堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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フェイトの正体 英雄の過去

「夕映、まさかアリアドネーの警備隊になっていたなんて」

「マギさん、会いたかったです……!」

 

 漸くマギに会えた事に嬉しさを顕にする夕映。しかし感動の再会に浸れる暇はなかった。

 

「ユエー! どうしたの!?」

「コレット!」

 

 夕映と行動を共にしているコレットが近寄ってくる。

 

「あ、その人がユエの言ってたマギさん? 初めまして! 私コレット! ユエとはルームメイトなんです!」

「あ、あぁどうも。マギ・スプリングフィールドだ」

「スプリングフィールド! やっやっぱりナギの息子なんだ! うわぁ! 英雄の息子とお話してるよ!」

 

 コレットが興奮していると、遠くからエミリィが率いるアリアドネー警備隊が飛んで来た。

 

「こうしちゃいられないです! マギさん急いで逃げてくださいです! アリアドネー警備隊もマギさんが賞金首という事は知れ渡ってるです! 私を攻撃してくださいです! 私が気絶すれば警備隊の動きも鈍るかもしれないです!」

「馬鹿野郎! 大事な人の夕映に攻撃なんか出来るわけねえだろ! むしろ俺に攻撃しろ! やられたフリしてこの場から離脱する!」

 

 俺に攻撃しろとマギが訴える。しかし夕映はマギに攻撃など出来なかった。相手は慕う人、そんな相手を手に掛ける事に躊躇ってしまう。その間にも他の警備隊が刻一刻と近づいて来る。

 

「……ごめんなさいです!!」

 

 迷った末、一番威力の低い雷の魔法をマギに当てる。

 

「ぐぉっ」

 

 直撃したマギは煙を出しながら落ちていく。

 

「あぁ!」

 

 夕映は反射的にマギに手を伸ばそうとするが、マギは目で訴えかける。自分を助けるようなまねをすれば他の警備隊に怪しまれる。そんな危険な橋を夕映に渡ってはほしくないマギは

 

「マギウス・リ・スタト・ザ・ビスト 冥界の地の底よ 断罪の炎 罪深き者の魂ごと焼き尽くせ 黒き炎! 固定 掌握! 術式兵装 冥府の番人!」

 

 冥府の番人になり、地面に墜ちた瞬間に影走りで一気に離脱した。使い勝手が悪いと言っていたが、戦線離脱にはもってこいだと再評価したマギであった。

 マギを見逃す形となった夕映。マギに攻撃し体が未だに震えている。

 

「ユエさん大丈夫ですか!? あぁこんなに震えて……よっぽどさっきの男が凶悪だったのですね!」

 

 エミリィは震える夕映を優しく抱きしめた。夕映が震えるのは恐怖だと思っているようだが、実際はその真逆である。

 

「私がマギさんを……」

 

 マギ本人は気にするなと言ってくれそうだが、当分は引きずってしまいそうであった。

 

 

 

 

 

 

 アリアドネーの追跡もかいくぐったマギはオスティアから離れた場所に隠してるグレート・パル様号に合流する。ネギ達も無事に戻ってきた。しかしハルナと千雨がかすり傷等を負っていた。マギウスも小破しているらしく、茶々丸がメンテナンスをしている。どうやら調という名前のフェイトの部下と衝突し、のどかとハルナと千雨とマギウスが相手をしたのだが、相手のアーティファクトが厄介な代物だったようだ。

 ともあれ無事に皆が集まった所でネギから報告がある。

 

「えーというわけで本日1時をもって僕たち白き翼は世界滅亡を企む謎の組織『完全なる世界』残党と戦う事になってしまいました!!」

『わー!!』

 

 ネギが申し訳なさそうに伝えても3ーAの何時ものノリでイベント事のようだ。あまりの軽さにネギもズッコケそうになる。

 

「ですが、皆さんに相談する前に危険な状況に追い込んでしまいごめんなさい」

 

 ネギの謝罪もネギを慕う者代表としてあやかが前に立つ。

 

「そんなに自分を責めないで下さいネギ先生。私の他に何人かは魔法のことなど何にも知らない者達でしたが、この2ヶ月であらゆる事を体験しました。危険な者と対峙する覚悟は出来ております。私なりに全力でネギ先生や皆さんを支えるつもりですわ」

「それでも皆さんを安全に帰してやると言われたのに」

「あーあんまり気にしないほうがいいさねネギ君」

「そーそー。悪モンの提案なんてこっちが不利になるのがお約束だもんね」

 

