが、その時彼女、今はプールスと言ったかな?プールスを虐めそこに居るお嬢さん辱しめた事でマギ君の怒りを買ってね、返り討ちにあったのさ」

 

プールスが虐められ亜子が辱しめられたと聞いた瞬間、マギの目がすうと細くなった。

 

「やられた後に戻ってきたが、マギ君にこてんぱんに伸されたのが堪えたらしくてね、元々のサディスティックな性格は引っ込んでしまい、本能で暴れる低級悪魔に成り下がってしまったわけさ。マギ君にリベンジ出来るってことで連れてきたが、無闇に暴れないようにああして鎖で縛っているが」

 

等と話しているとサキュバスは強引に鎖を破壊し、猿轡も引きちぎって取った。

 

「このビチグソ野郎!!よくもこの私にあんなひどい事をしやがったな!今からてめぇをズダボロにしてやる!!」

 

サキュバスの叫びに特に反応を示さないマギにさらにサキュバスは捲し立てる。

 

「何涼しい顔をしてるんだてめぇ!今からてめぇの手足を切り落としてその粗末なもん食い千切って目の前で潰してやる!!」

「人を虐めるのはよくって、やられると逆ギレとか、自称Sが聞いて呆れるな。調子づくなよあばずれが」

 

マギが鼻で笑った瞬間、サキュバスは体を肥大化させ、マギに向かって突撃しようとして―――――

 

『はぇ?』

 

次の瞬間には自身の眉間に月光の剣が深々と刺さっていた。

なぜ自分に剣が刺さっているのか分からず呆けた声を出していると

 

「ひどい事をした……か。俺の大事なプールスや亜子にひどい事をしておいて何自分だけ平気で被害者面なんかしてるんだ?」

 

目に光がないマギの冷笑を見てサキュバスは全身の悪寒が止まらなくなった。

前に自分と対峙したマギは人が傷つけられたことに対する怒りを露にしていた。

しかし今のマギからは怒りなど全く感じない。

あるのはただ単純な敵意や殺意のみ。マギにとっては目の前のサキュバスは家に湧いた害虫位の感情しか持ち合わせていなかった。

光のない目からは底の見えない暗闇が、そしてマギから漏れだしている闇の魔力が全身を蝕んでいる。

―――あ、こいつにはもう絶対に勝てない。

先程までのマギに対しての殺意は一気に萎んでしまった。

 

『ごっごめんなさ―――ぐぼ!?』

 

反射的にマギに謝罪しようとした瞬間に、マギはサキュバスの口を掴み、少しずつ手に力を込める。みしみしと嫌な音がサキュバスの顔面から聞こえる。

 

「おいおいさっきまでの威勢はどうしたんだよ?まさかもう戦意喪失だっていうのか?…………ふざけんなよ。プールスや亜子に酷い事しておいて、自分だけ被害者面しておいて、早々に心が折れたっていうのか?早く立て直せよ。俺の粗末なもの食い千切るんだろ?ほら掛かってこい」

 

と挑発しておきながらマギは手の力を緩めることは一切しない。サキュバスももう心がぽっきりと折れてしまった今あるのはマギに対する恐怖だけである。

 

「はぁ、もういいよ。もうつまらんから終わらせるわ。もう此方には来ないで、部屋の隅でぶるぶる震えてろ。そんじゃばいばい」

 

マギは月光の剣をサキュバスから引き抜くとそのまま首を切り落とした。首を切り落とされたサキュバスは崩れ落ちるように倒れ、そのまま灰のように消えてしまった。

 

「なぁネカネ姉」

「はっはい!」

 

急にマギに呼ばれ肩が上がるネカネ。

 

「雪姫から聞いたけど、俺とネギの故郷であるこの場所を悪魔が襲撃したんだってな。この悪魔の群れに此処を襲った奴は居るのか?」

「……ええ。今貴方と話した悪魔はスタンおじいちゃんを石にした悪魔よ。他にも居ると思うわ」

 

