「だめだ。あたしは承認しかねるね」
開口一番に千雨がラカンの提案を断る。
「おっさんやあやかさんは知らないけど、あたしとネギ先生は一度マギさんが闇の魔法を暴走させて世界を滅ぼしかけた最悪の未来を見てきたんだ。そん時のマギさんはまさしく化け物だった。マギさんとネギ先生があんな姿になっちまう可能性があるなら、反対だ。それにマギさんもさっきの魔法で腕が変異してるじゃねえか」
現にマギの右腕に少々棘が生えていた。闇の魔法の暴走を抑えていたガントレットが破壊されたのだ。それで限界のSWITCHONBERSERKERの限界を使ったのだ。腕が変異してもおかしくはない。
千雨はマギが暴走しないように、これ以上無理をしてもらいたくないと思っていたが
「いや千雨、俺は闇の魔法を完全にコントロールしたい」
「な!? ん何言ってんだマギさん! 下手をしたら暴走を……」
「暴走をさせないためだ。ラカンさんの言った通り俺は闇の魔法を完成させないといけない。ラカンさんが作ってくれた強さ表の俺の強さは安定してなかった。敵と戦っている時に不調になってしまったら本末転倒だ。俺は自分のせいで誰かを護り切ることが出来なかったら皆に顔向けが出来ない。だからこそ俺は闇の魔法を制したい」
マギは譲る気はなさそうだ。千雨はマギを説得するために何か言おうとしたが、マギの真っすぐな目を見ていたら何を言えばいいのか分からなくなり、口を開閉することを繰り返して
「……分かったマギさんを信じる。けど、これだけは誓ってくれ。ぜっっったいに無理だけはすんなよ」
「あぁ、ありがとう」
マギは反射的に千雨を強く抱きしめた。急に抱きしめられドギマギする千雨をあやかはまぁっと目を輝かせ、ラカンは下品な口笛を吹いて茶化した。千雨はそんなラカンに唸り声をあげている。
マギの方針は固まった。次はネギである。
「んでぼーずはどうすんだ?」
「闇の魔法、ですか……」
闇の魔法、それは雪姫もといエヴァンジェリンが10年の歳月をかけて編み出した技法。そのポテンシャルはタカミチやアスナが使っている咸卦法に匹敵する。
が闇の眷族の膨大な魔力を前提とした技法の為、並大抵の人間には扱う事が難しく、故に今では知る者が少ない。
そんな闇の魔法をマギは修学旅行時にその場の流れで使ってしまったのだ。最初マギが闇の魔法を使ったと聞いた時には雪姫は
『やはりそこはナギの血か……』
と半ば投げやりになっていたという。
話を戻すが、そんな闇の魔法が自分に合っているのかと思っているネギであるが
「闇の魔法、確かにお前向きだろ」
「ええ!?」
「確かにな」
「千雨さんまで!!」
ラカンと千雨に闇向きと言われ
「だってさネギ先生、あんたさよく悩んでるし、1人でいるとき絶対暗いだろ。マギさんが鋭い刃みたいな闇だとしたらネギ先生の闇はじめじめした湿気のような闇だろ」
「そんな酷い!」
「言い過ぎですわ千雨さん!」
「いやだってそうだろ」
千雨にすぱっと言われショックを受けるネギを擁護するかのように猛抗議するあやかをすぱっと切る千雨。こういうところは結構容赦のない千雨である。
「はっはっは! 言うじゃねえか千雨の嬢ちゃん! なんだぼーずは闇は不満か? エヴァンジェリンの元で修行をしてたんだろ? それにマギとお揃いじゃねえか」
落ち込んでいるネギを笑い飛ばすラカン。ラカンにとってはネギの悩みなど笑い話でしかないようだ。
「まぁやるかどうかはお前の自由だ。それでも触りぐらい聞いても損はあるまい。いいか? 闇の力の源泉は負の感情だ。負とは否定、恐れ、恨み、怒り、憎悪……つまりはヤナ感じだ!!」
急にアバウトな説明になった。確かに纏めると負の感情はヤナ感じなのだろう。
「そんじゃ修行その①だ! いくぞ!」
「はっはい!」
ネギの了承も得ずに勝手に修行を始めるラカン。
「何事も気持ちとカタチが重要だ!! つまり闇の魔法を使うにはイヤーな気持ちになることだ! イヤーな顔をして、パンチを撃つ! さぁやってみろ!」
ラカンはやってられっかと言いたげな嫌な表情を浮かべながら湖に向かってパンチを放つ。相変わらず威力は強大で湖面が爆ぜた。
いきなりの無茶ぶりにネギは困惑しながらも
「い、イヤな顔して……撃つ」