 ネギが引きずっている事を和美とハルナは軽く流している。

 

「ですが、朝倉や早乙女さんの言う通りフェイトの思い通りに動かない方が良かったかもしれません。フェイトと対峙した時にあの者が落としたこれを拾いました」

 

 刹那が見せたのは大きく翼を広げた鳥の両翼に天秤のはかりの皿が付いた代物。

 刹那の説明を簡略化すると契約の言葉を魂まで縛り付けて生涯絶対遵守させるといった恐ろしい魔法具。あのままフェイトに屈していたらそれこそ皆を無事に帰す事など出来なくなっていただろう。

 

「つまりアスナの咄嗟の行動がファインプレーになったというわけか」

 

 マギがそう言った瞬間にハルナや和美がやんややんやとアスナをもてはやす。もてはやされてアスナも悪い気はしないもよう。

 

「皆、俺からも報告がある。聞いてくれ」

 

 と今度はマギがアリアドネー警備隊になった夕映と遭遇した事を話した。

 

「そうですか、ゆえがアリアドネ―の警備隊にでも元気そうでよかったです。マギさんに魔法を当てたのはどうかと思うけど……

 

 夕映が無事なのを聞いてホッとするのどか。最後の方は何を言っているのか聞き取れなかったが。

 

「確かあの警備隊になるのって結構エリートな奴じゃないとダメなんじゃなかったけ?」

「ということはユエは私達を裏切ったということかー!」

「ちょっとやめなさいよ。わざと言ってるからって縁起でもない」

 

 和美とハルナがふざけて喚くのをアスナが諌める。

 

「でも綾瀬さんだってあの賞金のリストに載ってたよな? それなのになんで警備隊に入れてるんだ?」

「アリアドネー側で賞金リストを改竄したのかもな。仲のよさそうなルームメイトも出来ていたみたいだからな」

 

 結論で今夕映は危険視する必要はないが、注意はしとこうね位に留めておくことにした。

 今はフェイトの本名+目的を知るのが最優先。のどかのマジックアイテムである『鬼神の童謡』によってフェイトの本名を知ることが出来た。空間に名前を書き出すのどか。フェイトの真の名は……

 

「テルティウム。ラテン語で3番目という意味ですね」

 

 仰々しい名前でも出てくると思いきや、番号を示す名前であった。

 

「3番目ってそれって人の名前なの?」

 

 ハルナの疑問も最もだが

 

「ですが日本でも一と書いてはじめさんとか三郎さんとか呼びますし」

 

 返したネギの言ったこともごもっともだった。

 

「3っていうことは1と2もいるアルか!?」

「下手したら4も5も居るって事やろ……」

「あんなのがいっぱいにいると思うと」

「ぞっとするアルな」

 

 無表情のフェイトの群生をイメージする古菲や小太郎達。

 

「……本当に番号を意味してるんじゃないのか?」

 

 マギがポツリと呟いた事に皆がマギに注目する。

 

「どういう意味だマギ」

「いやな雪姫、俺がフェイトと対峙した時にあいつから感じたのは『本当に人間か』っていうことだ。まるで人ならず者というか」

「それって私みたいなレスか?」

「いや、プールスみたいに後天的なものじゃない。最初から作られた存在というか」

「人造人間? ホムンクルス?」

 

 ハルナがフェイトの正体を予想する。

 

「まぁそういったものと考えてもいいだろう。けどフェイトの正体がどうこうよりもフェイトの目的を知る方が大事だろ? のどかが頑張ってくれたおかげでフェイトの目的を知ることが出来た」

 

 無理をしてまでいどのえにっきでフェイトから情報を入手したのどかを皆が称賛し、さっそくいどのえにっきを見たのだが

 

「うーんこれは、なんとまぁ」

「随分と分かりやすい情報」

「まるで読んでくれって言っているような」

 

 デフォルメされたフェイトが載った絵日記から情報の一部を呼んだ各々の感想はまさにそれだった。親切に分かりやすくなっておりこちらが読むことを想定しているものだった。

 

「続きも読みたいけど、石になっちゃってるからなー」

 

 いどのえにっきはフェイトの石化の魔法によって完全に石になっているためにページを捲ることが出来ない状態になっている。

 もう一度カードに戻したらどうだと誰かが言うが

 

「一回戻してもう一度出すと情報はリセットされちゃうから」

 

 折角の情報が無くなるのは痛手だと思っていると

 