それだけ聞けば充分だ。マギは自身の影からグレートソードを取り出し左手にグレートソード、右手に月光の剣の二刀流で構える。

 

「過去の事は覚えてないが、ここいらで過去を乗り越えるって言うのも俺が前進する一歩になるだろう。遠慮なく掛かってこい。撫で切りにしてやる」

 

マギの挑発に悪魔達は咆哮を挙げながら、マギに食って掛かる。唯一へルマンだけは肩を竦めるだけだった。

しかしそこからは一方的な蹂躙だった。悪魔の群れの大木の様に太い腕や足や尻尾、剣の様に鋭い牙も、口から放たれる灼熱の炎も凍える凍土の吹雪も、蝕む毒も目から出される怪光線もマギには何の意味もなかった。

グレートソードで悪魔の攻撃を防いだ後に悪魔に向かって振り下ろし、凪ぎ払う。悪魔が密集してくれているお陰で多少雑に振っても悪魔達に当たる。

グレートソードは切るというより、叩き切るの方が合っている。悪魔達を叩きぶつ切りに切り崩す。悪魔がグレートソードに切られる度に鐘のような音が響き渡る。

月光の剣は切った悪魔の部位を灰にして消してしまう。不浄を浄化しているのであろうか。更に炎や吹雪や毒も浄化してしまう。

多勢に無勢な状況だと思われたが、たったマギ1人の無双状態となってしまっていた。

 

「まっマギを助けなくていいのかしら……」

「何を言ってる。あれの何処に助太刀する要素がある?今のマギには無用だ。黙って見守っていろ」

 

姉心で助けようとしたネカネに雪姫は手出無用とそう言った。

のどか達も最初はマギの容赦のない冷酷な姿に驚きと恐怖が湧いた。だが、マギの戦う姿を見ていると

 

――――あ、かっこいい

 

と思ってしまっていた。

 

(この子ら難儀な惚れ方してしまったようだな……)

 

校長はこの子ら大丈夫だろうかと心配しながら溜め息を吐いた。

そしてあれだけいた悪魔達はもうへルマンただ1人を残すだけとなった。

 

「残ったのはあんたのみだな。どうする?尻尾巻いて逃げ出すか?」

 

グレートソードの剣先をへルマンに向ける。がへルマンは笑みを浮かべている。

 

「逃げ出す?とんでもない。むしろマギ君に礼を言いたいぐらいさ。所詮低級悪魔程度がマギ君に勝てるとは毛頭も思っていなかったからね。私が望むのは一騎討ち。邪魔な悪魔達を掃除してくれてありがとう。それに……雑魚ばっかりの相手をして欲求不満なんじゃないかね?」

「……そうだな。あんたが強いっていうのは肌で感じていた。正直言って雑魚共を蹴散らしていた時もあんたと戦いたくてうずうずしてた所だ」

「ふふ、そうかい。だったら……」

「あぁ、とことん……」

「「やってやろうか!!」」

 

同時に吼えたマギは同時に突撃した。

 

「まずはごあいさつだ、悪魔パンチ!!」

「うおらぁ!!」

 

へルマンの悪魔パンチとマギのグレートソードの振り下ろしがぶつかり合い、今日一番の轟音と衝撃波が起こった。

 

「やっぱり、そう簡単にはいかないか」

「これでも元爵位の身だからね。そう易々と遅れは取らない積もりさ」

 

下級悪魔ならグレートソードで腕を斬られていたが、へルマンの腕はびくともしていない。

その後もへルマンは徒手格闘でマギに襲いかかり、マギはグレートソードと月光の剣で応戦する。

へルマンと戦い始めてどれくらい経っただろうか、段々とマギの中でへルマンとの戦いに愉しさを見出だそうとしていた。

強いへルマン、こいつを降す事が出来ればどれくらいの快感を感じる事が出来るのだろうか。

獣の本能が身体中を巡り、口角がどんどん上がっていく事が分かる。

 