「ダメだダメだ! 気持ちが全っ然入っていねぇ!」
ネギのイヤな顔をして撃ったパンチはラカンが納得するようなものではなかった。
その後も面倒くさそうなイヤな顔。水木し〇る風なイヤな顔。不機嫌なイヤな顔でパンチを放つがどれもただイヤな顔をしているだけでラカンが納得するようなパンチではなかった。
「もっと心の底から嫌な気持ちを思い出してみろ! なんかあるだろ!? 先生をお母さんって呼んだり、好きな子の縦笛を舐めてるところを女子に見つかったとかさ!」
「いえ、そう言った事は……」
「んな日本の男子中学生じゃねえんだから」
ラカンの例えに千雨がツッコミを入れていると
「千雨の嬢ちゃんにはねえのか!? これだけは知られたくねぇ、自分だけの黒歴史ってやつが」
「え? あたし? 黒歴史……あたしの……」
尋ねられ、思い出す千雨。あれはそう、ちうとしてデビューして間もないまだ駆け出しだった頃、少しでもインパクトを残そうと思い、張り切り過ぎて、逆に視聴者に引かれたあの屈辱的過去を思い出し……
「ぬがあああああああ!! 忘れろ!! あの忌々しい記憶を! ああああああああ!!」
「やっぱあるじゃねえか。嬢ちゃんも闇の素質ありだな。見たかぼーず、誰にだってイヤな気持ちはあるもんだ」
「は、はい。でもまだイヤな気持ちっていうのがピンと来なくて」
「たく千雨の嬢ちゃんが体張ったのにまだ分かんねえのか。だったら自分の不甲斐なさ、フェイト・アーウェルンクスに伸された時のことを思い出してみろ」
ラカンにそう言われ、ネギはゲートポートでフェイトにあしらわれ、皆が散り散りに飛ばされた事を思い出した。
いや、思い出したというよりもフラッシュバックに近かった。あの時の光景が鮮明に思い出され、ネギは段々と頭の中でパニックになり、目の前がグルグルと回り出し遂には
「僕って駄目な奴……全部僕が悪いんです……」
体育座りで顔を膝に埋めてしまった。
「ネギ先生ぇぇぇぇぇぇ!!」
ネギが完全な自虐モードになってしまい悲痛な悲鳴をあげるあやかにお構いなくラカンはネギに撃てと命じる。
「そうだぼーず! その状態で撃って見ろ!」
「嫌な顔をして……撃つ」
「それだ!!」
げっそりとした正に幽鬼状態なネギの放ったパンチを見て漸く納得したラカン
「いやこれ絶対なんか違うだろ。大丈夫かよラカンさんよ」
「ふっ闇の力を使うには、まずは己の闇と見つめ合ねえとな」
「いやもっともらしい事言って誤魔化してねーだろうな」
澄んだ瞳でもっともらしい事を言うラカンを疑いの眼差しで見つめる千雨。
「声が小さいぞぼーず! そのままイヤな顔をしてパンチ千本だ!」
「ぼっ僕はダメな男ですー!!」
そのままネギはラカンに言われるまま、自身を責めながらパンチを千本撃つのであった。
「さて、次はマギの番だが、マギお前はもう闇の魔法自体は使えるからな。ネギみたいにイヤな顔をしてパンチを撃つなんてまどろっこしい事はしなくていい」
「そうなのか? じゃあどうすればいいんだ?」
「お前は座禅を組んで精神を統一させろ」
随分とシンプルな事を要求してきた。しかしそれだけじゃあないだろう。
「ただ座禅を組むんじゃねえ。お前は自分が思い浮かべる嫌な事、ムカつく事を思い浮かべろ。お前の闇の魔法の発動のキーは怒りだと俺は読んでる。今のお前はムカつく事を思い浮かべても流せるような、感情のコントロールをメインに行え」
「感情のコントロールか。けど、なんで俺の場合は怒りなんだ? 確かに最近の俺は自身の情けなさ不甲斐なさに怒りを感じる事はあったが」
「お前はネギと違って落ち込むんじゃなくって怒りを表すタイプっぽいからな。ムカつくっていう方がしっくりくるだろ」
傍らで自身を責めながらパンチを放つネギが居るおかしな光景の中でマギも納得し、座禅を組み、深呼吸をし精神を統一させながら自身の内側と見つめ合う。思考がクリアになっていき、様々な事が頭に浮かび上がる。
ゲートポートでの戦闘。アーチャーに体を射抜かれ、アーチャーのすました姿が、皆を護れない不甲斐ない自分、そしてまだ見たことのないナギに対しての本能に近い嫌悪感、それらがマギの頭の中で駆け巡り
「ううぅぅぅ……UUUUUUUUUUUUUUUUU!! 」