「でも、そこのページ隙間が空いとるで。ナイフでゆっくりとはがせば見れるんとちゃうか?」

 

 小太郎がナイフを隙間に入れてゆっくりと剝がす。しかしあと少しで剝がれそうといった所で

 

「もうここまでいったらべりっていけばいいじゃないまどろっこしいわね」

 

 アスナがページを掴んだ瞬間にぱりんと小気味良い音を出しながら砕け散った。

 

「何やってんねんアスナねーちゃん!」

「アスナさーん!」

「バラバラやん!」

「上げて落とす真似してんじゃねえよ!」

「ひーん! だってぇ!」

 

 皆にブーイングを受けながら砕け散ったページの修復をすることになった。砕け散ったページが無くなっていないか皆で必死に探すのであった。

 

「やれやれだな……雪姫、のどか、千雨、茶々丸いいか? 少し話がある」

「分かった」

「何ですか?」

「随分とシリアス顔だが、何か大事な話でもあるのか」

「では、少し離れた場所に移動しましょう」

 

 雪姫達マギ組を呼んでページを修復しているネギ達から離れた場所でプールス達を保護してくれていたアーチャーと遭遇したこと。そしてアーチャーがマギを殺せるであろう武器を手に入れたこと。そして来る時にアーチャーと決闘する事全てを話した。

 

「正気かよマギさん!? マギさんを殺せるかもしれない武器を手に入れた相手と決闘するなんて、あたしらでそいつをたたんじまった方がいいって!」

「私も千雨さんの意見に賛成です。そのような要注意人物とマギ先生を2人だけで戦わせるわけにはいかせません」

 

 千雨と茶々丸は反対であった。といってもそれはマギが心配であるからだ。しかしのどかと雪姫は

 

「私も千雨さんと茶々丸さんと同じくらい心配です。けど、私はマギさんの気持ちも尊重したいです」

「まぁ私のマギがそんな輩に後れは取らんと信じているが、不死を殺せる武器は数多くある。もしマギが危ない目に会いそうになったら私が助太刀に入ってやる」

 

 まるでマギとアーチャーの決闘の場に雪姫が一緒に居るという発言にのどかがぴくりと反応する。

 

「何でマギさんと一緒に居るのが雪姫さんなんですか? 私だって決闘の時には一緒に居たいのに」

「何、いざという時にマギを助けるならこの中で一番実力がある私が一緒に居るのが当たり前だろう?」

「私だってこの1ヶ月は様々なダンジョンや遺跡に潜ったりしたんです。夏休みの修行の時よりも大きく成長しました」

「だろうな。だが、私は場数が違う。年季が違うんだ。ここは私に譲った方がマギの為かもしれないがな」

「でも雪姫さんっていざという時におっちょこちょいになるんでしょ? 聞きましたよ。マギさんのお父さんに力を封印された時は落とし穴に落とされたって。ドジっ子な人にいざという時は任せられませんよ」

「……言うようになったじゃないかのどか。流石は私が認めた者だ。くふふふふふ」

「どうも、雪姫さんが改めてそう言ってくれてうれしいです。あははは」

 

 互いに目は笑っていない笑みを浮かべるのどかと雪姫に背筋をぞくっとさせるマギと千雨。一方で壊れたページの修復が終わったネギは書かれていたページを見ていたが、ネギにとっては書かれていたら不味いことがあったのか顔を強張らせて読んでいる。

 

「ネギ、何か他の情報がそのページに書いてあったのか?」

 

 のどかと雪姫に日和ったマギがネギの方へ避難した。慌てたネギは折角修復したページをまたくしゃっと丸めてしまった。

 

「う、ううん。フェイトの奴嫌がらせしたかったみたいで大した事は書いてなかったよ」

「あー! なにくしゃって潰してんやネギ! 折角頑張って修復したってのに! どうしてくれんやこのぼけ!!」

 

 慌てて言い訳をするネギにツッコむ小太郎。マギを置いてワーワー騒ぎ出すネギ達。

 

(俺に見せないようにしたのは俺が見ちゃまずい事でも書いてあったのか……)

 

 内容は気になるが、多分話してはくれないだろうと結論づけるマギ。

 すると静観を決め込んで酒を飲んでいたラカンが腰を上げた。

 

「うーしお前ら、ここまで来たらしょうがねー。俺も少しネタバレしてやろう。てきとーに並んですわれ」

 

 そう言ってラカンは懐から一個のフィルムを取り出した。

 