「ふふ、愉しいのかいマギ君?」

「あぁ愉しいな。あんたは強い。強い奴と戦ってると、こう体の内から熱い何かが沸き上がってくる感じだ。このままあんたと戦っているのも悪くない」

「いい殺し文句じゃないか。私が女だったら良しと思ってしまうな」

「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ……けど」

 

気合いを出しながらグレートソードを横凪ぎに振るう。へルマンは両腕でガードし、数m吹き飛んだ。

 

「悪いが俺は強い奴と戦いを楽しむために強くなろうとしたんじゃない。大切な人を自分の力で護り抜くためだ」

 

グレートソードの切っ先をへルマンに向けてそう言い切るマギ。

ふむと顎に手を当てるへルマン。マギが言った事は旗から見れば安い芝居のような宣言に聞こえるかもしれないが

 

「ネギ君とは違い、マギ君は護るためなら相手を滅してしまってもいいと、そう思っているんだろう?」

「ああ。降りかかる火の粉は払うんじゃなくて、元から断つ方が手っ取り早い。それにあんたはこっちで倒しても死ぬわけじゃないんだろ?だったら遠慮なくやれるってこった」

 

マギはオーラを出しながらヘルマンを押していく。ヘルマンも笑みを浮かべ、人の姿から真の悪魔の姿へと戻る。

 

「さぁ第2ラウンドと行こうか!」

 

 力を解放したヘルマン。ネギも真の姿のヘルマンと戦うことはなかった。相手の力は未知数だ。

 だからこそマギは

 

「雪姫、あの力を使うぞ。いいか?」

 

 修行で身に着けた力を使うことを雪姫に許可を求めた。

 

「いいぞ。余裕をかましているその悪魔の度肝を抜いてやれ」

 

 雪姫は不敵に笑いながら使用を許可した。

 

「マギさん、どうか無理はしないで」

「あんま心配はしてないけどさ。調子乗って暴走しないでくれよ」

「マギさん勝ってな!」

「マギさんの勝利を信じてるです」

 

 蚊帳の外状態であったのどか達もマギの勝利を願う。

 ありがとうと言いながら、マギは四つん這いの状態になる。

 

「SWITCH ON BERSERKER LEVEL……40!!」

 

 マギの体に闇の魔法のオーラが身を包む。

 

「ああああああああ……AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 マギは雄叫びの咆哮を挙げながら、獣のように駆けてヘルマンに向かっていく。

 

「ふふ、まるで獣のようじゃないか?でも叫ぶだけでこの私に勝てると思っているのかい?」

 

 四つん這いの状態から飛び上がり、ヘルマンに向かってグレートソードを振り下ろすマギ。

 他愛なしと思いながら、ヘルマンは片腕でグレートソードを防ごうとする。防いだ後にご自慢の悪魔パンチをお見舞いさせてやろうと思いながら。

 だがそんなヘルマンの思惑通りはいかず、鈍い音がしてグレートソードを防いだ片腕はまるで肉や魚を解体するかの如く、両断されてしまう。

 

「なっに!?」

 

 これにはヘルマンも驚きを隠せない。真の姿の状態は人の形態よりもパワー、スピード、そしてタフさも数倍に上がるのだ。

 それなのに自分の片腕がいとも容易く切られてしまったのだ。驚くのは無理はないだろう。

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 今度は叫びながら、グレートソードを横なぎに振るうマギ。

 

(まずい!!このままでは胴が両断される!ならば、魔力を胴体に集中して防御を上げるしかない!!)