段々と怒りの感情が溢れかえっていき、呻き声から唸り声に変わっていき、マギの体から黒い魔力が溢れてきた。マギに呼応するかのように月光の剣も甲高い音を響かせながら煌々と光始めている。
マギがこのまま暴れるのではないかと思い千雨がマギウスを使いマギを止めようとしたら
「ま、最初はこんなもんか」
ラカンが普通にマギに歩み寄り、マギの目の前でフィンガースナップをした。しかし音が渇いた破裂音ではなく、爆発音であった。あまりの大きさに千雨とあやかは耳を塞ぎ、至近距離で聞いたマギは耳から血を流していた。どうやら鼓膜が破れてしまったようだ。
「どうだ? 大丈夫か?」
呼びかけられ、ラカンの方を向く。直ぐに鼓膜は再生したみたいだ。
「ラカンさん、俺は」
「やっぱすぐに流すなんて無理な話だったみたいだな。とりあえずはお前が暴れそうになった時は俺が止めてやるよ。今は少しでも怒りを流せられるように頑張んだな」
「……はい」
そして直ぐに座禅を再開するが、またも直ぐに暴走状態になりそうになったのでラカンがフィンガースナップで暴走を止めるのを繰り返した。
げっそりとした顔でパンチを放し続けるネギとフィンガースナップで毎回鼓膜が破れるマギと言った奇妙な光景を見て
「あの、千雨さん。これ大丈夫なんでしょうか」
「あぁ、もうこの後の展開が手に取るように分かるわ……」
あやかは心配し、千雨はこの後の光景を予想するのであった。
イヤな顔をしながらパンチを千本撃つように言われたネギと、座禅を組んで怒りをコントロールする事を強いられたマギは修行を始めて1時間が経った。
「……1000!!」
漸く千発目のパンチを撃ち終わったネギ。流石に疲れたのか膝から崩れ落ち水底に手をついた。荒い息を吐きながらも息を整えた。
そして開口一番は疲れた、きついと言うかと思ったが
「……死のう」
「ネギ先生ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「あやかさん! 急いでネギ先生のメンタルケアだ! あたしはラカンのおっさんに文句言ってくる!!」
心が折れたネギをあやかが必死にネギのメンタルをケアしてる間に千雨はマギと一緒にいるラカンの元へ向かった。
元々自分を責めやすいというのもあるが、まだ10歳の少年のネギでは無理があったのだ。いや、そもそも常人でも1000回も自分を責めれば心なんて壊れてしまうだろう。
「おいおっさん! あんたの馬鹿げた修行擬きのせいでネギ先生がダウンしちまったじゃねえか! どうしてくれるんだおい!!」
「え? まじか? あっちゃぁ……ちょっと不味いかもしれんな」
「やっぱ口からの出任せかこのやろ!!」
マギウスにレシーブの態勢をとってもらい、千雨はマギウスの腕を踏み台にし、魔力で体を強化して、ラカンの横っ面にドロップキックを浴びせるのであった。
「悪いが俺は弟子なんてとったことないから効果的な修行なんてよく分かんねえんだよ。それにそのままだとパンツ見えるぜ嬢ちゃん」
「いって……! 鉄蹴ってるみたいだ……だったらもっと慎重にやってくれよ! あんたが思っている以上にネギ先生は繊細なんだからさ!」
頬を少々赤くするがけろっとしてるラカンに蹴った千雨が足を擦りながら悪態を吐きながら抗議する。
「まぁちと不味い状況かもしれんがふつーの奴がヤな顔してパンチを100回でもやれば心が折れている所をネギはちゃんと1000回やりきった。それは則ちネギが己の内側とちゃんと向き合っている証拠だ。それと闇の魔法と相性が良いという所もな」
「そんなまた口からの出任せを……」
千雨はラカンの言った事を出任せで片付けようとするが、ラカンは首を横に振りながら
「世の中は2タイプの奴がいる。光なタイプと闇なタイプだ。光タイプは何か失敗すると一時くよくよするがしばらくすればけろっとして次に切り替えられる奴だ。嬢ちゃんの周りにもそんな奴はいるだろ?」
千雨はアスナをイメージした。アスナも落ち込む時はネギと同じくらい凹むが暫くすると勝手に立ち直っている。そんなイメージだ。