「と言っても今を生きる俺が過去を語るなんて面倒な事はしたくねー。ということで俺様の生きる伝説をフィルムにした! 制作費はネギとマギの給料から差し引いてな!」

「ちょ! ラカンさん!?」

「何処までも勝手だなこの人……」

 

 ネギのツッコミとマギの呆れをスルーして、ラカンはフィルムを映写機にセットする。

 上映が開始されると壮大な音楽と有名な映画のロゴを真似たラカンフィルムとデカデカと現れた。映像編集も出来るとはどれだけ器用なんだとマギが思っていると

 

「ちょ! ラカンさんでっかい!」

「おっさんが真ん中じゃねえか!」

「もっとネギ君とマギさんのお父さんを大きく映してよー!」

「黙って見んかー!」

 

 ラカンがど真ん中に映っておりナギやクウネルや詠春が周りを囲っている絵に皆がブーイングをしている。

 

「いいのかマギ」

「いいって何が?」

「あのバカの、ナギの事を知るのがもしかしたらお前が気にするかと思ってな」

 

 雪姫がマギを心配するが

 

「大丈夫だろ。それに俺自身クソ親父が何をしてたのか気になるしな」

 

 マギ自身ナギが何をしていたのか気になるのもあり、映画を見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 映画は終わった。簡潔に纏めるならノンフィクションの大スペクタクル映画と言った所だろうか。

 まず最初はナギ達とラカンが戦った所から始まり、ナギとラカンの一騎討ちになり、その後なんやかんやあってラカンが仲間になった。

 その後、ヘラス帝国との戦、その戦にフェイトの組織が噛んでいる。そしてナギ達に協力を求めたのがアリカ王女と呼ばれた1人の女性。

 アリカ王女が現れた瞬間にマギの心が大きくざわついた。

 アリカ王女は帝国と連合の争いを止めようとしたがそれは叶わずナギ達に協力を求めた。と言っても最初の方はナギとアリカ王女の仲はあまり良いというものではなかった。

 時が経つに連れ、『完全なる世界』との繋がりが見え始め、その頃にはアリカ王女もナギに少しずつ心を開いていった。

 だが、敵の繋がりの証拠をナギと協力している議員に持って行ったら青年のようなフェイトが成り代わっており、反逆者に仕立て上げられてしまった。連合からも狙われる事になったナギ達。

 転戦しながらも幽閉されていたアリカ王女を救出。

 そして決戦。ナギ達とフェイトに似た青年とその仲間達との死闘が始まり傷を負いながらも何とかフェイト似の青年を倒すことが出来た。

 追い詰めたのだが、ナギは不意打ちを食らう。しかも特大の魔法を受け止めようとしたラカンの両腕が吹き飛んでしまった。皆が満身創痍になった所で敵の親玉『造物王(ライフメイカー)』が登場した。もはやこれまでなのか。映画を見ていた皆はそう思っていた。だが、ナギは折れてはいなかった。そしてナギが師と仰いでいるゼクトと一緒に造物王に戦いを挑む。

 結果を言うならナギは造物王を倒してしまった。ラカンでも勝てないと思った相手に勝ってしまった事に見ている者も思わず呆然としてしまった。

 しかし造物王が行っていた儀式は完了しており、世界が終わろうとしていた所でアリカ王女、連合と帝国が決戦の場に馳せ参じ、皆の力で世界を救ったのであった。

 そして争いを続けていた連合と帝国は手を取り合いナギ達は世界を救った英雄として讃えられた所で映画は終わった。

 皆は拍手喝采。各々が映画の感想を述べる。

 

「あぁ、ネギ先生のお父様はまさしく英雄でした。そんな方のご子息であるネギ先生と居られるなんて、私は幸せ者ですわ……!」

 

 あやかに至っては感涙の涙をながしている始末。更にネギも感動の涙を流していた。

 しかしマギは

 

「……」

 

 涙を流さず怒りもせず、思案顔を浮かべている。

 

「どうしたマギ。ナギの活躍を見て何か思う事があるんじゃないのか?」

「いや、確かに世界は救われめでたしめでたしって感じだけどさ。何か核心までは到達してないきがするんだけど」

「あたしも思った。おっさん、あんた色々と端折っただろ」

「流石は嬢ちゃんだな」

 

 世界は救われた。しかし、まだ大きな問題が残っているのは事実だった。

 しかしラカンが作った映画はこれだけだったので、ナギの事を知るのはまだまだ先になりそうであったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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