 

 ヘルマンは瞬時に魔力を胴体に集中させる。ヘルマンの胴体にグレートソードが当たった瞬間に今まで一番大きい轟音と衝撃波が起こり、のどか達は耳を塞いで鼓膜を守る。

 

「UUUUUUUUUUUUUUUUU―――――GRUAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 マギは力任せにグレートソードをフルスイングし、そのままヘルマンをボールのように吹っ飛ばす。

 吹っ飛ばされたヘルマンは数回バウンドしてから地面に叩きつけられる。

 

「ぐっふぅ!!」

 

 ヘルマンの胴体に一文字の傷が出来ている。魔力で体の強度を上げても傷がつき、血を流すことになるとは

 

「AAAAAAA!AAAAAAAA!!」

 

マギは追撃を絶やさず、ヘルマンに向かって連続でグレートソードで攻撃する。あれだけ息巻いていたのに、真の姿になってからヘルマンは攻撃することが出来ずにサンドバック状態になっていた。

 ヘルマンの体には段々と傷が広がっていき、確実なダメージを刻まれていた。

 そんなヘルマンはある感情で埋め尽くされていた。

 それは恐怖の感情ではなく、"歓喜"であった。今のマギの姿は自身が求めていた姿の1つの完成形。一切の躊躇もなく、相手を完膚なきまでに叩き潰す。そんな純粋な力を振るうそんな姿を素晴らしいと褒め称えたいと思うほど。

 だからこそ知りたい。そんな敵を容赦なく、完膚までに叩きのめす力の権化の存在がどうやって大切な存在を護ろうとするのか

 

「ますます興味をくすぐられるよ。悪魔パンチ!!」

 

 ヘルマンは残った腕でマギに悪魔パンチを放つ。ダメージを受けてもその脅威は失っていない。

マギはグレートソードでヘルマンのパンチを防ぐが、そのまま後ろに吹っ飛ばされてしまう。

 マギが怯んでいる隙にヘルマンは翼を広げ、上空へと飛び上がる。

 逃げたのか、一瞬そう思った。いや逃げた気配は全然感じられなかった。

 

『聞こえるかねマギ君』

 

 何処からかヘルマンの声が聞こえる。それがヘルマンからの念話だと気付くのに時間はかからなかった。

 

『今からこの村の住民を石化させた魔法を最大出力で放つ。そうすれば、この村の住民や、君が懇意にしている彼女達も漏れなく石と化すだろう。さぁ大切な者達を護り通すことが出来るかな?』

 

 ヘルマンは石化魔法を上空から放とうとしていた。ゴマのように小さく見えるへルマン。かなり上空に飛んだようだ。今から飛んでもヘルマンの元へ辿り着くころにはヘルマンは石化の魔法を放ってしまうだろう。

 

「GRUUUUUUUUU……くそっ!ずるいやり方をしやがって…!」

『悪魔だからね。さあグズグズしていると私が石化の魔法を打ってしまうよ』

 

 SWITCH ON BERSERKERを解除して悪態をつくマギ。こんなことをしている間にもどんどんと時間は迫っている。どうすればいいのか思案を巡らせていると

 月光の剣が刀身を煌々と輝かせている。まるで『自分を使え』とそう言っているかのようだった。

 

「……わかった。お前を信じる」

 

 新たに出来た相棒を信じるために、マギは月光の剣に魔力を送る。それに応える様に月光の剣は更に輝きを増したのだ。そして

 

「おらぁ!!

 

へルマンに向かって月光の剣を横に振るうと、月光の剣の刀身から月光の光の飛ぶ斬撃が放たれた。それと同時にへルマンも石化の魔法を口から放った。

月光の剣から放たれた飛ぶ斬撃は勢いを失うことなく、空へと飛んでいきそのままへルマンが放った石化の魔法と衝突した。

そのまま拮抗状態になる………かと思いきや、月の光の浄化の力によってへルマンの石化の魔法は霧散してしまった。

へルマンは驚きの表情を浮かべながらガードしようとしたが間に合わず、そのまま月光の斬撃はへルマンを両断した。

 

「ぐっむぅ……!み、見事だ」

 

くぐもった声を出しながらマギを称賛し、そのまま地面へと墜落するへルマンであった。

 

 

 