「俺やナギも光タイプだな。そう言った奴に闇の魔法は合わない。対して闇タイプは失敗すると自分が悪いって責め続けるがどういった所が悪かったのか突き詰め、同じ過ちを侵さないように自身をじっくり研究するタイプが多い。マギやネギにエヴァンジェリンといった奴の方が化けた時が一番脅威だ」
成る程と思わず納得してしまった千雨。自分も闇タイプであり、配信して間もない時に失敗した時は自分は駄目だ向いてないと責めたことがあったが、その都度失敗した自分を見つめ直し、試行錯誤して今に至った所もある。
この話しは一旦置いといて────
「なぁマギさん大丈夫なのか? さっきから近くで騒いでいても微動だにしてないぞ」
「ん? おおそうだな。おいマギ一旦中断だ。目を開けろ」
ラカンに呼ばれたマギはゆっくりと目を開け──―
「……げ」
「げ?」
「げぼはぁ!!」
口からハイドロ○ンプが如く常人なら致死量の血を吐き出した。
「マギさんんんんんんんんん!?」
「おう千雨、最初は何とか流して耐えようとしたんだけどな、段々怒りに耐えきれなくなって気づいたら内臓系統にダメージが……ごふぇ! 」
「あんたは! もう!! 寝てろ!!!」
「お、流れるように膝枕とはやるじゃねえか」
血を吐き出し続けるマギを半ば強引に横にさせる千雨をニヤつきながら眺めるラカン。
こうしてネギとマギの最初の修行は強引に中断することになったのであった。
場面はネギに戻り、未だに立ち直れていないネギ。頭の中ではカゲタロウとフェイトに見下され、最後には千匹が合体した猫に伸されるという無様な光景が頭から離れなかった。
(あぁ、やっぱり僕は駄目なんだ……)
体育座りで顔を埋めながらこれで何回目と深い溜め息を続ける。
もう一度溜め息を吐こうとしたその瞬間、ネギの背中に暖かい感触が当たる。
「ネギ先生……」
「あやかさん、僕は駄目な男です……」
「そうやって自分を責めてはいけませんわ。今は思い切り涙をお流しくださいまし。それに……貴方を責める方なんて、私達の中には誰もいらっしゃらないのですから」
「……はぃ」
ネギは小さく泣き、あやかは黙って優しく後ろから抱きしめ頭を撫でてあげたのであった。
1時間も経てばネギも落ち着き、赤くなった目で付き添ってくれたあやかにお礼を言った。
ネギのお礼を受け取りながらもあやかは尋ねる。イヤな気持ちなるものは掴みとったのかとそれに対してネギは首を横に振るう。
「すみませんまだ掴み取れていません。やはり僕ではお兄ちゃんのようには出来ないのでしょうか……」
ネギはかつて闇の魔法を身に纏ったマギを思い出す。やはり自分はマギのようにはいかないのかと半ば諦めていたが
「ネギ先生、差し出がましいと思いますがよろしいでしょうか? そのイヤな気持ちはものにするのではなく、乗り越えるものではないでしょうか」
「え? どういう事ですか?」
あやかの言う乗り越えることが今一掴めていないネギにあやかは話を続ける。
「ネギ先生、私には生まれるはずだった弟が居たことを前にお話しましたね」
ネギは頷く。あやかには生まれるはずだった弟が死んでしまった事を麻帆良に赴任して間もない頃にあやかから聞いている。
まだ幼いあやかにとって一番辛い悲しい出来事であった。
「ラカンさんがいうイヤな気持ち、その時の私は悲しみが溢れそうになっていました。何故弟が死ななければいけないのかと嘆きましたわ。でもそんな時にアスナさんが居てくれました」
その当時のアスナは悲しみに明け暮れるあやかを蹴り飛ばすというかなりワイルドな慰めをし、逆に怒りで弟の死と言う悲しみを吹き飛ばしてあげていた。
「私が弟の死を思い出して立ち止まりそうになったときは何時もアスナさんがそばに居てくれましたわ。そのおかげで私は悲しみを乗り越えることが出来ました。だからこそ、私はイヤな気持ちは乗り越えるからこそ、それを力に出来るのだと私は思いますわ」
「乗り越える……」
あやかの言葉をゆっくりと噛み締めるネギ。
「そしてイヤな気持ちを乗り越えるのは1人じゃないといけないわけではありません。私にとってのアスナさんだった時のように、私がネギ先生を支えます。頑張れって応援します。ですから、過去のネギ先生に僕はこんなに強くなりましたって見せられるように頑張りましょう」
「……はい!」
どうやらネギも立ち直ったようだ。一安心と感じた千雨は、膝枕しているマギに目を向ける。