 

 

 

「……ふふ、こうまでしてやられるとは。やるじゃないかマギ君」

 

地面に墜落したへルマン。両断された下半身はもう消滅しており、今は上半身が少しずつ消滅しようとしていた。

 

「そうでもないさ。あんたは強かった。それにあんたが空に飛んだ時にこいつがなかったら今頃詰んでたさ」

「ははは。あんな切り札や、その剣を持っておいて謙虚なんだね。しかし、孫の成長を見たようで楽しかったよ」

 

おおらかに笑うへルマン。とても先程まで殺しあいのような戦いをしていた者の表情ではなかった。

 

「マギ君はこれから魔法世界に行くんだったね」

「何であんたが知ってるんだ?」

「私達を喚んだ者が言っていてね。マギ君が魔法世界に行くから君か君に従順している者を殺すか石にしろって言う命令でね。私としては殺しはお断りだったから適当に済まそうとしたんだけどね。結果は返り討ちでこの通りさ。話を戻そう。魔法世界はこの私よりも強い存在はごまんと居る。まぁこの私をこてんぱんに伸したんだ。君は魔法世界でもやっていけるだろう。けど、そこに居る彼女達を護りながらやっていけるかい?」

「あぁ。絶対にあの子達は護り抜く」

 

覚悟が揺らいでいないマギを見て結構と満足そうに頷くへルマンは、のどか達を見る。

 

「君達も私達を見ても逃げようとする素振りは見せなかったね。それほどマギ君の事を信頼しているんだろう。しかし、魔法世界は甘い世界じゃない。それだけは骨身に刻んでおいてほしい」

 

 ヘルマンの忠告を黙って聞いていたのどか達にも結構結構と頷く。そして最後はプールスだ。

 

「君もマギ君達に大切にしてもらっているようだ。私達とすごしていた時よりも強くなっているのが分かる。これからもどんどん成長していってくれると私は嬉しいな」

「はいレス!」

 

 さっきまで殺伐とした戦いを繰り広げていたのに、今は親戚のおじさんのお別れのようである。

 

「そろそろ時間だな。ではマギ君、次に会った時には誰かの依頼などではなく、個人的に君やネギ君の成長を見たいものだ」

「あぁ。その時はまた戦ってやるよ」

 

 マギが獣の様な不敵な笑みを浮かべると、ああそれは楽しみだと満足そうに笑い、ヘルマンは塵となり消滅した。

 さっきまで悪魔がいたのが噓のようにしんと静まり返っている。実害は特になく、あるのはマギが振るった事で地面のタイルが砕けた程度の軽いもので済んだ。

 

「しっかし、何で急に悪魔がやってきたんだろうな」

 

 千雨が呟く。のどかや夕映に亜子は悪魔たちの事は知っていた。だがマギや自分たちがここに居ることは、ネギや麻帆良の関係者しか知らないはず。

 

「だったら……そこの角で私達を厭らしい目で見ている奴に聞けばいいんじゃないか?」

 

 雪姫が近くの建物の角を見ながらふっと笑う。すると何者かがばっと飛び出した。かなりの速さを出していることから魔法使いの様だ。

 

「マギ」

「あぁ。捕まえる」

 

 雪姫に命じられ、マギは逃げた者を追いかける。鬼ごっこは特に起こることなく、あっさりとマギに捕まった逃亡者。

 

「くそっ!離せ化け物が!!」

 

 マギに捕まって肩を固められた逃亡者の男が口汚くマギを罵りながら逃げ出そうと暴れるが、びくともしない。

 

「えっとこの方は誰なんです?」

「マギさんこの人となんかもめた事でもあるん?」

「いや、特に何もなかったはずだけどな……」

 

 夕映や亜子に尋ねられるが、マギも首を傾げてしまう。自分は過去の事を覚えていない。そんな中で最近ガンドルフィーニやガンドルフィーニにつるんでいた者達とひと悶着あったが、その時にこの男はいなかった。

 

「この男、学園長室で私達を睨んでいた奴だな」

 

 つまらなそうに男を見下す雪姫。彼女は学園長室で自分達に敵意の視線を向けていたのがこの男だと言うことは見抜いていたのだ。さらに

 

「こいつは麻帆良の魔法使いではない。長年麻帆良に縛られていたからな。ある程度把握はしている」

「えっということは……」

「こいつは何処からかやってきたスパイだっていうのか?」

 

 雪姫は日本がある方角に向けて舌打ちをする。おそらく何らかの認識疎外の魔法で麻帆良に紛れ込んでいたのだろう。もう少し危機管理をしておけと学園長に恨みの念を送る。

 

「という事は、このスパイがあの悪魔達を召還したのでしょうか?でなければここに居る意味がないです」

「ごめんなさい。私のアーティファクトは相手の名前が分からないと効果を発揮できないので……」

 

 申し訳なさそうに謝罪するのどか。のどかのいどのえきっきは相手の名前が分かって効果を発揮する。目の前の男の名前が分からなければただの絵日記でしかない。

 

「さっさと吐いたらどうだ?そうすれば五体満足で生かしておいてやる」

 

 断罪の剣の切っ先を男に向ける雪姫。マギのおかげで柔和になっていると言っても敵に対しては容赦なく剣を向ける雪姫。しかし男は怯えることなくむしろ逆に雪姫やマギ達を嘲笑う笑みを浮かべていた。

 

「誰が貴様たち化け物に口を割るか。無様な姿を我々が見て嘲笑ってやろう」

 

 そう言って、男は歯を食いしばった。すると男が苦しみの表情を浮かべたと思いきや、足元からゆっくりと石に変わっていく。男は奥歯に石化する魔法薬でも仕込んでいたようだ。

 

「はっはは。ざまあみろ!せいぜい我々の正体も分からず指でもくわえているんだな!!」

 

 どう見ても自滅でしかないが、男は勝利を確信していた。今自分が出来るのはマギ達に対する嫌がらせ。なら存分に嫌がらせをしてやろうと、どんどん石化する恐怖に打ち勝とうとしていた。

 だが、マギはそんな事を許すはずがなかった。自分ならまだしも、のどか達も狙っていたのなら話は別だ。マギは男の頭を掴み、少し力を込めた。

 

「おっ俺を殺すのか?無駄だ、俺は下っ端。俺が死んだからって何の痛手にもならんぞ!」

「いや、のどか達の前で人殺しになるつもりなんてない。ただ俺の大切な人達を危険な目に合わせようとした奴が、クソガキみたいなしてやったりみたいな顔をしてるんだからな……俺もお前に嫌がらせをしてやろうと思っただけだ」

 

 そう言ってマギは男に魔力を送った。

 

「なっ俺に何をした!?」

「……石化した後に、あんたが意識を失わないように、延々と悪夢を見るように俺の魔力を送った。せいぜい、精神が壊れないように心を強く保つように頑張るんだな」

 

 マギがしてやったりな笑みを浮かべた瞬間に、男はさあっと顔を青くする。その悪夢が自身の精神をどれだけ蝕むか分からないのだ。下手したら死ぬよりも苦痛な目に会うのかもしれない。

 

「まっまってくれ!まってください!我々の情報を教える!だから、だから!!」

「嫌だよ。というかもう少し気丈な態度をとってくれよ。やっぱ下っ端だから心は弱いんだな」

 

 男の懇願を突っぱねるマギ。男は絶望な表情を浮かべながら石化してしまった。どんな悪夢を見ているのかは、男にしか分からない。

 

「さて、この男どうしよっか」

 

 マギの普通な態度に校長は深いため息をつき、ネカネはおろおろと動揺している。

 

「とりあえず、邪魔だしどっかに置いておくかの」

 

 という事で、石化した男を運んだのであった。

 

 

 

 

 

 

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