「なぁマギさん、マギさんもネギ先生のように乗り越える事が出来れば闇の魔法を使いこなす事は出来るのか?」
マギは首を横に振る。
「いや、俺はもう闇の魔法を使う事が出来るから、もう乗り越えるとか生易しいものじゃあないと思う。乗り越えるなんて生易しい事をしてたら下から喰われそうだ。俺の場合は制しないといけない」
マギはネギと違ってそう簡単にはいかないようだ。それを聞いたらますますマギが心配になる千雨であるが
「でも、千雨から『頑張れ』って応援してくれれば、俺だって頑張れそうだよ」
「ああ。分かったよ。マギさんが何も問題もなく修行が終えられるんだったら、思う存分応援してやるよ」
「ありがとう。千雨の応援があれば、何でも頑張れそうだ」
マギは感謝の意を伝えるかのように千雨の頭を優しく撫でてあげた。
こうしてマギとネギの修行1日目は終わりを迎えた。
翌日、早朝にて甚平に着替え、呑気に朝から枝豆をつまみに酒を飲んでいるラカンとマギ達が対談をする。
「んで1日経ったが、如何する? このまま闇の魔法を使う方針で構わないんだな」
ラカンはネギに最終確認をする。ネギも頷きながら
「はい、強くなるためなら僕は覚悟を決めました」
「……とお前の弟は言ってるが、どうするんだ? 闇の魔法ははっきり言ってそう易々と使える代物じゃない事はお前がよく知ってるだろう?」
「まぁネギが決めたことに俺は一々口出しをするつもりはないさ。それに、ネギ自身も強くなるなら手っ取り早い方がいいと思ってる所もあるだろうさ」
図星だったのか少し顔を赤くしながら目を逸らすネギを見てラカンは大笑いをする。
「いいじゃねえか誰だって手っ取り早く強くなれるならそれに越したことはないからな。だが……これを見ても心が揺れないか確かめさせてもらう。闇の魔法が適してない者が闇の魔法を使うとどうなるかをな」
それを聞いてネギは驚愕の顔を浮かべる。
「ラカンさん、ラカンさんも闇の魔法を使えるんですか!?」
「まぁな。けど俺は闇の魔法を使わなくても全然強いが、出来ないわけじゃあない。んじゃしっかりその目に焼き付けておけよ」
そう言ってラカンは酒を一気に飲み干すと、そのまま湖の浅瀬にどんどん入っていく。その顔は先程までの陽気な表情ではなく、集中している気の張った顔つきであった。固唾を飲みラカンを見ていると
「プラ・クテ・ビギナル 来たれ 深淵の闇 燃え盛る大剣!! 闇と影と憎悪と破壊 復讐の大焔!! 我を焼け 彼を焼け そはただ焼き尽くす者 奈落の業火!!!」
ラカンの周りに強烈な魔力が渦巻き、そのままラカンはマギが行っていたように奈落の業火の魔力を手に集中させ、そのまま掌握し、そのまま魔力を取り込んだ。
瞬間にはラカンの甚平が吹き飛び、褐色の肌が闇で黒く染まっている。闇の魔法の魔力充填・『術式兵装』である。余りの迫力に千雨とあやかは絶句する。ネギとマギは見抜く。ラカンと闇の魔法は水と油の如くまったく相性が悪い事を。現にラカンも脂汗を流し辛そうだ。
「やっぱ、キツイな……まぁこんな事をしなくても俺様は充分強いんだけどな……」
とこぼしていると、ラカンの腕に亀裂が走り、そこから大量の魔力が漏れ出し始めた。
「い、いいか? これはこの技の一端にすぎん。この技の核心は、グッ! やっぱり無敵の俺様でも無茶だったみたい、だ……流石はエヴァの闇の魔法。こりゃ失敗だっ……った」
段々と亀裂が増え、如何にもヤバそうだと思い何かあった時はマギとマギウスとネギがあやかと千雨を護ろうと判断したその瞬間
「たわらば!!!」
盛大な自爆をし、巨大な水柱を作り出したラカンはどざえもんが如く水面にプカプカと浮かんでいた。
「らッラカンさん!!大丈夫ですか!?」
「あぁ~まぁ相性が合わねえ奴が使うとこんな感じになるんだなこれが」
「いや、あれだけ凄まじい自爆してても五体満足って」
「じょ、丈夫な方なんですわね」
「彼は私と同じロボットなのでしょうかちう様」
「あぁもう、ツッコミしきれねぇ……」
自爆したラカンを見て大騒ぎするネギだが、ラカン当人はあれだけ巨大な自爆をしてもぴんぴんしながらネギに話しかけ、ラカンの規格外な丈夫さにドン引きするマギ達であったのであった。